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2010年2月の9件の記事

2010年2月27日 (土)

仙台市がアンパンマンミュージアムに2億円出資 そんな必要あるのか

  仙台市は仙台水族館への10億円の出資を一旦決めながら、会社の資金調達が困難になったことを理由に急遽取りやめた。
  仙台市は懲りずに「アンパンマンミュージアム」への2億円の出資を決めたようだ。進出の候補地となっているのは、宮城野区鉄砲町の仙台駅第二土地区画整理事業地内の市有地約8000平方メートルの一部。市が文化施設を建てる目的で取得したが、財政難などから用途が決まらないままになっていた。市は地元町内会などにミュージアム誘致の方針の説明を始めた。「健全で夢のあるミュージアムは、仙台駅東口ににぎわいをもたらす」(都市整備局)とされている。
   仙台市議の村上一彦議員のブログでは「2月議会で仙台市東口に誘致するアンパンマン・ミュージアムに2億円を拠出することになっているため、横浜にあるアンパンマン・ミュージアムに行ってきました。設立3年がたっているのにもかかわらず盛況のようでした。年間100万人の入場者があり隣にあるアンパンマンに関するショップの売り上げも上々で大黒字のようでした。100人以上の雇用も見込まれるため仙台市としては是非来ていただきたい事情はあります。ですが、すでにある横浜、名古屋の自治体は1円も拠出していないことや2億円はあくまで投資であり後で戻ってくるお金なのかなど精査、議論しなければならないことがあります。2月議会で議論してまいります。」とされている。ちなみに村上市議は政務調査費でアンパンマン・ミュージアムに行ったのだろうか?きちんと聞き取り調査をしてきたのなら問題ないが、見るだけなら自費で行くべきだろう。
  総事業費は20億円でその内7億円が地元負担とのことだが、横浜市と名古屋市は1円も出していない。どうして仙台市だけが出資しなければならないのだろうか。需要予測に不安がないなら自治体に出資を求める必要などないのでは。
  仙台市は、財政難で自前での公共施設建設は無理、かといって遊休地のまま保有しているわけにはいかないので誘致したのだろう。こういうどうしても建築したいという場合には往々にして需要予測は甘くなる。本当に精査して決めたのか甚だ疑わしいものだ。横浜は年間入場者数100万人だそうだが、仙台と横浜・名古屋では都市自体の規模も、周辺人口も、観光客数も全く違うので入場者数の予測にそのまま使えるわけではない。いったいどうやって需要予測を立てたのだろう。地元負担分の借入金について損失保証契約などしていないだろうか。需要予測の資料を見てみたいものだ。

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仙台空港アクセス線 甘い需要予測で破綻寸前

仙台空港アクセス線需要予測
 
1 平成18年度(予定開業時)の需要予測(1日当たり利用者数)
  平成12年予測    9980人
  (鉄道事業許可時)  (内空港関連5918人、都市内4062人)
  平成15年予測    8400人
  平成18年予測    7400人
  開業後累計実績    6730人
             (内仙台空港駅3565人、その他3165人)
2 その後の需要予測
  平成27年度 13620人  平成37年度     15643人
3 仙台空港のアクセス交通機関に占める仙台空港アクセス線の分担率(利用率)
  平成17年度予測  分担率39.7%
  平成27年度予測      39.3%
  平成19年度実績      39.3%
4 仙台空港旅客需要予測
   株式会社日本空港コンサルタンツに調査を委託、平成10年3月に報告。
   但し同社の調査報告書は開示されていない。需要予測モデルの作成のみを頼んだのか、実際の需要予測を頼んだのかは不明。
  予測モデルは次のとおり
  ① 全国空港利用者数を算出
      算出方法は、国民一人当たりGDPと空港利用者数には一定の相関関係が認められることを前提に、昭和45年~平成8年までの国民一人当たりGDPと空港利用者数の推移から予測する。
  ② 東北6県の空港利用者数対全国シェアを算出し、これを①の数字に乗じる。
  ③ ②に航空旅客動態調査から得られる仙台空港利用率を乗じる。
5 問題点
   仙台空港アクセス線の都市内利用者の予測はそれほど大きくははずれていない。他に競合路線はないので宅地や集客施設の整備の遅れが原因と考えられる。
   仙台空港のアクセス交通機関に占める仙台空港アクセス線の分担率も予測通り。
   大きくはずれたのは、仙台空港旅客需要だが、はずれた原因は簡単。一番の基礎となる全国空港利用者数の予測に当たり、右肩上がりの成長が続いた時期(昭和45年~平成3年まで)を含めた期間のGDP成長率を用いたからである。このような永遠の右肩上がりを前提に需要予測しているので平成27年度13620人、平成37年度15643人という、数字だけ見ても非現実的な需要予測がなされている。これが直近5年間の平成4年~平成8年までの期間のGDP成長率を用いていれば需要予測は全く違ったものとなったはず。
   認可後に、平成15年と平成18年に、上記需要予測モデルを用いた需要予測の見直しをしており、それぞれ8400人、7400人という数字が出ている。これはGDPの期間がそれぞれ昭和45年~平成12年、昭和45年~平成15年とGDP成長率が著減した期間を多く含むようになったので、平均GDP成長率が低く算出されるようになったから。ただこれでも昭和45年~平成3年の高度成長期を含んだ期間で算出しているので、実際の需要より過大な予測となっている。
   ちなみに平成15年の仙台空港航空需要予測では、平成18年が433万人、平成27年が560万人、平成37年が675万人と予測されている。しかし実際の仙台空港旅客利用者数は、平成8年307万人、平成12年324万人、平成20年294万人とむしろ減少している。ほとんど誇大妄想と言ってもよい過大な予測である。おそらく永遠に累積赤字が解消されることはない。
6 コンサルタント会社や当時の県職員の責任を問えるか
   平成12年に国土交通省は空港旅客需要予測モデルを発表しているが、これは株式会社日本空港コンサルタンツと同じ考え方を採用している。同社は国土交通省の外郭団体で、各地の空港新設に当たり需要予測を受注している会社。高度成長の持続を前提に需要予測したので日本中に赤字空港が作られたのも当然。
   しかし当時の国土交通省も同じ考え方をしており、この時期において(現在においても)確立した空港旅客需要予測モデルはないとされているようなので、需要予測が誤っていたとして法的責任を問うことは困難か。
 
 
宮城県の仙台空港鉄道株式会社改革支援プランの問題点
 
1 借入金の現状
   仙台空港鉄道株式会社の借入金は、167.5億円(政策投資銀行・市中銀行88.9億円、県78.6億円)。このうち政策投資銀行・市中銀行分は5年据え置き、その後15年間で償還、県転貸債は20年据え置き、その後10年間で償還とされる。平成21年度から市中銀行などへの返済が開始されているが、毎年元利金合計約8億円の返済が必要。資金ショートは時間の問題である。
2 金融機関との損失保証契約
   資金ショートした場合どうなるかといえば、政策投資銀行・市中銀行88.9億円については県が損失保証契約を締結しているので直ちに全額の返済を求められる。
   そもそも、「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条」で地方自治体が他の法人の債務について保証契約を締結してはならないとされている。
   しかし第3セクタについては、支援の必要性や、「損失補償については、制限法3条の規制するところではない」という自治省行政課長による見解(昭和29年行政実例)と相まって、損失補償契約が、自治体の実務上広く締結されている。金融機関が安易に第3セクターに融資するのは実はこのような絶対に焦げ付かないという保障があるからで、第3セクター濫立の根源とも言えるもの。
   横浜地裁平成18年11月15日判決では「地方公共団体が制限法に反してよいとする理由は見出しにくい。実質的に保証契約と変わらない契約を損失補償契約と称して締結することは、同条の規制を潜脱する。本協定は、形式的には損失補償(契約)であるが、(債務)保証契約と同様の機能、実質を有するものであって、同条による規制を潜脱するものとして違法なものである。」とされている。但し判決は、信義則に反するとして金融機関に対する不当利得返還請求は棄却し、やむ得ない事情や損失補償契約を適法とする裁判例(福岡地裁平成14年3月25日)や通達があることを指摘して、市長への損害賠償請求も棄却した。
   本件でも、もし仙台空港鉄道株式会社が破綻した場合には損失保証契約の無効を理由に損失保証契約の履行を差し止める住民訴訟を提起することが考えられる。
3 転貸債の償還免除(補助金化)
   転貸債とは、第3セクターなどが自力で金融機関からの借り入れを行えない場合に、県が県債を発行し、金融機関がこれを全額引き受けて、それを県が第3セクターに貸し付けるというもの。県債の場合は1%程度の金利で発行でき、通常の借り入れより有利なので第3セクターに対する融資方法としてよく使われる。
   転貸債は20年据え置きなので現時点において償還免除する実益はないが、第3セクターの信用を回復して、政策投資銀行・市中銀行に借入金の返済期間の延長(単年度返済額の軽減)を呑ませるために検討されている。会社の破綻を回避するにはこれ以外方法はないと思われるので、おそらく償還免除の措置をとるだろう。県債の償還期限には県は県債を引き受けた金融機関に78.6億円を支払わなくてはならない。会社に対してこの分を償還免除するということは、県が78.6億円もの税金を新たに投入することを意味する。
   これについては、財政の健全性を損なわせるという理由で、免除の差し止めの住民訴訟を提起することは可能であるが、償還免除は補助金交付同様、県の裁量なので勝のは難しいか。
甘い需要予測がもたらすもの
   甘い需要予測の尻拭いは、結局全て県民の税負担で行われる。甘い需要予測をしたコンサルト会社も県の職員も一切責任を問われない。第3セクターの破綻は全国で相次いでいるが破綻に至る構図は全て同じだ。甘い需要予測による赤字の累積→金融機関と損失補償契約しているので潰すに潰せない→補助金投入で延命→財政負担に耐えきれずに破綻、というものだ。第3セクターを利用して箱物を作れば必ず誰かは利益を得る。一定の地域振興効果はあるし、建設業者は儲かって一定の景気浮揚効果はあるだろう、何より首長の実績作りになる。だから地元は推進を陳情するし、議員も旗を振る。赤字がでるというのでは作れないので、どうしても作りたいと思えば、需要予測を甘くするしかない。金融機関は必ず損失保証契約がついて焦げ付きの危険がないので需要予測が甘いと思っても融資する。このようなことを続けていては地方財政は間違いなく破綻する。
  実需が需要予測の7割の仙台空港アクセス線ですら破綻に瀕しているのだが、現在建設中の地下鉄東西線の場合にはおそら実需は需要予測の5割を切るだろう。建設費も比較にならないほど多額だ。間違いなく毎年巨額の赤字を垂れ流すことだろう。今ですら仙台市の財政は火の車だがこれに地下鉄東西線の赤字の負担が加われば財政再建団体への転落は確実のように思われる。その時建設を推進した歴代市長、担当職員、議員達はどう責任をとるつもりなのだろう。
  傷口が大きくなる前に黒字化が見込めない第3セクターは潰すべきだし、今後の新規事業に当たっては需要予測をコンサルト会社に丸投げするようなことはやめて厳密な需要予測の下に確実に黒字化が見込めるもののみを実施すべきだ。
  仙台市は仙台水族館への10億円の出資を一旦決めながら、会社の資金調達が困難になったことを理由に急遽取りやめた。もちろんその判断は正しいのだが、仙台市の事業計画の杜撰さが露呈されたと言える。仙台水族館の需要予測自体が大甘でそもそも出資などあり得ないことだったのである。
 仙台市は懲りずに「アンパンマン・ミュージアム」への2億円の出資を決めたようだが大丈夫なんだろうか。   

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2010年2月13日 (土)

温泉の選び方 温泉は「湧いている」と思いますか

 温泉は「湧く」と表現しますね。一般の方は源泉とは、地下から地表に温泉が湧いている場所というイメージを持っているのではないでしょうか。たしかに「湧いている」のですが、温泉法上の「湧出」とは「自然湧出」に限らず地下からポンプで汲み上げることも含んでいます。最近のポンプは高性能なので地下2000メートルからでも温泉(地下水?)を汲み上げることができます。これって本当に温泉が湧いていると言うのでしょうか。
 県内の有名な温泉地でも、現在では掘削深度は700~1000メートルが当たり前です。地下水温は100メートル当たり3度上昇するので、そんだけ掘れば別に温泉地でなくとも温泉法上の温泉は湧きます。それを加熱して「何々の湯」とあたかも効能あらたかなように称しているのが現実です。
 数は少ないですが、県内でも自然湧出の温泉があります。地震で大きな被害が出た栗原市温湯地区はその数少ない1つでした。深さ65~100メートル位の所から地表に自然湧出していました。残念ながら地震の影響で自然湧出が停止したようです。単に湧出路が塞がれてしまったのかどうか分かりませんが、同じ地区で深度500メートルの源泉に温泉動力装置(汲み上げポンプ)の設置申請が出されたので、温泉が湧出しづらくなったのはたしかなようです。
 別に浅いところからの自然湧出しているから効能があるとか、深いところから汲み上げているから効能がないということが証明されているわけではありません。ですが一般論としては浅いところから出る高温の温泉はいわゆる火山性温泉であって、豊富な鉱物質を含有しているので医治効能も高いことが多いとは言えるでしょう(もちろん低温でも医治効能の高い温泉も存在しますが)。温泉旅館を選ぶときはこんなことも知っておいた方がおもしろいのでは。ちなみに私が昔よく行った鎌先温泉のある源泉も自然湧出でした。
 ただ残念ながら県内のほとんどの温泉地の源泉は自然湧出ではありません。自然湧出かどうかにこだわると行く温泉旅館がなくなってしまいます。むしろ源泉掛け流しか濾過循環か、加熱しているか、加水しているかがポイントでしょう。一見すると加水は効能が薄れてよくないような印象を持ちますが、そうではありません。源泉が高温だから加水するのであってむしろ高温の良い温泉の場合が多いと思います(源泉の湯量が少ないために加水した上でさらに加熱しているのは論外ですが)。加熱はあまりお勧めできません。濾過循環は私としては温泉とは呼びたくありません。銭湯に行った方がより衛生的では。源泉掛け流しでかつ少し加水している位の温泉がよいような気がします。
 とはいっても温泉の医治効能は決して直ぐに効くというような性質のものではないので、旅行の際は、むしろ浴場の雰囲気、眺望、温泉の色や臭気を第一に選択した方がよいのかもしれません。一つだけポイントあげると温泉の肌触りはアルカリ性の程度で決まります。いわゆるうなぎの湯と呼ばれるぬるぬるした感触の温泉はアルカリ性が高いのです。七ヶ宿町にある温泉(旅館ではない)の一つはものすごい高アルカリ性温泉で、本当にぬるぬるでした。

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これって温泉 地下2000メートルから温泉掘削

 私は宮城県自然環境保全審議会温泉部会の専門委員をやっています。温泉の掘削には県の許可が必要ですが、県知事は許可に先立ってこの部会に諮問しなければなりません。先日の部会に諮問された温泉掘削申請の中に掘削深度2000メートルというのがありました。普通は500メートルからせいぜい1000メートルで、2000メートルというのは初めてです。何故2000メートルかというと、日本の場合どこを掘っても深さ100メートル当たり地下水温は3度上昇します。「普通の土地」から60度の「温泉」を汲み出すには2000メートル掘る必要があるのです。
 100メートル掘って出てくるのは「井戸水」ですが2000メートル掘ると「温泉」になります。何故そうなるかというと、温泉法上、温泉とは「地中から湧出する温水(中略)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義されているからです。別表に掲げる温度とは摂氏25度以上、物質とは水素イオンなど19種類の物質です。つまり25度以上あれば普通の水でも「温泉」だし、それ以下の温度でも一定の物質を含めば「温泉」です。ここに掲げられている物質は地下から汲み上げれば何かしらは含有している程度のもので、医治効能を有する物質の意味ではありません。日本全国どこでも深く掘ってそこに水(お湯か?)があれば「温泉」なのです。
 おそらく一般の方は温泉というのは、それなりの高温で、かつ医治効能物質(身体に有効な成分)を含んでいるものを意味すると考えているでしょう。もしかしたら自然に湧出するものと考えているかもしれません。しかし温泉法上の「温泉」は「ただの少し暖かい水」に過ぎません。どうしてこうなったかというと、掘ってもこの程度の水すら出てくるのがまれなドイツの例にならったからです。
 しかし日本は世界で最も多くの高温泉を有している国であり(同様の国は数カ国しかない)、このような温泉の定義に対しては強い批判があります。実際かつて一部の府県では医治効能を有することを温泉の要件にしていました。専門家の間では、不感温度である摂氏34度以上でかつ人体の機能に及ぼす影響を有していることを温泉の要件とすべきとの意見が強いようです。私もこの意見に賛成です。この方が一般の方の感覚にも合致するでしょう。
 最近仙台市内に各戸への温泉供給をうたうマンションや、市街地での日帰り温泉ができてきました。これらは大体掘削深度1500メートルです。温泉法上は立派に温泉ですから法的には何の問題もないのですが、一般の方が抱く「温泉」のイメージとは全く異なるものです。なにせ1500メートルも掘るので、少しでも角度を間違えると深いところでは他人の土地の地下を掘ってしまうことになりかねません。そのような大深度掘削が地盤にどのような影響を与えるかは全く解明されていません。そんなものを市のど真ん中でボンボン掘られてはたまらないと思いますが、残念ながら今の法律では規制は不可能です。
 また海辺の旅館が次々と温泉の掘削を行っています。こちらも掘削深度は1500メートルです。たしかに温泉法上の温泉ですが、井戸水を湧かしたのと大差ありません。そんな無理をしなくとも、山間の宿は温泉を売りにし、海辺の宿は眺望を売りにするということで良いように思うのですが。 

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2010年2月 6日 (土)

日弁連会長選挙 会員の単純多数決でない理由

 日弁連の会則61条2項では、日弁連会長選挙においては、会員の投票による最多得票者が直ちに当選者となるわけではなく、会員の投票で最多得票を得、かつ弁護士会の総数の3分の1を超える弁護士会において最多票を得なければ当選者にはなれないとされている。このことは私も今回の選挙で初めて知った。
 日弁連の設立は弁護士法45条で定められているが、そこでは「全国の弁護士会は、日本弁護士連合会を設立しなければならない」としている。「全国の弁護士は」ではなく「全国の弁護士会は」とされているので、設立の主体はあくまで弁護士会である。実際昭和24年7月9日に全国51弁護士会が出席して設立者総会が開催され、「日本弁護士連合会設立の件」の議案が可決されて同年9月1日に設立登記がなされた。だから「日本弁護士会」ではなく「日本弁護士連合会」という名称が付けられているのである。
 弁護士自治の核心をなす懲戒権についても、弁護士法56条2項は「懲戒はその弁護士または弁護士法人の所属弁護士会がこれを行う」と定めている。同法60条1項は日弁連にも懲戒権を認めるが、原則は単位弁護士会が懲戒権を有するのである。
 また弁護士法は日弁連に、弁護士会に対する指導・連絡及び監督権を認め、日弁連会則は一定の事項について報告義務を定めるが、それ以上単位会に対する命令権を持つものではない。
 つまり日弁連と単位会との関係は上命下服の関係に立つわけではなく、日弁連の指導監督下にありながらも高度の自治権を与えられていると見るべきだろう。日弁連会長選の上記会則は、このような日弁連と単位会との関係に由来するものと思われる。だからこそいかに会員の多数決で勝ったとしても、単位会の3分の1以上から支持されない者は日弁連の会長にはなれないとしたのだ。
 会則では再投票を行っても当選者を決められない場合には再選挙を行うと定めるのみで、再選挙に当たって会員の最多得票だけで当選者になれるとする規定は設けていない。従って理屈の上では永遠に会長が決まらないという事態も生じうる。それは規定の不備と見るべきではない。再投票を行ってもなお単位会の3分の1以上の支持を得られない候補者は、最多得票を得たとしても再選挙は辞退するという良識に期待したものと考えるべきだ。そうでなければ会員の単純多数決だけで選出してはならないとした会則の趣旨が没却されよう。
 今回も再投票でなお山本氏が単位会の3分の1以上の支持を得られない場合は再選挙は辞退すべきだろう。総得票数で差が1000票あまりにとどまっているのに、単位会の支持では42対9という大差を付けられた以上、本来であれば再投票も辞退するのが良識ある選択だと思うが。

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日弁連選挙と派閥

 前回の記事で宇都宮氏の事実上の勝利、山本氏は再選挙には出れないだろうと書いたが、他のブログ記事を見るとそうでもないらしい。今回山本陣営はどうせ当選するに決まっていると思って油断しただけで、再選挙では総力を挙げて巻き返しを図るだろうという意見ものっていた。総力を挙げての巻き返しとは派閥を挙げての選挙運動ということだろうか。そもそも派閥ってどんなものなのだろう。大相撲の一門のようなものなのだろうか。今回の選挙結果を見ると東京三会と大阪では山本氏が圧勝した。山本氏が勝ったその他の単位会は宇都宮氏との差は数票から十数票なので、東京三会と大阪の会員だけが特異な投票行動をとったことになる。やはり派閥恐るべしというところか。
 しかしほとんどの単位会には派閥などないし、大規模会の派閥が何を言おうと地方会の会員には関係ない。もっともなにせ山本氏は、歴代執行部丸抱えの候補だから、再選挙では地方会の日弁連副会長、理事経験者を総動員して巻き返そうとするだろう。宇都宮氏が会長になれば、これまで日弁連が築いてきたものが全て失われ、司法改革(改悪)が頓挫すると危機感を煽ることだろう。しかし一昔前ならいざ知らず、今の地方会には村社会のボス的な人はもうあまりいないだろうし、仮にいたとしても上の先生から言われたからといってハイそうですかという時代でもない。弁護士会内部でのしがらみが少なくなったのは、弁護士増員の数少ない功績かもしれない。単位会の支持という点では再投票でも宇都宮氏の優位は変わらないだろう。
 前回の会長選挙と比較すると東京三会では逆に票差が広がっている。つまり派閥の締め付けは前回より強かったということだろう。だとするとこれ以上派閥が頑張ったところで山本陣営はあまり票の上積みは期待できないような気もする。他方、一弁、二弁の投票率は5割前後と低い。これが東弁並の投票率になると総得票数ではやはり山本氏の優位は動かないか。東京三会と大阪会の会員には、地方会での票差の意味を考えて再投票に臨んで欲しい。いずれにしても地方会ではダブルスコア、トリプルスコアが続出しているのだから、山本陣営はこの結果を謙虚に受けとめるべきだろう。
 さらに言えば、地方会を含めて会長の選び方は再考の余地がある。仙台会では、まず庶務委員を一定年数こなし、庶務副委員長になり、庶務委員長になり、筆頭副会長になり、この間東北弁連の役職もこなし、常議員議長を経て会長になるというのが一般的だ。言葉は悪いが雑巾掛けをしないと会長にはなれない。多分大規模会ではまず派閥で雑務をこなし、その後派閥の推薦で単位会や日弁連の役職を歴任した上で単位会の会長になり、東京三会と大阪が談合して日弁連会長候補者を決めるのだろう。長い長い雑巾掛けの末に会長になるというのは、会の実務に精通するという意味では合理的な仕組みだと思う。ことに最近の会務は複雑かつ膨大になっているので弁護士会内で一定の役職を経験していないと会長はこなせないという現実もあろう。ただこれだとどうしても歴代執行部の方針は見直しずらくなるし、仙台会の場合は会長の次は日弁連副会長になるのが普通なので日弁連執行部に批判的な立場も取りにくくなる。仙台会の歴代会長は皆立派な方だと思うが、それでもこの人が会長になればよいのにと思う人で会長にならなかった方もいる。雑巾掛けしなければ会長にはなれないという固定観念はやめた方がよいように思う。

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日弁連会長決まらず 史上初の再投票に

リンク: 日弁連会長決まらず 史上初の再投票に(産経新聞) - Yahoo!ニュース.

日弁連会長決まらず 史上初の再投票に
 日本弁護士連合会(日弁連)の次期会長選は5日、投開票が行われ、多重債務や貧困問題に取り組む宇都宮健児氏(63)=東京弁護士会=と、日弁連前副会長の山本剛嗣氏(66)=同=の両候補がいずれも、日弁連の会則に定められた当選の要件を満たさなかったため、当選者が決まらず、後日、再投票が行われることになった。日弁連の会長選が再投票となるのは初めて。今回の会長選は、宮崎誠会長の任期満了に伴って行われた。5日の仮集計では、山本氏が9525票を獲得し、宇都宮氏の8555票を上回った。しかし、宇都宮氏は全国52弁護士会のうち、42会で山本氏を上回る得票を得た。日弁連の会則によると、会長は全弁護士の投票で選ばれるが、当選するためには、最多得票を獲得した上で、全国の弁護士会の3分の1以上にあたる18会で最多票を得る必要がある。再投票は同じ方式で3月半ばにも、両氏を候補者に行われるが、それでも決定しなかった場合、新たに候補者を募った上で、「再選挙」が行われる。

 これまで例外なく東京三会と大阪の派閥のボスが交代で会長になってきたことを考えれば、正に快挙ですね。事実上の宇都宮氏の勝利と言ってもよいのでは。山本氏は今回の選挙で従来の司法改革(改悪)路線の継承を掲げ、歴代日弁連会長の全面支援を受けました。にもかかわらず投票総数でも約1000票差、単位会の獲得数42対9(同数1)では恥ずかしくて再選挙に出られないのではないか。総得票数で上回ったのも、単に東京、大阪の大派閥の締めつけによるものであって、大規模会の会員も、本音は山本氏を支持していないのではないかと思うのだが。
 単位会の支持では多分宇都宮氏が3分の2以上を確保すると思っていたが、これほどの大差がつくとは思っていなかった。単位会無視、一般会員軽視、東京と大阪で委任状集めれば何でもできるという、これまでの日弁連執行部がいかに裸の王様だったかが示されたと言えよう。日弁連会長になったあかつきには、宇都宮氏には日弁連の官僚支配と2000年11月日弁連臨時総会以後の敗北主義に終止符を打ってもらいたい。
 思えばこの10年間、司法改革の美名の下にとんでもないことが次々と行われた。馬鹿げた大増員、それがもたらした弁護士の就職難とビジネス化、広告解禁による過払い専門事務所の横行、欠陥だらけの裁判員制度、粗製濫造・金持ちの師弟しか司法試験を受けられないロースクール制度、お門違いの司法手続きへの被害者参加、法務省が支配する国選弁護と法律扶助、数え上げればきりがない。弁護士過疎の解消という面で一定の成果をあげたことは評価できるが、総体としては失われた10年と言っても過言ではない。
 合格者は500名に戻せとは言わないが1500名程度が限界だろうし、広告も昔のような全面禁止に等しい規制をすべきではないがテレビCMは不要だろう、裁判員制度も選択制の導入や適用範囲の限定をすれば使えないわけでもない、ロースクールも当初の構想どおり10~20校程度に絞って医学部と同程度の国費による助成を行えばそれ自体は悪くないかもしれない、被害者参加はむしろ有罪確定後の行刑の場面で図るべきだ、法テラスは運営主体を見直せばよい。10年かかって悪くなっていったものを直ぐに直せるものではないが、少しずつでも改善していって欲しい。

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2010年2月 3日 (水)

河北新報夕刊トップ記事 東西線の鼓動

リンク: 河北新報 コルネット 特集.

東西線の鼓動/新寺駅(仙台市宮城野区)/こもる熱気、夏のよう
 仙台市のJR仙台駅東口から徒歩10分の東八番丁通(宮城野区)。車の往来が激しい通りの真ん中に、市地下鉄東西線新寺駅(仮称)の駅舎通用口が置かれている。間口の狭い通用口を身をかがめて入り、地下35メートルに建設されている駅ホームまで仮設の階段を下りる。足を踏み外したらただのけがでは済まない。手すりを握る手に汗がにじんだ。新寺駅舎は地下4階で、2007年2月に着工した。広瀬川より東側の駅舎工事では唯一、底まで掘削を終えた。11年3月ごろまで、壁や床などの建設を進める。駅舎内部に入ると、むわっときた。気温は地上に比べ10度ほど高い。「作業員は皆薄着です」と話すのは、新寺作業所所長で佐藤工業東北支店の松本直樹さん(56)だ。内部が蒸すのは、地下水がわき、機器が熱を持つためだ。働いている人々は汗を滴らせる。真夏のような作業風景が真冬の地下にあった。地上では聞こえにくいが、内部ではさまざまな音が反響する。ブオーン、ブオーン。機器でコンクリートをかき混ぜる音が断続的に響き渡る。駅舎完成までに必要なコンクリートの総量は約2万立方メートル。コンクリート車で約5000台分に相当する。1日の作業量は最大でも約200立方メートルだ。松本さんは「どんな膨大な量でも、焦らずこつこつと正確にやるだけです」。生と死が隣り合わせの現場では、常に冷静さが求められる。言わず語らずの口ぶりに、作業員の心得がにじんだ。

 河北新報夕刊の一面を写真入りで飾っている記事だ。昨日に引き続いての掲載なので今後も「東西線の鼓動」という記事が連載されるのだろう。しかしこの記事は一体何を言いたいのか全く意味不明だ。地下鉄東西線の工事の壮大さを書いて一大事業だと礼賛しようというのだろうか。それとも工事に携わる人の労苦を伝えようというのだろうか。いずれにしても夕刊のトップを写真入りで飾るような記事とは思えない。
 宮城県の第三セクターが建設した仙台空港アクセス線は利用客が需要予測の65%に過ぎず破綻に瀕している。このままでは数年後に運転資金が枯渇するので運賃値上げと建設費の金利免除が検討されている。現在仙台市民オンブズマンでは仙台空港アクセス線の需要予測の資料を検討中だが、地下鉄東西線と異なり表面的には水増しはされていないようだ(もっともその需要予測は昭和45年以降の右肩上がりの経済成長を前提とするとんでもないものだが)。それでも利用者は需要予測の65%にとどまっている。地下鉄東西線の場合はおそらくこの比ではない。開業と同時に永遠の赤字路線になるはずだ。そのような地下鉄東西線について、意味不明の礼賛記事を書くのは疑問だ。
 松島水族館は仙台港後背地に移転して仙台水族館になるようだが、こちらも初年度入場者数150万人、その後83万人で推移するという非現実的な需要予測の下に仙台市は10億円の出資を決めるようだ。地下鉄東西線は認可当時ですら赤字必至だったが、現在の大不況下では仙台市の財政にとってどうにもならないお荷物になるだろう。仙台市はもう一度現在予想される需要予測に基づいて再検討すべきだ。地下鉄東西線、仙台空港アクセス線、仙台水族館構想についてきちんと検証記事を書くことこそ地元紙の使命であろう。 

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2010年2月 1日 (月)

捜査中の捜査情報の開示

リンク: 時事ドットコム:「お答えできない」連発=捜査1課長ら会見-連続不審死.

 連続不審死埼玉の連続不審死事件で、県警は午前10時15分から捜査本部が置かれた東入間署で桜井雅彦捜査1課長らが記者会見し、木嶋佳苗容疑者の殺人容疑での再逮捕を発表。報道陣の矢継ぎ早の質問に「お答えできない」「今後解明していく」を連発した。
 冒頭、桜井課長は緊張した表情で「証拠や供述の具体的内容についてはお答えしかねる」と前置きし、会見を開始。逮捕の概要について発表文を読み上げたが、その後は木嶋容疑者の供述や動機、殺害の経緯、殺害現場の状況などの質問に「総合的に検証した」「具体的には話せない」を繰り返した。
 「答えられないという回答があまりに多い」。記者の追及には、「刑事訴訟法で公判前の証拠開示が禁じられている」と突っぱね、最後には「捜査当局として答えるべきものでない質問が多いので」。そう言い残し、約45分間の会見を打ち切った。

 これが捜査機関としてのあるべき対応ではないか。捜査は流動的だし証拠隠滅の可能性もある以上従来のように逮捕の段階でぺらぺら喋っていたのがおかしかったのだ。ただ証拠そのものを見せるわけではないから、「刑事訴訟法で公判前の証拠開示が禁じられている」というのはおかしい。起訴した時点では、国民の知る権利の観点から情報公開としてきちんとした説明がなされるべきだろう。しかし今のように捜査中に捜査によって得られた情報を流すのは、単にマスコミに記事ネタを流して売り上げアップに貢献するためだけのもので必要ない。東京地検特捜部は埼玉県警を見習ったらどうか。

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