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2010年2月27日 (土)

仙台空港アクセス線 甘い需要予測で破綻寸前

仙台空港アクセス線需要予測
 
1 平成18年度(予定開業時)の需要予測(1日当たり利用者数)
  平成12年予測    9980人
  (鉄道事業許可時)  (内空港関連5918人、都市内4062人)
  平成15年予測    8400人
  平成18年予測    7400人
  開業後累計実績    6730人
             (内仙台空港駅3565人、その他3165人)
2 その後の需要予測
  平成27年度 13620人  平成37年度     15643人
3 仙台空港のアクセス交通機関に占める仙台空港アクセス線の分担率(利用率)
  平成17年度予測  分担率39.7%
  平成27年度予測      39.3%
  平成19年度実績      39.3%
4 仙台空港旅客需要予測
   株式会社日本空港コンサルタンツに調査を委託、平成10年3月に報告。
   但し同社の調査報告書は開示されていない。需要予測モデルの作成のみを頼んだのか、実際の需要予測を頼んだのかは不明。
  予測モデルは次のとおり
  ① 全国空港利用者数を算出
      算出方法は、国民一人当たりGDPと空港利用者数には一定の相関関係が認められることを前提に、昭和45年~平成8年までの国民一人当たりGDPと空港利用者数の推移から予測する。
  ② 東北6県の空港利用者数対全国シェアを算出し、これを①の数字に乗じる。
  ③ ②に航空旅客動態調査から得られる仙台空港利用率を乗じる。
5 問題点
   仙台空港アクセス線の都市内利用者の予測はそれほど大きくははずれていない。他に競合路線はないので宅地や集客施設の整備の遅れが原因と考えられる。
   仙台空港のアクセス交通機関に占める仙台空港アクセス線の分担率も予測通り。
   大きくはずれたのは、仙台空港旅客需要だが、はずれた原因は簡単。一番の基礎となる全国空港利用者数の予測に当たり、右肩上がりの成長が続いた時期(昭和45年~平成3年まで)を含めた期間のGDP成長率を用いたからである。このような永遠の右肩上がりを前提に需要予測しているので平成27年度13620人、平成37年度15643人という、数字だけ見ても非現実的な需要予測がなされている。これが直近5年間の平成4年~平成8年までの期間のGDP成長率を用いていれば需要予測は全く違ったものとなったはず。
   認可後に、平成15年と平成18年に、上記需要予測モデルを用いた需要予測の見直しをしており、それぞれ8400人、7400人という数字が出ている。これはGDPの期間がそれぞれ昭和45年~平成12年、昭和45年~平成15年とGDP成長率が著減した期間を多く含むようになったので、平均GDP成長率が低く算出されるようになったから。ただこれでも昭和45年~平成3年の高度成長期を含んだ期間で算出しているので、実際の需要より過大な予測となっている。
   ちなみに平成15年の仙台空港航空需要予測では、平成18年が433万人、平成27年が560万人、平成37年が675万人と予測されている。しかし実際の仙台空港旅客利用者数は、平成8年307万人、平成12年324万人、平成20年294万人とむしろ減少している。ほとんど誇大妄想と言ってもよい過大な予測である。おそらく永遠に累積赤字が解消されることはない。
6 コンサルタント会社や当時の県職員の責任を問えるか
   平成12年に国土交通省は空港旅客需要予測モデルを発表しているが、これは株式会社日本空港コンサルタンツと同じ考え方を採用している。同社は国土交通省の外郭団体で、各地の空港新設に当たり需要予測を受注している会社。高度成長の持続を前提に需要予測したので日本中に赤字空港が作られたのも当然。
   しかし当時の国土交通省も同じ考え方をしており、この時期において(現在においても)確立した空港旅客需要予測モデルはないとされているようなので、需要予測が誤っていたとして法的責任を問うことは困難か。
 
 
宮城県の仙台空港鉄道株式会社改革支援プランの問題点
 
1 借入金の現状
   仙台空港鉄道株式会社の借入金は、167.5億円(政策投資銀行・市中銀行88.9億円、県78.6億円)。このうち政策投資銀行・市中銀行分は5年据え置き、その後15年間で償還、県転貸債は20年据え置き、その後10年間で償還とされる。平成21年度から市中銀行などへの返済が開始されているが、毎年元利金合計約8億円の返済が必要。資金ショートは時間の問題である。
2 金融機関との損失保証契約
   資金ショートした場合どうなるかといえば、政策投資銀行・市中銀行88.9億円については県が損失保証契約を締結しているので直ちに全額の返済を求められる。
   そもそも、「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条」で地方自治体が他の法人の債務について保証契約を締結してはならないとされている。
   しかし第3セクタについては、支援の必要性や、「損失補償については、制限法3条の規制するところではない」という自治省行政課長による見解(昭和29年行政実例)と相まって、損失補償契約が、自治体の実務上広く締結されている。金融機関が安易に第3セクターに融資するのは実はこのような絶対に焦げ付かないという保障があるからで、第3セクター濫立の根源とも言えるもの。
   横浜地裁平成18年11月15日判決では「地方公共団体が制限法に反してよいとする理由は見出しにくい。実質的に保証契約と変わらない契約を損失補償契約と称して締結することは、同条の規制を潜脱する。本協定は、形式的には損失補償(契約)であるが、(債務)保証契約と同様の機能、実質を有するものであって、同条による規制を潜脱するものとして違法なものである。」とされている。但し判決は、信義則に反するとして金融機関に対する不当利得返還請求は棄却し、やむ得ない事情や損失補償契約を適法とする裁判例(福岡地裁平成14年3月25日)や通達があることを指摘して、市長への損害賠償請求も棄却した。
   本件でも、もし仙台空港鉄道株式会社が破綻した場合には損失保証契約の無効を理由に損失保証契約の履行を差し止める住民訴訟を提起することが考えられる。
3 転貸債の償還免除(補助金化)
   転貸債とは、第3セクターなどが自力で金融機関からの借り入れを行えない場合に、県が県債を発行し、金融機関がこれを全額引き受けて、それを県が第3セクターに貸し付けるというもの。県債の場合は1%程度の金利で発行でき、通常の借り入れより有利なので第3セクターに対する融資方法としてよく使われる。
   転貸債は20年据え置きなので現時点において償還免除する実益はないが、第3セクターの信用を回復して、政策投資銀行・市中銀行に借入金の返済期間の延長(単年度返済額の軽減)を呑ませるために検討されている。会社の破綻を回避するにはこれ以外方法はないと思われるので、おそらく償還免除の措置をとるだろう。県債の償還期限には県は県債を引き受けた金融機関に78.6億円を支払わなくてはならない。会社に対してこの分を償還免除するということは、県が78.6億円もの税金を新たに投入することを意味する。
   これについては、財政の健全性を損なわせるという理由で、免除の差し止めの住民訴訟を提起することは可能であるが、償還免除は補助金交付同様、県の裁量なので勝のは難しいか。
甘い需要予測がもたらすもの
   甘い需要予測の尻拭いは、結局全て県民の税負担で行われる。甘い需要予測をしたコンサルト会社も県の職員も一切責任を問われない。第3セクターの破綻は全国で相次いでいるが破綻に至る構図は全て同じだ。甘い需要予測による赤字の累積→金融機関と損失補償契約しているので潰すに潰せない→補助金投入で延命→財政負担に耐えきれずに破綻、というものだ。第3セクターを利用して箱物を作れば必ず誰かは利益を得る。一定の地域振興効果はあるし、建設業者は儲かって一定の景気浮揚効果はあるだろう、何より首長の実績作りになる。だから地元は推進を陳情するし、議員も旗を振る。赤字がでるというのでは作れないので、どうしても作りたいと思えば、需要予測を甘くするしかない。金融機関は必ず損失保証契約がついて焦げ付きの危険がないので需要予測が甘いと思っても融資する。このようなことを続けていては地方財政は間違いなく破綻する。
  実需が需要予測の7割の仙台空港アクセス線ですら破綻に瀕しているのだが、現在建設中の地下鉄東西線の場合にはおそら実需は需要予測の5割を切るだろう。建設費も比較にならないほど多額だ。間違いなく毎年巨額の赤字を垂れ流すことだろう。今ですら仙台市の財政は火の車だがこれに地下鉄東西線の赤字の負担が加われば財政再建団体への転落は確実のように思われる。その時建設を推進した歴代市長、担当職員、議員達はどう責任をとるつもりなのだろう。
  傷口が大きくなる前に黒字化が見込めない第3セクターは潰すべきだし、今後の新規事業に当たっては需要予測をコンサルト会社に丸投げするようなことはやめて厳密な需要予測の下に確実に黒字化が見込めるもののみを実施すべきだ。
  仙台市は仙台水族館への10億円の出資を一旦決めながら、会社の資金調達が困難になったことを理由に急遽取りやめた。もちろんその判断は正しいのだが、仙台市の事業計画の杜撰さが露呈されたと言える。仙台水族館の需要予測自体が大甘でそもそも出資などあり得ないことだったのである。
 仙台市は懲りずに「アンパンマン・ミュージアム」への2億円の出資を決めたようだが大丈夫なんだろうか。   

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