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2010年5月18日 (火)

仙台弁護士会の新規登録弁護士研修に関する会規制定について

 今週末開催される仙台弁護士会の全員協議会が開催される。今日追加協議事項が配布されたが、「新規登録弁護士研修に関する会規制定の件」が協議されるようだ。聞くところによると新人弁護士にに研修受講義務を課すもののようだ。
 司法修習が1年に短縮されたが、法科大学院での教育は十分とは言えない。他方、就職難で、今後弁護士登録と同時に独立する新規登録者が増えることが予想されることに対応しようとの意図だろう。平たく言えば、弁護士激増(急造)政策によって能力に疑問のある者が司法試験に合格している懸念がある、また司法修習が1年に短縮されたために合格後の教育が不十分で法的知識が不十分なままで弁護士登録している可能性がある、さらに即独立となると勤務弁護士としてOJTを受ける機会もない、このままでは能力、知識に劣った弁護士が法的サービスを提供することになって市民に迷惑をかけそうだから、せめて研修を強制的に受けさせようということだろうか?
 しかしこのような研修の義務化は弁護士法に矛盾するのではなかろうか。弁護士法4条は「司法修習生の修習を終えた者は弁護士となる資格を有する。」とし、同法3条は「弁護士は・・・訴訟事件・・・その他一切の法律事務を行うことを職務とする。」と定める。弁護士の資格要件は司法修習を終えることだけであってそれ以外のことは要求されていない。2回試験に合格して国から訴訟事件その他一切の法律事務を行うことを許されているにもかかわらず、仙台弁護士会はそれでは不十分だから研修を受講しろ、受講しなければ会規違反(弁護士法22条は弁護士に会則遵守義務を課している)で懲戒するというのである。国は認めても仙台弁護士会は許さんということがあってよいのだろうか。
 もし本当に仙台弁護士会が司法修習修了者を研修を受講しなければ法律実務に携わらせることはできないと判断するなら、登録自体を拒否すべきだろう。私は司法修習期間はやはり1年では短く、1年半に戻すべきだと思っている。しかし現に修習期間が1年になった後の弁護士を見ても、登録後に研修を強制しなければならないほど質が低下しているとは到底思われない。研修が必要なのはむしろ登録後20年近く経って、法改正についていけない私のような弁護士の方かもしれない。
 そもそも司法修習の内容は実務家としての基本的技能の習得に尽きるのであって、あとは全て弁護士の自己研鑽に委ねられているのである。司法修習を終了するということは、自己研鑽を積めば依頼者の要望に応えることができるという能力を認定することであって、バッチを付けたからといって何でもできるわけではない。これは昔も今も変わらない。研修受講義務を課すということは、自己研鑽を期待することすらできない者に弁護士資格を与えているという認識を持っているということになるのではないか?それは新規登録者に対して余りに失礼であるし、弁護士という資格自体をあまりに軽んじる考えだと思う。
 たしかに司法修習期間の短縮や就職難によるOJTの機会の不足から、新規登録者の能力に対する不安があるのは事実だろう。また新規登録者の多くは、弁護士会が実務研修をしてくれればありがたいと考えるだろう。そのような新規登録者の要望に応える必要があるのは当然だと思う。執行部もそのような善意から弁護士研修を行おうとしてるのだと思う。しかしそれならば受講機会を与えれば足りることであって、弁護士研修を強要することを正当化する理由にはならない。
 弁護士会として決して曲げてはならない原則があると思う。それは弁護士はバッチを付けたその日から全員が対等平等だということだ。1年目の弁護士も30年目の弁護士も権利義務において対等であり、自由にものが言えるというのが弁護士会と他の組織との違いだろう。仮に新規登録者に対して早く実務的能力を身につけさせたいという善意に出たものとしても、特定の弁護士を区別して特別の義務を課すことに変わりはない。それは会員の平等原則に反するものであってしてはならないと思う。
 さらに言えば、義務づけというものは、当該義務の対象者が「強制しなければやるべきことをやらない存在だ」という認識を前提とする。弁護士をそのような対象と見ることはプロフェッションとしての弁護士像の放棄であろう。もちろんある特定の法律相談や特別の職務を行う者の名簿への登録を希望する場合に、その能力を担保する目的で研修受講義務を課すことは正当化されよう(あまり好きではないが)。それは自ら進んで特別の行為を行うための条件であるから、能力担保の必要性がある限り正当化されよう。しかし新規登録者に対する研修義務はこれとは質が異なる。
 もしかしたら執行部が義務化を考えたのは、事務所のボス弁が「そんな研修など受けなくてよい、黙って事務所の事件だけやっておけ」というような理解のない者の場合であっても、新規登録者が受講の機会を失うことがないようにとの配慮からかもしれない。もしそうなら気持ちは分かるが義務化に賛成はできない。その場合はボス弁を指導すべきだろう。

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