フォト

« <日弁連>会長選きょう公示 法曹人口問題が争点に 主流派VS著名弁護士(毎日新聞) - goo ニュース | トップページ | 検察権力に幻想を抱くべきではない »

2010年1月17日 (日)

小沢(裏献金疑惑)VS検察庁(裏金疑惑)

リンク: 石川容疑者、5000万円口座へ 水谷建設から「裏献金」の3日後(産経新聞) - Yahoo!ニュース.

 水谷建設から「裏献金」の3日後民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入に絡む事件で、政治資金規正法違反容疑で逮捕された元会計事務担当の民主党衆院議員、石川知裕容疑者(36)が、水谷建設側から現金5千万円を受け取ったとされる日から3日後の銀行の翌営業日に、陸山会の口座に同額を入金していたことが16日、関係者の話で分かった。石川容疑者はこの分を含む4億円を土地代金の原資にしていた。この状況から東京地検特捜部は水谷建設の裏献金が土地代金の一部に充てられたとみている。一方、石川容疑者が特捜部に「わざと記載しなかった」と一転して容疑を認めていることも関係者への取材で分かった。「小沢先生の指示ではない」としながらも、虚偽記載の理由については「今は言えない」とも供述している。

 ここでいう「関係者の話」とは誰の話なのだろう。石川容疑者の供述内容がどうして産経新聞に分かるのだろう。答えは簡単で、東京地検がマスコミにリークしているのだ。リークといえば聞こえがいいが、立派な犯罪である。国家公務員は職務上知り得た秘密を漏洩してはならず(国家公務員法100条1項)、漏洩した場合には1年以下の懲役に処せられる。被疑者の供述内容など取り調べに当たっている検察官以外に分かるはずはないのであって、それが新聞に載るということはその担当検察官が秘密漏洩行為を行っていることに間違いない。検察はこの秘密漏洩罪をよく使って情報封じをやる。古くは沖縄返還時の密約を報じた西山記者をこの手で逮捕起訴している。自分のしていることを棚に上げてよくできるものだ。
 自分のことを棚に上げるといえば、検察の調査活動費を思い出す。検察庁は平成10年まで毎年5億円を調査活動費として予算計上し使っていた。調査活動費の使途は捜査協力者から情報を得る際の謝礼金とされていたが、実際にはお金で情報を提供してくれるような捜査協力者は存在しない。もちろん捜査協力者はいるが情報提供に当たって謝礼を払うことはない。調査活動費は全て裏金とされ検察幹部の遊興費や餞別に使われていたとされている。およそ20年間は続いたであろうから合計100億円の裏金を検察庁は使ったことになる。小沢氏の裏献金などは、仮に事実だとしても検察庁のやったことに比べればかわいいものだ。
 調査活動費はマスコミや仙台市民オンブズマンの追求によって今ではほとんど予算計上されておらず、検察庁は裏金作りはやめたようだが、やめればいいというものではない。小沢氏を追求するなら自らの100億円の裏金を返してからにして欲しい。警察はマスコミの(手ぬるい)追求やオンブズマンの追求にもかかわらず捜査活動費や旅費を使った裏金作りをまだやめていない。それに比べれば検察庁は自浄能力がまだあると言えるが、裏金にまみれた組織が裏献金の捜査を行うというのはブラックジョークのようなものだ。
 検察の裏金問題では、元大阪高検公安部長だった三井環氏が裏金問題を告発するテレビ番組出演前日に逮捕された。この時も検察は三井氏についてあることないことマスコミにリークして暴力団と結託した極悪人に仕立て上げた。検察権力とは本当に恐ろしいものだ。鈴木宗男議員の件にしろライブドア事件にしろ最近の検察庁の国策捜査は目に余る。しかし今の日本には検察権力に正面から対抗できるものが存在しない。刑事ネタで食べているマスコミは検察や警察に睨まれたらひとたまりもないので、不祥事が起きようが冤罪が起きようが通り一遍の批判ですましてしまう。逮捕が怖いから政治家も検察には手が出せない。公安委員会は全くの飾り物だ。裁判所も逮捕状請求を却下することはほとんどなくチェック機関としての機能を果たしていない。汚職がはびこっていないだけ日本の捜査機関はまともだとは思うが、今のような実効性のあるチェック機関が存在しない状態はよくない。
 この問題では多分世論は検察の味方をするのだろう。しかし検察権力行使の在り方という点から私は小沢氏を支持したい。私は小沢氏によい感情を持っていないし、枝野氏が仕切る事業仕分けをぶち壊すなど、その専横ぶりは目に余ると感じている。しかし検察に正面から戦いを挑めるのは小沢氏くらいしか今の日本には見当たらない。検察権力の暴走を止めるという意味で今回は頑張ってもらいたい。

 検察の裏金問題と言っても多分もう忘れ去られているだろうから、以下に昔書いたものを掲載する。

検察調査活動費の情報公開訴訟(仙台地方裁判所平成15年12月1日判決)

 仙台市民オンブズマンは、情報公開法施行に当たり、仙台高検、地検の平成10年度調査活動費について開示請求した。支払明細と領収書は不開示だったが、開示された月別の支払額を見ると毎月きれいに使い切られていた。使い切りの陰に裏金ありというのは幾多の不正支出問題追求から得た経験則であり、この時点で裏金作りを確信した。次に調活費の支出の推移を見るため、11年度、12年度の調活費についても開示請求したところ、高検は10年度960万円が12年度297万に、地検は10年度840万円が12年度346万円に激減していた。しかも11年度から突如として翌月への繰り越しや端数が出始めた。内部告発に基づく検察調活費裏金疑惑が週刊誌上に掲載された(平成11年5月)ことへの対応と推測された。さらなる裏付けのため全検察庁の10年度から13年度の調活費について開示請求したところ、10年度の使い切りと11年度以降の総額の激減、繰り越し・端数出現が例外なく見られた。以上の調査から10年度まで裏金として使い放題だった調活費について、裏金の内部告発を受けて11年3月以降疑惑隠蔽工作を行い始めたことは明白と思われた。そこで平成13年6月1日仙台高検検事長を被告として不開示処分取消訴訟を提起した。
 本来情報公開訴訟における不開示事由の主張立証責任は処分庁にあるが、被告は情報公開法5条4号が「支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と規定していることを理由に、不開示事由の不存在についての主張立証責任が原告にあると主張し、具体的な主張立証をしようとしなかった。調活費の使途についても「調活費は適正に使用された。そうでないというなら原告が立証せよ」の一点張りで、調活費の急減の理由についてはコンピューター整備費用に流用したからと主張した。
 情報公開訴訟は普通処分庁が不開示事由を主張立証し、原告がそんなことは理由にならないと反論する形で進むのであるが、処分庁が何も言わない何も出さないとなると原告としても主張立証に難渋することとなる。本件では幸運にも、内部告発直前で口封じのために逮捕された元大阪高検公安部長の三井環氏と法務大臣の裏金否定のコメントに義憤に駆られて内部告発した元検察事務官(副検事)の高橋徳弘氏という2人の証人を立てることができた。三井証人は大阪拘置所内での所在尋問であった。しかも高橋氏がたまたま所持していた高検事務局長の公印の押印された調活費領収書偽造依頼文書を証拠として提出することができた。
 さらに訴訟進行中に平成14年の調活費について開示請求したら驚くなかれ、高検はなんと140万に、地検も97万円に激減していた。もともと検察は公安情報についての独自の情報収集などやってはいないのだから、裏金として使うのをやめたら使い途がなくなるのは当然であろう。高検は不開示処分当時の高検総務部長を証人として出してきたが、検事歴20数年にもかかわらず「仙台高検に来るまで一度も調査活動費を使ったことはない、私の知る範囲では私の周りでも使った人はいないと思う」と言い出す始末であった。
 結局判決では原告の請求は棄却されたものの、判決理由中で「少なくとも昭和58年から平成5年にかけて、仙台高検の調査活動費に関して、本来協力者が作成すべき領収書が偽造されていたことが認められ、あえて偽造までしていることからして、調査活動費が何らかの不正な使途に流用されていたものと推認されるところである。」「しかしながら平成10年度の本件調査活動費に関して不正流用があったことについて・・・これを直接に認めるに足りる証拠はない・・・・これらによれば仙台高検の調査活動費について、平成5年頃までに少なくともその一部が不正に流用されていた事実は認められ、平成10年度の本件調査活動費の不正流用についても疑いとしては濃厚であるけれども、これを認めるまでの証拠は存しないというべきである。」と判示して平成5年頃までの検察庁の調活費不正流用の事実を認めた。そもそも仙台市民オンブズマンの目的は領収書などを開示させてそこから検察調活費の不正流用を暴く点にあった。訴訟には負けたものの図らずも審理の過程で調活費の不正流用を明らかにすることができ、実質的には目的を果たし得たものと考えている。
 本判決は、情報公開訴訟として見た場合には、①情報公開法5条4号の不開示事由の(不存在の)立証責任を原告に負わせ、不開示処分が裁量権の逸脱・濫用に当たらない限り取り消せないと判示した点、②「調査活動費を支払った年月日、金額、目的などの一連の記述は独立した一体的な情報をなすものであってそれぞれについて個別に4号該当性を検討すべきではない」として、いわゆる情報の一体性論を認めた点において、情報公開法の解釈としては評価できない。しかし後難を恐れてか国会も会計検査院もマスコミも及び腰、あまつさえ疑惑隠しのためになりふり構わず検察幹部まで逮捕・起訴してしまう検察に対し、正面から不正流用の事実を認めた勇気は称賛に値する。

にほんブログ村 地域生活(街) 東北ブログ 仙台情報へにほんブログ村

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へにほんブログ村

平成13年行ウ第6号 文書不開示処分取消請求事件

      準備書面2

                         平成13年10月30日
仙台地方裁判所第1民事部 御中
 
               原告訴訟代理人 弁護士 齋 藤 拓 生

                       弁護士 坂 野 智 憲

1、裁量権の濫用
   被告は、調査活動費は、検察庁における検察権を適切に行使するために、事件の調査、情報の収集等の調査活動に要する経費として認められた予算科目であり、その使用にあたっては、機密性、極秘性が肝要であるから、本件不開示処分に係る裁量権の行使には、違法性がないことを主張している。この主張は、調査活動費がその使用目的に沿って、適切に使用されていることを前提としてなされている。しかし、以下に述べるように、本件訴訟で対象とされている平成10年度の調査活動費は、裏金として、検察庁幹部の私的遊興等に費消されている疑いが、極めて強いものである。本件不開示処分は、検察庁における裏金づくりの実態が国民の前に明らかにされることを隠ぺいしようとしてなされたものであり、それは、行政庁に認められた裁量権のいちじるしい濫用であることは、明らかである。

2、検察庁職員による裏金づくりについての内部告発
  原告が、本件訴訟の対象となっている、平成10年度の調査活動費を開示請求したのは、平成11年4月に検察庁職員よってなされた内部告発文書を検討し、その裏づけとなるデータを入手するためであった。原告が入手している内部告発文書は、平成11年4月17日付、平成11年4月25日付の2種類であるが、ここでは、より詳しい4月25日付の文書によって、その概要を見ておきたい。「これは、法務・検察組織の不正義(不正経理)を暴く告発である」にはじまる本文書の要点は以下の通りである。
 (1)法務・検察組織には構造的腐敗があり、それは「組織的に公費から捻出した裏金で、特定のポストに就いた者の私的な遊興・享楽的費用を賄っていることを指」している。そして、その主たる使い主は、検察組織では検事総長、次長検事、検事長、検事正であり、法務本省では、法務事務次官、官房課長、刑事局長以上である。
 (2)裏金捻出の公費の中で、「最も罪深い予算科目」は、内部では「調活」(ちょうかつ)と呼ばれている「調査活動費」である。
 (3)調査活動費は、調査委託に必要な経費、情報交換に必要な経費、情報収集に必要な経費として認められ予算化されたもので、法務大臣から全国の検事正以上の各庁の長に示達され、配賦されている。配賦後、「そのほとんどの100パーセントが裏金に回され使われている。」
 (4)裏金づくりは、一般的には情報収集経費として、情報提供者に情報提供に対する対価として支払ったように装い、領収書等をはじめ経理書類等を捏造・偽造することによって行われている。即ち、情報提供者として架空名義人をでっちあげ、この者から情報提供があったものとして、その対価を架空名義人に支払ったことにして架空の領収書を作成する。各庁の会計課長(前渡資金官史)は、事務局長の指示を受けて架空領収書に基づき、あらかじめ現金化してある前渡資金からその都度支払ったことにして会計処理を行う。現金は事務局長に渡され、事務局長は、その裏金から幹部の私的な飲食・遊興費への支払いを行う。
 (5)裏金づくりの事務を担当しているのは、各検察庁の事務局長及び事務局総務課長等一部の幹部検察事務官である。彼らが、架空領収書の受取人欄に架空の氏名を書き入れ、裏金で買い用意してある印鑑を押している。これらの幹部事務官は、「自己の栄進をかけて涙ぐましい努力」をしている。たとえば、「情報提供者は秘密のうちに行動するという建前(作り上げた建前)から、情報提供者に提供代(調活)を支払った場所を、いつも庁内にするのは不自然であるとの論定から、あるときは公園で、またある時は喫茶店で(調活)を支払ったことにし、そのために領収書にシミをつけたり、氏名の字を擦ったり、紙質を変えたりするなどの工作をしている。」
 (6)ところで、検察活動で求められる情報は、具体的事件を通じての参考人や警察、公安調査庁、国税庁等関係機関から寄せらたもので十分であり、情報提供者という名のスパイ的存在の人物(警察用語で「S」と呼ばれるもの)の必要性は乏しく、現実に「S」は存在しない。
 (7)調査活動費の不正な支出負担行為及び支出手続は、犯罪そのものである。これらの不正経理は、横領罪、背任罪、詐欺罪、虚偽公文書作成・行使罪、有印公文書偽造・行使罪、有印私文書偽造罪等のいずれかに当たる。このことは、内部では公然の秘密としてささやかれている。
 (8)告訴にかかる地方公共団体の不正経理問題について検察が起訴しなかったのは、自ら大金を不正経理により生み出しているからである。
   この告発文書に関する記事が、平成11年5月22日号「週刊現代」に掲載された。取材に応じた検察関係者は、告発文書について、次のように信憑性の高い文書であることを認める証言を行っている。
   「極めて信憑性が高い内容だと認めざるを得ません。用語の使い方といい、会計面での記述の正確さといい、これほどのものは内部の人間でないと書けないでしょう。差出人はベテランの検察事務官ではないかと思います」(検察OB)
   「これを書いたのは、検察内部の、しかも会計処理をよく知っている人間であることは間違いない。」(元東京地検特捜部長・河上和雄氏)
   「間違いなく内部のものが書いたものでしょう」「告発内容も事実です」 (東京地検現役検察官)
   また、「S」が検察に存在するかどうかについても、次の証言が紹介されている。
   「調活(調査活動費)が情報提供者への謝礼として使われたという例を、私は知りません。聞いたこともない。事件の端緒を参考人からつかむことはあるが、それでも謝礼などは渡さない。また、検事が進んで情報提供者に接触して、ネタを集めるということも、まず考えられない。事件のほとんどは、警察からの送致事件と“直告”(持ち込み)で、検察はいわば受け身の立場です。・・・・つまり、調活は、この文書が弾劾しているとおり、名目どおりに使われたことなど、まずないということなんです」(前出の検察OB)
  「検察庁刑事部や公判部は、送られてきた書類を処理するだけだから、調査活動をしないんです」(司法ジャーナリスト・鷲見一雄氏)
 
3、3件の刑事告発
  上記2の内部告発を裏づける検察幹部の具体的な不正行為が、「噂の真相」
  (平成13年2月10日号売)、「ベルダ」(平成13年4月号)に相次いで掲載された。それらをもとに、平成13年4月から5月にかけて、高松市在住の川上道大氏(㈱四国タイムズ社 代表取締役)が3件の告発状を最高検察庁検事総長宛に提出した。
 (1)平成13年4月10日付告発状
     被告発人は加納駿亮(現大阪地検検事正)、佐藤勝(元高松地検検事正)の2名である。告発事実は次の通りである。 
     「被告発人加納は、架空の情報提供者を作出して、調査活動費名下に現金を詐取しようと企て、事務局長及び公安事務課長らと共謀の上、平成7年7月から同8年7月までの間、高知市丸ノ内1―4―1、高知地方検察庁において架空の情報提供者に謝礼を支払う旨の内容虚偽の公文書及び架空名義人の私文書である領収書を各偽造した上、これを会計課に提出してその旨誤信させ、現金合計約400万円を詐取した。」  
     「被告発人佐藤は、架空の情報提供者を作出して、調査活動費名下に現金を詐取しようと企て、事務局長及び公安資料課長らと共謀の上、平成8年12月から同11年3月までの間、高知市丸ノ内1―36、高知地方検察庁において架空の情報提供者に謝礼を支払う旨の内容虚偽の公文書及び架空名義の私文書である領収書を各偽造した上、これを会計課に提出してその旨誤信させ、現金合計約1000万円を詐取した。」
     詐取した現金は、ほとんどが「遊興飲食代」にあてられたとされている。
     この告発状は、最高検察庁から高松高等検察庁に移送され、平成13年5月17日に受理され、捜査中である。
 (2)平成13年5月11日付告発状 
   被告発人は、加納駿亮(前出)で、告発事実は次の通りである。
   「被告発人加納は、架空の情報提供者を作出して、調査活動費名下に現金を詐取しようと企て、事務局次長及び特別刑事資料課長らと共謀の上、平成10年10月から同11年6月までの間、神戸市中央区橘通1の4の1、神戸地方検察庁において架空の情報提供者に謝礼を支払う旨の内容虚偽の公文書及び架空名義人の私文書である領収書を各偽造した上、これを会計課に提出してその旨誤信させ、現金合計700万円を詐取した。」
   本件でも詐取した現金は、ほとんどが「遊興飲食代」にあてられたとされている。告発状は、最高検察庁から大阪高等検察庁に移送され、平成13年6月1日付で受理され、捜査中である。
 (3)平成13年5月18日付告発状
   被告発人は、杉原弘泰(元高松高検検事長、元大阪高検検事長)で、告発事実は次の通りである。
   「被告発人杉原は、架空の情報提供者を作出して、調査活動費名下に現金を詐取しようと企て、事務局長及び公安事務課長らと共謀の上、平成9年12月から同11年1月までの間、高松市丸の内1―36、高松高等検察庁において架空の情報提供者に謝礼を支払う旨の内容虚偽の公文書及び架空名義の私文書である領収書を各偽造した上、これを会計課に提出してその旨誤信させ、現金合計約500万円を詐取した。」
   詐取した現金の使途は、ほとんどが「遊興飲食代」とされている。告発状は、最高検察庁から高松高等検察庁に移送され、平成13年6月14日付で受理され、現在捜査中である。

4、仙台市民オンブズマンによる「調査活動費」の調査
 (1)仙台市民オンブズマンは、前記2の内部告発の裏づけとなるデータを収集すべく、平成13年4月2日に、仙台地方検察庁および仙台高等検察庁の平成10年度の調査活動費の支出関係文書の開示請求を行った。平成10年度としたのは、内部告発以前の文書にこそ、裏金づくりの痕跡がくっきりと残されているだろうと考えたからである。個々の領収書等は不開示とされたが、開示された文書からは、予想どおり裏金づくりを想定するに充分なデータを得ることができた。即ち、仙台地検、仙台高検ともに、年間の受入額(それぞれ、840万円、960万円)をきれいに使い切っていたのである。それだけでなく、月別に見ても、毎月10万円単位の受入額をこれもきれいに使い切っているのである。消費税の課税される時代に、「公安労働関係情勢調査」や「調査委託実費」の名目で、毎月10万円単位のきりの良い支出がなされるなどということは、考えられないことである。われわれは、裏金づくりを確信した。なぜなら、このような使い切り状態の裏には、必ず不正が隠されていることを、自治体の公金不正支出調査で、いくどとなく体験してきていたからである。
 (2)上記2の内部告発文書が世上に出まわったのは、平成11年4月のことであるから、その頃を境に調査活動費の支出には、何らかの変化が現れていることであろう。われわれは、そのように予測を立てて、仙台地検、仙台高検に対して平成11年度と12年度の開示請求を行った(平成13年5月18日)。開示されたデータは誠に興味深いものであった。まず総支出額が、平成10年度を100として、仙台地検は、11年度92.6、12年度41.2と激減し、同様に仙台高検も平成11年度50.0、平成12年度31.0と地検を上回る激減ぶりを示していたのである。さらに、月別の支出額も、1円単位の支出が計上されるという、激変ぶりであった。その上、平成10年度には1件もなかった情報交換会の弁当代等が11年度、12年度には数多く支出されるようになっていた。支払の形態も、毎月の調査活動費は特別払(小切手払)で弁当代等は通常払(業者への振込)で処理されていた。
   これらの事実からうかがえることは、内部告発に対応して、法務・検察当局から何らかの指示が出され、それに基づいて11年度、12年度の会計処理がなされているであろうことである。11年度、12年度に裏金づくりがなくなったとは全く思わないが、11、12年度と比較して、10年度の異常さはきわだっており、これを正当な支出だと強弁できる人間がいたらお目にかかりたいものである。
 (3)仙台地検、仙台高検のデータで示された傾向は、仙台だけの現象なのか、それとも全国的傾向なのか。仙台市民オンブズマンは、仙台の調査と併行して、全国すべての検察庁の調査に着手した。対象年度は、10年度~12年度の3年度分。仙台を除く57の検察庁への開示請求等の手続きと文書の交付には数ヶ月を要した。その集計結果が表1、2、3である。この結果は、以下のように仙台の傾向が、まさに全国的傾向であったことを示している。
  ① 平成10年度5億5200万であった総支出額は、11年度3億2200万円、12年度は2億2500万円と激減している。平成10年度を100とすると、11年度は58.3、12年度は40.9である。各検察庁毎に見ても、一部に例外的現象が散見されるが、おしなべて同様の傾向を示している。
  ② 平成10年度の調査活動費(特例払)は、ほとんどが受入額を使い切っており、返納は、東京高検、東京地検、名古屋地検、神戸地検の4つのみである。月別に見ても、旭川、釧路、大分の各地検を除いては、万円単位で受入と支払が同額となっている。
  ③ 平成10年度に弁当代等の支出があったのは、東京地検、甲府地検、名古屋地検、大阪地検、神戸地検、福岡地検、佐賀地検の7つで、しかも、いずれもなぜか、平成11年3月にのみ支出されている。この他の検察庁の平成10年度の弁当代等の支出は0である。
  ④ ほぼ全ての検察庁において、11年度以降になると、急に弁当代等の支出がなされるようになった。
  以上のように、仙台の例で見た平成10年度の支出の異常さは、全国的傾向でもあり、平成10年度の支出が、ほぼ100%裏金に回されているのは、否定しがたい事実といってよいであろう。
  ところで、平成11年度から支出の形態が大きな変化をとげているのは、内部告発への対応として理解が容易であるが、平成10年度の3月分の支出に、弁当代等への支出という変化が一部に現れるのをどう理解したら良いのであろうか。われわれは、その点を解明するために、各方面での情報収集に努めた。その結果、検察内部では、平成11年1月頃から内部告発に関する情報が、流布されており、それへの対応として、11年3月には、法務本省から、調査活動費の解説とその執行に関する内部通達文書が各検察庁に示されていたことが判明した。その中で、警察、公安調査庁、国税局等の関係機関との情報交換会での弁当代等の支出例が示され、これらは特例払とはちがって、業者からの請求書等の添付が必要とされていたのである。この通達を受けて、上記③の7検察庁は、早速3月からこの執行例を採用したというわけである。いわば、裏金づくりをカムフラージュするその後の各検察庁の経理操作のはしりであったわけである。

5、結論
 ① 被告は第1準備書面34頁において「仙台地方検察庁における平成10年度の調査活動費は、主に組織的な犯罪に関する動向調査を目的として、検察庁の協力者に極秘裡の調査活動を委託し、当該協力者にその対価として報酬を支払うために使用された」と主張する。例外の記載はないから全額かかる費用として使用されたとの主張である。仙台地裁平成13年(行ウ)第7号事件において仙台高等検察庁は13年9月14日付け第1準備書面で「仙台高等検察庁における平成10年度の調査活動費は、主に組織的な犯罪に関する動向調査を目的として、検察庁の協力者に極秘裡の調査活動を委託し、当該協力者にその対価として報酬を支払うために使用された」と全く同じ主張をしている。
   ところで被告は調査活動費について「事件の調査、情報の収集などの調査活動に要する経費として認められた予算科目である」とし、「調査活動費は主として組織的な犯罪に関する調査活動に使用されており、その調査活動は、個別具体的な事件に関するもののみでなく、個別具体的な事件を離れての犯罪組織等の調査対象者の動向など基礎資料を収集することも含まれる」と主張する。そして機密のうちに行うべき調査活動の例として「地下に潜行した集団の犯罪行為、厳格な情報統制が行われている集団あるいは密室性のある犯罪に係る刑事事件等」をあげる。このことからすれば調査活動費が主として使われる組織的な犯罪に関する調査活動は、組織暴力団、右翼左翼過激派集団、オウム審理教等の破壊的カルト集団、蛇頭等の外国人密入国者の暴力集団等を対象に行われてきたとの主張と解される。
 ② 調査活動費がそのようなものだとすれば、全国各地検、高検における調査活動費の使い途が全くバラバラとは考えられない。被告の前記主張も調査活動費の一般的性格として主張されているもので仙台地検と仙台高検のみについて限定した主張ではない。従って仙台地検、仙台高検のみならず全国の各地検、高検においても同様に「主として組織的な犯罪に関する調査活動に使用されている」ものと考えられる。
   そして調査対象が上記のものであり、しかも個別具体的な事件を離れた調査対象者の動向など基礎資料を収集することも含むとすれば当然長期に渡る継続的な調査が必要となる。調査対象及び調査活動の性質から考えて年度毎に調査活動の内容が異なるなどということは考えられない。だとすれば年度毎に調査活動費の支出が大幅に変動するなどということもおよそあり得ない話である。
 ③ しかし現実には前記のとおり平成10年度5億5200万円であった全国の総支出額が翌年度から激減し、平成12年度は指数にして40・9まで減少している。調査の単価が変わるとは考えられないから、支出額が減少するということは調査活動自体が減少するということを意味する。そして調査活動自体が減少するということは調査対象者ないし調査の必要性が減少するということである。しかしながら原告は寡聞にして組織暴力団の6割が壊滅したとか、右翼左翼過激派集団が6割減少したとか、オウム審理教の信者数が6割減ったとか、蛇頭等の外国人密入国者の暴力集団が6割減ったなどという情報に接していない。むしろ平成11年8月に組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制などに関する法律が制定されたのを初めとして組織暴力集団に対する対策は著しく強化されている。強化されるということは強化しなければならない必要性すなわち組織暴力集団の活動が対策を強化しなければならないほど活発化しているということである。警察の犯罪検挙率は年々減少の一途を辿り、その原因として犯罪の組織化、密行化、外国人犯罪組織の暗躍等がしていされており被告の言う組織的な犯罪に関する調査活動の必要性が薄らぐような社会情勢の変化は微塵もみられない。むしろ増加していると認識すべきが当然である。にもかかわらず「主として」それらに用いられてきた調査活動費が何故わずか2年で6割も減少したのか。被告はきちんと反論すべきである。
 ④ 被告は第1準備書面において得々と法5条4号該当性について主張立証責任を論じ、被告は抗弁として「5条4号に該当するという点に関する判断について裁量権を行使し、その充足を認めたことを主張立証」しさえすればよいのであって、その場合は原告が再抗弁として「被告の判断が裁量権の範囲を超え、またはその濫用があったことを基礎付ける事実を主張立証しなければならない」という。被告の求めに応じて原告は上記のとおり再抗弁として主張立証を尽くした。次は被告が再再抗弁として調査活動費急減の理由及び平成11年度、12年度と異なり何故平成10年度が端数のでない使い切りなのかその理由を主張立証しなければならない。
 ⑤ これまで、縷々述べてきたように、平成11年4月になされた平成10年度以前の裏金づくりについての検察庁職員の内部告発は、その後の刑事告発の事例および仙台市民オンブズマンの調査によって、ほぼまちがいのない事実であることが裏づけられた。こうした裏金づくりを隠ぺいしようとしてなされた被告による不開示処分は、正に裁量権の濫用以外のなにものでもなく、その違法性は明瞭である。
                                                  以上

最終準備書面

第1 本件訴訟の意義
  
  本件は,平成10年度の仙台高等検察庁の調査活動費に関する支払明細書及び領収書についての全面不開示処分の取消しを求める訴訟である。

  原告が本件訴訟を提起したのは,平成10年度における仙台高等検察庁の調査活動費の支出は,その全額が目的外違法不正な支出である疑うに足りる合理的な理由が十分にあると考えるからに他ならない。
    全国の地方自治体,地方議会,そして外務省において,官官接待やカラ主張等の公金の不正支出が行われていたことは,公知の事実であるが,遺憾ながら検察庁もその例外ではなかったのである。
    検察庁は,起訴権限を独占する検察官から構成される国家機関として,他の国会機関にも増して,清廉性が要求されることは,当然であり,そのような検察庁において,公金の違法不正な支出が行われることは断じて許されない。
   
    法務大臣も検事総長も,検察庁における調査活動費の支出が違法不正な目的外支出ではないかとの指摘に対し,国民が納得することができる資料根拠を示さないまま,違法不正な支出がないと頑なに否定するばかりであり,国民に対する「説明責務」(法1条)を一切放棄している。
   原告は,検察庁が調査活動費の違法不正な支出という負の遺産をきちんと清算して,国民から信頼される国家機関として再出発するためには,まずもって,調査活動費の違法不正な支出の実態を解明することが必要不可欠であると考えて,調査活動費についての情報公開請求を行い,全面不開示処分の取消しを求める本件訴訟を提起したのである。
   
    本件訴訟の結論には,検察庁が国民から信頼される国家機関として再出発することができるかどうかがかかっているといっても過言ではない。
第2 平成10年度の仙台高等検察庁の調査活動費の支出が違法不正な目的外の支出であることについて
   
     平成10年度に支出された仙台高等検察庁の調査活動費は,その全額が違法不正な目的外支出であることは,以下に述べるとおり明らかである。
 
  1 平成10年度以前の調活費の推移
   平成8年度以後の主要な検察庁の調活費の推移は既に準備書面で示し
    た。被告は認否すらしないが否認もしていないので認めるのであろう。平成8年度から平成10年度まで調活費はいずれも増加傾向にある。
   つまり調活費はそもそも年度毎に大きく変動するものではないことが
    証明されたことになる。なおこの点を確認するため被告に平成元年以降
    の全検察庁の調活費の推移を明らかにするよう求めたが被告は明らかに
    しなかった。
   
 2 平成10年度の調活費の使途
   これについて被告は全額が外部の協力者への謝礼に使われたと主張す
    る。しかし謝礼は検察庁内で協力者に支払われるとは限らずむしろ協力
    者の身の安全と調査の密行性を強調する被告の立場からすれば検察庁舎
    外で渡されるのであろう。また協力者からの事情聴取も庁舎外で聴取す
    るのであろう。道端や公園で渡したり事情を聞いたりするわけでもなか
    ろうから飲食店やホテルの一室で行うと考えるのが常識であろう。では
    その費用は一体どこから出たのか。調活費が全額謝礼であるなら飲食費
    やそこに赴くための交通費はどこから出たのか。密行性を要する以上は
    正式証明を要する他の費目から出すわけにはいかないはずであろう。全
    部謝礼に使ったなどと嘘を言うとこういうボロが出ることになる。
   
 3 調活費の激減-コンピューター整備に使ったとの言い訳
   釈明書6頁に平成9年度から13年度のコンピューター関連経費が示
    されているが平成11年度は14億円にも達しておりとても調活費を2
    億5000万円削った程度で賄える規模の事業ではない。第3準備書面
    19頁を見ると平成12年度のコンピューター関連の新規整備相当分が
    7億円で調活費の節約分が1億円とされる。残り6億円は一体どうやっ
    て調達したのか。総予算は増やせないと言うのが被告の立論の前提であ
    るならいったいどの費目をどの程度減らして捻出したのか明らかにされ
    るべきである。しかし被告は何ら答えようとしない。原告が法務省所管
    の官庁でこれほど一つの費目を減らしたところがあるのか釈明を求めた
    が被告は検察庁と法務省は別だと言って答えない。被告にとっては極め
    て簡単に反論できる事項であるにもかかわらずである。
   実際には検察予算のどの費目も減ってはいない。法務省管轄下の官庁
    において一つの費目を特異的に減らしたなどという実例も存在しない。
    唯一調活費だけが平成14年度にかけてほとんど廃止に近いほど削減されているのである。これをもってコンピューター整備に予算を廻す必要があったために減らしたとの主張を信じる人間がいるのか。減らした分が他の予算に廻ったのは事実であろう,当然コンピューター整備にも使用されたであろう。しかしコンピューター整備の必要から特に減額したなどという主張は信じられないしそのような証明は一切なされていない。
    被告は第5準備書面において実に17頁を費やして得々と調活費の意義,必要性を強調している。本当に調査活動を行っていたのならそこに書かれていることはまさにそのとおりであろう。悪化の一途を辿る治安情勢に鑑みればそれこそきちんとした検察独自の調査活動をしていただきたいとさえ思う。しかしそれほど重要で必要なら何故僅か4年間で廃止に近いまでに減額したのか。この4年間は外国人犯罪や組織的犯罪,国際テロが激増した4年間ではなかったのか。準備書面5では予算減額の理由については僅かに1頁半しか書かれていない。17頁に渡って得々と調活費の重要性,必要性を論じたのであれば当然それを上回る減額の必要性が存在したことが論証されねばならない。
    しかし書いてあることを見るとまず「公安関係情報の重要性が相対的に低下しつつある」とあるが,その認識の当否をおくとしても「何故僅か4年度これほどの規模の減額なのか」という疑問に対しては全く答えになっていないのは明らかである。
    次に「部外の協力者を通じて公安関係を中心として情報活動を行っていたがこのような情報収集形態が必ずしも効率的とはいいがたくなってきた」とある。しかし組織の内部情報を入手するには外部の協力者を使っての情報収集しかあり得ないのである。非効率だというがそれでは公安調査庁や警察庁はかかる手法での調査活動をやめたのか。そんなことはない。非効率だろうが何だろうが代替手段がないから数十年に渡って行ってきたのではないのか。被告も外部の協力者を通じての調査活動がインターネットなどを使用した情報収集で代替しえないことは認めている。
    インターネットを使用しての情報収集やコンピューターネットによる情報分析情報交換が有益であることはそのとおりであろう。しかしそれと調活費を使った調査活動の必要性とは全く次元を異にするはずである。
    結局のところ検察庁は調活費を使った調査活動はやめるという意思決定をしたのである。平成14年度の約140万の支出についても平成11年度以降は従来の謝礼に加えて被告が言うところの内偵調査費用などの実費分が新たに調活費から支出されるようになっているから従前通り謝礼として使われた(とされる)調活費はさらに減少しているのである。960万円がこれだけ減ったのであるから廃止の意思決定をしたといわれても仕方が無かろう。しかしながら何故廃止に近いまでに減額されたのかという点について被告から何らの説明もなされていない。高井証人はコンピュータ整備は既に終了していると証言している。もし調活費削減の理由がそこにあるなら当然平成15年度の予算では調活費は元に戻るか少なくとも増加していなければならない。しかし被告からそのような主張立証はなされていない。まだ開示請求できないので原告から立証することはできないが間違いなくさらに減額されているはずである。違うというなら被告は立証すべきである。可能なのだから。
    以上被告の主張は詭弁以外の何ものでもない。そしてかかる詭弁を弄せざるを得ないということ自体が調活費の目的外使用を何よりも物語っているのである。

 4 突如現れ瞬く間に消えた弁当代(特例払い以外の支出)
    特例払い以外の支出(簡易証明でない支出)については平成11年度に初めて登場した。被告は突然このような支出がなされることになった理由について「来日外国人による組織的な犯罪の急増など近年の犯罪情勢に的確に対応するべく,情報収集の方法を多様化させる必要があり,その一環として警察などの関係諸機関との情報交換を活発化させることとし,このような関係諸機関との情報交換会の開催に要する経費を情報収集を目的とした調査活動費から支出することが多くなった」からであると法務大臣の訓令まで引用して主張している。しかし平成14年度は特例払い以外の支出はゼロである。平成12年度もほとんど使われていない。多くなどなっていないではないか。多いどころかなくなっているではないか。この事実は仙台高検は情報収集の方法を多様化させることにも,警察などの関係諸機関との情報交換を活発化させることにも不熱心で法務大臣の訓令にも従わないということを意味するのであろうか。そうではなかろう。もともと飲食を伴う情報交換会など必要ではなく,それまで遊興費に使っていた調査活動費の使い途が何かないかと捜してやってはみたが意味がないのでやめただけのことである。

 5 説明不能の使い切り
    被告の調活費の受入額の繰り越しの状況を見ても,平成11年度から突如として毎月繰り越しが出るようになった。被告は端数が出なくなった理由については「職員が自ら行う調査活動費の実費を支払う場合が多くなった」からと主張するが毎月の使い切りがなくなった理由については何ら主張するところがない。平成11年度以降を見ると毎月多額の繰越金が出ている。それも数千円とか数万円の単位ではなく40万円以上の繰越金が出ている月も少なくない。平成10年度以前は毎月の受入額と支出額がぴったり一致していたのが何故平成11年度以降は多額の繰越金が出るようになったのであろうか。調査の予定と調査実績がぴったり一致するつまり予定したとおりの調査が必ず行われるなどということはおよそあり得ないことである。
    なお繰越金が出ているとはいっても年度を超えた繰越金が出たのは平成14年度のみでそれ以外はきれいに使い切られている。9円とか3円の端数が一体どうすれば年度末にきれいに使い切れるのであろうか。

 6 実際に調査活動が行われた形跡がないこと
  ア 報告文書の不存在,引き継ぎがなされていないこと
     もし検察庁が組織として調査活動を行なって情報を収集したのであればそれらを十分に活用するためには情報を蓄積し,何らかの形で記録にとどめておくのが当然である。「継続的調査活動」と「その結果収集された情報の蓄積」とは表裏一体の関係にある。「継続的調査活動」が行なわれていなければ「情報の蓄積」はないし,「情報の蓄積」がないということは「継続的調査活動」が行なわれていないからにほかならない。
        北村証人調書によれば「情報の蓄積」がなかったと明確に証言しており,被告も「情報の蓄積」がきちんと行なわれていなかったことは認めている。北村は引き継ぎの点についても「私の経験では引き継ぎも受けていませんし,引き継ぎもしていません」と明言している。引き継ぎの点については被告はしたともしないとも主張せず他の証人を立てて立証することもしていない。仙台地検がそうである以上仙台高検においても「継続的調査活動」が行なわれていなかった疑いが濃厚である。
     かように本来調査活動費が全額遊興費に費消され「継続的調査活動」が行なわれていないと原告から主張立証された場合,被告としては①そもそも,どういうことから調査が開始されるのか。②調査の開始は,誰から誰にどのようなルートで指示が出されるのか。③通常,誰が,どこで,協力者に会うのか。④協力者に会って得た情報を文書化するかしないかは,誰が決めるのか(調査を指示した者か,協力者に会った者か)。⑤報告文書は最終的に誰に手渡されるのか。⑥文書化されない場合,得た情報は誰が誰に口頭で伝えるのか。⑦報告文書を管理している者は,誰か。⑧報告文書はどのような形で保管されているのか。⑨捜査に使用した結果を含め,得た情報の価値を評価するのは誰か。⑩情報の価値を検証した結果が記載された文書,一定期間の調査活動を総括した結果が記載された文書,以後の調査方針を示した文書はあるのか。⑪調査活動についての引き継ぎは,どのような形で行われるのか。⑫調査方針と調査結果につき地検との協議はなされていたのか⑬ 開示対象の件の調査のうち,報告文書が残っているのは何件かといった事項について自ら積極的に主張立証を試みるはずである。しかし被告は全くそのような立証をしようとせず,むしろその点を解明しようとして原告が支出当時の検事長や検事正の証人申請を行っても頑なにそれに反対し,それに代わりうる例えば事務局長の証人申請なども行おうとしない。かかる応訴態度からしてもはや仙台高検では「継続的調査活動」が行なわれていなかったことは明白である。
  イ 高井証人と北村証人の調査活動についての認識
     高井は数十年に及ぶ検察官の経歴を有する検察幹部であるにもかかわらず調査活動費に実際に携わったのは仙台高検の総務部長になってからだと証言する。それ以前には調査活動費を使った調査活動については全く知らなかったとも証言する。
    北村も現職である東京地検時代のことについては証言を拒否したもののそれ以外の時期に調査活動に関与したことはないと明言している(調書44頁)。
    数十年に渡って年間5億円も使われていたのであるから当然調査活動に携わった検察官の数も膨大な人数となるはずである。にもかかわらず証言した二人とも長年検察官として稼働し現在では幹部の地位にあるにもかかわらず平成10年以前には調査活動に関わった経験がないと明言しているのである。しかも被告は実際に調査活動に多数関与した証人を申請することをしない。調査活動を命じた当の本人である検事長や検事正の証人採用には頑なに反対する。調査活動の実在についての立証を放棄するかのような応訴態度である。

 7 不可解な応訴態度
  ア 高橋証言に対して何ら反論していないこと
     被告は三井証言に対しては大部の準備書面を提出してその信用性を論難するが,高橋証言に対しては平成3年当時のことは本件と無関係というのみで硬く口を閉ざしている。しかし平成3年当時と平成10年当時の仙台高裁での調活費の支出水準が同じであり,平成3年当時調活費が目的外に支出されていることが立証されれば平成10年当時も目的外支出がなされていたことは十分推認可能である。まして本件では高橋証言だけではなく全く説明のつかない調活費の急減や三井証言があるのである。それらと総合すれば平成10年当時の目的外支出を認定しうる高橋証言に対して一言も反論しないと言うことは誠に不可思議な応訴態度である。結局,被告は反論できないから反論しないでいると考えるほかない。高橋証言は偽造依頼文書という物証によって補強されている。また高橋氏には偽証をする動機など全くない。従ってその信用性は極めて高いものである。にもかかわらず被告は反論しようとしないのである。いずれにせよかかる被告の応訴態度は弁論の全趣旨として重視されねばならない。もしこれを弁論の全趣旨で考慮しないなら,都合の悪いことは黙っていればそれでよいという悪弊を蔓延させ司法の権威を失墜させることに繋がるであろう。
  イ 偽造依頼文書に反証しようとしないし,公印の鑑定もしないこと
     被告は高橋証言に対して反論しないだけでなく高橋証人が高検事務局長及び総務課長から依頼されたとする偽造依頼文書についても正面から反論しようとしない。それどころか偽造依頼の真偽の確認のために原告が当の事務局長や総務課長の証人申請をしても頑なにこれに反対し,姑息にも自らの調査文書を参考資料として提出するのみである。
     更に重要なことは高検事務局長の偽造依頼文書に仙台高検の現在使用中の公印が押捺されていることについて「よく似ている」と言うのみでそれ以上真偽について主張も立証もしようとしない。被告は捜査機関の長である。何故公印の真贋鑑定ができないのか。何故しようとしないのか。原告は要望があればいつでも原本を提出するつもりである。かようにやれることをやらず,都合の悪いことには全て目を瞑ろうとする被告の姿勢は誠に姑息としか言いようがない。
  ウ 調活費についての法務大臣の調査結果を提出しないこと
     被告は調活費の不正支出については既に法務省が調査してそのような事実がないことが確認されたと主張する。法務大臣も記者会見してそのように述べている。では何故その調査報告書を証拠として提出しないのか。第三者の検証に耐え得るような調査をしていないか,調査の結果,実は,不正支出が発覚したからである,と考えるほかない。

 8 三井証言の信用性-調活費マニュアルの存在
   ア 三井証言は調査活動費が目的外に支出されていたことを証明する直接証拠である。ここではその証言が実在しているにもかかわらず被告がその成立を否定する調活費マニュアルに言及しておりその意味で信用性が高いことについて述べる。
     被告は,第6準備書面において,甲第26号証の「マニュアル」について,(1)法務省の作成した文書ではない,(2)作成時期は平成12年初め以降である等の主張をしているが,この点について反論する。 
    イ まず,(1)について検討する。
    ① 被告は,マニュアルが法務省作成の文書であることを否定するために,平成11年2月末ごろに名古屋高検で開かれた会議そのものを否定せざるを得ないわけだが,その主張は抽象的,一般的であり,三井証人の具体的な証言をくつがえす材料は何ら示されていない。被告は,「名古屋高検に管内各地検の次席検事及び事務局長並びに法務省職員が共に召集された会議」は開催されていない旨主張するが,なぜか,三井証人ら高検からの出席者についてはふれていない。
      この点についての三井証人の証言は次の如くである。まず,陳述書では,「平成11年2月末ころ名古屋高検会議室に法務省総務課付検事,事務官,管内次席検事,事務局長,高検から部長以上,課長以上が出席し会議が開催されました。私は当時名古屋高検総務部長でしたから,当然出席しました」と述べている。また,証人尋問では「法務省から総務課付の検事が1名,事務官が何人かいました。そして,管内地検からは事務局長と次席検事,高検からは私,それから,他の2人の部長,で,次席検事,検事長,課長以上,事務局長も含めまして,それらの人が出席しました」と証言している。本人が出席した会議であるだけに,実にリアルである。「調活費」に関する会議であったことから,行政文書として残る公式の会議の形をとらなかっただけの話しで,会議の存在自体は,当事者である三井証人の証言で疑いのないところである。
    ② さて,マニュアルであるが,上記会議で配布されたことは,三井証人の証言から明らかである。陳述書では,「出席者全員にマニュアルが配布されました」と述べている。証人尋問では,出席者全員にその書類(マニュアル)が配られたのかという問いに,「うん,と,思います」と答えている。そしてこのマニュアルの作成については,証人尋問の証言の中で,「法務省総務課だったと思いますけれども,誰が作成したかと,よう聞いていません」と答え,総務課で作ったと思う理由については,「局付検事が来てましたんで,で,局付検事から説明がありました」と証言している。つまり,局付検事がマニュアルについて説明したのであるから,法務省総務課で作ったものだと明解に述べているのである。
     この点について三井証人は著書「告発!検察『裏金作り』」の中で,マニュアルにもとづいて「具体例を示しながら説明があった。それこそ朝から晩まで一日中かかって説明を受けた」と記している。これも,当事者でないと知り得ない,生々しい証言ということができる。
    ③ 被告は,法務省の作成した文書ではない理由の1つとして,「調査活動費,諸謝金,会議費は,過去数十年間にわたって,全国の検察庁において日常的に支出されており,甲第26号証の内容には,法務省しか知らないという情報は存しない」ことをあげている。これは全く理由になっていない。すでに,証拠として提出しているように,平成10年度においては,平成10年4月から平成11年2月までの間に,最高検,8高検,50地検の全てにおいて,調活費から正式証明を必要とする「情報交換会」経費にあてられた例は皆無であった。さらに原告の調査によれば,大阪高検,名古屋高検,仙台高検,仙台地検,神戸地検の全てにおいて,平成8年度,9年度の両年度においてもその例は皆無であり,全て簡易証明で足りるとする「特例払」の文書のみであった。このことは,全国の検察庁が,「情報交換会」経費に調活費をあてても良いということを知っていなかったことを意味する。
      この点について北村証人は,「仮に,(情報交換会で)経費がかかることがあったとするならば,多分,会議費か何かで払っていたのではないかと思います」と証言している(証言調書23P)。つまり,会議費をあてる会合,調活費をあてる会合の区別はなく,全て会議費で支払われていたのである。現に原告が情報公開請求をしたところ,仙台地検,高検においては,平成10年度の「情報交換会」経費には会議費があてられていた。この例からわかるように,甲第26号証には,全国の検察庁では知らなかった情報,即ち「法務省しか知らない」情報が含まれているのである。
      調活費が全て裏金にまわされている状況では,調活費の執行上の区分などは考慮する必要もなく,全て協力者謝金として処理していたものであるから,全国の検察庁においては,「諸謝金と協力者諸謝金の異同」や「会議費による会議,調査実費による会合,情報交換会の異同」など,全く知る必要がなかったのである。
    ④ 北村証人が甲第26号証を見ていなかったことも,法務省作成の文書ではない理由の1つにあげているが,法務省が甲第26号証を公式の行政文書扱いをしていないのであるから,それは当然のことである。また,情報交換会での飲酒の可否や出席者の記録の要否などが執行実務と異なることも理由の1つとしているが,これをもって法務省作成文書でないと主張することも無理がある。仙台高検の平成10年度の会議費での「情報交換会」には飲酒の例があり,「一定程度可」は当時の法務省の見解であったと思われる。「出席者の記録」が「必要」と書いてある点については,その後,この見解が「不必要」に後退し,記録されなかったと理解すれば良いわけで,法務省作成の文書であることを否定する理由にはならない。
    ⑤ 被告は,甲第26号証は「不正支出をうかがわせるような事情はどこにも認められず,・・・・不正支出の根拠となり得ない」とするが,そもそもこうした文書を作成すること自体が,それまでの調活費の支出に問題があったことを,逆に証明する形となっている。つまり,調活費が,架空の協力者をデッチ上げ,協力者謝金としてのみ支払われた形を装い,すべて裏金にまわされているのでなければ,資料1~4に示されるように,調活費の定義にはじまって,事細かに執行例を説明する必要など全くなかったはずである。情報公開法の成立,施行を前にして,不正支出の露見を恐れた法務省が,平成11年度からの「適正使用」を装うために急拠作成したものであることは疑うべくもないといわねばならない。
    ⑥ 以上によって,甲第26号証が「ある担当者が後任者への引き継ぎや,確認のために,個人的経験に基づき,かかる形で整理したもの」などでは断じてなく,検察庁を統括する立場にある法務省職員が作成・配布したものであることは明らかである。
  ウ 次に,(2)について検討するが,甲第26号証の作成時期が平成11年2月であることは,以下の点から明白である。
    ① 情報公開法が成立しておらず,施行時期の決まっていない段階で,甲第26号証が作成されるはずがないとしている。しかし,情報公開法は,平成11年1月末の段階で,与野党の修正協議が整い,2月12日には衆院内閣委員会で可決され,通常国会の会期内での成立の見通しは確実な情勢となっていた。したがって,情報公開法への対応の記述があっても何ら不思議ではない。現に法務省管轄の公安調査庁では,平成10年4月に「文書管理検討委員会」が発足し,情報公開法への対応が検討されていたのである。法務省自体も平成10年9月8日付の「情報公開に係る検討体制について」との事務連絡文書を傘下の関係機関に発しているのであるから,少なくともこの時期から法務省としての情報公開法への対応が検討されていたことは明白である。
    ② 甲第26号証「資料2 調査活動費執行例(案)」は,「情報交換会経費」を「調査活動費より支出する理由」として,「殊に,平成11年度予算から公安関係の調査活動費を削減したため,公安関係当局との情報交換の必要性は高まっているものである」と記している。平成11年2月段階では,平成11年度予算は固まっているわけであるから,この予算に言及し,11年度からの執行に関して,調活費を「情報交換会経費」に支出すべきことを暗に促していると理解することができる。平成12年2月に作成したのであれば,平成12年度予算に言及するはずである。このことからも,甲第26号証が平成11年2月に作成・配布されたものであることは明白である。
③  次に,甲第26号証が平成11年2月に作成されたものであることを推認するに足る,決定的な証拠をあげておく。全国59の検察庁において,平成10年4月から11年の2月までの間に,「情報交換会」はただの1度も開かれていない。ところが,平成11年3月に入ると突如として「情報交換会経費」をマニュアル通りに正式証明で計上する検察庁があらわれるのである。以下がその全ての事例である。

         <東京地検> 5回
       イ.平成11年3月10日 「最近の公安情勢に関する情報交換会」
                  うなぎ(2,000)15 税込 30,000
                  コーヒー(220)15 税込 3,460
          ロ.平成11年3月17日 「選挙事犯に関する情報交換会」
                  うなぎ(2,000)7 税込 14,000
                  コーヒー(220)7 税込 1,160
          ハ.平成11年3月18日 「薬物関係事犯等に関する情報交換会」
                  弁当 (2,000)20  税込 40,000
                  コーヒー(220)20 税込  4,620
          ニ.平成11年3月25日 「暴力関係事犯等に関する情報交換会」
                  弁当  (2,000)21 税込 42,000
                  コーヒー(220)21 税込  4,850
          ホ.平成11年3月30日 「脱税事犯等に関する情報交換会」
                  弁当  (2,000) 4 税込  8,000 
                  コーヒー(220) 4 税込    920
         <甲府地検> 2回
          イ.平成11年3月16日 「○○○○○情報交換会」
                  弁当(1,500)  13 税込 19,500
          ロ.平成11年3月17日 「○○○○○情報交換会」
                  弁当(1,500)  11 税込 16,500
        <名古屋地検> 1回
         イ.平成11年3月11日 「最近の暴力団情勢に関する情報交換会」
                  寿司(2,000)  12  税込 24,000
     <大阪地検> 5回
       イ.平成11年3月 4日 「最近のほ脱事犯の情報交換会議」
                    コーヒー(450)10
                     幕の内(2,000)10
                                      税・サービス込 34,597
       ロ.平成11年3月8日 「金融・経済事犯の情報交換会」
                              コーヒー(450)10,
                     幕の内(2,000)10
                                      税・サービス込 34,597     
            ハ.平成11年3月10日 「最近の犯罪情勢の情報交換会議」
                   会議食事代(2,550)10 
                     税・サービス込  29,452
         ニ.平成11年3月11日 「最近の犯罪情勢の情報交換会議」
                     会議食事代(2,550)10 
                     税・サービス込  29,452
        ホ.平成11年3月26日  「最近のほ脱情勢の情報交換会議」
                     コーヒー(190)7 1,330
      <神戸地検> 2回
       イ.平成11年3月3日  「最近の財政経済事犯に関する情報交換会」
                     幕の内(2,000)5 税込10,500
       ロ.平成11年3月25日 「最近の公安情勢に関する情報交換会」
                     幕の内(2,000)5 税込10,500
      <福岡地検> 3回
       イ.平成11年3月9日 「集団密入国事犯に関する情報交換連絡会」
                     弁当(1,500)7  税込10,550
     ロ.平成11年3月12日 「国税事犯に関する情報交換連絡会」 
                   うなぎセイロ(2,100)10 
                                      税込23,100
      ハ.平成11年3月15日 「統一地方選挙に関する情報交換連絡会」
                     弁当(2,000) 5  税込10,500 
      <佐賀地検> 1回
      イ.平成11年3月14日 「佐賀市長及び佐賀市議会議員の選挙の選挙情勢に関する情報交換会」
                    弁当(2,000) 17  税込35,700
   
        以上,7検察庁において3月にあらわれた変化は,11年度,即ち11年4月に入ると18の検察庁に一挙に拡大する。そして11年度に「情報交換会経費」に調活費を支出しなかった検察庁は,最高検,新潟地検,松江地検,大分地検の4つを数えるのみである。この変化は,法務省の指針に基づいたものと考えるしかない。その指針となった文書が甲第26号証である。この文書が,個人的に作成されたものではないことはもはや明瞭であろう。平成11年2月までは庁費の会議費で処理していた「情報交換会経費」が,調活費で計上できることになった。それじゃ,ということで,全国で一斉にそうした処理が行われることになった。この処理は,全部が協力者謝金ではありませんよ,裏金に全てまわってるわけではありませんよ,というアピールでもあったわけである。
        以上によって,甲第26号証は,法務省の職員が平成11年2月に作成した文書であることは明らかである。 

  9 高橋徳弘証言について
 (1)証言の要旨
     高橋徳弘証人は自ら体験した調査活動費の領収書偽造について証言した。同証言によれば,高橋証人は①昭和57年4月1日から昭和60年3月31日までの仙台高検庶務課在職中,②昭和62年4月1日から平成元年3月31日までの仙台地検証拠品係長在職中,③平成元年4月1日から平成3年6月30日までの仙台地検古川支部検察官事務取扱検察事務官在職中,④平成4年12月1日から平成7年3月31日までの米沢区検副検事在職中に,いずれも仙台高検庶務課長,同総務課長又は同事務局長から調査活動費の領収書偽造を依頼され実行していたものである。
     この高橋証言は以下に述べるように,調査活動費の領収書偽造について極めて具体的かつ詳細であり,また客観的証拠による裏付けも存し,その証言の信用性は極めて高い。
 (2)証言内容は具体的かつ詳細である
   ア 高橋証人は,仙台高検庶務課在職中に当時の仙台高検庶務課長であった鈴木課長又は氏家課長から領収書の偽造を依頼され,その際,庶務課長から偽造する領収書は調査活動費のものであること,偽造領収書を作成して調査活動費から捻出したプール金を作ること,調査活動費を使用して公安情報の提供を受けているような活動の実態はないこと,調査活動費の領収書については絶対に秘密であることを説明された旨証言した(尋問調書2頁,3頁,23頁)。
     このように高橋証人は,調査活動費の依頼主を実名を挙げて証言し,領収書偽造についても秘密事項である旨説明された旨明確に証言している。
   イ 領収書の偽造方法について高橋証人は,3種類のペンと「高橋」の印鑑2,3本を用意し,庶務課長や総務課長,事務局長から交付された30~50枚の領収書に「高橋正彦」と署名し押印したと生々しく証言しており(尋問調書6頁,7頁),迫真性に富んでいる。
   ウ 領収書偽造を行っていた当時の認識・心境について,高橋証人は,自己が領収書を偽造していた事実に加え,庶務課長が「またクラブから領収書が回ってきた」と話していたこと(尋問調書3頁),検察庁内全職員対象の新年会又は忘年会の後に高検検事のみの2次会が飲食店で設けられておりその場所設定を庶務課長が行っていたことを見ていた(尋問調書5頁)という自己の見聞に基づき,領収書偽造によりプールされた調査活動費はクラブや新年会後の2次会費に流用されていたと合理的に推測している。
     また,領収書偽造を任されたことについて,高橋証人は,当時は罪悪感は余りなく,むしろ秘密事項を任されているという誇らしい気持ちを抱いていた旨証言しており(尋問調書26頁,27頁),当時の心境が正直かつ具体的に表されている。
 (3)証言内容には裏付けも存在する
   ア 甲第24号証別添3は,高橋証人が仙台地検古川支部検察官事務取扱検察事務官在職中に受領した仙台高検の封筒である。別添3には総務課長のゴム印の下に「柳沢」と記載され,表には赤鉛筆で開封できるのは宛名人のみという趣旨で「御直披」と記載されてある。そもそも事務分掌からして地検古川支部の検察事務官が高検の総務課長と直接連絡を取り合うようなことは考えられない。また「御直披」は一般の文書には記載されず,よほど個人的なプライベートにかかわるものでない限り記載されることはない。しかし,高橋証人と柳沢総務課長とは面識がなく(尋問調書20頁,甲24),個人的な文書がやりとりされる関係にはなかった。
         そうすると,別添3の封筒は,柳沢総務課長にとっては高橋証人との間のみの秘密事項の依頼の趣旨で送付されたと推認される。そして,このことは別添3の封筒には偽造領収書の用紙が同封されていたという高橋証言(尋問調書11頁)と符合する。
   イ 甲第24号証別添4は,高橋証人が米沢区検副検事在職中に受領した文書であるが,同文書は仙台高検事務局長本田達雄名で作成され,同人の公印も押捺されている。なお,同文書の作成年月日である平成5年4月27日当時の仙台高検事務局長が本田達雄であること,及び公印の印影が現在使用中の事務局長印とよく似ていることは被告も認めている。
     同文書には,「同封の用紙に前回同様別添のとおりご記入の上ご返送いただきたく」と記載されている。すなわち,同文書からは以前にも高橋証人に同様の依頼を行っており,その依頼内容は用紙に記入することであるが分かる。また,同文書には続けて,「なお,本書面が用済みとなりました節は破棄願います。」と記載されている。そもそも事務分掌からして米沢区検副検事が仙台高検事務局長と直接事務連絡を行うこと自体異例と言うべきであるが,さらに事務連絡文書において「破棄願います。」という通常あり得ないものであり,極めて不自然である。
     従って,この文書の記載内容から,本田事務局長の依頼は高橋証人以外には知られたくないものであり,その依頼内容は用紙へ高橋証人が記入するというものであると推察される。これは正に,仙台高検事務局長から偽造領収書の作成を依頼されたという証言と合致するものである。
   ウ 甲第24号証別添5,6の領収書は,高橋証人が別添3,4,7と一緒に保管していたものであり,偽造した領収書である(尋問調書15頁,甲第24号証)。この領収書が調査活動費に関するものであることは,高橋証人が出張する際には単に出張命令書のような書式に受領印を押すだけのことであることから認められる(尋問調書21頁)。
   エ 甲第24号証別添7は情報報告書控であるが,調査活動に携わったことのない高橋証人が同文書を所持している理由は,高橋証人が調査活動費の領収書を偽造する際に領収書と一緒に受領したとしか考えられない。従って,高橋証人が同文書を所持していることは同証人の領収書偽造の証言とも符合する。
 (4)高井証人は高橋証言を否定できなかった(尋問調書42頁)。
 (5)虚偽証言の動機の不存在
   ア 高橋証人が行っていた行為は私文書偽造罪を構成し,また私文書偽造を教唆した者を実名を挙げて告発するものであり,高検庶務課長,総務課長又は事務局長との関係では名誉毀損にも該当しかねないものである。このような危険を抱えながらあえて虚偽の証言をする動機・理由は高橋証人には全くない。
     高橋証人は定年前に退職しているが,それは借財の整理のために調停手続をとることとなったが,副検事に在職しながらそのような手続きをとることは妥当でないと考え自主退職したものであり,退職に際し検察庁を恨んでいたという事情も存在しない。
   イ 告発までの心の葛藤
     高橋証人は,調査活動費の領収書偽造を告発するまでの心の葛藤を克明に述べている(尋問調書18頁,甲24)。つまり,同証人は検察庁の不正を告発することとそれによる検察庁や同僚への裏切りとの間で心が揺れていた。しかし,調査活動費の不正流用疑惑の報道に対し,森山法務大臣が「既に調査済みであり,事実無根である」とのコメントをしたとの記事に接し,「検察庁は人の人生を変えてしまうような職種であり一点の曇りも許されないところです。それだけに事実を曲げるようなことは許されません。このまま嘘をつき通して,国民を騙し続けようとする姿勢に,これではいけないと感じました。ある意味,犯罪の片棒を担いできた私自身の問題でもあったのです。」(甲24)と自責の念と正義感から告発することを決意したのであった。高橋証人の証言はこのような心の葛藤を経て最終的に正義感からなされているのであり,そこには一点の曇りもない真実が示されていると認められる。
   ウ 高橋証人の誠実さ
     高橋証人は,尋問にも誠実に答えていた。また,同証人は「二十年以上も検察庁に勤め,人一倍真面目に仕事をして来た自負がありました」(甲24)と述べるように職務遂行も誠実にこなし,だからこそ仙台高検庶務課長からも調査活動費の領収書偽造を依頼されたのであった。そして,同証人は調査活動費の領収書偽造は秘密事項だと説明されるや在職中一度も口外したことはなかった(尋問調書7頁)。このような誠実な高橋証人があえて虚偽の証言をする理由は全くないことは明らかである。
 (6)高橋証言に対する被告の反論放棄
   ア 被告は,高橋証言に対して,その内容の真偽を追及することを放棄し,「仙台高等検察庁の平成5年4月以前の調査活動費の使用状況は,いかなる観点からも,本件訴訟と関連性がない」(平成15年5月27日付け説明書等)と主張するにとどまる。
     しかし,かかる被告の態度は高橋証言に対する反証が不可能であり,同証言の真実性を認めざるを得ないことを如実に示すものである。
   イ 被告は,平成5年4月以前の調査活動費については本件とは無関係と主張する。しかし,高橋証人は仙台高検庶務課に配属された約1年後の昭和58年から米沢区検副検事であった平成7年3月31日までの間,仙台高検庶務課長等の指示により調査活動費の領収書偽造に携わった旨証言する。この10年以上もの長期に渡って秘密事項として調査活動費の領収書偽造が行われており,またその後平成10年度までの間に調査活動費の不正流用がなくなった事実を伺わせる事情は何一つ存在しないこと,平成10年度も「使い切り」であったことを併せ考慮すれば,平成10年度も同様に調査活動費の領収書偽造が行われ,仙台高検の調査活動費が不正流用されていたと当然推認される。被告の時期が異なるから関連性を有しないとの主張は,このような当然推認できる論理をも無視しようとするものであり妥当でない。
     また,全検察庁の「使い切り」の実態や後述する三井証言等を考慮すれば,かかる調査活動費の不正流用は仙台高検に限られず,仙台地検を含めた全検察庁に妥当するものと言える。
   ウ 「週間文春の取材に関する調査結果について(報告用メモ)」の不自然さ
     被告の平成15年5月27日付け説明書添付の「週間文春の取材に関する調査結果について(報告用メモ)」には,平成5年4月当時の仙台高検事務局長であった本田達雄氏の事情聴取内容が記されている。そこには,本田氏は「記憶が薄れており,当時の仕事の詳細はおぼえていない」としながら,甲第24号証別添4と同様の文書の作成を否定し,調査活動費の領収書への署名を依頼したことも否定している旨記載されている。
          しかし,記憶が薄れているとしながら,なぜ同文書の見覚えがないとか作成したことがないといった断定ができるのか甚だ疑問である。高橋証人は陳述書(甲24)添付2の文書において,調査活動費の不正流用について「口が裂けても口外するようなことはなかったと思います。加えて,退職した現在でも,当時の同僚や先輩諸氏には裏切ったと思われたくないというのが本音です。」と検察庁職員としての心情を述べているが,これはまさしく検察庁組織の体質を示しているのであり,本田氏も口が裂けても調査活動費の不正流用を口外できなかったのである。
   エ また,被告は現在に至るまで調査活動費についての法務大臣の調査結果を提出していない。このこと自体,調査活動費の実態調査を真摯に行おうとしない被告の姿勢を示すものであり,調査活動費の不正を包み隠そうとする姿勢の表れでもある。
 
10 三井環証言について
  (1)三井証言の要旨
    三井環証人は,検察庁における調査活動費は,少なくとも平成10年度までは,本来の使途ではなく,「裏金」として検事正の料亭,スナック等での飲食費,ゴルフ,麻雀等の遊興費等に充てられていた旨証言する。同証人の証言の信用性については,平成15年4月30日付け準備書面4にて述べたがここでは被告の反論に対して再反論する。
 (2)証言の信用性
   ア 外部情報提供者の不存在について
     被告は,高井・北村両証人が,司法警察員から送致される事件についても独自の情報収集が必要であるとか高井証人らが直接体験した事実を証言していることをもって外部情報提供者が実在することは明らかであると反論する(平成15年5月27日付け意見書3頁)。しかし,独自の情報収集については高井・北村両証人はその必要性を抽象的に述べるにとどまり,外部情報提供者の存在を裏付けるものとはならない。また,直接体験した事実を証言したと言っても,後述するように両証人は情報提供者の安全への配慮・工夫について具体的な証言をしておらず,体験した旨の証言もその信用性は低い。
          また,被告は,調査活動費の予算がありながら絶対にこれを使用しなかったという三井証言の不合理性を指摘する(同意見書4頁)。 
          しかし,三井証人は,調査活動費が裏金に使用されている故に本来の調査活動には使用されていなかった旨証言しているのであり,このことは前述した高橋証言や「使い切り」の事実等とも符合しており十分合理性を有するものである。
   イ 調査活動費の裏金化について
     被告は,三井証言と高橋証言が,架空の領収書の作成者,領収書の名義は架空人名義か実在人名義かという点で食い違う旨主張する(意見書5頁)。しかし,「裏金」を捻出する際に検察庁職員が領収書を偽造するという重要な点については両証言は符合している。また,偽造領収書の作成者について三井証人は,「事務局長の裁量でもって,庶務課あるいは総務課ですか,そこの職員が担当する場合もあります。」と証言しており(尋問調書12頁),これはまさしく庶務課長,総務課長又は事務局長から領収書偽造の指示があったという高橋証言と符合する。さらに,そもそも領収書を偽造する以上,領収書の名義が架空人名義か実在人名義かは根本的な問題ではない。従って,この点に関する被告の反論は失当である。
     また,被告は,三井証人は調査活動費の支出手続ないし基本構造について無理解であり,調査活動費の支出手続に関与したことがなく実態を知らない旨反論する(意見書6頁以下,第6準備書面21頁以下)。しかし,そもそも正当な調査活動費の支出手続が行われていたかは明らかではない。また,調査活動費が最終的には事務局長が保管されていたこと及び調査活動費の帳簿を事務局長がつけていたことは争いないところと思われる。そして,三井証言のポイントは調査活動費は裏金であり,裏金化,つまり事務局長のところに回る調査活動費を検事長等が自由に使用できるようにするために領収書の偽造が行われていたという点であり,これは高橋証言と符合する。
    ウ 調査活動費の使途(不正流用)について
        三井証言によれば,裏金化された調査活動費は,最高検検事等の接待等に使用されていた。これに対して,被告はかかる接待費が調査活動費から支出されたという点についての具体的証言がないと反論する(意見書8頁)。しかし,三井証人は裏帳簿により調査活動費の支出先や金額を確認し,また検察庁職員が領収書等を偽造しているところを見た経験から上記接待費が調査活動費から支出されていると証言しているのであり,十分具体的である。
     また,スナックのママや料亭の女将が事務局長のところへ集金に来たという三井証言に対して,被告は,検察庁の職員が使用した飲食店の従業員が検察庁を訪れたことをもって事務局長のところに集金に来たと結論づけるに過ぎず,具体性に欠ける旨反論する(意見書9頁)。しかし,飲食店の従業員が集金以外に検察庁に来る理由があろうか,また事務局長以外のところに尋ねる理由があろうか,被告の反論は常識を無視したものであり失当である。
     さらに,被告は高井証言により懇親会の経費が会議費から支出することが多かったと反論する(意見書9頁)。しかし,高井証人は単に人から会議費から出ているというようなことを聞いただけであり(高井証人調書30頁),それが真に会議費から出ていたのかは明らかではない。従って,この点についての被告の反論も失当である。
   エ 対策会議及び調査活動費マニュアルについて
     被告は本マニュアルの存在を確認することができなかった旨主張し,また本マニュアルが三井証人が証言するように平成11年2同月頃に配布されていれば北村証人も引き継いで受領しているはずであるところ北村証人は本訴訟後初めて見た旨主張する。
     しかし,まず本マニュアルの作成時期について,前述したように,①法務省において遅くとも平成10年9月時点で情報公開法への対応が検討されていたこと,②マニュアル添付の資料2の「情報交換会関係」事項の「調査活動費により支出する理由」欄に「平成11年度予算から公安関係の調査活動費を削減したため・・」との記載があること,③平成11年3月になり突如「情報交換会経費」が正式証明で計上されていること,に鑑みると,平成11年2月に作成したと推認できる。
     また,本マニュアルは上述のように情報交換会経費といった当時の法務省しか知らない情報が含まれており,本マニュアルが法務省から配布されたという三井証言を併せ考慮すると,本マニュアルの作成者は法務省と推認される。従って,本マニュアルは平成11年2月頃に法務省が作成したものと推認でき,これは三井証言とも符合する。また,北村証人が見たことがないことをもってマニュアルが配布されていないと主張することには論理の飛躍があり,苦し紛れの弁解としか言いようがない。
          調査活動費は被告の主張によれば昭和34年から存在していたと認められるところ(第4準備書面25頁),調査活動費と謝金,会議費等区別を要する費用も存在していたことに鑑みれば,その区別の必要性は調査活動費ができた頃から存在したと思われる。そうだとすれば,本マニュアルは調査活動費ができた頃から作成されていてしかるべきものである。しかるに,実際には平成11年2月頃に作成されているのである。これは,平成11年2月頃になってようやく他の謝金等との区別の必要性が生じたからに他ならないことを如実に示すものであり,それまでの調査活動費が裏金に回されていたことを強く推認させるものである。そして,前記三井証言はこの客観的に推認される事実ととも符合する。
   オ 虚偽証言の動機の不存在
     被告は,三井証人は,かつての上司に対する人事上冷遇された 怨恨や刑事被告人としての立場等から検察をおとしめて自らの立場を少しでも良くしようなどとの動機に基づく虚偽の証言・供述をしているとしか考えられない旨主張する。しかし,三井証人は地方自治体や外務省では裏金作りが公表され返還されている一方,犯罪を取締り真実を追及するべき検察庁がいまだに調査活動費の不正流用は事実無根であると虚偽の弁解を繰り返していることに対し,これではいけないと思い告発・証言しているのである(尋問調書21頁,甲25)。それは高橋証人と同様,検察官としての正義感から出ているものである。また,三井証人は逮捕前に既に実名で検察庁の裏金作りをマスコミに公表すべく準備をしていた。人事上冷遇された怨恨が動機であればわざわざ実名まで公表する必要はないはずであり,実名で公表すること自体同証人の正義感,不正追及の決意が表されている。従って,被告の主張は殊更に三井証人の人格を非難しようとしているものにすぎず失当である。
 (3)全国一律の裏金づくり
    以上検討したところによれば,調査活動費が裏金に回されているという三井証言は十分信用できる。そして,前述した調査活動費マニュアルや対策会議,高知,高松各地検での裏金づくりの事実に鑑みれば,調査活動費の裏金化は全国一律になされていたと推認できる。
 (4)まとめ
       三井証言のポイントは調査活動費が裏金に回され,検事正等の飲食費,麻雀,ゴルフ代等に支出されていたこと,また平成11年2月頃にそれまで裏金としてしか使用されなかった調査活動費の適正な支出を周知させるべく調査活動マニュアルが作成され配布されたこと,そして調査活動費の不正流用については前述した高橋証言とも符合するという点である。そして,これらの点について,被告は明確な反証をできていない。すなわち,三井証人が実際に体験した最高検検事や高検検事の接待飲食費について,調査活動費により支出されたものではないことを反証せず,会議費から支出された可能性を主張するにとどまる。しかし,料亭やスナックの費用が会議費から支出されることは常識的に想定しがたいことは明らかであり,ここに被告の弁解の不合理性が示される。

11 高井新二証言及び北村道夫証言について
 (1) 高井証人及び北村証人は,調査活動費の不正流用がない旨証言する。しかし,前述するように,高井・北村両証人は,調査活動費の具体的支出の場面についてはほとんど知らず,ただ調査活動費が適正に支出されているという上辺だけの証言をしているにとどまっており,真に適正に支出されているかについて裏付ける証言など何一つしていないと言わざるを得ない。
 (2) 使い切りの理由について不明瞭な証言
   ア 調査活動費が使い切られている理由について,高井証人は検事長から「計画的に効率的に執行している」とだけ聞いている旨証言する(高井尋問調書27頁)。また,北村証人も「効率的な執行をした」とのみ証言する(北村尋問調書34頁)。
     前述したように,調査活動費の「使い切り」の事実はそれ自体目的外使用を推認させる事実であり,少なくとも目的外使用を疑わせる事実である。そして,通常であれば,使い切りの事実が判明した時点でその原因を分析し,また真に適正な支出がなされていたかを確認するはずである。にもかかわらず,両証人は「計画的に効率的に執行された」という抽象的な回答のみをもって問題なしとし,本件訴訟提起後尋問期日に至るまで使い切りの原因分析を行った形跡がない(高井証人は検事長から上記説明を受けたのみと証言している)。このこと自体,検察庁が「使い切り」の原因究明を放棄し,調査活動費の目的外使用をひた隠そうとしていることの証左である。
   イ また,北村証人は,仙台地検の調査活動費が平成10年度の840万円から平成12年度は約300万円,平成13年度は約220万円と減額されていることについても,検察権行使に支障はなく,減らされちゃったかなという感じを抱いた旨証言する(尋問調書34頁)。平成10年度まで840万円もの調査活動費を使用していたのが3分の1程度にまで減少しても,効率的な執行ができること自体疑問であるが,その減少についても「減らされちゃったかな」という程度の認識しか抱かないこと自体不自然である。
 (3)調査活動の障害に関する不明瞭な証言
   ア 高井証人は,協力者への謝金の受け渡し場所について検察庁の庁舎内なのか外なのか「分かりません。」と証言している(尋問調書45頁)。また,協力者と面会する場所について工夫をしているかとの質問に対しても「分かりません。」と証言している(尋問調書46頁)。さらに,高井証人は,開示された文書と他の情報を照合されることにより協力者の特定がなされるおそれがある旨証言するが(尋問調書7頁),例えば過激派の者と検察庁の職員が面会しているところを過激派に現認されればその時点で協力者が判明するのではないかという質問に対し,「そういう素朴な質問には,ちょっと,お答えできないですね。」と証言を拒否している(尋問調書38頁,39頁)。調査活動において協力者の秘密を保持することが最重要だとしながら,具体的に協力者の秘密が露呈してしまうようなケースに対する質問に対し,上記回答しかできないというのは極めて不自然である。なぜなら,協力者の秘密を保持するというのであればそれなりの工夫をしているはずであり,上記質問に対してもきちんとこういう工夫があるから問題がないなどといった回答があるべきであるからである。高井証人が上記のような証言しかできないということは,実際には協力者はおらず調査活動費が目的外使用されているとことを推認させるものと言える。
   イ 北村証人も,協力者との接触について,電話やメール等監視の目がかからないようなことをしているのかとの質問に対し,基本的に面会する旨証言し,過激派等からの監視に対する配慮・工夫について明確に証言をしなかった(尋問調書42頁)。なお,北村証人は自己の経験として検察庁に協力していることが分かると仕事ができなくなるとか情報公開法施行後協力を遠慮したい旨の話があったと証言する。しかし,そうであればなおのこと協力者が判明されないような配慮・工夫を検討していてしかるべきところ,そのような工夫については証言をしていない。従って,北村証人が経験したという話も具体性に欠けると言わざるを得ない。
   ウ 結局のところ,両証人とも調査活動費に関する文書を一部でも開示すると協力者等の特定につながり調査活動の障害になる旨を抽象的に述べるにとどまり,調査活動の障害防止のための工夫等を行っているかといった現実的具体的な事項については何も知らないことを露呈している。そして,このことは検察庁自体が調査活動費による調査活動の実態が存在せず,調査活動費は目的外に使用されていることを推認させる事情となる。
 (4)調査活動費の支出内容について
   ア 北村証人は,協力者への謝金の支払いについて,検察庁職員(局長を含めた事務官)が協力者に対し謝金を支払うことが多かったのではないかと思う旨証言し,また謝金の支払い場所については検察庁の庁舎外もある旨証言する(尋問調書45頁)。
     しかし,北村証人は庁舎外で会う場合に喫茶店やレストランで会うこともあるのかとの質問に対しては「言えません。」と証言を拒否している。この点,公安調査庁に対する同種の訴訟において,公安調査庁はコーヒー代等の飲食費も調査活動費から支出される旨明らかにしており,抽象的に喫茶店やレストランという程度の場所を証言することは守秘義務に抵触しないと言える。にもかかわらず,証言拒否する北村証人の態度は不自然・不合理であり,調査活動費の適正支出の実態がないことを示すものといえる。
     また,北村証人は,協力者と会った際のコーヒー代等の飲食費も調査活動費から「理論的に出ないかどうかというのは,出る場合もあるかも知れません。」と証言する(尋問調書46頁)。しかし,仮にコーヒー代等も調査活動費から支出されていたとすれば当然コーヒー代等に消費税が加算されるため端数が生じるところ,平成10年度の調査活動費は7庁を除いた仙台地検・仙台高検を含む全ての検察庁において端数が生じていない。従って,少なくとも端数の生じていない検察庁ではコーヒー代等は支出されていないと推認できる。常識的に考えて,庁舎外で会う場合にはコーヒー程度の飲食はあるはずである。しかるに,庁舎外で会う場合があるとしながらコーヒー代等の支出の形跡がないという事実は,実際に協力者と面会したという事実の不存在を推認させるものと言える。
   イ 北村証人は,平成11年度以降は協力者への謝礼のほかに情報交換会にも調査活動費が支出されるようになったと証言するが,具体的に情報交換会が実施されたのかとの質問に対しては「記憶にありません。」などと不明瞭な証言をする(尋問調書23頁)。また,同証人は,同証人は報道機関の取材攻勢とともに捜査予定が事前に報道されることが平成11年度を迎えるに際して続発したかとの質問に対して,「知りません。」と証言しており,平成11年度から内偵調査の実費について調査活動費で賄うようになった背景として捜査予定の事前報道があったという被告の主張(第5準備書面16頁)に反している。
     平成10年度までは謝礼のみだった調査活動費が平成11年以降は情報交換会や内偵調査実費にも支出されるようになったことは調査活動費の内容の大きな変化であると思われる。その変化の背景や変化後の実態について明確な証言ができないということは,守秘義務を考慮しても不自然であることは否めない。
 (5)調査活動費マニュアル(甲26)の内容を否定できない。
    以上のように,高井・北村両証人は,調査活動費が適正に支出されていることを裏付ける事実を何一つ明らかにできなかった。他方,三井証人が平成11年2月頃に名古屋高検会議室において配布されたと証言する調査活動費マニュアル(甲26)の内容について,高井・北村証人とも誤りを指摘できなかった(高井尋問調書31頁,北村尋問調書40頁)。かかる事実は,マニュアルの内容が正に法務省の見解と同一のものであることを推認させるものであり,三井証人がした調査活動費マニュアルはそれまで調査活動費が裏金に使用されていたためこれを中止すると調査活動費の正規の使途が分からないため法務省において作成された旨の証言(尋問調書16頁)を裏付けるものといえる。
 (6)まとめ
    以上より,高井証人及び北村証人の各証言は,調査活動費が裏金として目的外に使用されていたという高橋証言及び三井証言の裏付けにこそなれ,高橋証言及び三井証言を否定し調査活動費が適正に支出されていたことの証拠にはなり得ないものである。

12 三井元大阪高検公安部長(以下「三井元検事」という。)の不当な逮捕・起訴は,調査活動費による裏金づくりの「自白」にあたる。
  (1)三井元検事と調活費との関わり及び同人がこれを告発しようと決意するまでの経過と逮捕時期の異常性
     三井元検事と調活費との関わり及び同人がこれを告発しようと決意するまでの経過については,甲第33号証(「告発!検察『裏金作り』」11~14頁,34~46頁,60~77頁,80~92頁,甲第43号証(平成15年2月25日付人事院公平委員会に対する請求人の反論書)の10~25頁に詳しく述べられているが,特徴的なことは,テレビ朝日「ザ・スクープ」の鳥越俊太郎キャスターのインタビューを収録する予定であった平成14年4月22日の当日に逮捕されたということである。三井元検事が「大阪高等検察庁公安部長」という肩書きのまま,実名で検察の組織的な裏ガネ作りをマスコミなどに公表するべく,朝日新聞,共同通信,産経新聞,毎日放送(MBS),NHK,「週間金曜日」「週間新潮」「週間文春」「噂の真相」などと接触し,準備を進めていることを察知しての口封じであることは,このことからも明らかである。
  (2)逮捕に至る捜査の異常性
     この点は,甲第33号証の178~191頁,甲第44号証38~39頁に述べられているが,三井元検事の逮捕がいかに異常であったかは,大仲検事の「捜査報告書」のみによって逮捕状が交付されていること,その「捜査報告書」が渡眞利の「情報メモ」に競売マンションの落札に関する民事記録をつなぎあわせた作文に過ぎないこと,内偵捜査による関係者の任意の事情聴取による証拠固めが一切行われていないこと,被疑者本人からの事情聴取を一切行わずいきなり逮捕されたことからも容易に理解されるところである。
  (3)逮捕容疑の不存在
     この点は甲第33号証194~209頁,甲第43号証25~  34頁,甲第44号証4~33頁に詳しく述べられているが,これを見れば明らかなように,公訴事実そのものが存在しない。さらに重要なことは,甲第43号証41頁以下で述べられているように,検察が三井元検事を逮捕・起訴するために,あろうことか指定暴力団に利益を供与し,協力を得た疑いが濃厚となってきたことである。
  (4)起訴後の公判によって明らかになったこと
     現在公判は弁護側の立証に移っている。原告代理人(小野寺信一)は,8月22日に荒川洋二弁護士(元大阪高検検事長で,贈賄側の渡眞利,亀谷側と接触した人物)の尋問を傍聴した。特徴的であったことは,三井元検事のスキャンダルについては,荒川洋二弁護士が,その情報が事実かどうかはっきりしない段階で,情報提供した相談者に断りもせずに,その日のうちに管理責任を問うために大阪高検に持ち込んでいるのに比べ,「噂の真相」に書かれた加納検事の調活費の不正については,一切腰を上げなかったことである。
     「噂の真相」が虚偽情報であるならば,検察庁に対する国民の信頼を崩壊させかねない重大問題である。にもかかわらず,他の週刊誌や新聞が次々に調活費を取り上げ「虚偽情報」が蔓延するのを,証人だけではなく,他の検察OBも何もせずにながめ続け,検察庁に名誉毀損で捜査するようアドバイスするなり,加納検事に民事の損害賠償請求を起こすよう勧めるなどの行動を一切とらなかったのである。これは,三井元検事のスキャンダルを耳にした後の荒川弁護士の素早い対応と明らかに矛盾することである。
     この著しい対比を合理的に説明できる理由は,「噂の真相」等の雑誌の記事が正しかったこと以外にはあり得ないのである。
  (5)結論
     三井元検事を口封じのために逮捕・起訴し,「噂の真相」などのマスコミ報道については,名誉毀損で捜査することもなく放置した検察庁の一連の対応は,調活費による裏金づくりを自白していることに等しい。
第3 5条4号の該当性についての司法審査のあり方
 
  1 被告が主張する行政事件訴訟法30条適用論の誤り
    ア 被告は,「情報公開法5条4号に定める公共の安全等に関する情報の該当性の判断については,行政庁に比較的広範な裁量権が付与されていると解さざるを得ない。したがって,この判断については行政事件訴訟法30条が適用され,これに対する司法審査は,処分の存在を前提として,当該処分に社会通念上著しく妥当性を欠くなど裁量権を逸脱,濫用したと認められる点があるかどうかを審査する方法によるべきである。裁判所が行政庁と同一の立場から当該処分に係る判断をし,その結果と行政庁の処分とを比較して,処分の適否を審査する実体的判断代置方式を採ることは許されないというべきである。」と主張する。
     被告の主張は,要するに,「裁量権の逸脱又は濫用」があるという極めて例外的な場合以外には,5条4号該当性が認められ、不開示処分が維持される、というものである。
    イ しかしながら,5条4号は,例外事由として,「相当の理由」の存在を要求しているのであるから,裁判所は,行政機関の長の判断を尊重すべきではあとしても,「裁量権の逸脱・濫用」だけでなく,開示拒否の根拠が具体的に示されているかどうかをきちんと審査すべきであり,行政機関の長の判断に合理的な疑問がありさえすれば(「裁量権の逸脱・濫用」とまでは言えない場合であっても),いつでも「相当の理由」がなかったと判断する余地が残されているというべきである(松井茂記「情報公開法」[有斐閣]250頁)。
        たしかに,「支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることについて相当の理由がある情報」との5条4号の表現は,司法審査の場においては,裁判所は,5条4号に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうか(「相当の理由」があるか)どうかのみを審理・判断すきだという趣旨であると解されている。
     原告としても,立法政策の問題としてはともかく,5条4号の文言を前提とすれば,司法審査のあり方についての上記解釈論は認めざるを得ない。
        しかしながら,「その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうか(「相当の理由」があるか)どうかのみを審理・判断するということ」と被告が主張する「当該処分に社会通念上著しく妥当性を欠くなど裁量権を逸脱,濫用したと認められる点があるかどうかを審査するということ」とは,同義ではない。後者では,前者よりも,司法審査の範囲が著しく狭められており,被告の上記主張は,「相当の理由」の存在を要求する同号の文言を無視して,「原則公開,例外非公開」の情報公開の理念に反して,例外事由を不当に拡大するものであり,失当というほかない。
        情報公開法についての国会審議の過程においても,「この規定(5条4号)に該当するような場合であっても,まず行政機関の長は,相当の理由の有無についてこの法律の趣旨に沿って適正に判断すべきであり,また,裁判所の司法審査を一切排除するものではなく,裁判所は,行政機関の長の判断が合理性を持つ判断として許容される範囲内のものであるかどうかを審査することになるので,行政機関の恣意的な運用を許容するものではない。」との政府答弁がなされている(畠基晃「情報公開法の解説と国会論議」64頁 )。 
        原告の解釈が立法者の意思に合致し,被告の解釈が立法者の反することは明らかである。
        また,アメリカ情報公開法のもとでの経験に照らしても,5条4号の例外事由は濫用の危険性が高く,行政機関の長の判断を鵜呑みにすれば,警察や検察の活動がすべて情報公開から抜け落ちてしまうとの指摘がさなれているが(松井茂記「情報公開法」[有斐閣]260頁),被告の上記主張によれば,裁判所は,「裁量権の逸脱・濫用」があるという極めて例外的な場合以外には,行政機関の長の判断を鵜呑みにせざるを得ないことなり,その不当性は,もはや議論の余地がないほど明らかである。
   ウ 島根地判平成14年4月23日判決(甲28),及び広島高判松江支部平成15年3月14日判決(甲29)
        法5条4号と全く同様の規定の仕方がされている鳥取県情報公開条例について,島根地判平成14年4月23日判決は,自由裁量を否定し,その控訴審である広島高判松江支部平成15年3月14日判決も(控訴人が本件における被告と全く同じ主張をしたのに対し)「控訴人は本件条例9条2項4号の文言に基づき非開示情報該当性について,実施機関に裁量権があることを主張するが,同号の非開示情報に該当するというためには,公共の安全と秩序の維持などに支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があるといえる場合なのであって,相当の理由の有無についての判断には実施機関の裁量が働く余地はなくこの点についての控訴人の主張は採用できない」と明解に判示している。
  エ 情報公開審査会の答申例
        情報公開審査会の答申例を見ても,審査会は,行政機関の長に「相当の理由」の存在について主張立証させたうえで,行政機関の長の判断について合理的な理由があるか否かについて,具体的事実に即して判断を下しているのであって,裁量権の逸脱又は濫用がある場合以外には,5条4号該当性を認めないない等という考え方は採用していない。
       
  2 「相当の理由」についての立証責任
    ア 被告の主張
     被告は,行政事件30条が適用されることを前提として,「5条4号のように,行政機関の長に裁量権が付与されており,その適否に関する裁判所の審査は,行政庁の第一次的判断権を尊重し,それが合理性を持つものとして許容される限度内のものであるかどうかという観点からされるべき場合には,行政事件訴訟法30条が適用されるものであるから,裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったことを基礎づける事実については原告が主張立証責任を負担するというべきである。」,「これを主張立証の構造に即して述べれば,被告が,抗弁として,当該行政文書に『情報』が記録されていること及び被告が当該「情報」が同法5条4号に該当するという点に関する判断について裁量権を行使し,その充足を認めたことを主張立証した場合,原告において,再抗弁として,被告の判断が裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったことを基礎づける事実を主張立証しなければならないのである。」と主張する。
    イ しかしながら,5条4号は,例外事由として,「相当の理由」の存在(合理性を持つ判断として許容される限度内のものであること)を要求しているのであり,「裁量権の逸脱又は濫用」があるという極めて例外的な場合に限り,5条4号該当性が認められるという被告の主張が誤りであることは,前述のとおりである。
        したがって,問題となるのは,「相当の理由」についての主張立証責任の所在であるが,「相当の理由」についての主張立証責任は,以下の理由により,他の例外事由と同様,行政機関にあると解すべきである(松井茂記「情報公開法」[有斐閣]249頁,263頁)。
        すなわち、まず,不開示処分により,当該文書の内容を知りえない原告が,「相当の理由」が存在しないことを立証することは,極めて困難ないしは事実上不可能である。それにもかかわらず,原告が「相当の理由」についての主張立証責任を負うとすれば,ほとんどの場合,行政機関の長が5条4号に該当するとして行った不開示処分が維持されてしまうことになりかねない。そのような結果が,「原則公開,例外非公開」の情報公開の理念に反することは明らかである。
      本件の場合も,たまたま高橋徳弘氏や三井環氏のような内部告発者が存在したからこそ,原告は,目的外支出の存在とそれを隠蔽するための不開示処分であるとして,「相当の理由」の不存在を主張立証しているが,そのような内部告発者の存在しない通常のケースにおいて,原告が「相当の理由」の不存在を主張立証することは,到底不可能である。
        「原告において,再抗弁として,被告の判断が裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったことを基礎づける事実を主張立証しなければならないのである。」という被告の主張は,原告に不可能を強いて,情報公開制度を否定しようとするものであり,論外である。
        他方,不開示処分を行なった行政機関の長が,「相当の理由」が存在すること,すなわち,不開示の判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであることを立証することは,さほど困難なことではない。   
        また,行政機関の長において,不開示の判断の合理性を立証することは,「説明責務」(法1条)の観点からも,当然の要請である。
        しかも,「裁判所は,5条4号に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうか(「相当の理由」があるか)どうかのみを審理・判断すきだということ」と行政機関の長に例外事由についての主張立証責任を負わせることとは,何ら矛盾抵触するものではない。
        したがって,「相当の理由」が存在することの立証責任は,他の例外事由と同様,行政機関にあると解するのが合理的かつ相当である。
        なお,国会答弁においても,「行政機関の長の第一次判断が,合理性を有する範囲内のものかどうかといった点については,行政機関の方で立証する。」として,「相当の理由」が存在することの立証責任が,行政機関にあることが認められているのであり(畠基晃「情報公開法の解説と国会論議」64頁 ),被告の上記主張は,国会審議の経過,立法者意思を無視するものであり,失当である。
 
  3 「相当の理由」の有無の判断基準
    ア 「相当の理由」があったどうか(行政機関の長の判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうか)は,守秘義務について問題とされる実質秘性の3要件を充足するか否かによって判断するのが妥当である(松井茂記「情報公開法」[有斐閣]250頁,262頁)。行政機関の長の第一次判断を尊重しなければならないとしても、不開示とする情報が実質秘性の3要件を充足しない場合にまで、行政機関の長の判断が合理性と持つ判断として許容される限度内であるとは認められないからである。
  イ すなわち,まず第1に,非公開とすべき情報が未だ公知の事実で
      はないことが要求される。
    ウ 第2に,非公開とすべき必要性が要求される。非公開とする必要性もないのに、不開示とする行政機関の長の判断に合理性を認める余地はないからである。必要性の有無は,当該行政文書を開示した場合に,どのような害悪が生じるかを検討して判断すべきことになる。
    エ 第3に,行政文書に記載されている行為が適法であることが要求される。すなわち,いかなる理由であれ,違法な行為を秘密として保護すべき相当性はないから,行政文書に記載されている行為が違法は行為である場合は,これを非公開とすることは許されないというべきである。
  オ 以上のとおり,「相当の理由」が存在するとして5条4号該当性が認められるためには,実質秘性の3要件が必要であり,3要件が存在することについての主張立証責任は,被告(行政機関の長)にある。

第4 5条4号該当性(「相当の理由」の有無)について
 
  1 情報の単位の問題
    被告は,「不開示情報該当性は,情報の構成要素にすぎない支払年月日,支払金額,使用目的,取扱者等の個々の記述について微視的に判断するのではなく,個々の支払ごとにまとまった一個の情報について判断すべきである。」と主張する。
    しかしながら,そのような主張が失当であることは,原告の平成15年9月9日付け準備書面で詳細に主張したとおりである。
    支払年月日,支払金額,使用目的,取扱者等の個々の記述毎に,不開示情報該当性を判断すべきである。
 
 2 本件支出明細書について
 (1)被告は,「これらの情報は,公になると,調査対象者又は一般人が入手できる情報と照合・分析されることにより,検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認され得るものであって,その場合,調査活動に対する妨害,罪証隠蔽工作などが行われ,あるいは協力者への危害等が加えられることにより,今後の調査活道が阻害され,ひいては検察権の適切な行使が妨げられるおそれがある。」と主張する。
 (2)違法行為の記載(実質秘性の第3の要件の欠如)
        前記第2で詳細に主張したとおり,本件支出明細書に記載された調査活動費の支出は,その全部が違法な目的外支出である。
        少なくとも,目的外支出されたものではないかとの合理的な疑いを差し挟む余地が十分あり,そして,被告は,違法な目的外支出ではなく,適法な支出であることについての十分な主張立証を行っていない。
    したがって,本件支出明細書については,「行政文書に記載されている行為が適法であること」という実質秘性の第3の要件の立証がないので,5条4号の「相当の理由」を認める余地はないというべきである。
 (3)必要性(実質秘性の第2の要件)の欠如
   ア 本件支出明細書の記載事項は,「支払年月日」,「支払金額」,「使用目的」,「取扱者」,及び「備考」である。それら記載事項それ自体から,「検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者」が明らかになることはない。それゆえ,被告も,「調査対象者又は一般人が入手できる情報と照合・分析されることにより,検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認され得る」と主張している。
     しかしながら,被告は,①「調査対象者又は一般人が入手できる情報」とは具体的にどのようなものであるのか,②その情報と本件支出明細書の記載事項とを照合・分析すると,どのようにして,「検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者」が推認され得るのか,について,何ら具体的な主張立証を行っていない。
   イ 支払年月日について
     そもそも,支払年月日を公開すると,どのようにして検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認されるのかについて,被告は,何ら主張立証していない。
          なお,高井陳述書(乙32)の5頁には,「謝金の支払日は,検察庁が協力者と接触した日であるので,これにより,例えば,その日に検察庁の庁舎を訪れていたり,検察庁の外での検察庁の職員と面談していたりした部外者が,協力者であると推認できるからです。」と記述がある。
     上記設例は,過激派組織等の調査対象者において,協力者が,謝金の支払日に、検察庁の庁舎を訪れていたり,検察庁の外で検察庁の職員と面談しているところを現認していることを前提とするものであるが,そのような現認の時点で,すでに協力者であると推認されるのであり,支払年月日の公開と協力者が判明することとの間に因果関係を認める余地はない。
   ウ 支払金額について
     支払金額についても,それを公開すると,どのようにして検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認されるのかについて,被告は,何ら主張立証していない。
          北村証人も,支払金額と他の情報を照合・分析しても,協力者の絞り込みができないことを認めている(証人調書42頁)。
   エ 取扱者について
     取扱者としては,調査活動の担当者ではなく,次席検事か事務局長が記載されるのであるから(乙2の2),取扱者と調査対象者又は一般人が入手できる情報とを照合・分析しても,検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認され得る余地はないはずである。
   オ 使用目的について
     使用目的は,「日共集会」,「右翼街宣」といった極めて抽象的かつ概括的な記載にすぎない(三井証言,高井証言,北村証言)。
     検察庁が,日本共産党,右翼団体,過激派集団を調査対象としていることは,公知の事実であり,何ら秘密ではない(実質秘性の第1の要件の欠如)。
     また,「日共集会」,「右翼街宣」といった極めて抽象的かつ概括的な記載と調査対象者又は一般人が入手できるいかなる情報とを照合・分析すれば,検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認され得るのかについては、被告は、何ら具体的な主張立証を行っておらず,原告には,皆目見当がつかない。
   カ 以上のとおり,本件支出明細書の各記載事項については,実質秘の第2の要件を認めることはできない。
 (4)以上の理由から,本件支出明細書については,5条4号該当性を認
      める余地はない。

 3 本件領収書
 (1)被告は,「本件領収書は,調査活動費の受領者が,その都度作成し,
      検察庁に提出するものであって,その受領年月日,受領金額,受領
      者の氏名(印影も含む。)等が記載されており,いつ,だれが,い
      くらの報酬を受け取ったかがわかる内容となっている。」,「これ
      らの情報は,公になると,調査対象者又は一般人が入手できる情報」
      と照合・分析されることにより,検察庁の調査活動の内容,対象,
      目的及びその協力者を推認され得る。」と主張する。
  (2)違法行為の記載(実質秘性の第3の要件の欠如)
        本件領収書に記載された調査活動費の支出は,その全部が違法な目的外支出であることは,本件支出明細書と同様である。
        少なくとも,違法な目的外支出ではないかとの合理的な疑いを差し挟む余地が十分あり,しかも、被告は,違法な目的外支出ではなく,適法な支出であることについての十分な主張立証を行っていない。
    したがって,本件領収書も,本件支出明細書と同様, 「行政文書に記載されている行為が適法であること」という実質秘性の第3の要件の立証がないので,5条4号の「相当の理由」を認める余地はないというべきである。
 (3)必要性(実質秘性の第2の要件)の欠如
   ア 受領年月日
     「受領年月日」は,支払明細書記載の「支払年月日」と同一の年
        月日であるが,被告は,「支払年月日」と同様,それを公開すると,
        どのようにして検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力
        者を推認されるのかについて,何ら主張立証していない。
      イ 受領金額
          「受領金額」は,支払明細書記載の「支払金額」と同一の金額であるが,被告は,「支払金額」と同様,「受領金額」についても,それを公開すると,どのようにして検察庁の調査活動の内容,対象,目的及びその協力者を推認されるのかについて,何ら主張立証していない。
      ウ 受領者の氏名(印影も含む。)
        「受領者の氏名」を公開すると,たしかに,協力者が判明することは否定できない。
         しかしながら,前述のとおり,本件領収書に記載された調査活動費の支出は,その全部が違法な目的外支出であり,実質秘性の第3の要件を欠くので,「受領者の氏名」についても,5条4号の「相当の理由」を認める余地はないというべきである。
 (4)以上の理由から,本件領収書についても,5条4号該当性を認める
      余地はない。
      
第5 5条1号該当性について
 
 1 虚偽情報についても5条1号が適用されるか
   第2記載のとおり,本件支出明細書及び本件領収書に記載された調査活動費の支出は,いずれも違法な目的外支出であり,各記載内容は,すべて虚偽である。そこで,虚偽情報についても,5条1号を適用する余地があるのか否かが問題となる。
   東京地裁平成9年9月25日判決は,東京都公文書開示等に関する条例に関するものであるが,「自己の名を不正に冒用されたという事実そのものは,被冒用者にとって不快な出来事であることは明らかであり,また,その公表を望まない情報であると一般に推認することができ,他面,この情報を公開することが,被冒用者の名誉を毀損するおそれも否定できない」として,虚偽情報であっても個人情報該当性を認めている。
   しかしながら,被冒用者が虚偽情報の作成に一切関与していないのであれば,被冒用者は,そのことを説明することによって,名誉の毀損を免れることができる。他方,被冒用者が虚偽情報の作成に関与しているのであれば,虚偽公文書作成の共犯者となり,たとえ,虚偽情報の開示によって,被冒用者の名誉が毀損されることになったとしても,名誉毀損について違法性が阻却される(そもそも,虚偽公文書作成に加担した者を保護する必要性はないといえる。)。
   したがって,名誉の毀損を理由として,虚偽情報について5条1号該当性を認める必要性はない。
   以上のとおり、本件支出明細書及び本件領収書については,そこに記載された調査活動費の支出が,いずれも違法な目的外支出であり,各記載内容がすべて虚偽である以上,5条1号を適用する余地はない。
 
  2 本件支出明細書
  (1)協力者が特定される可能性
        被告は,「本件各支払明細書の明細部分の記載は,それのみで協力
      者を特定し識別することができる記述等とはいえなくても,これが調査対象者に伝わった場合,彼らの有する情報と照合され,協力者が特定される可能性がある(モザイクアプローチ)。そこで,本件各支払明細書の明細部分に記載された情報は,協力者の個人識別情報に該当する。」と主張する。
    しかしながら,「支払年月日」,「支払金額」,「使用目的」,「取
      扱者」,及び「備考」といった本件支払明細書の明細部分の記載か
      ら協力者が特定されるとは考えられないことは,前記第6の「5条
      4号該当性について」で述べたとおりであり,被告は,協力者が特
      定される可能性について,何ら具体的な主張立証をしていない。
 (2)取扱者の官職と氏名
    取扱者欄には,官職名(次席検事か事務局長)と氏名が記載されている(高井証言 調書34頁)。
    官職名については,5条1号ハに該当することが明らかであり,不開示とすることは許されない。
    また,氏名についても,官職名が,次席検事と事務局長に限定されており(乙2の2),当時の次席検事と事務局長の氏名は,職員録や新聞報道の人事異動記事で公表されているのであるから,取扱者欄に記載された次席検事及び事務局長の氏名は,5条1号イの「公にすることが予定されている情報」に該当することが明らかであり,不開示とすることは許されない。

 3 本件領収書
  (1)受領年月日,受領金額
        被告は,「支払明細書の明細部分について前述したのと同様,本件
      領収書の受領年月日,受領金額等は,個人情報に該当する」と主張する。
        しかしながら,本件領収書の受領年月日,受領金額という記載から
      協力者が特定されるとは考えられず,被告は,協力者が特定される可
      能性について,何ら具体的な主張立証をしていないことは,本件明細
      書について前述したとおりである。
  (2)受領者の氏名・印影
        受領者の氏名・印影については,たしかに、5条1号の個人情報である。
        しかしながら,前記1で述べたとおり,本件領収書の記載は虚偽情報であり(受領者に受領年月日に受領金額が支払われた事実はない。),5条1号を適用する余地はないというべきである。
 
第6 裁量権の濫用・逸脱
     前記第2で詳細に主張したとおりであり、仙台高等検察庁の平成10年度の調査活動費の支出の全部又は相当部分が違法不当な目的外支出である以上、本件不開示処分については、以下に述べるとおり、裁量権の濫用・逸脱が認められることになる。

 1 裁量の逸脱と濫用
   勿論,裁量といえども無制約に認められるわけではない。行政庁が裁量権を逸脱し〔平等原則を踏みにじったり,国公立大学において或る学生に懲戒に該当する事実がないのに懲戒として退学処分にする〔最三小判昭和29年7月30日民集8巻7号1463頁などが,裁量権の逸脱の例である〕,または濫用した場合には,違法となる。行政事件訴訟法第30条はこのことを確認的に規定する。これは,主に,裁量に対する実体的統制(裁量権行使の内容に関する統制と言い換えられるであろうか)の問題となる。
   逸脱と濫用とは,判例上は明確に区別されていないが,濫用は,裁量権の範囲に留まる場合であっても,恣意的に,著しく不公正な行為を行った場合に認められる。

 2 裁量に対する統制―司法審査における裁量の扱われ方―
    ア 裁量に対する司法審査の方法として,大別すれば,裁量の実体的側面を審査する場合と手続的側面を審査する場合とがある。
  イ 実体的側面を審査する場合について
① 重大な事実誤認
          これは裁量権行使が事実上の根拠に基づかない場合である。当然のことであり,裁量行為に限られるものではない。この趣旨を述べるものとして医師会設立不許可処分を取り消した東京高判昭和59年5月30日判決がある。
② 目的違反(動機違反)
          問題となっている行政行為の根拠規定によってカヴァーされない目的のために裁量権を行使することは許されない。裁量は,授権(法律)規定の趣旨・目的に沿わなければならない。この趣旨を明示する判決として,トルコ風呂営業停止処分に対する国家賠償請求を認容した仙台高判昭和49年7月8日判決(最判昭和53年5月26日判決),東京地判昭和44年7月8日行裁例集20巻7号842頁(ココム訴訟)がある。
③ 平等原則違反,比例原則違反
          これを明示する判決も存在する。
④ 国民の権利・自由の侵害
          憲法によって国民に認められている権利や利益を不当に侵害することは許されない。大阪地判昭和59年7月19日行裁例集35巻5月2037頁は,在日外国人に対する法務大臣の特別在留許可拒否処分を,原告が日本において長期間にわたって築き上げた生活を奪うことになり,妻子の生存にも重大な影響を与える場合に,裁量権の逸脱・濫用があるとして違法と判断した。
  ウ 手続的側面を審査する場合について
① 行政行為に至る手続過程に対する審査
          この例として,最一小判昭和46年10月28日民集25巻10月28日がある。
② 判断過程に対する審査
          考慮することが許されない事情を考慮して判断する他事考慮がその典型的場合であり、それが許されないのは当然であるが〔東京地判昭和38年12月25日行裁例集14巻12号2255頁(最一小判昭和50年5月29日民集29巻5号662頁の第一審判決)〕,考慮すべき事項を考慮しない場合,考慮において評価や判断を誤ることも裁量を違法とする理由となる。私立各種学校設置不認可処分を取り消した福岡地判平成元年3月22日判決がこの趣旨を明示している。また東京高判昭和48年7月13日行裁例集24巻6・7号533頁(日光太郎杉事件控訴審判決)は,建設大臣による土地収用の事業認定における判断の方法や過程に誤りがあるとした。

 3 裁量権の逸脱・濫用の有無についての事実認定のあり方
   従来裁量行為に対する司法審査のあり方についてはあまりに消極的に過ぎて司法のチェック機能を果たしていないとの批判が強かった。現在進められている司法改革においても行政訴訟法の改正が独立した論点として検討中である。
   裁量権行使が公開された審議会を経るなど外部から見える形で行われる場合はその手続き過程を客観的に検証しうる。しかし一般には裁量権行使がどのような事実を前提にどのような事項を考慮してなされたかは外部からは窺い知れない場合が多い。そのような場合に裁量権濫用を根拠付ける事実についての直接証拠がなければ認定しないという考え方をとるならほとんど裁量権の濫用など認められる余地はなくなる。
   本件では三井証言や高橋証言(それを裏付ける偽造依頼文書)という前記裁量権濫用を根拠付ける事実についての直接証拠が提出されているがそれは正に偶然とも言うべきものである。原告としてはこれらの証拠は重要ではあるがだからといって,本件における事実認定が三井証言や高橋証言の信用性の有無に矮小化されてはならないと考える。
   本件において裁量権の濫用があったか否かは「被告が平成10年度に支出した調査活動費はその全額ないし相当部分が目的外支出であること」を認定できるかどうかの一点にかかっている。
   常識こそは法のよって立つ基盤であり,常識にかなった裁判がなされることが国民の裁判所に対する信頼の源泉である。本件では百の理屈をこねる前に平成10年度に960万円も支出されていた調活費が平成14年度には僅か140万3913円と指数にして14・6%まで急減しているという事実に着眼しなくてはならない。調活費が真実必要なものでその目的通りに使われていたなら,僅か4年でここまで減らすには調活費を使った調査活動を行う必要性を上回る特段の合理的理由がなければならない。それが示されない以上平成10年度の調活費はその全部ないし相当部分が目的外に使用されていたとの疑いを抱くのが常識というものであろう。
   これに対して被告が反証するのは極めて容易である。何も文書の中味など用いる必要はないし調査活動の具体的事実を立証する必要もない。 何故調活費を減らしたのかその理由を主張しその根拠を立証すればよいだけのことである。
      しかし本件ではコンピューター整備に流用したの一点張りで「常識」に照らして極めて不合理な言い訳しかなされていない。
      「被告が平成10年度に支出した調査活動費はその全額が目的外支出であること」を認定するに足りる証拠が既に原告から提出されており,反面被告の反論が如何に常識はずれであって、反論たり得ていないことは,前記第2「調査活動費の目的外支出について」において詳細に主張したとおりである。

  4 本件における裁量権の逸脱・濫用
    ア 事実誤認
        平成10年度に支出した調査活動費の支出は、その全額ないし相当部分が目的外支出であるが、それにもかかわらず、被告は、その事実を無視して、目的外支出はないとの前提で、本件不開示処分を行っている。したがって、本件不開示処分には、重大な事実誤認がある。
   イ 目的違反(動機違反)
        本件不開示処分は、違法不当な目的外支出の事実を隠蔽する目的で
      なされたものであり、目的違反(動機違反)がある。
  ウ 他事考慮
        本件不開示処分における判断過程において、被告は、考慮することができない目的外支出という事情を考慮しているので、他事考慮となる。
  エ よって、本件不開示処分は、裁量権の逸脱・濫用による違法な行政処分であるから、取消されるべきである。
 
第7 最後に
 
      「人民が情報を持たず,情報を入手する手段を持たないような人民の
    政府というのは,喜劇への序章か悲劇への序章か,あるいはおそらく双方への序章にすぎない。知識を持つ者が無知な者を永遠に支配する。そしてみずからの支配者であらんとする人民は,知識が与える権力でもってみずからを武装しなければならない。」(アメリカ合衆国憲法の起草者の一人であり,「アメリカ憲法の父」と呼ばれるジェームズ・マディソンの言葉)
      
      情報公開こそが,民主主義が機能するため不可欠のカギであり、情報公開なくして、民主主義は機能しない。
      
      それゆえ,日本においても,「原則公開,非公開例外」を基本理念とする情報公開法が制定されたのであり、例外事由はできる限り狭く限定的に解釈されるべきである。そうでなければ,「原則非公開,例外公開」となり,情報公開法の存在意義が否定され、日本の民主主義が機能不全に陥ることになる。

   本件訴訟において,被告は,調査活動費の違法不正な支出を隠蔽するために,例外事由の不当な拡大解釈を主張することによって、情報公開法の存在意義を失わせようとしている。
   裁判所は,被告の不当な主張に惑わされることなく,情報公開法の存在理由をきちんとふまえて,検察庁が国民から期待される国家機関として再出発する第一歩として、本件不開示処分を取消すべきである。
   
      貴裁判所の賢明で勇気ある判断を切望する。
                                                                        以上

« <日弁連>会長選きょう公示 法曹人口問題が争点に 主流派VS著名弁護士(毎日新聞) - goo ニュース | トップページ | 検察権力に幻想を抱くべきではない »

仙台市民オンブズマン」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/522409/33019568

この記事へのトラックバック一覧です: 小沢(裏献金疑惑)VS検察庁(裏金疑惑):

« <日弁連>会長選きょう公示 法曹人口問題が争点に 主流派VS著名弁護士(毎日新聞) - goo ニュース | トップページ | 検察権力に幻想を抱くべきではない »

最近のトラックバック

無料ブログはココログ
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31