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2010年7月 3日 (土)

医療過誤被害者に冬の時代到来か   平成21年最高裁医事関係訴訟統計速報 提訴数激減・認容率低下

  平成21年の最高裁医事関係訴訟統計速報が公表された。年間新規提訴数は733件で過去10年間で最低を記録した。平成20年の877件と比べても16%の減少となっている。平成16年が1110件だから激減といってもよいだろう。
  一部認容を含む認容率は25.3%とこれまた過去10年間で最低を記録した。10年前の平成12年が46.9%だからほぼ半減している。これは一部認容つまり1000万円請求して200万円しか認容されなかったようなものも含んでいるので、完全勝訴はこれよりはるかに低い数字のはずだ。和解率が49.7%だからこれ以外が全て敗訴というわけではないが、医療過誤訴訟は勝つのが難しかった20年前に完全に逆戻りしてしまったようだ。ちなみに通常訴訟の認容率は85.3%でこの10年間ほとんど変化がない。
  このような数字をどのように理解するかだが、一つの見方としては訴訟に至る前に示談で解決される件数が増え、訴訟案件の内訳としては難しい案件の比率が増えたからということも考えられる。たしかに以前は医療機関が無謬性にこだわって責任が明らかと思われるケースでも訴訟になっていたが、最近では示談で解決するケースが増えている感じはする。しかしなかなかそれだけで全てを説明するのは難しい気がする。
  提訴件数の減少については、医療崩壊が声高に叫ばれ、その原因の一つに訴訟リスクが語られる結果として被害にあった患者が提訴しづらい環境に逆戻りしてしまったことも考えられよう。
  認容率の低下については、医療機関側代理人の能力向上という点があると思う。以前は医療知識に乏しい医師会の顧問弁護士や保険会社で交通事故の代理人をやっているような弁護士が代理人になるケースも多かった。しかし、現在では地方の事件でも医療過誤事件に習熟した東京の弁護士が医療機関の代理人につくケースが増えている。患者側の弁護士は玉石混淆の状態だから相対的には医療機関側が有利になっているのかもしれない。
  もう一つは裁判官の意識の変化が考えられる。医療崩壊が声高に叫ばれるようになったこと、裁判所と医療機関の間で医療訴訟に関する懇談会や鑑定人推薦の協議会が開かれるようになり医療機関に対するシンパシーが醸成されていることが影響しているように思えてならない。
  おそらくこれらが複合してこのような提訴数激減、認容率低下がもたらされているのであろう。いずれにしても患者や患者側代理人にとっては冬の時代になりつつあるようだ。
  もちろん患者側代理人としては能力向上に努める以外に方法はないわけだが、近時の傾向として目立つのは因果関係についての認定の厳格化だ。以前はこれほど高度の証明は要求しなかったと思うのだが、近時の裁判所の認定を見ていると、ほとんど悪魔の証明を原告に課しているとしか思われない。肝癌のケースで最近もらった判決では、肝硬変患者に対する6ヶ月毎の超音波検査義務懈怠を認めながら、発見前の6ヶ月の間に急速に進行した可能性があり6ヶ月前の時点で肝癌が発見できたとは限らないとして検査義務懈怠と死亡との因果関係を否定したものがある。しかしガイドラインで慢性肝炎ないし肝硬変患者に6ヶ月毎に超音波検査をするというのは、この間隔で検査していれば少なくとも積極的な治療が不能の状態になる前に肝癌を発見できるという医学的知見に基づいて決められているのである。にもかかわらず6ヶ月以内に急速に進行する可能性を持ち出して因果関係を否定するというのでは原告はいったいどのような立証をすればよいのだろう。検査していないのだから具体的な証明などおよそ不可能だ。肝腫瘍のダブリングタイムの統計データからすれば6ヶ月以内に手術不能の多発肝腫瘍の状態に至ることなど考えられない。このような場合は6ヶ月以内に癌が発生し急速に進行したことの具体的反証を被告に求め、それができなければ因果関係を認めるべきだ。にもかかわらず裁判所は高度の蓋然性はおろか相当程度の可能性すら認めないというのだから、もはやお手上げだ。

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