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2010年3月15日 (月)

河北新報 東北の歯科技工士、嘆息 薄利と長時間労働で若手離職

リンク: 河北新報 東北のニュース/東北の歯科技工士、嘆息 薄利と長時間労働で若手離職.

 歯科医の注文を受け、歯の詰め物やかぶせ物を製作する歯科技工士が苦境に立たされている。東北でも歯科医が急増し、経営難などのあおりで製作委託料が大幅にダウン。技工士は一本でも多く受注しようと早朝から深夜まで作業に追われる。薄利、長時間労働で若手の離職が絶えず、業界関係者は「10年後にはなり手がいなくなり、患者の歯の健康が維持できなくなる」と訴える。(編集委員・大和田雅人)
 仙台市泉区の50代男性は約20年前に自宅で開業して以来、年々、手取りが減っている。前歯の歯冠修復費(技工料)は保険適用で1万1740円(歯科医と技工士で分ける)。だが、手元には40%弱の4500円ほどしか残らない。
 厚生省(当時)は1988年、技工料の取り分を技工士70%、歯科医30%と告示したが、拘束力がなく早々に崩れた。男性は「ダンピングが起き、買いたたかれる。年収は開業時の半分以下。歯科医に改善を求めたら、『ほかに頼むから』と取引を打ち切られた」と渋い表情だ。
 日本歯科技工士会(東京)の昨年の調査では、技工士の82%が「7対3は守られていない」と回答。平均年収は45歳で432万円だった。
 88年の宮城県内の歯科医師数は1160人だったが、口腔(こうくう)ケアブームに乗って2008年には1745人に増えた。技工士数は700人台のまま。受注先を広げて稼ごうとするが、1本の製作にも精密な技術と時間を要するため、納期を横目に1日14時間労働はざらだという。
 歯科医側にも事情がある。医療費抑制で収入源の診療報酬は本年度まで10年以上横ばい。不況で1軒当たりの患者数は減少し、助手などの給与支給に事欠く所も多い。
 業界のイメージ低下は、教育機関である専門学校に波及した。東北最大の東北歯科技工専門学校(仙台市太白区)は入学定員50人に対し、09年度の入学者は32人。5年前から定員割れしている。秋田、山形両県では唯一の学校が閉校、福島県は2校から1校に減った。
 鎌田勇志校長は「全国の技工士数に占める25歳未満の割合は7%。50~60代が頑張っているうちはいいが、近い将来、技工士不足が起きる」と警鐘を鳴らす。
 先の泉区の技工士は品質悪化を懸念する。「純度の高い金属を使わず、安い金属で代用して料金をごまかす業者が出てきかねない。患者の安心安全が脅かされる」と話す。佐藤誠宮城県歯科技工士会会長は「国などは良質な医療と安定した生活を保証する手だてを講じてほしい」と求める。
 歯科技工士専門学校を卒業、国家試験に合格して資格を得る。20歳すぎで歯科技工所などに入社し、後に独立開業するケースが多いが、卒業後5年間で約70%が離職するというデータもある。

 「88年の宮城県内の歯科医師数は1160人だったが、口腔(こうくう)ケアブームに乗って2008年には1745人に増えた。」とあるが、口腔ケアブームに乗って増えたのではなく、歯学部の定員が増えて歯科医医師自体が急増したので宮城県内でも増加しただけだ。県内の人口が1.5倍になったわけでもないし、診療報酬単価が1.5倍になったわけでもないから当然歯科医の収入は減る。そこで歯科技工士の技工料の取り分を減らして収入を確保しようとする。ワーキングプア歯科医がワーキングプア歯科技工士を生むという悪循環である。限界を超えれば記事にあるように粗悪な材料を使ってでも利益を確保しようとする者も出てくるだろうし、そもそも歯科技工士になろうとする者がいなくなる。補綴治療(入れ歯や差し歯)は歯科医の技量というよりは歯科技工士の技量に負うところが大きい。粗悪品が出回ったり、歯科技工士を確保できなくなったら歯科医療は成り立たない。被害を被るのは患者である。歯科医師の過剰がこのまま続けばいずれ必要もない過剰診療を行って収入を確保しようとする者も出てくるであろう(既に現実化しているように思われるが)。
 元を糾せば無定見に歯学部の定員を増やしたことが原因だ。当時歯科医師が不足していたのかもしれないし、私大歯学部の経営のためだったかもしれないが、その後の推移から需給関係が崩れることが予測されたその時点で定員の見直しをするべきだったのである。
 専門職、特に市民の生命財産に直接関係するような専門職の受給に関しては市場原理に委ねてはならないと思う。試験を簡単にして合格者を増やせば地域的偏在もなくなるし、競争によるサービスの向上と費用の低廉化が進んで市民のためになる、競争に敗れた者は淘汰されるので専門家の資質も向上するという考え方もある。しかしそれは観念論であり、最低の生活すら維持できなくなった場合、不正や誤魔化しで延命を図ろうとする者が必ず出てくる。通常のサービスや商品であればその善し悪しは素人でも分かる。しかし例えば入れ歯や差し歯の材質の善し悪しなど一般人に分かろうはずはない。評判で判断すればよいと言うかもしれないが、悪い評判が立つ頃には被害者がたくさん出ていることになる。弁護士の場合も、収入を維持するために勝つ見込みもない事件を受ける者が出てくるだろう。あるいは勝つべき事件で手抜きされて負けてしまうことも出てくるだろう。刑事事件であれば無実なのに弁護士に手抜きされて有罪になったり、刑が不当に重くなることだって考えられる。それでも弁護士は裁判所のせいにすればよいだけだから、そのような悪徳弁護士が増えたとしても一般人がそのことに気付くのは難しいだろう。
 そもそも市場原理や事後規制を徹底するなら資格制度そのものが不要になるはずだ。自然淘汰に委ねれば優れた治療行為や弁護士業務を提供する者だけが残るというのが本当であれば、治療行為も弁護士業務を誰でも自由にやれるようにすればよいことだ。しかし誰もそんな風には考えない。国民の生命財産に影響するような重要なサービスについては、誰もが良質なサービスを受けられるように厳格な資格試験を課すことによって国民が被害を被るのを事前に防止しようというのが資格制度のはずである。
 もちろんそれを悪用して既得権維持を図るのは許されない。かつて司法試験合格者は年間500名であったが、それは余りにも少なく、不必要な参入制限だったと思う。既得権維持という面も否定できなかったと思う。だからといって年間3000人というのは無謀だろう。20年間に僅か1.5倍に増えただけで歯科医療が成り立たなくなりつつあるが、弁護士人口はこのまま行くと今の5倍の13万人になる。新しい日弁連会長は合格者を年間1500人に削減することを公約にした。マスコミはこれについて既得権維持ではないかとの論調だ。しかしこの削減案は弁護士に騙される市民が続出して弁護士制度自体が信頼を失うようになる前に対策を講じようということであって既得権維持との批判は的外れだろう。

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