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2009年9月29日 (火)

日弁連中小企業法律支援センター構想

  日弁連が中小企業法律支援センター(ひまわり中小企業センター)を作るそうだ。一般会員には何のことかよく分からないが、10月には日弁連の委員会として作ってしまうんだと。中小企業問題に関する全国担当者会議で、宮崎会長は「中小企業は貸しはがしや下請けいじめで苦しんでいる。中小企業分野は従来から8万人の税理士と2万人の司法書士が取り組んでおり、弁護士が組み込んで行けていない。この分野は本来弁護士が担うべき分野があるが、法廷業務以外の分野なので弁護士自身にスキルがないということもある。今こそ革命的な価値観の転換を行い、研修を充実させ、中小企業の専門弁護士を養成し、専門の相談体制を築かなければならない。これらのことをやり遂げるためには大きな組織が必要であり、そのため日弁連は中小企業支援センター構想を打ち立てたものである。」と挨拶した。
  構想の中味は次のようなものだ。「コールセンター」を作って全国共通のフリーダイヤルで受け付けて、そこから各単位弁護士会の中小企業問題相談窓口に振り分ける。各単位会では中小企業法務に精通した担当弁護士のリストを作成する。地域により専門性の度合いが異なるので資格要件は各会の裁量に委ねるが登録後1年経過は必要。コールセンターで午前中に受け付けたものはその日の午後までに、午後に受け付けたものは翌日午前中に担当弁護士から申し込みした企業にアポ取りやヒアリングをして、その上で1週間以内に相談を実施する。相談料は全国一律、事務局原案は30分5000円だが大規模会は顧客誘因のため無料化が必要、折衷案は最初の30分は無料とするもの。

  法的需要の掘り起こし策なのだろうが、弁護士会がこんなことまでする必要があるのだろうか。そもそも宮崎会長の「中小企業分野は従来から8万人の税理士と2万人の司法書士が取り組んでおり、弁護士が組み込んで行けていない」という認識は正しいのか。私は今はやっていないが、過去においては中小企業からの相談や依頼を受けていた。おそらく多くの弁護士にとって中小企業はメインの顧客であり、最重要の取扱業務と位置付けられているのではなかろうか。中小企業分野がいつから特殊専門分野になったのだろう。日弁連は事業承継、事業再生などを念頭においているようだ。たしかにこれらの分野は新たな法的枠組みが作られたので弁護士がそれに対応していく必要はあるが、問題としては昔からあったことで解決手法が変わっただけの話ではないのか。中小企業が抱える問題のうちのある特定の分野が専門性を有することはそのとおりだ。しかし中小企業問題一般が専門弁護士を養成しなければならないような特殊分野だと思っている弁護士はほとんどいないのではないか。要は無謀な弁護士増員をしたものの増えるはずの法的ニーズは増えないので、形振り構わず日弁連丸抱えで業務対策をやろうということだろう。
  しかし私は賛成できない。「支援センター」という名前を付け「中小企業は貸しはがしや下請けいじめで苦しんでいる」と言うが、本質は弁護士の業務対策だ。支援が必要だというなら中小企業の前に、一般市民の抱える問題について支援すべきだろう。各単位会には法律相談センターが設けられ市民や企業の相談窓口になっている。既に相談窓口はあるのであり、それに加えて中小企業だけを優遇する理由はあるのだろうか。たしかに高齢者・障害者問題、多重債務問題、犯罪被害者支援など特に援助が必要と考えられる分野については、法律相談センターの相談の一環として特別な窓口が設けられている。しかし中小企業問題がこれらと同列に扱われ一般市民より優遇されなければならない理由はない。まして全国共通のコールセンターなど今までもうけられたことはないし、弁護士から相談希望者に電話してアポ取りやヒアリングをすることなどどの窓口でもやってはいない。大規模会は無料ときては正気の沙汰とは思えない。何で一般市民が30分5000円で、中小企業がタダなんだ。
  中小企業法律支援センターを作ること自体が悪いとは思わないが、順序が違うだろう。中小企業法務は一般業務として多くの弁護士が既に手がけているし、事業承継や企業再生についても重点分野として広告宣伝している事務所は少なくない。それに対して例えば難民認定・在留許可問題、DV・児童虐待問題、高齢者の虐待・介護問題、生活保護費のピンハネ問題、高齢者の消費者被害など深刻でありながら採算に合わないため弁護士の援助を十分受けられていない分野はたくさんある。支援センターを作るならまずはそのような分野からだろう。その次は一般市民の一般事件だろう。中小企業はその次のはずだ。日弁連は現在の法律相談センターの体制では不十分だから中小企業問題に特化した相談・受任体制を作るべきだというのだろうが、逆から言えば中小企業問題以外の市民の抱える問題については現在の不十分な体制で構わないと考えていることになる。中小企業支援センターの設置、運営、広告宣伝には多額の費用がかかるであろうが、それは会員の会費で賄われる。会費を使うならもっと困っている人達の相談窓口の充実に使うべきだろう。
  ここ2年ほど各地で弁護会主催の中小企業向け無料相談会が行われている。私は常議員だったときにどうして無料にする必要性があるのか質問したことがある。答えは中小企業支援だけではなく、弁護士自身の業務対策の側面があるから相談料は無料にして、担当弁護士には会が費用を負担することでも構わないのだというものであった。弁護士業務の宣伝なんだから会の金を使うのは当然ということだろう。中小企業支援センターについても同じ理由で正当化しようとするかもしれない。しかしそれも間違いだ。中小企業問題以外にも弁護士の取扱業務はたくさんある。中小企業問題は取扱業務の一部に過ぎないし、取り扱わない弁護士も少なくはない。にもかかわらずその問題だけに会費と会員の労力を費やすということは、明らかに会員間の平等を害することである。会費を使って業務対策をするなら大方の会員が利益を享受しうるものでなければならないはずだ。例えば日弁連は、多額の費用をかけて「ひまわりサーチ」という弁護士検索システムを作ったが、これなどは使うか使わないかは個人の自由だが、会員全員がメリットを享受しうるシステムなので正当化されよう(もっともこの「ひまわりサーチ」は弁護士や法律事務所をキーワードに検索しても検索エンジンには全くひっかからない完全な欠陥商品だが)。
 さらに言えば相も変わらぬ単位会無視の押し付け。一般会員は蚊帳の外で、単位会への意見照会すらしない。それでコールセンター作りましたから、単位会では受け皿となる中小企業問題相談窓口を作るようにというご指示である。ここまで来ると日弁連と単位会の関係は、完全に日弁連株式会社と単位会営業所だ。弁護士は日弁連の社員か。
  それにしても宮崎会長の「中小企業分野は従来から8万人の税理士と2万人の司法書士が取り組んでおり、弁護士が組み込んで行けていない。この分野は本来弁護士が担うべき分野がある」という認識はどうなんだろう。弁護士を増やしたはいいが仕事が増えない、だから他の士業の従来業務を分捕らなければならない、それこそ「革命的な価値観の転換」だというのだから恐れ入る。自由競争至上主義者にとっては当然の感覚なのかもしれないが、私などは恥ずかしくてとてもこんな品のない挨拶はできない。
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