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2008年4月29日 (火)

弁護士人口問題に対する仙台弁護士会の取組み

青法協から表記のテーマで原稿を頼まれました。せっかく書いたので少し加筆して載せることにします。

弁護士人口問題に対する仙台弁護士会の取組み
                                      坂野智憲
1 仙台弁護士会は本年2月23日の定期総会において「司法試験合格者を年間3000人程度とする政策の変更を求める決議」を行った。
  法曹人口の在り方については、平成12年11月の日弁連臨時総会において大幅増員の方向性が承認され、平成14年に年間合格者数を3000人とする閣議決定がされた。その後は根強い反対論がありながら、司法改革の大合唱の下で日弁連の歴代執行部はこの政策を支持してきた。仙台会でも一般会員がこの政策を積極的に支持していたわけではないが、全てはもう決まってしまったこと、単位会の力でどうなるものでもないという諦めが支配していたように思う。
  平成19年2月に愛知県弁護士会が初めて3000人増員政策の見直しを求める意見書を公表し、また司法修習生の厳しい就職状況の予測が語られはじめた。平成19年度の仙台会執行部はこのような状況の下で出発したのであるが、当初は増員政策の見直しは、日弁連及び仙台会の歴代執行部のやってきたことの否定、ひいては司法改革の否定につながるということで語ることすら憚られる雰囲気であった。執行部内でも、過疎偏在の解消なしに増員見直しを言っても世論の袋だたきに遭うだけ、見通しもなく見直しを言うことはむしろ9000人増員の呼び水になりかねないという意見が強かった。
  しかし次第に増員問題はこれを放置しては弁護士の変質を招きかねない問題であり、執行部として避けては通れないとの認識が持たれるようになった。議論の末検討委員会を立ち上げようということになり、10月に弁護士人口問題対策特別委員会が設置された。委員会では、単位会でやれることは総会決議を上げて日弁連を動かすこと、各地で次々と決議が上がれば日弁連も無視することはできないはずということで総会決議を目指すことになった。その後執行部内で激しい議論がなされ、一時は会員提案やむなしかと思われたが、中部弁連や中国地方弁連の同種決議もあり総会に提案することになった。定期総会当日は1時間を超える激しい質疑討論がなされたものの賛成多数で承認された。
  現執行部は現在東北弁連大会に同趣旨の決議を出すことを準備中である。
2 弁護士人口問題は、弁護士の在り方そのものに関わるものとして、弁護士会が抱える最重要課題であることは会員の共通認識であろう。増員問題に関しては既に見直しの観点から幾つかの論稿が明らかにされているが、いずれも過去の統計資料などに基づいた具体的検証を踏まえたものである。各地で出されている見直し決議の提案理由を見ても見直しの必要性が論理的に述べられている。
  これに対して増員政策を維持しようとする側からは終ぞ論拠を示したまとまった見解は出されていない。増員を提言した司法審の意見書自体、単に抽象的な需要拡大の予想や他国との比較以外に論拠を示していない。現在見直し反対論者から言われているのは、見直しは弁護士の特権維持のためのエゴである、過疎偏在をどうするのか、刑事弁護の拡大への対応はどうするのか、法科大学院の学生がかわいそうだ、司法改革に逆行するといった情緒的、理念的なものでしかない。しかし日本の人口動態自体が一貫して過疎化しているのであって過疎問題は社会的経済的要因によるものである。当然のことながら過疎問題を解消するために人口を増やせという者はいない。民間企業は全国どこにでも作れるわけでいわば究極の増員がなされている状態と言えるが、まさに都市部に偏在している。どうして弁護士という職種だけが増員によって過疎偏在の解消がなされ得るのかその論拠は示されていない。また裁判員制度と被疑者国選拡大は来年のことであって将来に渡る増員政策とは無関係である。
  平成12年の臨時総会決議はいみじくもこう言っている「国民が必要とする数を質を維持しながら確保するよう努める」と。今行うべきことは実証的な方法で法的需要の現状と将来予測を分析することであり、それ以外に増員政策を見直すべきかどうか、仮に見直すとしてどのように見直すべきかの回答は出てこないように思われる。
  確かに平成12年当時の弁護士数は少なすぎたので一定の増員が必要だったのは事実であるし、市民もそれを望んでいたと思われる。法の支配を津々浦々にという理念も方向性としては正しい。しかし3000人などという増員は当時の新自由主義、規制緩和万能論に悪乗りした一部の財界人、政治家、御用学者の意見であって、市民運動が結実した結果などではない。新自由主義路線、規制緩和万能論が貧困と格差しか生まなかったことが明らかになった今かかる激増政策を見直すのは当然であるし、むしろ市民に対する義務である。市民は基本的人権と社会正義の擁護をなしうるような弁護士を望んでいるのであって、食べるのに汲汲として目先の利益に振り回されるような弁護士を望んでいるわけではない。日弁連は法曹人口問題のワーキンググループを立ち上げ、7月ないし8月にもこの問題に対する基本的考え方をまとめるという話である。日弁連としてはマスコミの理不尽な誹謗中傷に右往左往することなく、もっと市民の良識を信頼してして正論を述べるべきであろう。

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