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2009年6月28日 (日)

仙台医療問題研究会 医療事故シンポジウム

 6月26日(金)、仙台弁護士会館4階ホールで、仙台医療問題研究会主催の医療事故に関する講演とシンポジウムが行われました。「なぜ病院は事故を隠したのか」というテーマで、都立広尾病院事件の被害者の夫である永井裕之さんに講演していただき、その後永井さん、東京の医療過誤弁護団の松井弁護士、研究会の小野寺、増田両弁護士によるディスカッションが行われました。
 永井さんの講演では、都立広尾病院で奥様が入院中誤って消毒薬を点滴されて死亡された事件について、病院と東京都の医療局がどのように医療過誤を隠蔽しようとしたのかが詳細に語られました。結局点滴に関与した看護師2名は刑事事件で有罪となり、病院も懲戒免職となったようです。病院が最初から過誤を認めてきちんと説明と謝罪をしていれば、刑事事件はおろか民事訴訟にもならなかったはずです。病院は隠した理由について若い芽を摘みたくなかったと言ったようですが、そのことが逆にこのような不幸な結果をもたらしたのです。若い芽を摘みたくないなどというのは言い訳で病院と東京都の官僚には自己保身の発想しかなかったのではないかと思います。
 シンポジウムでは現在法案が公表されている医療安全調査委員会について議論がなされました。医療安全調査委員会については、まだまだ庇い合いの体質が残る医療界にあって、医療従事者中心の調査会では公正な判断は期待できないのではないかとの疑問があります。この点については、医療事故の原因究明の第三者機関がない現状を変えるにはとにかく新たな機関の創設が不可欠であり、不十分な点は今後改善していくほかない。最初から完全な制度などないのであるから、とにかく制度を作り、医療従事者以外の法律家や患者が参加することで透明性を確保していくべきだとの意見が出されていました。
 傾聴すべきご意見ですが俄に賛成できません。司法改革の名の下で裁判員制度、ロースクール、法テラス、刑事訴訟への被害者参加制度などが次々作られ、弁護士激増政策が推進されました。そこで言われたのも最初から完全な制度などない、欠点はあってもとにかく前に進むことだ、欠点があれば改善して行けばよいのだということでした。
 たしかに経済政策レベルの問題であれば、とにかくやってみよう、結果がおもわしくなければその時点で見直せばよいということになるのでしょうが、重要な制度の創設や制度の根幹に関わる改正にあたっては慎重な上にも慎重な検討が必要です。特に官僚が作る場合には、彼らは一旦作ったものは余程のことがない限り見直さないという現実を見るべきです。日弁連は弁護士自治を奪うぞと脅されて、慎重な検討を放棄して次から次へと欠陥商品のような制度が作られるのを放置してきました。その二の舞を演じてはならないと思います。
 一旦厚生労働省の下に医療安全調査委員会ができてしまえば、その報告書は絶大な権威を持つことになります。事故直後に解剖を行い、強い調査権限に基づいて資料を収集し、その道の権威とされる臨床医の合議での結論ということになれば、それが仮に偏った判断だとしても民事裁判でその結論を覆すなどということは不可能です。それは裁判の先取りに他なりません。しかし調査委員会の調査方法については具体的な定めはなく、患者が調査手続きに主体的に関わる手続き的保証もありません。従ってこの制度は運用如何では医療過誤の免罪符となりうるものであり、そうならない保証はどこにもありません。医療集中部ができて、裁判所もようやく従来の鑑定偏重を改め、自ら考え判断しようとする機運が盛り上がっているのに、このような委員会ができてしまえば、死亡事故に関する限り調査会の結論に盲従することになりかねません。
 私もこれまで多くの医師と接する中で、個々の医師が大変誠実で優秀な方が多いということは理解しています。しかし他の医師の責任を明らかにするという場面ではどうしても庇い合いが起きてしまうことは避けられないと思います。ですから絶対的な権威を持つことになるであろう国家機関としての医療安全調査委員会を作るよりは、院内の医療事故調査委員会の在り方を抜本的に改善するという方向性の方が良いような気がします。
 もし仮に医療安全調査委員会を作るならば、委員会の調査の過程と議論の内容について逐語的な議事録を作り、委員会に提出される一切の資料も含めて、少なくとも患者には全て公開するというルールを法案に明記すべきです。それがなければ報告書の公正さの担保も透明性もあり得ないというべきでしょう。

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