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2009年6月11日 (木)

大腸内視鏡検査で医師が逮捕 冤罪か?

 少し前に大腸内視鏡検査をした際、女性看護師が席をはずした間に医師が内視鏡を膣に挿入したとして強制わいせつで逮捕された事件がありました。5年も前の事件ですが、このままでは時効になると思って届け出たという女性の申告を下に逮捕されたようです。医師は手元が狂っただけで故意ではないと否認しているそうです。この記事を読んだときは「5年も前の事件をどうして今更警察に届け出たのか、逮捕までする必要があるのか、まして実名報道まで」と思っただけでした。その後医師の書いたブログの記事を見ると、たくさんの医師の方が「一人でやる場合には肛門が見えにくい場合もある」「挿入しやすいようにゼリーを塗るので誤挿入はありえる」「実際間違って膣に挿入したが女医だったので何も言われなかった」などかなり多数の手元が狂うことはあり得るとの意見が載っていました。
 よく考えてみると「患者には確実にバレル、看護師がいつ戻ってくるか分からない、内視鏡で中を見て何がおもしろいのか?患者に騒がれたときのリスクの大きさ」などから敢えてこのようなことをする動機があるのか甚だ疑問です。ですから私が捜査担当者であれば、「誤挿入の可能性についての専門医の意見、女性看護師が席をはずした理由は何か(医師の指示か、その指示に合理的理由はあるか)、挿入していた時間はどの程度か(モニターを見れば誤挿入はすぐ分かるので長時間なら故意が推定される)、5年間の間に友人知人、弁護士、相談機関などに被害相談をしたか、もししなかったのならその理由は、5年も経って被害申告した理由」などについて慎重に捜査した上でなければ逮捕などしないと思います。本件がそのような捜査の上で明らかに誤挿入ではなく、被害者の供述が信用できると確信したのであれば立件すること自体は正しいのでしょうが。
 次に逮捕ですがこれはどんな理由でも正当化できそうにないと思います。一般の方は逮捕がどのような場合に許されるか知らないと思いますが、逮捕は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある場合に初めて認められるのであって、自白を得るために認められているものではありません。本件の場合この程度の犯罪で医師という職業も家族も捨てて逃亡するとは到底考えられません。次に証拠隠滅ですが、二人だけの空間での犯行であり物証などはあり得ないので、存在する証拠は被害者の供述のみです。この場合の証拠隠滅は被害者に対する威迫位しか想定できませんが、加害者の職業、地位からして警察から任意の事情聴取を受けた後で被害者を脅すなどという事態はおよそ考えられません。本件逮捕は明らかに自白をとるための違法なものだと思います。
 それにしても密室でのこの種の犯罪は恐ろしい。証拠としては被害者の供述と自白しかないので、自白強要が起こりがちだし、いったん自白したら他に証拠がないだけに身の潔白を証明しようがない。私が夜事務所で女性の相談者ないし依頼者と二人きりになって、その女性が警察に強制わいせつされたと被害届を出せば、それが嘘でも私はおそらく逮捕されるのだろう。実際に痴漢などの被害に遭われている方も多いし、それについて処罰の必要があることはもちろんなのだが、やはり事件の特性から被害者の供述の慎重な吟味が不可欠だと思う。私は昔ボス弁から相談室のドアは必ず開けておくようにと言われたことがある。今でも私はそれを実践しているし、相手が女性の場合には事務員がいない時間帯には相談はしないようにしている。
 それにしても裁判官は安易に逮捕状を出しすぎる。マスコミの実名報道も酷すぎる。もっと自分の身になってかつ洞察力を働かせて仕事をしたらどうであろうか。

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