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2011年3月 3日 (木)

日弁連法曹養成制度の改善に関する緊急提言 「受験回数制限は今後も維持されるべき」だって

  日弁連執行部は、法曹養成検討会議の答申を踏まえ、法曹養成制度の改善に関する緊急提言(案)を確定した。3月の理事会で決定される。
  中味を見て驚いた。提言の趣旨4項には「司法試験の受験回数制限を当面の間5年5回に緩和する」とある。提言の理由第2、4項では「現在の司法試験は法科大学院修了後5年以内に3回までという受験回数制限が存在している。このような受験回数制限制度自体は、司法試験がプロセスとしての法曹養成の理念の下、法科大学院教育の成果を確認する試験として位置づけられていることからも合理性を有するものであり、今後も維持されるべきものである。」とされ、ただ受験控えが広範に生じていることを指摘して当面の間5年以内5回までの緩和を行うことが相当と結論づけている。
  既に現時点で、受験回数制限で司法試験を受験できなくなったいわゆる三振者が多数生じている。その不合理性は受験生のみならず大方の弁護士の共通認識だと思っていたが、法曹養成検討会議のメンバーと日弁連執行部だけは違うようだ。
  緊急提言は「司法試験が、法科大学院教育の成果を確認する試験として位置づけられていることからも合理性を有する」と言うが、司法試験はいつからそんな試験になったのだろう。司法試験法第一条は「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。」と定める。3項で「司法試験は、第四条第一項第一号に規定する法科大学院課程における教育及び司法修習生の修習との有機的連携の下に行うものとする。」とされているが、「法科大学院教育の成果を確認する試験」などとはどこにも書かれていない。根拠のない勝手な解釈はやめて欲しい。
  医師国家試験は医師法に基づき実施されるが、医師法は受験回数制限などしていない。医師法は医師国家試験の受験資格として「大学において
医学の正規の課程を修めて卒業した者」と定める。受験資格を「法科大学院課程を修了した者」とする司法試験と全く同様である。そして医師国家試験において「医学の正規の課程を修めて卒業した者」を受験資格とするのはプロセスとしての医師養成の理念に基づくものである。このように同種の資格である医師国家試験と比較しても日弁連執行部の論理が破綻していることは明らかだ。
  司法試験は、条文に明記されているように「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」であり、この目的からすれば本来受験回数制限の合理性を根拠付けることはできない。法科大学院課程を終了後さらに自ら研鑽を積んで法曹に必要な学識及びその応用能力を身につけた者を、司法試験から排除する合理性は全く見出し難い。受験回数制限は直ちに撤廃されるべきである。
  また提言の趣旨6項には「法曹三者による実務修習開始前の集合的修習を実施すること」とある。しかし提言の理由を見ると「法科大学院における実務導入教育がなお未成熟であることに鑑み」と書かれているだけである。これでは法科大学院の教育内容を見直す理由にはなっても、実務修習開始前の集合的修習を実施する理由にはならない。この問題は司法修習制度の欠陥であって法科大学院の問題ではない。僅か2年ないし3年間の法科大学院課程にここまで求めるのは土台無理な話で決して法科大学院が悪いわけではない。司法修習期間を1年6ヶ月に戻すべきだというのが大方の会員の意見だと思うが、日弁連執行部はその点に触れたくないのでこの程度でお茶を濁そうという考えなのだろう。しかし司法修習制度の問題点はきちんと指摘して具体案を提示すべきだ。1年6ヶ月に戻すのが難しいという判断なら、せめて選択型実務修習を廃止して、その2ヶ月を前に持ってきて前期修習を復活させるべきだ。実際に修習生の指導担当をしてみると、選択型実務修習に貴重な2ヶ月を費やす意味が全く理解できない。
  結局日弁連執行部は、受験回数制限の問題にしろ、実務修習開始前の修習の問題にしろ、日弁連が関与して制度設計した法曹養成制度の枠に固執しそれを維持したままで弥縫策を探ろうという発想なのだと思う。歴代執行部に対する配慮なのだろうが、そんな発想では法曹養成制度の改善など図れるはずがない。
  さらに提言の理由8項では「組織内弁護士の拡大に向けた制度的措置を含めた対応が必要である」とある。意味がよく分からないが、企業や官庁に一定数の弁護士を雇用する義務を課すような制度を設けて欲しいということなのだろうか。司法改革信者の口癖がつい出てしまったというところだろうが、法曹養成制度と直接関係ないことをついでに言うのはやめて欲しい。そんな押し売りのような真似は弁護士として恥ずかしいし、企業にとっても迷惑千万だろう。
  日弁連は今回は「緊急提言」であり、さらに今後法曹養成制度の抜本的改革に向けた中長期的な検討が必要だとする。しかし日弁連は、既に2009年1月に「新しい法曹養成制度の改善方策に関する提言」をとりまとめ、その中で法曹養成制度の問題点を指摘している。この2年間一体何を検討してきたのだろう。真剣に検討してこなかったから僅か2ヶ月でこのような重要な緊急提言をまとめざるを得なくなったのである。法曹養成制度については法科大学院制度が導入されてからつとにその問題性が指摘され、ことに受験回数制限に関しては撤廃を求める単位会決議もなされている。本来であれば、この2年間に単位会に対する意見照会と会員アンケートを実施して、十分な会内合意を得て法曹養成制度に関する提言を行うべきだったのである。
  今回の緊急提言に限らず、会内合意形成の努力をせず、直前になっていきなり執行部案を提示して議論する間もなく理事会で政策を決定してしまうというのが、日弁連執行部の常套手段となっている。そのような姿勢が、どれだけ一般会員の執行部に対する不信と会務離れをもたらしているのか考えたことがあるのだろうか。受験回数制限の撤廃は、受験生は当然のこととして、おそらく9割方の会員が支持すると思う。それと真っ向から反する緊急提言を行うようでは日弁連に明日はないというべきだろう。 

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