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2010年11月の2件の記事

2010年11月14日 (日)

大阪弁護士会のこの懲戒処分は酷すぎないか

  大阪弁護士会がある弁護士を戒告処分とした。理由は、弁護士法23条の2の弁護士照会申出に当たって、申出の理由に明らかに不必要で懲戒請求者をいたずらに貶めるおそれのある記載をし、所属弁護士会をして照会の申出の理由を被照会者にあてて送付せしめたからというものだ。
  しかしこれは全く筋の通らない処分だと思う。弁護士照会の主体は弁護士ではなく弁護士会であり、被照会者に報告を求めるのは疑いもなく弁護士会だ。そもそも条文上弁護士照会を申し出るに当たって申出の理由を記載することなど求められていない。ただ理由の記載がないと照会してよいかどうか弁護士会が判断できないので、弁護士会の判断の便宜のために実務上理由の記載が求められているに過ぎない。照会申出の理由を被照会者に送付するかどうかは弁護士会が判断すべき事項であることは明白だ。
  ちなみに仙台弁護士会の書式には
照会申出書は弁護士会に2通提出いただき、1通を照会先に送付する扱いとしております。照会先に照会申出書の送付を希望しない場合、必ずその旨付記し、照会事項書の副本をご提出下さい。ただし、照会先に理由を開示したほうが回答がより得られやすいと判断されるときは、照会事項書に差し支えない範囲で上記2、3の事項を御記載下さい。」と書かれている。私はこの原則と例外は逆であるべきだと思っているが、照会申出の理由が記載された照会申出書を送付するかどうかの扱いを決めるのが弁護士会であることに変わりはない。
 大阪弁護士会は本件申出の理由が「
明らかに不必要で懲戒請求者をいたずらに貶めるおそれのある記載」だと言うが、そのように認識しているならそもそも被照会者に送るべきではない。送るべきでないものを自らの判断で送ってしまった責任を棚に上げて「所属弁護士会をして照会の申出の理由を被照会者にあてて送付せしめた」という論法は責任逃れも甚だしい。照会申出の理由に仮に大阪弁護士会が認定したような記載がされているとしても、被懲戒者はそれを守秘義務のある弁護士会に提出しただけで外部に漏らしたわけではない。制度上大阪弁護士会が送付するかどうかの判断に関与しないというなら「送付せしめた」と言えるであろうが、そうでない以上送付した(漏らした)のは大阪弁護士会である。それを理由に当の大阪弁護士会が懲戒処分するというのはどう考えても筋が通らない。筋が通らない以前に「送付せしめた」という事実認定をすることはできず誤った懲戒処分だと思う。
 しかもこの件は照会申出が不法行為に当たるとして裁判になり、プライバシーを暴露しようとしたものではなく不法行為に該当しないとの判決が出されている。これについて大阪弁護士会は「民法上の不法行為該当性と懲戒事由該当性は別個の問題であり」と言う。たしかに違法とは言えないまでも著しく反倫理的という事態は想定できないではない。しかし法は国民の行為基準でありそのような事態は希であろう。大阪弁護士会が上げる理由からは本件がそのようなケースだと読み取ることはできない。裁判所の判断を前提にする限り「弁護士としての品位を失うべき非行」には該当しないと思う。
 自由と正義を見ていると酷い弁護士もいるものだと思うし、この懲戒処分は軽すぎないかというものも結構ある。その反面これで懲戒されたのでは堪らないというものも散見されるように思う 

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2010年11月 6日 (土)

尖閣沖衝突画像流出 勇気ある行動か

  尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したとみられるビデオ映像が「ユーチューブ」上で公開された問題で、作家で元外務省主席分析官の佐藤優氏は「海保内部から流出し、機密情報が公になったとすれば、組織管理の甘さがあり見逃せない。中国人船長を釈放した今回の事件処理に対し不満を抱く者の仕業だろうが、それを内部告発という形で解消するのは間違いだ」と指摘している。
  他方ネット上の書き込みでは「投稿者の勇気ある行動に敬礼!」「あなたのおかげで少しは日本も目がさめるでしょう」など賞賛するものが圧倒的だ。佐藤氏の指摘は正に優等生の模範解答だろうが、世間の認識は違うようだ。
  検察庁も政府も捜査情報だから公開できないと言うが、被疑者を釈放し中国に帰国させた以上刑事訴追など不可能なのは明らかだ。もちろん形式的には起訴不起訴の終局処分がされていないので捜査情報には違いないが、捜査の密行性はもはや理由にならない。むしろ日本の外交政策を決めるために国民が知らなければならない情報だ。では外交に関する情報だから公開できないということになるのか。外交は政府に任せればよいのであって国民が情報を知る必要もないし国民が監視する必要もないと考えるならそうなるだろう。しかしそんな考え方を支持する国民はいないだろう。
  このビデオ映像は国民の知る権利の対象であり国民はその公開を望んでいる。「ユーチューブに最初に映像が投稿されたのは4日夕。6本あったオリジナル映像をパソコンに取り込んだユーザーたちがユーチューブや別の動画共有サイトに投稿したことで、映像のコピーと投稿が繰り返され、オリジナルとまったく同じ映像が拡散。オリジナルの映像は5日午前7時半すぎに削除されたが、コピーの動画は5日夜現在で100本を超え、閲覧回数が60万回を超えた映像もある。」という事実がそれを物語っている。一部の国会議員しか見られない、それも編集されたごく一部しか見られない、そういう状態で日本の外交政策が決められるなら北朝鮮や中国と何ら変わりはない。もはや民主主義国家とは言えないだろう。
  外交的に見ても日本がいくら漁船が故意に衝突してきたと主張しても、船長を釈放し、ビデオがあると言いながら公開しないのでは他の国が信用するはずもない。公開しないのは公開すると主張と異なる事実が明らかになってしまうからと受け取るのが普通だ。中国怖さにビデをすら公開しないのではどの国も日本を支持などしてくれまい。
  投稿者の意図が、単に中国人船長を釈放した今回の事件処理へのうっぷん晴らしにあるのか、それとも真実を伝えたいということなのか不明だが、この映像を入手できるのは海上保安庁か検察庁の幹部に限られる。特定される可能性は高いし、特定されれば懲戒免職どころか刑務所行きもあり得るのだからそれなりの覚悟を持った行動と見るべきだろう。マスコミの中には「交渉カードを一枚無くした」「情報管理ができなければ国が危うい」などとしたり顔できれい事を書いているところもあるが、この問題は民主主義国家での情報公開の在り方という視点で論じるべきことだろう。
  映像は私も見たが、漁船が故意に衝突してきたことは明白だ。しかも固い船首の部分を巡視船の横腹に衝突させようとしている。これは器物損壊や出入国管理法違反などというものではない。刑法126条の船舶転覆破壊罪の未遂に該当し、法定刑は3年以上の懲役。もし衝突の衝撃で海上保安官が放り出されて死亡すれば故意がなくとも同致死罪で法定刑は死刑又は無期懲役という重罪だ。これを不問に付されては海上保安官は堪らない。
  それにしても中国漁船の無法ぶりは正視に耐えない。巡視船が絶対に撃たないと分かっているので正にやりたい放題だ。領海侵犯されても退去を呼びかける以外何もできない、衝突されて逮捕したら自分の国の首相からなんで逮捕なんかしたんだと怒られる、こんな国は世界中で日本だけだ。それでも巡視船に乗って尖閣諸島に張り付いていないといけないのだから現場の海上保安官は憤懣やるかたないだろう。本来であれば海上保安庁の長官が映像の公開を政府に強く迫るべきなのに。
  大阪地検特捜部の証拠改竄が明るみに出たのも内部告発によるものだ。日本の官僚には保身と臭いものには蓋の隠蔽体質が染みついているが、検察庁と海上保安庁にはまだ勇気ある行動をする者がいるようだ。賞賛したいとは思うが、それも行き過ぎると政府の無策は我々が正すという戦前の青年将校のようになりかねない。例え一時検察に対する信頼が損なわれたり外交上の不利益を被るとしてもそれは取り返しのつくことだ。真実を伝える政府こそが国民から信頼されるのであり、国民の信頼以上に護らなければならない価値などないと思うが。

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