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2009年8月の3件の記事

2009年8月19日 (水)

外科医ピンチ 過酷勤務、伸びぬ報酬…若手離れ深刻(産経新聞) - Yahoo!ニュース

リンク: 外科医ピンチ 過酷勤務、伸びぬ報酬…若手離れ深刻(産経新聞) - Yahoo!ニュース.

 「厚生労働省の調査によると、平成18年までの10年で医師総数は約15%増え26万3540人。一方、外科系(外科、心血管外科、呼吸器外科、小児外科)は約8%減の2万6075人。これまで医師不足が指摘されてきた産婦人科(産科、婦人科を含む)の約6%減よりも減少幅が大きい。一方、小児科は約10%増えているものの医師不足は深刻だ。産科と小児科の「医療崩壊」の陰で外科医の減少が進行していたのだ。日本外科学会が外科医1276人を対象に実施した18年の調査(複数回答)によると、外科医が考える志望者の減少理由として、「労働時間が長い」(71・9%)がトップ。これに「時間外勤務が多い」(71・8%)、「医療事故のリスクが高い」(68・2%)、「訴訟リスクが高い」(67・3%)、「賃金が少ない」(67・1%)が続く。病院に勤務する外科医の週平均労働時間は労働基準法が定める時間を大幅に上回る69時間。一方、診療所の医師は48時間。しかし、病院に勤務する医師の収入は診療所の医師に比べ約2分の1にとどまっている。また、治療結果に不満を持った患者が訴訟を起こすケースが産科に次いで2番目に多く、リスクを伴う治療を避ける萎縮(いしゅく)医療を招いているという。」と報じられている。

 医師不足、医療崩壊が叫ばれているが、医師の総数自体は10年間で15%も増えている。いかに高齢化が進んで罹病率が高くなったとしても人口動態から考えて医療崩壊を来すほどに医師の総数自体が不足しているのだろうか。医師の総数ではなく地域的偏在と診療科による偏りが大きな原因のような気がする。そのような偏りを生じた原因が、勤務医と開業医の労働時間と収入の格差にあるように思われる。1.5倍長時間働いて収入が半分では勤務医は馬鹿らしくてやってられないだろうし、長時間労働に見合う収益が上げられないのであれば病院としても不採算診療科は閉鎖したくなるだろう。
 これについては産経新聞の日曜経済講座に次のような記事が掲載されているが正に正論だと思う。「すでにこの2年間で医学部定員は1割以上も増員され、医師会が求めていた医師数は確保される。だが、これで医師不足は解消されまい。問題の本質は別にあるからだ。それは多くの識者が言うように病院勤務医と開業医、地方と都市部、産婦人科と内科など診療科の間にある偏在である。その構造を支えているのが診療報酬のいびつな配分であり、ここを大胆に見直さない限り、医師数を増やしても偏在は拡大するだけだろう。例えば勤務医と開業医の年収格差は勤務医の1415万円に対して個人開業医は2804万円とその差は2倍だ。医師会調査でも勤務医が開業医になりたい主な理由は「激務が給料に反映されない」だった。他の先進国はどうか。米国でも医師の高報酬が問題になっている。今春、米社会保障庁を訪ねたら、「医師会がロビー活動団体の登録をするなど、政治力が強くて報酬を下げられない」と頭を抱えていた。ただ、その報酬体系は日本と真逆だった。日本の開業医に似た家庭医の年間報酬を1とした場合、勤務状況が厳しく訴訟も多い産科は1・44、高度医療の放射線介入診断が2・44など、専門性が高く勤務が厳しい診療科ほど報酬が高い。報酬体系としてはこれが常識だろう。日本も優遇されすぎた開業医の診療報酬を大胆に削り、その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば、診療報酬全体を上げなくても医師不足はかなり是正される。それができないのは、配分を決める中央社会保険医療協議会中医協)に問題があるからだ。中医協はかつて改革が行われ、公益委員や健保団体の代表もいるにはいる。だが、開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的だ。大胆な配分見直しを断行するには、納税者が納得できるような別の機関か中医協を主導する場が必要なのではないか。」
 地方と都市部の偏在問題についてはやはり公立病院に頑張ってもらうしかないが、開業医の診療報酬を下げて勤務医の診療報酬を上げれば、現在ほとんど赤字の自治体病院の経営改善に役立つので、間接的に地域的偏在問題の対策にはなるだろう。
  「リスクを伴う治療を避ける萎縮(いしゅく)医療を招いているという。」のは理解できない。医療過誤事件の多数はいわゆる不作為型医療事故、つまり本来行うべき検査、治療を懈怠したということを理由とするものである。萎縮医療という言葉を、本来行わなければならない治療をしないという意味で使っているなら逆に訴訟リスクのある治療を行っているということになってしまう。もし「リスクを伴う治療」を一般的には行われないような治療でリスクも大きいが一般的な治療よりは治療効果が期待できる治療という意味で用いているなら、それは正にインフォームドコンセントの問題であってリスクとメリットを十分説明した上で患者の自己決定に委ねるべきだし、その上で敢えて患者が選んだのであれば医療過誤と呼ぶべきではない。
 

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2009年8月18日 (火)

司法解剖の鑑定書の送付嘱託

 以前司法解剖で作成された鑑定書について裁判所から送付嘱託したところ、古川警察署が捜査中の捜査書類であることを理由に送付を拒否した記事を書きました。その後裁判所に文書提出命令を申し立てたところ、古川警察署から鑑定書の謄本が送られてきました。文書提出命令の申立があると、裁判所は命令を出す前に、文書所持者に対する審尋を行わなければなりません。おそらく裁判所がその手続きをとったので、これ以上面倒なことにならないように警察は送付に応じたのだと思います。鑑定書の内容は予想通り原告の主張を裏付けるものでした。しかし提訴して文書提出命令の申立までしなければ重要な証拠を入手できないのでは被害者救済に欠けると言わざるを得ません。遺族への開示や、弁護士照会に対する回答で提出するような運用改善がはかられるべきだと思います。ともあれ文書送付嘱託で提出されるという前例を作れたことは大きな意味があったと思います。
 ちなみに過去の判例で大学に残っている司法解剖の鑑定書の控えは文書提出命令の対象となるというものがあり、今回は警察だけではなく、解剖を行った大学にも手元の控えについて文書提出命令の申立を行いました。大学から警察に苦情がいったので仕方なく警察が出してきたのかもしれません。

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2009年8月11日 (火)

河北新報 東北のニュース/死因の疑問相談を 「医療版事故調」モデル事業実施

リンク: 河北新報 東北のニュース/死因の疑問相談を 「医療版事故調」モデル事業実施.

 河北新報に「治療や手術の際に患者が予期しない形で死亡したケースについて、中立的な専門機関が死因やミスの有無を精査する国のモデル事業が、宮城県内の各医療機関を対象に実施されている。事務局の東北大病院は「診療内容に疑問を感じたらぜひ主治医に相談を」と呼び掛けている。モデル事業の実施主体は日本内科学会で、2005年9月から各地域で順次スタートしている。県内の体制は、東北大病院心臓血管外科医局が事務局となり、08年10月に調査依頼の受け付けを開始した。事務局は各医療機関からの調査依頼を受け、カルテなどを精査して調査開始が適当かどうか判断。モデル事業にふさわしい症例だった場合、遺体を東北大病院か国立病院機構仙台医療センターに搬送し解剖する。解剖を担当するのは病理医と法医、疾患に関連する臨床医の3者で、患者の主治医は立ち会うことができない。法律家を交えた評価委員会が解剖結果を基に報告書をまとめる。報告書には再発防止策なども盛り込まれ、6カ月以内をめどに遺族や医療機関に示す。関係者の了解が得られた事例については報告書の一部を公開する。事務局によると、県内では09年1月に調査依頼第1例があった。宮城をはじめ札幌や東京、大阪など全国のモデル地域計10カ所では90例を受け付けている。全国では、遺族が医療に不満を抱いていたが、評価結果に納得したケースが3割に上った。不満やトラブルがあっても裁判には至らず、示談や和解が成立する場合が多いという。厚生労働省はモデル事業を通じて医療事故の原因究明に当たる第三者機関の創設を検討中。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の医療版として期待される。現段階でモデル事業は医療機関経由の調査依頼が原則となっており、東北大病院心臓血管外科の田林晄一教授は「モデル事業を検討するよう主治医に相談してほしい」と話している。連絡先は宮城地域事務局022(274)1871。」という記事が載っていました。

 私はこの評価委員会の法律家委員(4名)の一人です。このモデル事業が宮城県で行われるようになったのは昨年の10月ですから一年近く経過していますが、調査依頼は1件だけのようです。評価結果報告書の概要版はネットで誰でも見られますが、委員には冊子の形で配られたので読んでみました。もちろんカルテの中味や詳しい経過までは書かれていないので、評価が適切かどうか判断することは無理ですが、医療機関を殊更擁護するような姿勢は感じませんでした。むしろ中には院内調査委員会の調査結果を批判する内容のものもあり、(あくまで印象ですが)中立公平性に留意されているように思えました。死亡原因についてはいくつかの可能性を指摘しつつも不明とするもの、死亡原因と医療行為との因果関係についても不明とするものも少なくありませんが、それはやむを得ないことかもしれません。
 モデル事業はあくまで医療機関から依頼があることが前提で、患者側が直接依頼することはできません。ただ患者から事務局に依頼がなされた時は、患者側に医療機関へ申し入れするよう勧めると共に、事務局から医療機関に働きかけをする運用が提案されています。
 ただ1年近く経って僅か1件というのは、モデル事業が知られていないというだけではなく、医療機関側の消極姿勢が原因と考えるべきでしょう。しかし評価結果報告書を見る限りそれ程厳しい注文を医療機関に付けているわけではなく、逆に患者側の納得を得るために使える内容となっているものも少なくないので、もっと積極的に活用されてよいのではないかと思われます。
 もちろん問題点もあります。モデル事業協力者一覧を見ると圧倒的多数が東北大学病院とその系列病院の医師で占められており、宮城県に関していえば中立公平性に疑問符を付けざるを得ません。臨床立会医は無理としても、臨床評価医には他県の大学病院や基幹病院の医師をもう少し入れないと、患者側からの信頼を得られないような気がします。
 最近私が担当している医療過誤事件で、医療機関側から、医療機関が第三者機関に依頼した報告書が送られてきました。医療機関が設置した院内調査委員会での検討結果では医療行為は適切と考えるが、死因などに不明な点があるので専門的な意見を聞きたいということである学会に推薦依頼をし、学会から推薦された他県の大学病院の医師2名が当該医療機関を訪問して調査した結果の報告書でした。死因と手技のミスが争点の事件なのですが、報告書の内容はほぼ患者側の主張を裏付けるものでした。特に手技の点については経験のある専門医でしか分からない視点から検討されており目から鱗という感じでした。
 患者側で医療過誤事件を担当する弁護士は、日頃、我田引水の非論理的な私的鑑定書や担当医師の自己防衛的な陳述書をたくさん目にしているので、鑑定や事故調査委員会の報告書であってもどうしても懐疑的になってしまいます。しかし適正な解決をもたらすためには、どうしても中立公正な専門医の意見が欠かせない場合があります(もちろん文献だけで十分という案件も少なくありませんが)。現在立法化が検討されている医療安全調査委員会制度については懐疑的な見方をしてきました。ただ、同じようなシステムのモデル事業の評価結果報告書を見てみると、頭から否定すべきではなく(制度が内包する危険性に留意しつつ)、中立公平性の確保の観点から検討していくべきなのかもしれないという気がしてきました。
 宮城県においてもモデル事業についてより広く患者に告知すると共に、医療機関は、患者の要望のあるなしに関わらず積極的にモデル事業を活用していただきたいと思います。
 
 

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