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2010年7月の10件の記事

2010年7月31日 (土)

医療過誤事件の鑑定料70万円て高すぎない?

  現在担当中の医療過誤事件で鑑定中のものが2件ある(1件は被告申請)。鑑定人が決まったが、鑑定費用はいずれも70万円だった。これまでは例外なく50万円だったので大幅な値上げだ。国民の所得の平均が昭和63年の水準まで低下しているというのにどうしてこんなに高額になるのだろう。病院側にとっては何でもない金額だろうが(そもそも医師賠償保険から出るので自腹を切るわけではない)、患者にとっては70万円などという金額を予納しろと言われて直ぐに準備できる者はそう多くはない。今回はたままた金銭的に余裕のある依頼者だったので準備できたが、このままでは経済的理由で鑑定を断念せざるを得ない場合も出てくるのではないか。
  私の場合は医療過誤訴訟の着手金は請求金額にかかわらず一律50万円でやっている(請求金額が500万円以下の場合は20~30万円に減額している)。控訴審まで行っても一切追加はなしである。もう少しもらってもよいかなとは思うが患者の負担を考えるととてもそれ以上は言えない。かける労力と時間を考えれば弁護士費用より鑑定費用が高いのはおかしい。私的鑑定だって30万円でやってもらっているし、匿名の意見書は7万円程度で作成してもらっている。そんな金額では協力できないなどと言われた経験はない。正式鑑定だって私的鑑定だってやることは同じで作成者の負担は全く変わらない。従前の50万円でも高すぎると思っていたが、それを70万円に値上げする裁判所の金銭感覚は疑問だ。
  どのような経緯で70万円になったのか分からないが、別々の裁判所でほぼ同時期に70万円になったということは基準を変えたということだろう。そして鑑定を引き受けるような医師がそんなにがめついとは思えないので、鑑定人側が70万を要求したのではなく、裁判所が70万円で依頼しているものと推測される。裁判所が金を出すわけではないからその辺は全く無頓着なのだろうが、少しは一般国民の金銭感覚を学んではどうか。当事者の負担を考慮するなら最初は30~50万円で打診すべきだろう。そして 鑑定人に選任されるような医師は当該分野で指導的な立場にあると評価されているのであるが、能力を持ち尊敬される地位にある者にはその能力を社会のために生かす責務があると思う。鑑定を引き受ける者はそのような使命感と責任感から引き受けているのであってお金のためではないはずだ。もし70万円ならやるが50万円なら引き受けないなどという鑑定人候補者がいたなら、そのこと自体で不適格と言うべきだろう。


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2010年7月21日 (水)

時事ドットコム:司法修習生、4割が就職未定=「危機的状況」と日弁連

リンク: 時事ドットコム:司法修習生、4割が就職未定=「危機的状況」と日弁連.

 日弁連は21日、2009年に新司法試験に合格した司法修習生のうち、今年6月時点で就職先が決まっていない人が43%に上り、昨年同時期の30%を大幅に上回ったとする調査結果を公表した。日弁連は「このままでは修習を終えても仕事ができない者が大量に出る。危機的状況だ」と懸念している。
  日弁連によると、司法試験合格者数の増加を受け、同時期の司法修習生の就職内定率は年々低下。新司法試験合格者の場合、これまでは修習を終える12月までに大半の就職先が決まっていたが、今年は引受先が決まらなかったり、即時独立するケースが大幅に増えたりする可能性が高いという。(2010/07/21-17:57)

  日弁連執行部の悪口は言い飽きたと思っていたが、こういう記事を読むとやはりまだ言い足りない。こうなることは2001年の総会決議で弁護士激増政策を容認した時点で予想されたし、遅くとも4年前の時点では事件数の推移などから確実視されていた。前会長も前々会長も弁護士人口問題に取り組むと言いながら結局4年間何もしなかった。危機的状況になったのは当然だ。「就職難は弁護士増員が目指した自由競争による淘汰の結果であり、今後は勝ち残った者のみが弁護士になれるのだ」と開き直るのならそれはそれで首尾一貫する。しかし弁護士はまだまだ足りない、弁護士の需要はまだまだあると何の根拠もなく言い続けてきた日弁連がいまさら「危機的状況だと懸念している」などとよく言えるものだ。危機的状況を招いた歴代執行部のA級戦犯達は今勲章をもらって各種団体で要職に就いている。彼らは本来私財を擲ってでも勤務弁護士を雇用すべきだがそんな話は聞こえてこない。現執行部も弁護士人口問題について新しい委員会を立ち上げるそうだがもうそんな段階ではない。直ちに臨時総会を開いて減員の決議をすべきだろう。もちろん国家的詐欺の被害者は救済されるべきだから、司法試験の受験回数制限撤廃も決議すべきだ。現執行部の責任ではないにせよ「懸念」しているなら行動してはどうか。日弁連が決議しただけでは政策は変えられないと言う者もいるが、日弁連がきちんと意見表明しなければ何も始まらないし変わるものも変わらない。

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2010年7月20日 (火)

「身勝手」新聞が宗旨替え 新米弁護士就活の日々~ルポにっぽん~朝日新聞

新米弁護士就活の日々~ルポにっぽん~
                               平成22年7月19日朝日新聞

 昼、東京地裁そばの日比谷公園。スーツを着た30代の男性がベンチに座り、かぱんからおにぎりを取り出した。食費節約のため、毎朝、実家の母親に二つ握ってもらう。気ぜわしくぱくつくと、家のお茶を入れてきたペットボトルを傾け、胃に流し込む。襟元には、ひまわりのバッジ。弁護士だ。「昼食ぐらい、レストランで食べたいですねぇ」。10分ほどで食事を終え、法廷に向かった。2004年度以降に開校した法科大学院74校のひとつに入った「1期生」だ。2年で修了して司法試験に合格したときには30歳を超えていた。東京都内で働こうと10ヶ所以上の弁護士事務所を訪問したが、年齢がネックになり、いったん地方に出た。だが、仕事が軌道に乗らない。「東京なら何か仕事はあるだろう」。そう考えて昨年秋、上京したが、甘かった。司法制度改革で弁護士は急増。新米弁護士に住事は回ってこなかった。先輩弁護士の事務所の軒先を借りる「軒弁(のきべん)」だ。机と電話は使わせてもらえるが、給料は出ない。最初の2~3ヶ月は収入ゼロ。日中、事務所で、ネットサーフィンをして過ごすことも多かった。春ごろから刑事事件の国選弁護人などの仕事で1件あたり10万~15万円と少し稼げるようになった。ただ、登録した弁護士の名簿順に仕事が回ってくるため、割り当ては半年に1回程度だ。稼ぎを補うため、割り当て分に手が回らない弁護士から譲り受ける。「交代してもらえませんか」。呼びかけメールが、引き受けたい弁護士たちの携帯電話に一斉に届く仕組み。5分ほどで決まってしまうので、すぐに返信する。携帯が手放せなくなった。月収は20万~30万円、年収は300万~400万円ぐらい。事務所費や弁護士会費などの経費を差し引くと、残るのは半分ちょっとだ。昨年は新たにスーツを買うのも我慢し、仕事に必要な法律書の購入も月に数千円以内にとどめる。「困っている人を助けたい」と弁護士を志したのに、仕事を見つけるので精いっぱいの現実。「こんな生活にはもう疲れました」友人の弁護士から「東京よりはまし」と聞き、軒弁生活を抜けだして年内には別の県に移る。「受験秀才」ではなく、多様な経験、深い専門知識、幅広い教養を持つ弁護士を増やして社会の隅々に行き渡らせる──。01年に政府が新たな法曹養成制度を打ち出してからほぼ10年。その理念に共鳴した人たちが、厳しい現実に苦しんでいる。(延与光貞)

  書いてあることに目新しさはないが朝日新聞が朝刊1面でこの様な記事を載せるとは驚いた。朝日新聞は2008年2月の「弁護士増員抵抗するのは身勝手だ」という社説において、日弁連会長予定者が弁護士増員ペースのスローダウン(決して増員見直しではない)に言及しただけで、身勝手だ業界エゴだとそれこそボコボコに弁護士バッシングをしたではないか。2年前に見直しをしていればこの記事に書いてあるようにはならなかったのに。それなのに今さら何寝言を言ってるのだろう。弁護士激増政策とロースクール制度について問題提起するなら、先ずは無責任に新自由主義の旗振り役をした自らの不明を詫びてからすべきだろう。反省もしないで宗旨替えすることこそ「身勝手」というものだ。

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2010年7月19日 (月)

医療過誤と交通事故で二重請求した弁護士が懲戒処分

3月18日 読売新聞
  川越市内で2004年に起きた交通事故の損害賠償請求を巡り、医療過誤と事故の賠償金を二重に請求し、実際の損害以上の額を受け取ったとして、担当弁護士が所属する東京弁護士会から業務停止6か月の懲戒処分を受けていたことが17日、分かった。弁護士は病院側から示談金が支払われたことを伏せたまま、加害者側からも賠償金を受け取っており、同弁護士会は「詐欺と訴えられてもおかしくないケース」としている処分を受けたのは、東京都内の弁護士事務所に勤める中西義徳弁護士(58)。処分は12日付。同弁護士会などによると、事故は04年1月5日、川越市内の市道で発生。乗用車同士が衝突し、被害者の男性(当時60歳)が搬送先の埼玉医科大学総合医療センターで死亡した。
 遺族から弁護を依頼された中西弁護士は同年6月、「医療過誤により死亡に至った」として病院側に約1億500万円の損害賠償を請求。協議の結果、病院側が「解決金」として6600万円を支払うことで示談が成立した。遺族側は06年12月、加害男性に対しても約1億100万円の損害賠償を求めて提訴。業務上過失致死罪で加害男性の実刑判決が確定した後、9000万円の支払いで和解した。中西弁護士は訴状に解決金のことを明記せず、裁判でも伏せていた。しかし、加害男性も事故で重傷を負って同じ病院に搬送されていたため、医師が二重請求に気付き、同弁護士会に懲戒請求を申し立てた。
  同弁護士会綱紀委員会は昨年7月、「遺族側が受け取った金額は、発生した損害以上の額」と指摘。その上で「解決金は医療過誤の損害賠償金と言える。裁判で解決金に言及しなかったのは極めて問題」として、懲戒委員会での審査を求める決定をしていた。処分について、同弁護士会の黒岩哲彦副会長は「詐欺と訴えられてもおかしくないケース。極めて重い処分」としている。中西弁護士は、同弁護士会に対し、「病院側から受領したのは解決金名目の慰謝料で損害は含まれていない。裁判では病院側との示談は問題とされておらず、言及しなかった」などと説明したという。読売新聞の取材に対しては「自分の考えは弁護士会に伝えてある。処分は不服であり、審査請求する予定」と話している。懲戒請求を申し立てた医師は「病院の医療過誤は公にされないことが多い。弁護士が悪用すれば、このような二重請求は、ほかでも起こりうるのではないか」と指摘している。

  医療過誤と交通事故が競合した場合には共同不法行為となり、被害者は病院と交通事故の加害者のいずれに対しても損害額全額について損害賠償請求ができる。しかしもちろん二重取りはできない。仮に中西弁護士が1億5500万円が妥当な損害額だと考えて訴状に損害額1億5500万円と記載した上で、内金請求として9000万円を請求したのなら問題ない。しかし本件では病院に対して1億500万円、加害男性に対しては1億100万円を請求しているとされているので中西弁護士はその程度の金額が妥当な損害額と判断したのだろう。にもかかわらず合計1億5500万円を受領したのだから二重請求、二重受領だ。この場合裁判上の和解は錯誤により無効となり、加害男性は少なくとも6600万円は不当利得として返還請求できることになる。
  懲戒請求を申し立てた医師は、中西弁護士を詐欺罪で刑事告発しているようだが詐欺罪が成立する可能性は高いだろう。同弁護士会の黒岩哲彦副会長は「詐欺と訴えられてもおかしくないケース。極めて重い処分」と述べているようだが、本当に極めて重い処分だろうか?もし詐欺罪が成立すると考えているなら金額の大きさから考えて業務停止6ヶ月はむしろ軽いのではないか。
  懲戒請求した医師は「弁護士会の懲戒処分制度は医療界が手本とすべきものではないという印象を強く持ちました。透明性の観点からは懲戒請求者である私には弁護士会の委員会においていかなる議論が交わされたのか全く分からない不透明なものにしか見えませんでした。また迅速性の観点からも適正とは言えな いでしょう。さらには調査の範囲に関しても非常に限定的で、弁護士会の綱紀委員会、懲戒委員会ともA弁護士しか委員会に呼んで話を聞いておりません。最大の問題点は、再発防止に関しては何の議論もされていない点です。そもそも、弁護士会には組織として再発防止対策を考えるという精神そのものが欠如しているのではな いでしょうか。懲戒請求書の中で私が弁護士会に指摘したことは、交通事故と医療事故が同一事例で起きた時、各々の損害賠償請求を別々に独立して行うと、今回の場合と同様に 、損害賠償金の二重請求が論理的に可能であるという問題提起でした。そして、このような事例は、これまでにも実際に起きているのではないか、という疑いが強くあるのです。」と述べているようです。
  交通事故と医療事故が競合した場合に各々の損害賠償請求を独立して行えるというのは被害者保護が理由であって、そのこと自体は合理的だ。本来は病院が解決金を支払った後に病院の代理人の弁護士が加害男性(実質的には損保)に求償しておくようアドバイスすべきだったのだろう。ただこの医師が言う弁護士会の懲戒制度の「最大の問題点は、再発防止に関しては何の議論もされていない点です。」との指摘はそのとおりだと思う。もちろん懲戒制度自体は再発防止策を検討するという手続きではないが、せっかく調査するのであるから弁護過誤のような場合には別途再発防止策を提言するような手続きが考えられてよいように思う。この医師が「言っていることとやっていることが違う」医療機関に対して医療事故の再発防止を強く求めている以上、弁護士会も弁護過誤防止対策や非行弁護士対策をきちんと行うべきだという主張は正論だ。
  かつては懲戒事例が掲載されることすら例外的だったのに、自由と正義の今月号には9件の懲戒事例が公告された。仙台弁護士会の会員も懲戒されている。その多くは当該弁護士のパーソナリティーの問題と考えられるものだが、顧客の預かり金に手を付けるなど経済的窮乏を動機とするものも見受けられる。今後も弁護士人口激増は続くので懲戒件数は増加の一途を辿るだろう。司法改革の唯一の成果は「非行弁護士の横行と弁護士に対する信頼喪失だった」と言われる日も遠くないような気がする。 

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2010年7月16日 (金)

仙台市民オンブズマンが仙台市と外郭団体(仙台市環境整備公社)との業務委託契約について監査請求

  仙台市民オンブズマンは、本日仙台市監査委員に対し、仙台市が平成22年4月1日に仙台市の外郭団体である仙台市環境整備公社と締結した業務委託契約(委託費約11億円)は、仙台市契約規則に違反し無効であるから既払い金の返還と未払い金の支出差し止めの措置請求を求める旨の住民監査請求を行いました。以下は監査請求書です。

                    仙台市長措置請求書

仙台市監査委員 御中

                                       2010年7月16日
   請求人 仙台市民オンブズマン
     代表 十 河  弘
請求の趣旨
  第1 はじめに
   仙台市には、市が4分の1以上を出資している外郭団体が40ある。平成20年度に管理職で退職した職員は155名だが、そのうち51名が外郭団体に天下っている。株式会社仙台市環境整備公社(以下公社という)も唯一の常勤役員である取締役社長は仙台市管理職職員の天下りである。
   仙台市はこれらの外郭団体との間で毎年巨額の業務委託契約を締結しており(1億円以上のものに限っても)その総額は36億円を超える。そしてこれらの業務委託契約は競争入札ではなく全て随意契約によってなされている。
 
第2 業務委託契約の締結
 1 仙台市と公社との間で、平成22年4月1日、委託費4億9875万円で泉区以外の仙台市における缶・びん・ペットボトル・廃乾電池類選別業務委託契約(以下選別業務委託契約という)が締結された。
 2 仙台市と公社との間で、平成22年4月1日、委託費6億1215万円で缶・びん・ペットボトル・廃乾電池類収集運搬業務委託契約(以下収集運搬業務委託契約という)が締結された。
 3 仙台市と泉清掃協業組合(以下組合という)との間で、平成22年4月1日、委託費1億2965万4000円で、仙台市泉区における缶・びん・ペットボトル・廃乾電池類選別業務委託契約(以下泉区選別業務委託契約という)が締結された。
 4 これらの契約を本件各業務委託契約という。
   本件各業務委託契約は全て特命随意契約によっている。
 
第3 特命随意契約とすることの必要性・合理性
 1 地方自治法234条1項・2項は、契約の締結は一般競争入札が原則であり、政令で定める場合に該当するときに限り随意契約等によることができるとする。
   平成20年度包括外部監査において、上記収集運搬業務委託契約と選別業務委託契約が監査対象とされたが、その際の仙台市の説明と外部監査人の判断は次のとおりである。
 2 収集運搬業務委託契約について
   随意契約とした理由
   「(収集運搬)業務は、地方自治法234条の規定が適用されない公法上の契約と解され、契約締結の方法は市の裁量に委ねられている趣旨を踏まえ、業務の遂行の適正性を重視し、廃棄物処理法施行令4条1号の業務の実施に関し相当の経験を有するものであることに該当する当団体への随意契約としている」。
   外部監査人の判断
   「業務の遂行の適正を重視するなら、廃棄物処理業務の許可業者はこの条件を満たし得ると判断され、特定者に限定する事情は見受けられない。実際、当団体の受託業務地域は泉区を除いた市内全域であるが、泉区については他の民間業者(泉清掃協業組合)が特命随意契約により受託している。当該業務については、泉区を除く市内全域をカバーする特命随意契約であるが、委託条件次第では他の民間事業者が参入できる可能性を有することから、競争性を確保した契約方法への移行の検討は必要であると考える」。
 3 選別業務委託契約について
   随意契約とした理由
   「(選別)業務は、地方自治法234条の規定が適用されない公法上の契約であり、廃棄物処理法施行令4条1項による特命随意契約としているが、当該業務を委託している仙台市環境整備公社は昭和59年に本市と2業者が出資して第3セクターとして設立したものであり長年に渡り誠実な業務で本市の廃棄物の減量と資源化に寄与していることなどを勘案している。また市の選別施設は2箇所あるが、選別業務を一括で受託できる事業者は現状において同社以外に存在しない。当該業務は作業員によるリターナルびんの種類、カレットの色・種類、金属の種類などの選別能力が作業効率を大きく左右するものであるが、当団体では長年培ってきた選別ノウハウを後継者に継承して人材育成を図り、選別精度や品質の向上、処理スピードの向上維持に努めているところであり、別の業者が受託した場合には作業員がノウハウを習熟するまでかなりの能率低下が懸念される」。
   外部監査人の判断
   「選別施設自体は市の施設であり、当団体以外でも利用可能であること、当該業務は比較的単純な軽作業であり、特定人に限定されるほどの専門性は要求されないこと、受託者変更による能率低下の懸念は、契約期間を複数年度で委託することにより対処可能であること、からして他の民間事業者の活用が困難である事情は見受けられず特命随意契約の理由が不明確である。当団体が継続受託することの優位性は説明付ける根拠が不明確である現状においては、特命随意契約ではなく、競争性を確保した契約方法への移行の検討は必要であると考える」。
 4 小括
   上記外部監査人の判断は極めて常識的かつ合理的であって、本件各業務委託契約を特命随意契約にしなければならない必要性・合理性は見いだせない。
   殊に泉区については他の民間業者(泉清掃協業組合)に特命随意契約により委託し、その余の区について公社に特命随意契約で委託するというのは誠に不可思議である。仙台市内においてすら収集運搬業務を適正に遂行しうると仙台市が判断した業者が二者あるのであり、さらに仙台市以外の廃棄物処理業務許可業者の存在を考慮するなら競争入札によれない理由は全くない。既存2業者の棲み分けのために特命随意契約を濫用しているとしか考えられない。
   かように競争性が働かない結果として、平成13年度の選別業務委託契約の委託費は4億9896万円であるところ、平成22年度に至るまでほとんど委託金額の見直しがなされていない。
 
第4 本件各業務委託契約は地方自治法234条に違反する
 1 仙台市が掲げる「地方自治法234条の規定が適用されない公法上の契約」という理由付けは、札幌高裁昭和54年11月14日判決を念頭におくものと思われる。
   同判決は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条第2項に定める、市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外のものに委託する行為は、市町村の固有事務、すなわち市町村の処理すべき本来の行政事務を私人に委託するという行為であるから公法上の契約であることは明らかである。したがって、契約については地方自治法第234条の規定は適用されないものと解される。これにより実質的な観点から考えてみると、地方自治法第234条は契約締結の方法として一般競争入札を原則としているが、これは、第1に契約事務の執行の公正を確保し、第2に地方公共団体として契約する機会を均等に与え、第3にできる限り地方公共団体に有利な条件で契約を締結して経済性の要請にも応えるという理由によるものであるところ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第4条第5号は、同法第6条の2第2項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬、又は処分を市町村以外のものに委託する基準の一つとして、委託料が受託業務を遂行するに足りる額であることと定めており、廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集等の業務の公共性にかんがみ、経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視しているものと解される。すなわち、廃棄物処理法は、最低価格の入札契約を締結する一般競争入札の制度とは異なる建前をとっているのである。廃棄物処理法は、一般廃棄物の処理業務を委託する場合の基準として、受託者の資格要件、能力、委託料の額、委託の限界、委託契約に定めるべき条項等について詳細に規定し、基準に則り、委託業務が適切遂行されることを予定しているものであって、基準においては契約締結の方法については何ら触れられていないが、それは地方自治法第234条の適用を前提としているからではなく、契約締結の方法を一般競争入札、指名競争入札又は随意契約のいずれにするかは市町村の裁量に委ねている趣旨と解するのが相当である。」と判示する。
 2 札幌高裁判決が先例としての価値を有しないこと
   しかし、「市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外のものに委託する行為は、市町村の固有事務、すなわち市町村の処理すべき本来の行政事務を私人に委託するという行為であるから公法上の契約であることは明らかである。したがって、契約については地方自治法第234条の規定は適用されないものと解される。」との判示は、どうして公法上の契約(これは単なる講学上の概念であって実定法に根拠を持つものではない)であればアプリオリイに地方自治法234条の規定が適用されないのかその根拠が不明である。このような私法と公法を截然と区別して公法の特殊性を殊更強調する考え方は、古めかしい概念法学の所産である。
   競争原理の導入による市民サービスの向上と行政運営の効率化、コスト意識が重視され、指定管理者制度が導入された現在においてはこのような解釈は到底維持し得ない。すなわち指定管理者制度は地方公共団体が指定する指定管理者に公の施設の管理を委任できる制度であるが、公の施設の管理は本来施設を設置した市町村が処理すべき本来の行政事務である。もしこの判例の考え方に従えば指定管理者の指定手続き自体が市町村の裁量に委ねられるべきことになる。しかし仙台市公の施設に係る指定管理者の指定手続きに関する条例が、指定管理者の指定を受けようとする団体を公募しなければならないと定めているように市町村の裁量に委ねられているわけではない。
 3 札幌高裁判決の誤り
   地方自治法第234条が契約締結の方法として一般競争入札を原則としているのは、上記判決が指摘するとおり第1に契約事務の執行の公正を確保し、第2に地方公共団体として契約する機会を均等に与え、第3にできる限り地方公共団体に有利な条件で契約を締結して経済性の要請にも応えるという理由によるものである。判決は、「廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集等の業務の公共性にかんがみ、経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視しているものと解される」とするが、地方自治法234条が業務の遂行の適正を無視して経済性の確保等を優先しているなどという解釈自体が誤りである。同条は当該契約によって業務の遂行の適正が確保されることを当然の前提として、契約事務の執行の公正、経済性の要請の確保を図るための契約方法の準則を規定しているのである。
   しかも同法2項は政令で定める場合には随意契約等によることができると定めるが、それは正に判決が指摘する「業務の遂行の適正」が一般競争入札では図れない場合に政令で特例を設けることができるという趣旨である。ところが廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令では随意契約等によることを許容する規定は存在しない。
 4 小括
   かように札幌高裁判決は地方自治法234条の解釈を誤っていることは明らかであるから仙台市が本件各契約を特命随意契約にする根拠にはならない。
   政令で随意契約によることが定められていない以上競争入札によって契約が締結されるべきであり、本件各業務委託契約は地方自治法234条に違反し無効である。
 
第5 契約締結手続きの瑕疵(実質的に見積書を徴求していないこと)
 1 見積書徴求義務
   仙台市の契約規則17条では特命随意契約に当たっては「契約及び見積に必要な事項を示し、なるべく二人以上から見積書を徴するものとする」と規定されている。
 2 公社の選別業務委託契約について
   本件では仙台市から公社に対し、見積依頼書が交付されたのは平成22年4月1日である。驚くべきことに見積書の提出期限は同じ4月1日とされている。
   公社から見積書が提出されたのは同じく4月1日である。見積書には「関係書類を熟覧のうえ仙台市契約規則を守り見積もりいたします」と書かれている。その日に渡されて「熟覧」とは冗談か皮肉のつもりであろうか。しかも見積書には4億7500万円という見積金額総額しか記載されていない。公社の若生滋社長が見積書に押印しているが、若生氏は見積依頼書を4月1日の何時何分に受領し、その後どのような方法で「積算」して見積金額総額を算出し、何時何分に見積書を仙台市の担当者に提出したのであろうか。見積金額は消費税を入れると4億9875万円であり、契約予定額5億0254万3650円とは379万3650円しか違わない。本当に見積依頼書に基づいて「積算」して見積書を作成したのであれば、作成時間においても金額においても神業としか言いようがない。しかし若生氏にそのような特殊な能力があるとは思えないので「積算」はしなかったと見るべきである。
   この業務委託契約は単年度契約であり、特命随意契約だからといって公社が契約できる保障は存在しない。仙台市の契約予定額を上回れば、仙台市は別の業者から見積をとってその業者と契約する可能性がある契約形態である。しかも仙台市契約規則によれば「なるべく二人以上から見積書を徴するものとする」と規定されており、見積依頼書を受領した時点では公社のみに見積依頼がされたかどうかなど公社には分からない。すなわち本来公社は「積算」もしないいい加減な見積書の作成などできないはずの契約なのである。しかし実際には、若生氏は「積算」もせずにその日のうちに上記のような金額の見積書を提出している。積算したのであれば見積総額の内訳が記載されるはずだが内訳は一切記載されていない。
   これらの事情が意味するところは、公社は予め仙台市の契約担当者から契約予定額を教えられた上で、単に仙台市契約規則が求める外形を整えるためだけに本件「見積書もどき」の書面を作成したということである。それ以外に合理的に説明することは不可能である。しかしこんなものは仙台市契約規則が求める「見積書」とはいえない。仙台市からすれば「見積書を徴求した」とはいえないのである。
   さらに驚くべきことには、契約は見積書提出と同じ4月1日に締結されている。5億円の商談が見積依頼から契約締結まで1日で完了することなど取引社会ではあり得ない話である。仙台市の決裁書には「公社より見積書を取得し、見積価格が予定価格の範囲内であれば別紙の業務委託契約書案により契約を締結すること」と記載されている。しかし見積総額が予定価格の範囲内であればそれだけで契約締結できるのであれば見積書を徴求する意味はない。仙台市は「見積書の徴求」を「契約希望金額の聴取」と誤解している。
   仙台市契約規則が随意契約締結に当たって「契約及び見積に必要な事項を示し、なるべく二人以上から見積書を徴するものとする」と規定した趣旨は、事前に見積書を提出させることによって単価の設定など費目毎の金額の妥当性を検討すると共に、「その金額で適正な業務の遂行が可能かどうか」を検証することにある。地方自治法234条で例外とされる随意契約が正当化されるのは、仙台市の説明ないし札幌高裁の前掲判例を引用するなら「業務の公共性にかんがみ、経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視する」必要性があるからである。見積価格が予定価格の範囲内であるということだけでどうして「業務の遂行の適正さ」が担保できるのだろう。積算根拠を確認しなければ「業務の遂行の適正さ」など担保できるはずがない。
   本件契約は仙台市契約規則が規定する見積書を徴求していないので違法である。そして随意契約において見積書を徴求することは「業務の遂行の適正を担保する」するために不可欠の重要な手続きであるから、その瑕疵は契約の無効をもたらすと言うべきである。
 3 公社の運搬業務委託契約について
   本件では選別業務委託契約とは異なり仙台市から公社に対し、見積依頼書は交付されていない。本件契約の決裁文書を見ると平成22年4月1日付け起案文書に、決定を求める内容として「従前契約で実績のある2社を特命して見積を依頼し、予定価格内の場合には委託契約を締結すること。」と書かれている。見積を依頼すること自体についても4月1日に決定を求めている。しかし見積依頼文書は存在しない。ちなみにこの決裁文書は、市長らの押印はあるが決裁日も施行日も完結日も記載されていない杜撰なものだ。
   起案文書の添付資料として、「環境局廃棄物管理課業務委託説明会」と題する文書がある。開催日時は平成22年2月24日とされ、今後の日程についてとして「3月10日(水)見積書及び業務委託基準審査申請書の提出期限」と記載されている。配付資料と思われる「平成22年度の委託業務について」と題するA4一枚の驚くほど簡略な文書が付けられている。この説明会をもって口頭で見積依頼がなされたと見うるかであるが、仙台市契約規則上、見積依頼は市長がするものとされているが事前に市長の決裁はない。規則上「契約及び見積に必要な事項を示す」こととされているが契約書案は配布されていない。従って仙台市契約規則に則った見積依頼ではない。
   公社からは平成22年4月1日付けで見積書が提出されている。仮に説明会で口頭での見積依頼がなされたと解釈したとしても、提出期限が守られていないし、期限を守ることができなかった理由の記載もない、業務委託基準審査申請書も提出されていない。起案文書には「起案に至る重要な経過なし」と記載されているが、見積書の提出期限も守れないような業者を「業務の公共性にかんがみ、経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視する」本契約において「業務の遂行の適正」を担保できると判断した根拠は何ら示されていない。
   若生氏は、見積依頼もされず、契約書案も交付されず、「平成22年度の委託業務について」と題するA4一枚の簡略な文書だけで、再び神業のごとく内訳の記載が無い「見積書もどき」を提出している。しかし今回は流石の若生氏の神通力もやや鈍ったようで、最初の見積書には6億2300万円と記載されている。予定価格は消費税込みで6億1215万円なので予定価格を超過している。本来であれば見積金額総額が予定価格内ではないのであるからここで契約手続きは終了されるべきである。しかし不思議なことに同じ日付で再度「見積書」という表題の文書が提出されたことになっている。そこには5億8300万円と記載され、欄外に込612、150、000と(消費税込みで)予定価格とどんぴしゃの数字が書かれている。よく見ると数字の書き方が明らかに異なっていて二つの見積書は同一人が書いたものではない。さらに言えば見積書の欄外の込612、150、000の筆跡も明らかに別人のものである。このままでは契約不成立になるので仙台市の担当者が公社に予定価格を教えて(欄外の記載は仙台市の担当者の筆跡であろう)そのとおりに記載させたとしか考えようがない。そうでなければ積算し直しもしないで一気に4000万円も増額し、1円単位まで一致することなどあり得ないことである。積算もせずに契約希望金額に過ぎない金額を記載した見積書もどきを提出し、その場で予定価格を教えてもらって見積書を提出し直して契約を成立させるがごときは杜撰の極みである。これでは見積書を徴求しなければならないとした仙台市契約規則の趣旨は全く満たされない。
   この業務委託契約も単年度契約であり、特命随意契約だからといって公社が契約できる保障は存在しない。しかもこの業務は泉区では別業者が受注している業務であり、仙台市契約規則によれば「なるべく二人以上から見積書を徴するものとする」と規定されているのであるから、見積依頼書を受領した時点では公社のみに見積依頼がされたかどうかなど分からないことである。すなわち本来公社は「積算」もしないいい加減な見積書の作成などできないはずの契約なのである。しかし最初から公社との特命随意契約を締結することが決まっているので、見積書の提出も求めない、(仮に提出を求めたとして)3月10日という提出期限も守らない、金額が予定価格をオーバーすればその場で予定価格を教えて出し直させるという杜撰な手続きが行われたのである。かようにこの「見積書」は、単に仙台市契約規則が求める外形を整えるためだけに作成されたことは疑いようのない事実である。しかしこれは仙台市契約規則が求める「見積書」ではない。仙台市からすれば見積書を徴求したとは言えないのである。
   この契約もまた見積書提出と同じ4月1日に締結されている。仙台市の決裁書には「公社より見積書を取得し、見積価格が予定価格の範囲内であれば別紙の業務委託契約書案により契約を締結すること」と記載されている。しかし見積総額が予定価格の範囲内であればそれだけで契約締結できるのであれば見積書などとる意味はない。仙台市契約規則が随意契約締結に当たって「契約及び見積に必要な事項を示し、なるべく二人以上から見積書を徴するものとする」と規定した趣旨は既に述べたとおりである。見積価格が予定価格の範囲内であるということだけでは「業務の遂行の適正さ」は担保されず、積算根拠の確認が必要である。まして本契約の場合は、見積書提出期限が守られていないのにその理由の説明もなされず、業務委託基準審査申請書は提出されず、さらに当初の見積金額総額は予定価格を4000万円も上回っているのであるから積算根拠を確認する必要性はなおさら高かった。
   にもかかわらず積算根拠(内訳の記載)のない見積書もどきの徴求で契約しているのであるから、本件契約は仙台市契約規則が規定する見積書を徴求していないことになり違法である。しかも随意契約において見積書を徴求することは「業務の遂行の適正を担保する」するために不可欠の重要な手続きであるから、その瑕疵は契約の無効をもたらすと言うべきである。
 4 組合の運搬業務委託契約について
   これについては前項で記載したことがほぼそのまま当てはまる。唯一の違いは1億2965万4000円と予定価格と最初からどんぴしゃの数字が見積金額として記載されていることである。長澤良次理事長の神通力が若生氏を上回ったようである。
   前項記載の理由と同じ理由で本契約も違法無効である。
   付言するに本件起案文書は公社の運搬業務委託契約のものと同一の文書であるが、何故か後に開示されたこちらの文書には公社の関係で開示請求して開示された文書には記載のない決裁日、施行日、完結日の欄に4月1日との記載がなされ、空欄であった公印承認の欄に最知という印鑑が押捺されている。請求人には分からない役所の決まり事があるのかもしれないが、公文書に対する信頼性を著しく毀損するものである。
 5 公社との委託業務契約についての外部監査人の意見
   平成19年度包括外部監査では「株式会社仙台市環境整備公社の財務に関する事務の執行及び管理の状況」が監査の対象として取り上げられた。
   外部監査人の意見として「上記の委託業務契約は仙台市との1年ごとの特命随意契約にて更改が行われており、その都度委託料が契約担当課との交渉のもとに決定される。この際の決定額は、市の契約担当課の積算額に導かれる形で決まるとされ、委託料決定の主導権は、市側にある状況となっている。このため公社においては、特に必要コストの積み上げ計算などはせず、これまでの契約額の傾向値をベースに契約担当課の主導の下で交渉に臨む状況となっている。」、「市側の契約担当課での委託料の積算は、人件費、物件費の単価データに稼働率の推移を適用して算出したり、これに委託処理量の見込みによる係数などを勘案して決定している傾向が強いと見られる。毎年この方式で積算するため上記委託料の推移表で見るように一つの委託業務の契約額は毎年あるゾーンのなかで決定されていく傾向が続いている。これに対して、公社側の委託業務の実際の処理コストは以下の部門別事業原価の計算についてで見るように、委託契約ごとに発生する事業経費は、契約額に対してバラツキがあり、その結果、売り上げ総利益率(いわゆる粗利率)はプラスの率からマイナスの率まで大きく振れている。このことは委託業務ごとの契約額と実際の処理コストとの間で乖離を来してきていることを示すものといえる。」、「公社は第三セクターとして、仙台市のゴミの適正処理と減量資源化を目指して事業遂行する立場にある。この事業遂行は全ての市民の負担する税金によることから、公社としては事業遂行における効率性、経済性を常に確保していくとともに、発注者の仙台市としては第三セクターと結ぶ特命随意契約の内容を客観的、合理的なものとしていかなければならないこととなる。」、「これらの観点から公社へ発注する業務の委託料決定方針を検討すると、契約額の客観性を示すため、公社側の実際の事業遂行コストを把握して契約額に反映することが重要になると考えられる。少なくとも契約における積算内容と公社での実績値を比較検討し、次の積算に生かす工夫が必要となる。この際公社の事業遂行が効率的、経済的に実施されているかどうか、具体的な確認作業も当然必要となり、それが契約額の合理性をもたらすことになると考えられる。現在の契約額と事業コストとの乖離を解消し、客観的括合理的な委託料決定方式を早期に採用するよう検討する必要がある。」と指摘されている。
   外部監査人は公社からの聞き取り調査も踏まえて意見を述べているのであるが、「公社においては、特に必要コストの積み上げ計算などはせず、これまでの契約額の傾向値をベースに契約担当課の主導の下で交渉に臨む状況となっている」との指摘は重要である。公社が積算をしていないことはこの外部監査人の報告書からしても明白である。外部監査人は控えめに「契約担当課の主導の下で交渉に臨む状況」と表現するが、実際には交渉などは行われず市役所の契約担当課が契約額を一方的に決めているのである。
   その結果どのような事態が生じているかと言えば、報告書にあるように「委託業務ごとの契約額と実際の処理コストとの間で乖離を来してきている」のである。
   報告書では「契約額の客観性を示すため、公社側の実際の事業遂行コストを把握して契約額に反映することが重要になると考えられる。少なくとも契約における積算内容と公社での実績値を比較検討し、次の積算に生かす工夫が必要となる。」と指摘されているが、裏を返せば仙台市は公社側の実際の事業遂行コストを把握しておらず、契約における積算内容と公社での実績値を比較検討して次の積算に生かす工夫もしてこなかったということである。
 6 仙台市長の認識
   仙台市はこの外部監査人の報告書を受けて平成21年度に公社の実績値の調査をしたようであるが、公社において必要コストの積み上げ計算をしていないという事実を認識したにもかかわらず、見積書の徴求方法を変更しなかった。
   何度も指摘するように必要コストの積み上げ計算をしないで作成された見積書は見積書ではない。仙台市長は公社の見積書が仙台市契約規則が求めるところの見積書でないことを認識しながら瑕疵ある契約を締結したのであるから違法な財務会計行為をしたことになる。
 
第6 結論
   上記のとおり本件各業務委託契約は違法無効であり、また仙台市長はその事実を知りながら違法に契約を締結した。従って公社及び組合が本件各契約に基づき支払を受けた業務委託金は不当利得であり、また仙台市長は違法な支出を行って仙台市に損害を与えたことになる。よって仙台市長は公社及び組合に対して不当利得返還請求権を、また仙台市長自らに対しては損害賠償請求権を有するが、その請求を怠っている。
   また本件業務委託金は一括払いではなく月払いであるから、7月分以降の業務委託金の支出が予定されている。
   よって、監査委員におかれては、仙台市長に対し、既払いの業務委託金について公社、組合及び仙台市長に対し仙台市に返還ないし賠償を求めるよう勧告すること、及び未払の業務委託金の支出を中止するよう勧告することを求める。
   以上、地方自治法第242条1項の規定により、事実証明書を添えて必要な措置を求める。
 
事実証明書
 1 平成22年度選別業務委託契約決裁書類一式
 2 平成22年度収集運搬委託契約決裁書類一式
 3 平成22年度泉区収集運搬委託契約決裁書類一式
 4 平成20年度包括外部監査の結果報告書
 5 平成19年度包括外部監査の結果報告書
 
付言
   本件監査請求は単に契約締結の手続き的瑕疵の是正を求めることのみを目的とするものではない。仙台市の40に及ぶ外郭団体はその設立時においては一定の必要性が認められるものであったが、現在においてはその存在意義が失われているものが少なくない。退職職員の天下り先確保のためだけに存在させているのではないかとの疑念すら持たれるものもある。
   ことに公の施設に係る指定管理者制度が導入された現在、管理者の公募指定を推進することは、管理委託制度の下で設立された出資団体(外郭団体)の存在意義と相容れない関係が生じている。すなわち指定管理者制度のもとでは管理運営主体として民間事業者を含む幅広い団体を予定しているのであるから必ずしも出資団体が担う必要性はなくなった。むしろ出資団体の存在故に指定管理者の公募が行われず競争原理の導入による市民サービスの向上と行政運営の効率化という趣旨が損なわれている現実がある。
   監査員におかれては本監査請求を契機として、出資団体(外郭団体)の存在意義と指定管理者制度の運用実態を再検討し、仙台市に対し適切な是正勧告をすることを要望する。

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2010年7月10日 (土)

実録 「弁護士は儲からない」携帯1本&ネカフェで営業、年収300万円も。 | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

リンク: 実録 「弁護士は儲からない」 猛勉強して司法試験に受かって、やっと手に 入れた憧れのバッジ・・・。しかし、就職先はなく、 携帯1本&ネカフェで営業、年収300万円も。 | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社].

  勉強して司法試験に受かって、やっと手に入れた憧れのバッジ・・・。しかし、就職先はなく、携帯1&ネカフェで営業、年収300万円も。年収1000万円を優に超える、リッチな生活。高い学費を払い、苦学の末に手に入れた金のバッジは、勝ち組人生へのチケットだったはずだ。しかし、取材に協力してくれた現場の弁護士は、口を揃えて「儲からない」と言う。謙遜かと思いきや、事態はこんなに深刻だった。正義のために働きたいという気持ちの裏に、『おカネが儲かって、勝ち組になれる』という打算があったのも事実です。でも、現実はまるで違いました。現在の私は、年収500万円で200万円の借金を抱える多重債務者です。ロースクール時代の借金を未だに返済できず、"ボス弁"から振られた雑用をクタクタになってこなしながら、爪に火を点すような生活を送る?そんな毎日を繰り返しています。今は我慢の時だと自分に言い聞かせていますが、気持ちが折れそうになることもたびたびです」都内の弁護士事務所で"イソ弁"をしているAさん(28)は、そう呟いて下を向いた。サラリーマンを辞めて弁護士を志し、今年資格を得たばかりのBさん(32)の名刺には、090で始まる携帯電話の番号が印刷されていた。固定電話の番号ではない。事務所を持たず、携帯電話1本で仕事をしているからだ。「就活で50軒ほど法律事務所を回りましたが、想像を絶する就職難で、まったく決まりませんでした。でも奨学金の返済はあるし、食い扶持も稼がなくてはならない。そこで、やむなく携帯1本で独立することにしたんです。仕事? ほとんど入りません。今は債務整理を3本ほど抱えているだけ。この業界はコネが命です。みんなが就職したがるのも、"ボス弁"から仕事を振られたり、クライアントを紹介してもらえるから。月収はいい時で30万円程度。カツカツですよ」

 高い収入とステータス。数ある士業(さむらいぎょう)の中でも、"高嶺の花"だった弁護士業に、大異変が起きている---。といっても、きっとあなたはピンとこないだろう。AさんやBさんのような弁護士はごく一部で、大部分の弁護士はリッチな暮らしをしているはずだ、と。しかし、そんなイメージは、もはや古き良き時代の幻想に過ぎないのだ。
 生きるだけで精一杯
 小泉政権下の'01年、司法制度改革推進法で法律家の大幅増員が決められて以降、弁護士の数は年々増加の一途をたどってきた。国民へ十分な司法サービスを提供するためだ。'95年に15000人程度だった弁護士は、'09年には約27000人と倍近くに膨れあがった。政府は今後も司法試験の合格者数を毎年3000人程度まで増やしていく予定だ('09年の合格者は約2000)。一方、当初の計画に反して、訴訟件数は減少傾向にある。弁護士が新たに受任した訴訟件数は、'04年は574万件だったが、'08年には443万件と、2割以上も減少。結果、増えすぎた弁護士が仕事にあぶれる状況が生まれているのだ。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、'05年の弁護士の平均収入は2097万円だったが、'08年には801.2万円に減っている。

 日本弁護士連合会(日弁連)会長の宇都宮健児弁護士が語る。「弁護士の急増にリーマンショックが重なって、イソ弁を受け入れる余裕のある事務所が少なくなり、"ノキ弁""即独"が増えていると聞きます。イソ弁とは居候弁護士の略で、既存の事務所に就職し、先輩弁護士のもとでノウハウを学ぶ弁護士です。一般的には3年から5年で独立しますが、その間、給料をもらいながら修業を積みます。ノキ弁は事務所に籍だけ置かせてもらっている、軒だけ借りている弁護士で、給料はありません。独立採算制で、自分で仕事を取ってこなくてはならない。そして、司法修習卒業と同時に独立するのが即独です」ボス弁とは、イソ弁の雇用主である法律事務所の経営者だ。
 弁護士法人「アディーレ法律事務所」の篠田恵里香弁護士(東京弁護士会)は、司法修習生の指導や管理を行う「司法修習委員会」の委員を務めている。篠田氏は、現場から聞こえてくるのは苦労話ばかりだと語る。「今年の就職難は特に凄いです。通常、司法修習生は、夏過ぎまでには大部分の人が内定を取りますが、今年はまだ半分近くの人が決まっていないという噂も流れています。大学生の就職も氷河期と言われていますが、弁護士業界は"超氷河期"。『司法修習委員会』が、法律事務所に採用を働きかけ、やっと『今年は取るつもりがなかったけれど・・・』と渋々採用枠を設けてくれる事務所もありますが、大半の事務所は募集すらしていません」

 目下、就活中の司法修習生・Cさんが言う。「40以上の事務所に書類を送りましたが、ろくに連絡すらもらえない状態で、2次面接はゼロです。今まで何のために頑張ってきたのか、法科大学院の高額な学費を払ってくれた親に何と言えばいいのか、途方に暮れています。このままだと即独しかない。でも、何の経験もコネもない新人が食えるほど甘い世界でないことは、先輩からさんざん聞かされていますからね。先は暗いとしか言いようがありません」
 こんな悲惨な話もある。「ネットカフェに寝泊まりして、携帯電話1本で事案処理をしていた若い弁護士さんがいるんです。こうなると自分が生きるのに精一杯で、他人の人権なんて言っている余裕がなくなってくる。弁護士本人だけの問題ではなく、市民の権利自体が危うくなってくることを意味すると考えています」(前出・宇都宮氏)
 月給10万円でボーナスなし
 超氷河期の難関を突破しても、安泰とは言えない。運良くイソ弁になれたとしても給料はガタ減りだ。「以前は、事務所が最低でも年収500万円ぐらい保障しないと修習生は来てくれませんでした。今は『給料はいくらでもいいから、事務所に入れて下さい』という状況で、年収300万円という話も聞きます。とにかく仕事がない。そのため、かつては『安い』という理由で敬遠されていた国選弁護の仕事も取り合い状態です。弁護士会には仕事を紹介するメーリングリストがありますが、この前、急な用事で国選弁護の仕事が担当できなくなった旨を流したら、30秒足らずで2件の問い合わせがありました。パソコン画面とにらめっこしているほど、みんな仕事に飢えているんです」(前出・篠田氏)

  年収300万円どころか「200万円でも応募がある」と言うのは、都内で法律事務所を経営する50代のボス弁だ。「月額10万円でボーナスなし、仕事は事務員と同じような雑用やお使いがメインという条件でも、今は応募があります。事務員だと法律上の代理人を務められないので、イソ弁は裁判所への使い走りに重宝するんです。文句を言う人はいませんよ」

  給料がガタ減りになった最大の理由は、弁護士の供給過多だろう。しかし、ほかにも原因がある。先に話が出た'08年のリーマンショックだ。「金融商品を作る時は、どうしても金融専門の法律家が必要です。M&Aなどを行う場合も同様です。そうした金融専門の弁護士が金融バブルで脚光を浴び、増加した。扱う商品の額が大きいから、報酬も巨額になる。そこでファイナンス部門が弁護士マーケットを急成長させていったわけだけれど、それがリーマンショックで一気にヘコみ、収入の大幅ダウンや仕事にあぶれた弁護士を生み出しました」(都内で大型法律事務所を営む40代弁護士)

  「もんじゅ訴訟」や「浜岡訴訟」など、数多くの原発訴訟で知られる、日弁連・事務総長の海渡雄一(かいど ゆういち)氏も、こう言う。「弁護士業界の景気は、以前から冷え込んでいましたが、リーマンショックがダブルパンチになりました。会社の顧問、あるいは企業間の紛争など、それまで弁護士に頼んでいた仕事を、企業が依頼しなくなったのです。離婚、相続問題などの民事事件も頭打ちになっており、仕事は減る一方なのに、弁護士の数だけは年々増加している。こうした状況の中、弁護士資格はあるものの、実態はフリーターという若手が大量に生まれているんです」

  ある程度クライアントを抱えているベテラン弁護士ですら「仕事が減った」と嘆く。「薬害エイズ訴訟」や「カネミ油症事件」などを手がけてきた保田行雄(やすだ ゆくお)弁護士も、厳しい現状を打ち明ける。「裕福な弁護士なんて丸の内界隈で事務所を構えている先生ぐらいで、ほんの一握りですよ。うちなんかも小さな狭い事務所に秘書1人、事務のバイトさん1人でどうにかやっている状態。何とかイソ弁の1人でもとは思うけれど、給料を払うだけの余裕はありません」
  過払いバブルが弾ける
  自力で仕事を取るしかないノキ弁や即独の惨状は想像を絶する。「事務所の一画を借りてノキ弁をやるといっても、タダで軒先を借りられるわけじゃない。間借り料が要る。ところが収入はというと月20万円稼ぐのも大変というのが実情で、本職以外のバイトをやらざるを得ない時もある。即独も同じでしょう」(28歳弁護士)

  イソ弁になれず、10人ほどの仲間と共同法律事務所を設立したDさん(30)の口から出てくるのも、ため息まじりの嘆き節ばかりだ。「事務所が共同なだけで完全自営業。自力で稼ぎ、家賃や光熱費、事務員の給料などは、すべてワリカンでやっています。必ず出ていく経費としては、弁護士登録料が月2万円。奨学金ローンが35000円。事務所家賃その他の諸経費が7万円超。最低でも13万円は必要なのに、月収10万円を切る月もある。だから多めに入った月は、とにかく貯蓄に回します。明日はないといった不安が常につきまとっています」

  こうした現状に加え、さらに先行きを暗くする"ダメ押し"まである。昨今、弁護士が数多くこなしてきた「過払い金訴訟」が頭打ちで、今後は減る一方になるのだ。サラ金やクレジット会社などの高利金融業者は、これまで出資法(上限利率年29.2%)と利息制限法(15~20%)の間を取ったグレーゾーン金利で潤ってきた。ところが'06年の最高裁判決以降、利息制限法の制限金利を超える部分は元本に充当され、元本がゼロになった後の支払い分については、過払い金として返還請求ができるようになったのだ。この請求業務が弁護士業界に"過払い金請求バブル"をもたらしてきた。しかし、6月から施行された改正貸金業法により出資法の上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン自体が撤廃された。新たな過払い金訴訟が生まれなくなれば、必然的に過払い金請求は下火になっていく。「うちの事務所も売り上げの半分は過払い関係だから、先行きは暗澹たるものです。しかも最近は、過払い金を取り戻すのも大変になってきました。全国から返還請求を突きつけられて資金が枯渇した業者に支払い能力がなくなり、裁判で勝っても1円も取れないケースも増えているからです。過払いバブルで、債務整理専門の大手事務所が乱立したけれど、これからは悲惨なことになりますよ。スタッフが確実に余っていくんですからね」(都内に事務所を構える民事専門のボス弁)

  中にはこんな話もある。「弁護士は債務整理を代行し、その手数料として、取り戻した過払い金などの数割をもらうわけですが、中には過払い金の大半を吸いあげるような事務所もあります。就職先のない若手は、そうした事務所に入るのは弁護士としての魂を売り渡すようなものだと分かっていても、背に腹は替えられないと、目をつぶって入るのです」(同前)
  それなのに逆恨みされて・・・
  経済的な困難に加え、弁護士は生命の危険にもさらされている。去る6月、横浜市で前野義広弁護士(享年42)が離婚調停をめぐるトラブルから男に刺殺された事件は記憶に新しいが、同様の事件はこれまでにもたびたび起こっているのだ。'00年以降に限っても、事務所に送りつけられたダンボール箱が爆発して弁護士と事務員が怪我を負った事件('006)や、強制執行先で弁護士が相手方から日本刀で斬りつけられた事件('017)、離婚の調停で相手方の夫が逆上、弁護士を殴ったうえで包丁で切りかかり、顔面神経切断の重傷を負わせた事件('049)、弁護士の顔などにコーヒー缶に入れた灯油を浴びせ、炎症を負わせた事件('089)など、枚挙にいとまがない。前出の保田氏が言う。「横浜のような事件はこれからも増加していくでしょう。近年、ストーカー被害やDVなどの訴訟が増えてきているけど、こうした事件の加害者には常識に基づく判断ができない人が多い。そんな人たちが起こす事件が、7?8年前から目に付くようになり、年々増えているように感じます」

  直接的な暴力のほか、脅迫電話、「殺」「死」などの落書き、ホームページなどへの誹謗中傷の書き込み、威嚇の手紙といった業務妨害は後を絶たない。弁護士会に懲戒請求を送りつけるという手も、よく使われるものだ。「それが単なるいやがらせや中傷だと分かっていても、懲戒請求された弁護士は釈明の書面を弁護士会に提出しなければなりません。要はカネにならない訴訟を抱えるようなもの。しかもヘタをすればバッジを失うんだから、ものすごい手間暇とストレスです」(40代のボス弁)

  弁護士の悲劇はこれだけに留まらない。冒頭でも話が出た、新人弁護士の「借金問題」だ。「弁護士になって23年で多額の借金を抱える人が非常に多い。日弁連が新63期司法修習生にアンケートを取ったところ、回答者の2人に1人が修習開始時点で借金を抱えていました。額は平均で318万円。多い者で1200万円です。これらの借金は、法科大学院の授業料と奨学金です。ロースクールは勉強がハードで、アルバイトをする余裕もない。だから、奨学金などに頼らざるを得ないのです。結果として修習生は、卒業して弁護士になった途端、借金漬けになっている。弁護士登録をする前に、裁判所に駆け込んで自己破産の申し立てをしなくてはいけないという状態です」(前出・宇都宮氏)

  見習いにカネはやらない

  ご存知の通り、法律家を目指す者は、司法試験に合格しただけでは活動することはできない。医師に臨床研修期間があるように、法律家の卵にも1年間の司法修習が義務づけられている。従来、この期間は国が修習生の生活の面倒をみるために、給料を出していた。これを「給費制」という。しかし、この給費制が、今年の秋から「貸与制」に切り替えられる予定なのだ。「今までは給料として出ていたおカネが、予算の都合上、今秋からは貸付金になる。つまり修習生にとっては、研修そのものが新たな負担増になるのです。その額は276万円(月額23万円×12ヵ月)から最大で336万円(月額28万円×12ヵ月)。修習生の半数は、すでに平均で318万円の借金を背負っていますが、今秋からはさらに276万~336万円増えて、約600万円の借金を背負う計算です。弁護士になる頃には借金漬け?そんな弁護士が出てくるはず。可哀想過ぎますよ」(大阪の法律事務所に勤める30代のイソ弁)

  今後、増えすぎた弁護士によるパイの取り合いは、ますます激化し、仕事にあぶれる弁護士は増えていくだろう。そんな時代で生き残るため、「意識改革が不可欠だ」と訴えるのは首都圏で中堅クラスの事務所を営むボス弁のK氏だ。「私見ですが、仕事がないと嘆いている弁護士には、仕事を開拓しようという気持ちが乏しい。これが最大の問題です。 以前の弁護士には、依頼者や知人の紹介がないと仕事を受けない『一見さんお断り』の料亭商売をしていた人も多かったけれど、今はそれでは通用しません。僕は即独組で、自宅へ掛かってくる電話を携帯電話に転送して、24時間仕事をしていました。毎晩外に出ていろいろな人と会い、名刺も月100枚以上は配るというノルマを自分に課した。人との関係を築くために、呼ばれればバスケでも野球でもやった。そうしてコツコツと依頼者を増やしていったのです」

  登録費も払えず廃業

  企業に雇われる企業弁護士になるのも、生き残る道の一つとK氏は指摘する。「企業側には弁護士を採用する意欲は十分にあります。ただし、企業が用意している待遇と、弁護士有資格者が求めている待遇に大きなギャップがある。これが企業弁護士が増えない理由です。新人弁護士は600万円ぐらいは欲しいと思っているが、企業側は大学新卒プラスアルファで300万~400万円と考えている。弁護士が折れればいいんです。まだ企業弁護士が増えていないこの段階だからこそ、先駆者的に企業に入ることには大きなメリットがあります。企業の中で十分に経験と実績を積み、それから就職活動をすれば、このご時世とはいえ、イソ弁先には困らないでしょう。弁護士の業務だけに固執せず、広い視野を持つことが、これからの弁護士には必要です」

  弁護士という職業のイメージを超えて働く?国内有数の難関試験をパスしても、仕事がなければ話にならないのだ。都下に事務所を構える40代ボス弁の言葉は、さらに重い。「弁護士は、所属する都道府県の弁護士会に登録しないと仕事ができません。しかし、登録には毎月カネがかかります。東京では5000円程度ですが、弁護士人口が少ない地方だと、もっと高額です。弁護士は諸々の会費を払うだけで、少なくとも月に2万円以上はかかる。それだけ払い続けても仕事がない場合には、登録抹消の請求をする弁護士も出てきます。廃業です。日弁連の機関誌『自由と正義』に、毎号廃業した弁護士の名前が載るのですが、最近若い弁護士がよく目に付きますね」
 バッジで食える時代は終わり、食うためにバッジを外す者さえ現れた。弁護士の残酷物語は、過酷さを増す一方だ。

 この手の記事には誇張や不正確なものが多いが、この記事は丹念に取材してよく書けている。現在の大都市圏の弁護士の状況と近い将来の地方の弁護士の状況はおそらくこの記事のとおりだろう。10年前に増員反対派が危惧したとおりのことが現実化している。いつもなら「こんな弁護士会に誰がした、日弁連執行部の馬鹿野郎」と書くところだがもうそういうことを言っても仕方がない。今さら多少合格者数を減らしたところでこの状況が大きく変わるものでもない。もちろんどんな状況になっても競争を勝ち抜いていく者はいるし、弁護士の仕事がやり甲斐のあるものであることは変わらない。ただ競争に勝ち抜いていける弁護士は限られるということだ。それを承知で弁護士を目指すというなら自己責任の世界だが、過去10年間日弁連が言い続けてきたことが「詐言」であったことは間違いない。弁護士を目指そうとしている者に正確な情報を知らせて、人生を棒に振ることのないよう警鐘を鳴らすことは必要だろう。

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2010年7月 4日 (日)

仙台空港アクセス線 公開質問書 レールや橋脚を85億で買うなんて詐欺だろうが

 宮城県は仙台空港鉄道株式会社改革支援プラン行動計画を作って公表した。マスコミでも報道されたがどうも問題性が認識されていないようだ。県が資産を買い取って上下分離方式にするなどと一見もっともらしいことが書かれているが、一言で言えば赤字第三セクターに85億円の税金投入をするということだ。仙台空港アクセス線を廃止すべきだとは思わないが、あたかもまともな資産購入であるかのように県民を欺いて巨額の税金を投入するのは許せない。仙台空港鉄道株式会社が赤字でこのままでは経営が立ち行かないというならきちんと民事再生手続きをとるべきだろう。少なくともどうしてこのような赤字路線を作る羽目になったのかその原因はきちんと究明されるべきだ。
 仙台市民オンブズマンで検討中の公開質問書案を以下に掲載します。

公 開 質 問

                          平成22年7月  日
宮城県知事 村 井 嘉 浩 殿
                 
 本件5月に仙台空港鉄道株式会社改革支援プラン行動計画(以下行動計画という)が公表されました。行動計画では、経営悪化が深刻化している県出資の第三セクター「仙台空港鉄道株式会社」(以下会社という)について、橋脚の減価償却費や土地の固定資産税を圧縮し収支改善を図るために、県が同社が所有する線路の橋脚や土地などの資産を買い取る等の経営支援を行うこととされています。
 具体的には、総額189億円(08年度末現在)の資産のうち、運行に直接関係するホーム・レール・車両(上部構造)は従来通り会社側が所有し、県側が土地・駅舎・橋脚など(下部構造)を85億円程度で14年度までに買い取ること(上下分離方式)を計画しているようです。
 会社の09年度の経常損失は9億7629万円、経費として計上する減価償却費は8億3000万円に達しており、赤字の大きな要因となっている。11年度からは民間金融機関への返済額は毎年8億円になり、現在20億円程度ある運転資金が13年度に底をつくとされています。
 行動計画について下記のとおり質問しますので、8月  日までに御回答下さるようお願い申し上げます。

                  記
1 下部構造の取得額についてどのような算定方法を採用するのですか。
  下部構造は現に会社が鉄道事業に直接使用しており、かつ鉄道事業以外の用途に転用する余地はないという特殊性があります。従って収益還元法以外に公正な価格算定は不可能と考えますがいかがでしょうか。
  また収益還元法によると会社への貸し付け賃料を基に算定することになりますが、会社の経営状態からして低廉な賃料を設定せざるを得ず、85億円などという数字は出てこないと考えられますがいかがでしょうか。
2 下部構造取得後の会社に対する貸し付け賃料は何を基準に決めるのですか。
3 上下分離方式の先例として三陸鉄道の例をあげていますが、この例は土地のみを市町村に無償譲渡し、それを三陸鉄道に無償貸与したものです。実質的には固定資産税の軽減と鉄道軌道輸送高度化事業費補助を受けるためのもので行動計画とは全く異なるものです。行動計画が想定するような上下分離方式を採用して成功した先例があるのでしょうか。
4 行動計画では、切り離した下部構造の維持管理は資産取得者(県)が行うことになるので会社の維持管理経費の削減を図ることが可能とされています。しかしそれは単に県が維持管理費を補助金として交付するのと実質において何ら変わらないのではありませんか。
5 地方財政法2条は「地方公共団体はその財政の健全な運営に努め、いやしくも・・・他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策をとってはならない」としています。県が土地を買い取ると名取市は5500万円の固定資産税収入を失うことになり正に他の地方公共団体の財政に累を及ぼす施策であって地方財政法に違反するのではありませんか。
6 行動計画の上下分離方式をとることによって県にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
  取得資金が85億円だとすると、県は一般会計から85億円を支出することになり、また取得後の維持管理費も将来にわたって県が負担することになります。取得した下部構造は会社に貸し付けるしか活用方法はありませんが、取得価額に見合った賃料を得ることなどおよそ不可能です。行動計画は下部構造の取得に名を借りた会社の経費補助以外の何ものでもないと思われますがいかがでしょうか。
7 実質的な補助金交付だとすると、地方公営企業法の趣旨に違反するのではありませんか。すなわち地方公営企業法17条の3では「地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に補助することができる」とされていますが、地方公営企業ですらこのように経費補助が限定されているのですから、第3セクターの場合にはなおさら税金による経費補助は許されないということになると考えますがいかがでしょうか。
8 このままでは2013年度に債務超過に陥るわけですが、その時点で民事再生手続きをとるのが本来の会社再建方法だと思いますがいかがでしょうか。
  会社が民事再生手続きをとれない理由があるのでしょうか。
9 民事再生手続きをとれないのは、県が全ての金融機関の融資(約90億円)について損失補償をしており民事再生手続きをとったその時点で県は金融機関から残融資額について即時全額の支払を迫られることになるからではありませんか。
10 「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条」では地方自治体が他の法人の債務について保証契約を締結してはならないとされています。横浜地裁平成18年11月15日判決では「地方公共団体が制限法に反してよいとする理由は見出しにくい。実質的に保証契約と変わらない契約を損失補償契約と称して締結することは、同条の規制を潜脱する。本協定は、形式的には損失補償(契約)であるが、(債務)保証契約と同様の機能、実質を有するものであって、同条による規制を潜脱するものとして違法なものである」とされています。本件における県の金融機関の融資(約90億円)についての損失補償は違法無効なのではありませんか。
11 県は仙台空港アクセス線の需要予測に当たって株式会社日本空港コンサルタンツに調査を委託し平成10年3月に報告を受けています。同報告が示した需要予測モデルは、①全国空港利用者数を算出(算出方法は昭和45年~平成8年までの国民一人当たりGDPと空港利用者数の推移から予測)、②東北6県の空港利用者数対全国シェアを算出し、これを①の数字に乗じる、③②に航空旅客動態調査から得られる仙台空港利用率を乗じるというものです。しかし一番の基礎となる全国空港利用者数の予測に当たり、右肩上がりの成長が続いた時期(昭和45年~平成3年まで)を含めた期間の平均GDP成長率(厳密には平均ではなく複雑な係数化がされているが)を用いたために永遠の右肩上がりを前提に需要予測されています。その結果この需要予測モデルを用いた仙台空港アクセス線の1日当たり利用人数は平成27年度13620人、平成37年度15643人という荒唐無稽とすら言える非現実的な予測がなされています。もし平成4年~平成8年までの期間の平均GDP成長率を用いていれば需要予測は全く違ったものとなったはずです。このような極めて不合理な需要予測モデルを作成した株式会社日本空港コンサルタンツに対し損害賠償請求をするべきと思いますがいかがでしょうか。
12 仙台空港アクセス線の需要予測を誤った原因はどこにあるとお考えですか。
  需要予測を誤った原因を検証するための機関を設けて徹底的に原因を究明し、今後同じ間違いをしないよう公共事業における需要予測の準則を定めるべきだと思いますがいかがでしょうか。

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2010年7月 3日 (土)

医療過誤被害者に冬の時代到来か   平成21年最高裁医事関係訴訟統計速報 提訴数激減・認容率低下

  平成21年の最高裁医事関係訴訟統計速報が公表された。年間新規提訴数は733件で過去10年間で最低を記録した。平成20年の877件と比べても16%の減少となっている。平成16年が1110件だから激減といってもよいだろう。
  一部認容を含む認容率は25.3%とこれまた過去10年間で最低を記録した。10年前の平成12年が46.9%だからほぼ半減している。これは一部認容つまり1000万円請求して200万円しか認容されなかったようなものも含んでいるので、完全勝訴はこれよりはるかに低い数字のはずだ。和解率が49.7%だからこれ以外が全て敗訴というわけではないが、医療過誤訴訟は勝つのが難しかった20年前に完全に逆戻りしてしまったようだ。ちなみに通常訴訟の認容率は85.3%でこの10年間ほとんど変化がない。
  このような数字をどのように理解するかだが、一つの見方としては訴訟に至る前に示談で解決される件数が増え、訴訟案件の内訳としては難しい案件の比率が増えたからということも考えられる。たしかに以前は医療機関が無謬性にこだわって責任が明らかと思われるケースでも訴訟になっていたが、最近では示談で解決するケースが増えている感じはする。しかしなかなかそれだけで全てを説明するのは難しい気がする。
  提訴件数の減少については、医療崩壊が声高に叫ばれ、その原因の一つに訴訟リスクが語られる結果として被害にあった患者が提訴しづらい環境に逆戻りしてしまったことも考えられよう。
  認容率の低下については、医療機関側代理人の能力向上という点があると思う。以前は医療知識に乏しい医師会の顧問弁護士や保険会社で交通事故の代理人をやっているような弁護士が代理人になるケースも多かった。しかし、現在では地方の事件でも医療過誤事件に習熟した東京の弁護士が医療機関の代理人につくケースが増えている。患者側の弁護士は玉石混淆の状態だから相対的には医療機関側が有利になっているのかもしれない。
  もう一つは裁判官の意識の変化が考えられる。医療崩壊が声高に叫ばれるようになったこと、裁判所と医療機関の間で医療訴訟に関する懇談会や鑑定人推薦の協議会が開かれるようになり医療機関に対するシンパシーが醸成されていることが影響しているように思えてならない。
  おそらくこれらが複合してこのような提訴数激減、認容率低下がもたらされているのであろう。いずれにしても患者や患者側代理人にとっては冬の時代になりつつあるようだ。
  もちろん患者側代理人としては能力向上に努める以外に方法はないわけだが、近時の傾向として目立つのは因果関係についての認定の厳格化だ。以前はこれほど高度の証明は要求しなかったと思うのだが、近時の裁判所の認定を見ていると、ほとんど悪魔の証明を原告に課しているとしか思われない。肝癌のケースで最近もらった判決では、肝硬変患者に対する6ヶ月毎の超音波検査義務懈怠を認めながら、発見前の6ヶ月の間に急速に進行した可能性があり6ヶ月前の時点で肝癌が発見できたとは限らないとして検査義務懈怠と死亡との因果関係を否定したものがある。しかしガイドラインで慢性肝炎ないし肝硬変患者に6ヶ月毎に超音波検査をするというのは、この間隔で検査していれば少なくとも積極的な治療が不能の状態になる前に肝癌を発見できるという医学的知見に基づいて決められているのである。にもかかわらず6ヶ月以内に急速に進行する可能性を持ち出して因果関係を否定するというのでは原告はいったいどのような立証をすればよいのだろう。検査していないのだから具体的な証明などおよそ不可能だ。肝腫瘍のダブリングタイムの統計データからすれば6ヶ月以内に手術不能の多発肝腫瘍の状態に至ることなど考えられない。このような場合は6ヶ月以内に癌が発生し急速に進行したことの具体的反証を被告に求め、それができなければ因果関係を認めるべきだ。にもかかわらず裁判所は高度の蓋然性はおろか相当程度の可能性すら認めないというのだから、もはやお手上げだ。

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映画:「ザ・コーヴ」上映中止 大学にも波及、続く萎縮の連鎖 - 毎日jp(毎日新聞)

リンク: 映画:「ザ・コーヴ」上映中止 大学にも波及、続く萎縮の連鎖 - 毎日jp(毎日新聞).

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に取り上げた、アカデミー賞受賞の米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)。抗議行動の予告から始まった上映中止の波紋が広がっている。学問の自由・自治が保障されているはずの大学でも、「授業への支障」が理由で中止になった。萎縮の連鎖は断ち切れるのだろうか。【メディア取材班】
 ●上映日程決まらず
 配給会社「アンプラグド」によると、同映画の劇場公開は今月26日以降、東京、大阪など全国26館が決まっていた。ところが、同映画を「反日的だ」と主張する民間団体が今月2日、ホームページで、「シアターN渋谷」(東京)や同館を運営する出版取り次ぎの日本出版販売(同)に街頭抗議活動を行うと予告すると、同社は3日、「観客や近隣への迷惑」を理由に上映中止を決めた。続いて4日には、「シネマート六本木」(同)、「シネマート心斎橋」(大阪)の運営会社「エスピーオー」が中止を発表した。抗議活動の予告があっただけで都内の上映館がなくなるという異常事態。両館は08年春、靖国神社を取り上げたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が問題になった際も上映を中止している。
 一方、この団体は上映を考えている他の館にも抗議活動を続けている。「横浜ニューテアトル」(横浜市)では12日、警察官が警備に当たる中で街宣活動があった。同館の担当者は「シャッターを下ろして営業は続けたが、拡声機からの音が場内に大きく響いた。観客にはご迷惑をおかけした」と話した。同館では「靖国」の際は30回以上の街宣があり上映を取りやめた経緯はあるが、「できれば上映したい」という。
 アンプラグドは中止を決めた3館を除く23館に対して、いったん上映日程を「白紙」とし、改めて各館と調整している。同社の加藤武史社長は今月9日に東京・中野で開かれたシンポジウムで、「勇気を持って、上映する場を支えてほしい」と呼びかけた。
 ●「最悪の事態想定」
 上映中止は大学にも広がっている。現代史の研究者らが明治大で今月17日に予定していた映画上映と出演したリック・オバリーさんの講演会は、会場の利用が最終的には認められず、中止に追い込まれた。同大資産管理課によると、今月10日に開いた学内の検討会議で、▽上映中止の映画館が出ている▽抗議は寄せられていないが不測の事態も考えられる▽授業や教授陣らの研究に支障をきたす恐れがある--と判断した。「最悪の事態を想定しての措置だ」(同課)という。企画した生方卓准教授(社会思想史)は「憲法で表現の自由は保障されている。しかし、大学は違った立場から判断したのだろう」と述べた。
 一方、今年3月には立教大でも上映を取りやめている。企画した立教大ESD研究センターによると、太地町漁業協同組合(水谷洋一組合長)と町(三軒一高(さんげんかずたか)町長)から「映画には組合員が映り、肖像権侵害の恐れがある」と連名の抗議文書が届き、検討した結果、上映中止を決めた。団体からの抗議はなかったという。 ●「バッシングでない」
 「まさか日本で、上映中止になるとは思ってもみなかった」。今月8日に来日、「ザ・コーヴ」では主役級で出演したリック・オバリーさん(70)は毎日新聞の取材に対して、驚きを隠さなかった。オバリーさんは、60年代の米人気テレビドラマ「わんぱくフリッパー」でイルカの調教を担当。今はイルカ保護のために各国で講演活動などをしている。70年代に日本の漁業を学ぶために出向いたのが、太地町の漁師たちとの出会いだったという。ただ、イルカ漁を知ったのは03年になってから。その後は年に5~6回通い続けた。9日に東京・中野で行われたシンポジウムでは、表現の自由を保障する憲法21条の条文を書いたパネルを掲げ、「上映が妨げられたのは残念だ」と約550人の参加者に訴えた。さらに、10日の和歌山大での上映会では約250人を前に講演。イルカ漁について知らなかった地元の学生らは「大きな衝撃を受けていた」という。予定されていた明治大生との対話は実現しなかった。
 オバリーさんは「日本は民主主義国だ。それにもかかわらずこの作品を日本人が見ることができないでいるのは不思議だ。日本バッシングをテーマにした映画では決してない。特に太地町の人にはぜひ、見てほしい」と訴えた。
 ◇漁師らに怒りや戸惑いも--和歌山・太地町ルポ  「ザ・コーヴ」(英語で「入り江」の意味)の舞台となった太地町は、400年続く日本の古式(網取り式)捕鯨発祥の地だ。人口約3500人の小さな漁村の人たちの口は一様に重かった。ただ、「映画を見て判断してもらってもいい」と話す町民もいた。「どんな発言もすべて映画の宣伝になる。興行収入は、映画を製作した環境保護団体の金もうけにつながるだけ」。同町漁業協同組合の幹部はこう言い切った。組合員には取材に応じないようかん口令を敷いたという。三軒一高町長(62)も漁協と歩調を合わせる。「上映中止は知りませんし、確認もしていない。個人としても、町としても何もお話しすることはない」。「IWC(国際捕鯨委員会)捕鯨全面禁止絶対反対太地町連絡協議会」会長の三原勝利町議会議長(72)は「生活がかかっているんです。漁協関係者を『マフィア』呼ばわりするプロパガンダ映画を上映することも、表現の自由なのですか!」と声を震わせた。
 自分たちが生業としてきたことが、ある日突然残酷な行為と非難される--海に生きてきた人たちにとって戸惑いや怒りは当たり前かもしれない。「映画は見ていないが、中身もウソが多いらしい。上映はしない方がいい」。15歳で漁師になった土谷拳示(つちたにけんじ)さん(78)は、アジサイの咲く自宅の庭先で草むしりしながら重い口を開いた。いまなおイルカ漁に出る。映画では船上から棒でイルカを突き刺し、海が鮮血で染まるクライマックスシーンが印象的だった。「血が出るのは牛や豚も同じなのに、なぜイルカだけがだめなんだ。今は船上で処理するから血は海に流れない。生活のために昔からやってきたのに、本当に腹が立つ」
 同じ漁師の海野注連雄(うみのしめお)さん(83)も上映反対だ。「漁協に聞かないとよく分からないが、上映はしてほしくない」と話す。一方、隣町の那智勝浦町から太地町内に通う自営業の清水晴美さん(67)は「娘は海が血で染まった映画の場面を見て、『イルカなんか食べない』と言っている。町民にとっては上映されたくないでしょうが、私は見た上でここがおかしいと言いたい」と話す。町議の漁野尚登(りょうのひさと)さん(53)は英語版を見たという。自らも映画に登場する。漁野さんは「表現の自由が、抗議や脅しで制約されるのはいかがなものか。映画の中身には反対だが、見て判断した方が健全な社会だと思う」という。 獣医師の阪本信二さん(47)はインターネットの動画サイトで一部を見たという。イルカ飼育の経験もある。「映画は一方的な『正義』の押しつけだ」とした上で、「若者はイルカ肉を食べなくなっており、文化・伝統という感覚はなくなりつつあるのではないか。大勢が見て議論し、判断してもらいたい。見る機会が奪われると若い人たちの意見も聞けない」と話した。「私たちにとっては生存権の問題」という言葉を町で何度も聞いた。生きる糧を海に頼る切実さだった。ただ映画は図らずも、作り手側の一種異様さも露呈していると感じる人も多い。映画をまず見て議論したいという思いは、多くの町民には届かないだろうか。

 もちろん上映中止を主張するのも表現の自由でありそのこと自体は批判すべきでない。問題は映画館や配給会社の姿勢だ。映画館も配給会社も表現活動の一翼を担うものとしての社会的責任があるはずだ。賛否があるからといって上映自体を中止することは社会的責任の放棄だろう。
 今日から上映を見合わせていた仙台フォーラムなど6館で公開され、その後全国18館でも上映される予定のようだ。結局上映中止は3館にとどまる。メディアもきちんと問題を取り上げて詳しく報道している。日本の民主主義はまだまだ健全のようだ。上映に反対する地元の方の気持ちは理解できるがやはり見た上で批判すべきだろう。
 それにしても明治大学と立教大学は情けない。「授業や教授陣らの研究に支障をきたす恐れがある」と言うが、私たちは自分達のことしか考えていません、表現の自由がどうなろうと私たちの知ったことではありませんと公言しているようなものだ。大学人として恥ずかしくないのだろうか。

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2010年7月 2日 (金)

「ザ・コーヴ」東北の映画館でも上映見合わせ相次ぐ(産経新聞) - Yahoo!ニュース

リンク: 「ザ・コーヴ」東北の映画館でも上映見合わせ相次ぐ(産経新聞) - Yahoo!ニュース.

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判したアカデミー賞受賞作の米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の上映中止が相次いでいる問題で、東北地方でも上映を予定していた仙台、山形、青森の3つの映画館が上映を見合わせることが15日、分かった。
 フォーラム仙台(仙台市青葉区)によると、26日から上映することをホームページなどで告知。今月3日と4日に東京や大阪の3つの映画館が中止を決めると、上映中止を求める抗議電話が数本寄せられたため、配給会社「アンプラグド」(東京都目黒区)と協議し、26日からの上映は当面見送ることにした。青森松竹アムゼ(青森市)やフォーラム山形(山形市)でも、同様の対応をとったという。
 フォーラム仙台の担当者は「抗議があったからではなく、大都市で中止が決まったので、静観する立場を取った」と説明。アンプラグドは「全国の劇場と前向きに協議を進めている」としている。

 私はイルカ漁に賛成だし、イルカを食べて何が悪いと思っている。イルカ漁とは比較にならないほど大量の牛を殺して毎日食っているアメリカ人がこんな映画を作ってイルカ漁禁止を訴えるのは全く筋の通らない幼稚な考えだと思う。そんな映画がアカデミー賞を取ってしまうのも理解できない。太地町の三軒一高町長が「イルカ漁は何ら違法ではない。地域の伝統や実情を理解した上で、相互に食文化を尊重する精神が必要だ」と話すのは正論だろう。
 しかしそのことと映画の上映中止は別問題だ。映画館も映画配給会社も、この映画は上映する価値があると考え、また見たいと考える観客がいると判断したから上映を決めたのだろう。それが上映中止を求める抗議電話が数本寄せられただけで上映中止にするとは信じ難い。表現の自由の価値をどのように考えているのだろう。映画館も映画配給会社も、表現の自由があって初めて存在できるのであるから少しはそれを護ろうという気概があってもよいと思うのだが。
 上映中止を求める団体も幼稚としか言いようがない。「反日的な映画だ、日本の文化を理解しない」というのが中止を求める理由だろうが、もしそのとおりの映画であれば観客は皆反感を持って帰るだろう。映画に対する評価は特定の者が決めることではなく、観客が決めることだ。抗議行動をちらつかせて自らの価値観を押しつけようとするのは、イルカ漁を一方的に残酷だと決めつけるこの映画と同じ偏狭な考えだ。反日を言うならいまだに沖縄を「占領」し続けているアメリカの大使館に対して抗議行動をすべきだろう。
 17日に予定していた明治大学での学生向け上映会も、大学側から「授業に支障をきたす恐れがある」として、会場の貸し出しを断られたために中止されたようだ。二昔前なら大学がこんなことをしようものなら学生が黙ってはいなかっただろうが、今の学生は大学に抗議することすらしないようだ。今の大学生にとって「表現の自由」は護るべき価値ではないということなのだろうか。 

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