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2009年6月 6日 (土)

河北新報 内外のニュース/法科大学院59校が定員割れ 今春入学、13校は50%未満

リンク: 河北新報 内外のニュース/法科大学院59校が定員割れ 今春入学、13校は50%未満.

  河北新報によれば「全国の法科大学院74校のうち、80%の59校で今春の入学者が入学定員を下回り、うち13校は、50%未全国の法科大学院74校のうち、80%の59校で今春の入学者が入学定員を下回り、うち13校は50%未満だったことが5日、文部科学省のまとめで分かった。入学総定員5765人に対する入学者は計4844人で充足率は84%だった。志願者数は全体で延べ2万9714人と3万人を割った。受験者数は同2万5857人で合格者は同9186人、競争倍率は2・8倍だった。法科大学院は、修了者の新司法試験合格率が昨年は平均33%と低迷、質向上が課題とされている。法科大学院協会が実施した今春の調査では、少なくとも65校が2011年度までに定員削減をしたり検討するとしており、定員削減の動きに拍車が掛かりそうだ。文科省によると、千葉大(定員50人)は競争倍率が8・5倍と高く71人を合格としたが、入学者は41人と定員割れとなっていた。私立大では、姫路独協大(30人)が入学者5人、京都産業大(60人)が同19人、東北学院大(50人)が同18人などと定員割れ。国立大では、昨年の新試験の合格率が0%だった信州大(40人)が入学者17人で、定員の半数を割った。 入学者割合が100%を超えたのは12校で、熊本大(30人)が入学者35人、名古屋大(80人)が91人、上智大(100人)109人などだった。」とのことです。

  やっぱりこうなったかという感じです。定員割れした59校は受験者から見限られつつあるということで、ここまで来るともはや制度の崩壊ですね。ロースクールに行くのは司法試験合格が目的ですから、合格率の低いロースクールが見限られるのは当然と言えば当然の話です。もともとロースクールは15校位が適正規模だったのでしょう。
 可哀想なのは大学です。元々日本の大学の法学部は法律実務家の養成を目的にしていたわけではなく、卒業生の多くは企業や官公庁に就職していたわけです。ところが突然アメリカをまねしてロースクール制度を作り、その卒業を司法試験の受験資格にしました。司法試験の受験資格すら得られないような大学では法学部の入学者を確保できなくなるとの危機感からロースクールが濫立したのでしょう。生き残りを図るためであって大学を責めることはできません。ところでロースクールの専任講師の年俸は1200万円位だそうで、それ以外の事務職員も含めるとロースクールの人件費は相当な額に上ります。しかも施設を新築したところも少なくないので、各大学はロースクール制度のために膨大な支出をしています。ロースクールの定員と授業料から考えて単体で黒字のところはないはずです。学部生の授業料と私学助成金などの税金で穴埋めしているわけです。ロースクール制度ができなければ本来不要だった大学の支出や国民の税負担は膨大な額にのぼると思われます。
  ロースクールは、建前では受験対策に偏向するなどの旧司法試験の弊害の是正のために導入されたとされています。しかし、本当のところは、司法試験合格者を増やすことになったが従来の司法研修所では収容しきれないので導入したのです。そもそも司法試験の合格者を従来の500人から3000人に増やすというのが無謀だったわけですが、そのことをしばらくおいても司法研修所を2カ所くらい増設した方が税負担を含む国民負担は軽かったでしょう。私には現在のロースクールは大学の授業料と税金の無駄使いにしか思えません。
  文科省は役所の権限と予算が増えると思って賛成したのでしょうが、このような惨憺たる状況を見て、急遽定員削減を言い出しました。何もしないよりは良いと思いますが、思い切って廃止を検討すべきでしょう。そもそも世界中でロースクール制度があるのはアメリカ、カナダ、韓国(ごく最近できた)だけのはずです。ところがアメリカと日本では大学制度も法曹資格の意味も異なります。アメリカの大学には法学部は存在しません。ロースクールも元々は司法試験の受験資格とは無関係な専門教育機関だったのです。法曹資格についても、アメリカでは、法曹資格を与えた上であとは市場に委ねようという発想ですから、司法試験の合格レベルは日本の法学部卒業と大差ない(少し言い過ぎか?)のだと思います。もちろんハイクラスのロースクール卒業生は優秀なのでしょうが。だからアメリカでは司法試験に受かっても民間企業や官公庁で働いている人が多いのです。そのような違いも考えないで形だけロースクール制度を導入しても成功するはずがありません。
  大学も可哀想ですがロースクール生はもっと悲惨です。新司法試験の合格率は33%位ですが、不合格者が滞留していくので今後はもっともっと下がります。もちろん旧試験の合格率は2%位でしたから合格率だけ見るとましなのですが、経済的負担や合格できなかった場合のリスクが全く異なります。旧試験では受験資格に制限はなかったのでロースクールに行く必要はなく、自宅で勉強すればよかったのです。予備校もありましたが答案練習会(詳しい解説付きの模擬試験のようなもの)だけ受けていればそんなに費用はかかりませんでした。また働きながら受けることもできたし(私も都庁や専門学校で働いていました)、就職の可能性を残すために大学を留年して受ける人も多かった。ところがロースクールの場合は授業料が年間300万円位かかるし、仕事は辞めなくてはならないし、その間の生活費を借りるか誰かから援助してもらう必要があります。しかもロースクールに2年行って、その後5年間に3回受験してダメで、その時に就職しようとしても多分難しいでしょう。ロースクール卒業生の7~8割は合格できないのですから、正に貧困養成所のようなものです。
 文科省はロースクールだけではなく、国立大学法人に対して、博士課程の定員見直しを通知しました。博士課程を修了しても就職できない者が激増しているからです。大学院重点政策などと言っていたのはどこの誰だったでしょうか。他人の人生を弄ぶのはいい加減にして欲しい。
  ロースクール制度は、新自由主義を背景とした司法改革の渦の中で、十分な検討もされないままに導入されたもので、法曹養成制度としては欠陥商品そのものです。現在進められようとしている定員削減では大学の赤字を拡大させるだけで意味がありません。もし存続させるとすれば、大幅な統廃合しかないでしょう。しかしロースクール制度は、(学費の無料化+生活費の支給をしない限り)法曹を志す者に多額の経済的負担を負わせ、その負担能力のない者を除外するという根本的欠陥を有するものです。それを考えると廃止以外の選択肢はないと思います。ロースクールを廃止したところで、司法修習を1年6ヶ月に戻して、司法研修所を大阪と福岡あたりに増設すれば済むことです。大学にとってもこのまま赤字を垂れ流すよりは賢い選択です。
  私は正論を言っているつもりですが、弁護士会でこのような廃止論を言う会員はほとんどいません。なにせ日弁連が旗を振って優れた法曹養成制度だとして導入されたものですし、既に多くの会員がロースクールの教授や講師になっています。ロースクールの中には、弁護士会が全面協力して設立されたものもあります(その割には合格率が低いが)。弁護士会には法科大学院検討特別委員会なるものもあります。廃止などと言えば気違い扱いされて、村八分にされかねません。しかし法曹養成制度は司法の根幹に関わるものですから「過ちて改むるに憚る事なかれ」の姿勢で再検討すべきだと思います。

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