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2010年2月13日 (土)

これって温泉 地下2000メートルから温泉掘削

 私は宮城県自然環境保全審議会温泉部会の専門委員をやっています。温泉の掘削には県の許可が必要ですが、県知事は許可に先立ってこの部会に諮問しなければなりません。先日の部会に諮問された温泉掘削申請の中に掘削深度2000メートルというのがありました。普通は500メートルからせいぜい1000メートルで、2000メートルというのは初めてです。何故2000メートルかというと、日本の場合どこを掘っても深さ100メートル当たり地下水温は3度上昇します。「普通の土地」から60度の「温泉」を汲み出すには2000メートル掘る必要があるのです。
 100メートル掘って出てくるのは「井戸水」ですが2000メートル掘ると「温泉」になります。何故そうなるかというと、温泉法上、温泉とは「地中から湧出する温水(中略)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義されているからです。別表に掲げる温度とは摂氏25度以上、物質とは水素イオンなど19種類の物質です。つまり25度以上あれば普通の水でも「温泉」だし、それ以下の温度でも一定の物質を含めば「温泉」です。ここに掲げられている物質は地下から汲み上げれば何かしらは含有している程度のもので、医治効能を有する物質の意味ではありません。日本全国どこでも深く掘ってそこに水(お湯か?)があれば「温泉」なのです。
 おそらく一般の方は温泉というのは、それなりの高温で、かつ医治効能物質(身体に有効な成分)を含んでいるものを意味すると考えているでしょう。もしかしたら自然に湧出するものと考えているかもしれません。しかし温泉法上の「温泉」は「ただの少し暖かい水」に過ぎません。どうしてこうなったかというと、掘ってもこの程度の水すら出てくるのがまれなドイツの例にならったからです。
 しかし日本は世界で最も多くの高温泉を有している国であり(同様の国は数カ国しかない)、このような温泉の定義に対しては強い批判があります。実際かつて一部の府県では医治効能を有することを温泉の要件にしていました。専門家の間では、不感温度である摂氏34度以上でかつ人体の機能に及ぼす影響を有していることを温泉の要件とすべきとの意見が強いようです。私もこの意見に賛成です。この方が一般の方の感覚にも合致するでしょう。
 最近仙台市内に各戸への温泉供給をうたうマンションや、市街地での日帰り温泉ができてきました。これらは大体掘削深度1500メートルです。温泉法上は立派に温泉ですから法的には何の問題もないのですが、一般の方が抱く「温泉」のイメージとは全く異なるものです。なにせ1500メートルも掘るので、少しでも角度を間違えると深いところでは他人の土地の地下を掘ってしまうことになりかねません。そのような大深度掘削が地盤にどのような影響を与えるかは全く解明されていません。そんなものを市のど真ん中でボンボン掘られてはたまらないと思いますが、残念ながら今の法律では規制は不可能です。
 また海辺の旅館が次々と温泉の掘削を行っています。こちらも掘削深度は1500メートルです。たしかに温泉法上の温泉ですが、井戸水を湧かしたのと大差ありません。そんな無理をしなくとも、山間の宿は温泉を売りにし、海辺の宿は眺望を売りにするということで良いように思うのですが。 

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