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2010年5月27日 (木)

<違憲判決>労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁

リンク: <違憲判決>労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁(毎日新聞) - Yahoo!ニュース.

 金属を溶かす業務中にやけどをし、顔に跡が残った京都府の男性(35)が、女性より低い等級の障害認定しか受けられなかったのは男女平等を定めた憲法14条に反するとして、国に認定取り消しを求めた訴訟の判決が27日、京都地裁であった。滝華聡之裁判長は、労災で障害補償認定の基準となる障害等級表について「著しい外見の跡(醜状障害)についてだけ性別で大きな差が設けられているのは著しく不合理で違憲だ」として認定の取り消しを命じた。原告の代理人弁護士は「障害等級表を違憲と判断した判決は初めて」としている。
 判決によると、男性は精錬会社に勤めていた95年11月、作業中に溶けた金属をかぶってやけどを負い、胸や腕、ほおに跡が残った。園部労働基準監督署は04年4月、労働者災害補償保険法に基づく障害等級表で11級と認定した。
 同法は「やけどの跡で受ける精神的苦痛は女性の方が大きい」として、同じ顔でも女性が男性より高い等級になると規定。このため男性側は、男だとの理由で同様の労災に遭った女性より低い等級の認定しか受けられず、憲法に反すると主張していた。
 判決は「障害等級表では年齢や職種、利き腕、知識などが障害の程度を決定する要素となっていないのに、性別だけ大きな差がある」と指摘。この定めは「合理的理由なく性別による差別的扱いをするものとして憲法14条違反と判断せざるをえない」と結論付けた。【古屋敷尚子】

 なかなか画期的な判決だ。自賠法の後遺障害等級表では外貌に著しい醜状を残した場合、女性は7級(相当慰謝料1000万円)、男性は12級(相当慰謝料290万円)としている。他方20歳の女性であろうと80歳の女性であろうと等級に違いはない。やはりどう考えても不合理な差別だろう。
 自賠法の等級表は実務では交通事故以外でも損害賠償事件一般で基準として用いられている。しかしそれは一見して穴だらけで、どうしてこの障害でこの等級なのだろうと首をかしげるものが少なくない。醜状痕でいえば単なる外貌醜状は女性の場合12級だ。しかし実際には醜状は軽微なものから著しいものまで連続している概念であり、本来であればその程度に応じて7級~14級まで分類されるべきだろう。しかし今の等級表だと顔面に鶏卵大以上の瘢痕を残すと7級、それ以下は全て12級、10円銅貨大以下は非該当とされている。
 たしかに大量の交通事故事案を処理しなければならない自賠法上の障害認定では、一定の画一的な処理が必要だがいくら何でもこんな大雑把な基準はそれ自体不合理だろう。しかも保険実務どころか、裁判で争う場合でも、ごく少数の例外を除き弁護士も裁判官も誰も疑問に思わずに7級か12級かの画一的処理をするのが一般だ。しかし民事裁判にまで至った場合は画一的処理の必要性はないので、本来、醜状の程度に応じて7級~14級まで裁判所が自ら認定すべきものだろう。
 今私がやっている医療過誤事件でも、後遺障害の程度が争点になっていて、現実に歩行機能に著しい障害が出ているにも関わらず、等級表の認定基準と認定方法をそのまま使うとどの等級にも当てはまらなくなってしまうという事案がある。現在の自賠法の等級表は合理的な部分もあるのだが、とても全ての後遺障害を適切に認定する基準にはなっていない。
 それもそのはずで、沿革を辿れば、明治44年制定の工場法施行令第7条が昭和11年に改正され、その別表において身体障害等級及び障害扶助料第1級から第14級までが定められた。これが自賠法後遺障害等級表の原型である。そしてこの別表はその後大きな修正もなくほとんどそのまま今日の自賠法後遺障害等級表(労基則、労災則の別表障害等級表も同じ)に踏襲されている。戦前に作られた、しかも法律そのものではない単なる政令がそのまま今も使われているのは驚きというほかない。
 今回の判決を契機に、現在の医学的知見と市民の常識を取り入れて後遺障害認定のための新たな立法がなされるべきだろう。
 また労災や交通事故の事件で違憲の主張をすることなど普通は考えつかないものだ。この原告代理人の弁護士とその主張を認めた裁判官は、極めて柔軟な発想の持ち主なのだろう。弁護士としては実務の慣行に流されることなく不合理なことは不合理だと主張すべきことの重要性を痛感させられた。

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