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2008年3月28日 (金)

法科大学院協会総会決議

リンク: 法科大学院協会総会決議.

法科大学院協会総会決議 
「近時、今般の司法制度改革の大前提とされていた法曹人口増員計画を見直し、新司法試験合格者数を当初の予定よりも減らそうとする動きが見られる。このような動きは、司法制度改革の趣旨に反し、その十全な実現の支障となるだけでなく、新たな法曹養成制度の中核的機関として開設されたばかりの法科大学院制度の根幹を揺るがしかねない。殊に、このような動きが法曹組織自体の内部にも見られることは、きわめて遺憾である。
 このような動きの背景として、司法試験合格者の就職難など、新規法曹の受入れ態勢の問題があるだけでなく、質量ともに豊かな法曹を養成することを期待されている法科大学院の教育内容・成果についても、なお十分な信頼が得られるに至っていないという実情があることは、我々も重々承知しているところである。各方面からの厳しいご批判、ご指摘を真摯に受け止め、国民の期待に応えうる法曹を養成できる教育体制を早期に整備し安定化させることに、法科大学院関係者は全力を挙げて取り組む覚悟である。
 法科大学院制度だけでなく、他の多くの改革も未だ緒に就いたばかりであり、この段階で、法曹組織自体の内部において法曹人口増員計画の見直しが進められることは、法科大学院関係者だけでなく、今般の司法制度改革に期待してその円滑な実現に協力しようとする人々の法曹組織に対する信頼を損なうものであり、法曹人口増員計画についての法曹組織内部における性急な見直しが司法制度改革を未完のままに終わらせることになりかねないことを憂慮するものである。」
 ようやく最大の敵が本音を漏らしたというところでしょうか。とんでもない格差社会をもたらしたネオリベ一派には中央紙にああいう社説を書かせる力はもうないと思っていましたが、多分法科大学関係者の入れ知恵だったのでしょう。彼らにとっては司法改革イコール法曹人口の増大なのでしょうが、需要に見合わない供給過剰がもたらす弊害についてはどのように考えているのでしょうか。それについて何も触れることなく単に見直し反対を言うのでは全く説得力がありません。「司法試験合格者の就職難など新規法曹の受入れ態勢の問題」と言いますが、受入れ態勢とはどのような意味なのでしょうか。合格者を受け入れられる需要があるにもかかわらず、なにかしら就職できない障害があるという意味なのでしょうか。そんなものはありません。企業は(法の許容する範囲での)利益の極大化を目指して行動するものでありそれ以外の行動原理などあり得ません。弁護士の雇用が企業の利益になると考えれば雇用を躊躇することなどあり得ません。弁護士の初任給は低下の一途を辿り年収400万円台での雇用も可能です。その企業が全国で僅か200名しか弁護士を雇用していないということはそのようなニーズが存在しないということでしょう。弁護士の就職難はすなわち需要がないということであって受入れ態勢の問題などではありません。
 そもそも法曹人口の増大など市民にとって望ましいことではありません。よく考えれば分かると思いますが、世の中に不幸な人がいなくなれば法曹という職業は必要なくなるのです。他人の不幸を取扱うのが法曹の職業であって、法曹が需要を伴って増えるということは、それだけ不幸な人が増えるということです。平成12年に司法制度審議会が行ったアンケート調査では弁護士へのアクセスに苦労したとの回答は僅か9,9%でした。その後の弁護士人口の増大、広告規制の緩和、インターネットの普及により弁護士へのアクセス障害など存在しないというべきでしょう。それでも需要は増えていないのです。もちろん権利を侵害され苦しんでいる人を救うのが弁護士の仕事であり、弁護士はその職責を果たすために全力を尽くさなければなりません。弁護士を見つけられないために権利を侵害されても泣き寝入りをするような人がいないようにする必要はありますが、その必要性を超えて弁護士を増やすと不当な目的のための濫訴が横行してかえって権利侵害を増やす結果となるのです。訴えられれば防御のために弁護士に頼まなければなりません。かくしてアメリカのように、いつ誰から訴えられるか分からず、互いに弁護士を雇って相争い、100万人もの弁護士を食わせていかざるをえないような訴訟社会が生まれるのです。弁護士はあくまで不幸な人々の存在を前提とする職業であり、津津浦々に弁護士が充満するような社会は不健全な社会であることを銘記すべきでしょう。
 就職難で需要がないにもかかわらず合格者数の見直しに反対する法科大学院は、正に自らの利益しか考えていないと言わざるを得ません。合格者が減れば学生も減る、学生が減れば法科大学院の経営が立ちゆかないという正にエゴに基づく主張でしょう。法科大院の関係者は、3年間で1000万円もの多額の費用をかけて卒業し、弁護士になったはいいが就職すらできないという者の境遇を考えたことがあるのでしょうか。私たちはそのような正に不幸な卒業生を出させるべきでないと考えるので、合格者数を減らし、あわせて法科大学院の廃止を含めた抜本的な法曹養成制度の改革を望んでいるのです。

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