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2009年11月13日 (金)

日弁連法曹人口問題検討会議討議メモを読んで

 今日、仙台弁護士会の弁護士人口問題特別委員会が開かれた。そこで日弁連の法曹人口問題検討会議の討議メモが配布された。その討議メモは「適正法曹人口を考える際の要素」をピックアップして各要素の相関性を図示する内容のものだが、何故か末尾に(余事記載)として日弁連の方向性が書かれていた。
 そこには日弁連の方向性として、(X)-5万人到達後も増員を継続する(合格者数は現状2000~2100人で継続)、(Y)-5万人到達後現状維持を図る(5万人到達の数年前から合格者を暫減していく)、(Z)-5万人到達後弁護士人口を減らす(近い将来から現状より相当程度合格者を絞り込む)の3つを掲げた上で、Xの方向性を志向すべきと書かれている。
 その理由として、「現状において(Z)の方向性を打ち出すことは、責任を放棄することになる。何故なら、法的ニーズを発掘し潜在的ニーズを顕在化することこそ職能団体としての使命であり、司法基盤整備を確立していくことが司法の一翼を担う弁護士会の役割であり、増員の阻害要因を取り除く努力こそ本来の弁護士会の機能(行政機能・公共的機能)というべきである」とされている。
 この討議メモは、「適正な法曹人は何を基準としてこれを定めるべきか。その基準として考慮すべき対象と検討の方法。(今後何をどのように追跡調査していくべきか)」という日弁連執行部からの諮問に対する答申を討議するためのものである。つまり日弁連として適正な法曹人口を提言するに当たって検討すべきと考えられる対象と検討基準を答申するのがこの会議の目的であって、適正な法曹人口の方向性を答申するのが目的ではない。そのことを意識して検討メモでは(余事記載)と付記して上記のような方向性を記載しているのだろう。
 しかし本末転倒とは正にこのことである。日弁連の方向性を決めるために今後調査検討が必要な要素を抽出しようとしているのに、その要素を調査検討する前に既に結論が出されているのだ。しかもその理由は耳にタコができるほど聞かされ続けた弁護士会の使命や責任といった空疎な精神訓話だ。法曹人口問題検討会議の人選は日弁連執行部が行ったのだから、検討会議でこのようなメモが配布されるということは、日弁連執行部は、5万人到達後もそのままのペースで増員を続けることを既に事実上決めていると見るべきだろう。増員の方向性が決まっているなら、「適正法曹人口を考える際の要素」を抽出する意味はない。調査したところで増員の方向性を正当化するための作文に使われるだけであろう。法曹人口問題検討会議は、各単位会や弁連の見直し決議を受けて日弁連がガス抜きのために嫌々設置したのだろうとは思っていたが、ここまで露骨に「検討するふりをしているだけで方向性は既に決まっているのです」と言われると、呆れるしかない。
 今日の委員会で仙台弁護士会弁護士人口問題特別委員会について廃止の上申をすることが決まった。その理由は、①委員会設置後、企業、自治体、会員を対象とした弁護士ニーズ等の調査を行って、弁護士人口増員の見直しと取り敢えずの現状凍結の方向性を打ち出し、それを総会決議、弁連決議の形で実現したこと、②日弁連も現状凍結の提言を行い、実際今年の新司法試験合格者数は予定を大幅に下回り増員は凍結状態になったと考えられることから、委員会としての所期の目的はほぼ達成できたと判断されたからである。私も、これまでそれなりに意味のある活動はできたし、今後委員会を存続させてもこれ以上の成果は望めないと思ったので廃止に賛成した。日弁連が、「適正法曹人口を考える際の要素」を本気で調査検討し、その上で単位会の意見に真摯に耳を傾けようとする姿勢ならば、その受け皿として委員会を存続させる意味もある。しかし弁護士会の使命や責任といった精神論を持ち出されては議論にならない。
 私はこれまで、日弁連執行部や弁護士増員を支持する会員について、本音では大増員は望ましくないと考えているのだが、歴代執行部への配慮や世論の反発を恐れて増員反対を打ち出せないでいるだけだと思っていた。しかしどうも違うようだ。この討議メモには、「弁護士マーケット」、「更なる成長戦略が描ける」、「弁護士会の行政的機能」といった、私のような頭の古い人間には理解しがたい表現が見られる。その意図するところはよく分からないが、日弁連が政治的・社会的に大きな力を持ち、弁護士が業界として発展することを志向しているような気がしてならない。つまり「日弁連の提言する司法や人権に関する政策提言は正しい、しかし従来それを政治の場で十分実現できていない、それは弁護士会の政治的・社会的力が弱いからだ、正しい政策を実現するためにはより大きな弁護士会、強い日弁連が必要だ、そのために大増員は必要なのだ」という言わば大きな司法、その中での強力な日弁連という志向が「本気の増員論者」の考えのように思えてきた。世論(マスコミの論調)を極度に気にするのも、世論の支持なくして日弁連の政策実現はないという認識に基づいているのかもしれない。
 
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