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2011年4月の24件の記事

2011年4月30日 (土)

震災で被災した司法試験受験生の救済 平成23年度について受験回数制限から除外する措置を求める意見書

平成23年度新司法試験についての措置を求める意見書
                              平成23年4月28日
 内閣総理大臣・緊急災害対策本部長 菅 直人殿
 法務大臣                  江田五月殿
 最高裁判所長官              竹崎博允殿
 日本弁護士連合会会長         宇都宮健児殿
                仙台弁護士会所属弁護士113名
                                       呼びかけ人守屋克彦
                                      同    泉山禎治
                                      同    藤田紀子
                                      同    官澤里美
                                              賛同者別紙109名
第1 意見の趣旨
  今年度(平成23年度)の新司法試験においては、全受験生について卒業後5年以内に3回とする受験年数・回数制限から除外する措置を講ずることを求めます。
第2 意見の理由
1 平成23年3月11日に発生した東日本大震災から1か月以上が経ち、今年度の新司法試験まで、2週間あまりを残すだけになりました。
  被災地の受験生には、地震・津波・原発による直接の被害を受けたり、あるいは家族や友人を亡くしたり、さらになお引き続いている余震や原発の恐怖に脅かされているものが少なくありません。
  また、被災地の法科大学院においては、教室や自習室、教員研究室が本震やその後に続いた余震によって甚大な被害を受け、授業や院生の勉学の円滑な実施の実現には相当の年月を要する現状にあります。
  また、今回の震災においては、行政機関も各種機能の停滞が生じ、裁判所などの司法機関においても期日の大幅な延期をするなどの非常事態を余儀なくされ、現在なお復旧の途上にあるというのが現状です。
2 受験生たちは、公の機関ですらこのように混乱し、日常を取り戻すことが出来ていない現状の中で、自らの目標に向けて勉強に励もうとしておりますが、震災後の長引いたライフラインの切断や交通手段の途絶、パソコンの使用不能など、十分な勉強ができない環境が重なっており、ある者は今年度の受験を断念し、ある者は、卒業後5年以内という受験制限があるために準備不足のまま悲壮な決意で受験に望もうとするなど、平常の精神状態とはほど遠い状態で試験を迎えざるを得ない状態であり、震災と関わりなく準備を重ねることのできた受験生と比べて、はるかに劣悪な状況に置かれていることは否定できません。
3 この点で、平成23年度の国家公務員採用Ⅰ種・Ⅱ種試験等の受験希望者については、受験日の変更等の対応がなされているところであり、本来は新司法試験においても試験日程の変更等の措置が採られる配慮が望まれたところでありますが、それがなされずに試験が強行され、受験生が、試験において思うように実力を発揮することが出来なかった場合において、新司法試験における法科大学院卒業後の受験年限と回数制限を機械的に適用することは、被災した受験生にとって過酷な結果になるおそれがあり、それを回避するための措置が考えられて当然であると言わなければなりません。
4 今回の震災で被災した受験生の救済という点に絞れば、あるいは、震災地で自らが罹災した受験生、震災地にいない場合でも家族(例えば2親等以内の親族など)が罹災した受験生及び法科大学院自体が罹災し、授業の運営に支障が生じた法科大学院に在籍している受験生などについて、卒業後5年以内に3回とする受験年限を緩和するなどの配慮でまかなえられるとも考えられ、最低限そのような救済は必要であると望まれますが、震災及びその後の社会の混乱の物心両面に対する影響の範囲を明確に測定し、受験者全体に不公平がないように救済することには困難が予想されることを考えますと、今年度の新司法試験については、全受験生について、卒業後5年以内に3回とする受験年数・回数制限から今回の受験を除外するという措置を講ずることが相当であると考えますので、そのための措置を求めるものです。

 新司法試験では法科大学院課程修了後5年間で3回以内に合格しないと司法試験の受験資格を失うとされている。本来回数制限自体が合理性を有しないものだと思うが、最低限震災で被災した受験生を救済するための措置は必要だろう。ちなみに医師国家試験には回数制限などない。これを切っ掛けに司法試験の受験回数制限が撤廃されることを期待したい。

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かわいそうなイソ弁 このボス弁って誰でしょう?

 幸いにして(?)、こんな目にあったことはない。QT:法廷でイソ弁を叱責するボス弁を目撃。ボス弁自身、事前に進行状況も記録も全然確認していなかったようなのに、これはどうするんだ等と詰問、ご立腹の様子。最後はイソ弁の前に記録を投げていた。さすがにちょっとひいた…
  最近ツイッターを始めたらこんなつぶやきが載っていた。ツイッター初心者の私にはQTの意味が分からないが、投稿者は仙台の方なので仙台の弁護士のことかもしれない。このボス弁って誰でしょう?イソ弁の責任はボス弁の責任、仮にイソ弁にいたらない点があったとしても法廷ではボス弁が全責任を負うのが当然だ。幸いうちのイソ弁は二人とも優秀なのでこういうことはない(多少冷汗をかくことがなかったわけではないが)。

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2011年4月29日 (金)

「法テラスで賃金差別」非常勤職員の女性が提訴 法テラスお得意の「法の支配」は職場にはないようです

リンク: 労働訴訟:「法テラスで賃金差別」 非常勤職員の女性が提訴--奈良地裁 - 毎日jp(毎日新聞).

 同じ仕事をしているのに賃金が低いのは違法だとして、奈良市の法テラス奈良法律事務所の非常勤職員の女性(38)が日本司法支援センター(法テラス、本部・東京都)に対し、常勤職員との賃金差額約155万円(16カ月分)の支払いを求める訴訟を奈良地裁に起こした。法テラスは経済的困窮者への法律扶助などを目的に国が設立した機関だが、弱者を生む賃金差別の可能性が足元で浮上した。原告代理人の弁護士によると、法テラスを相手にした労働訴訟は全国で初めて。【高瀬浩平、岡奈津希】
  訴状などによると、職員は08年12月、法テラスに非常勤で採用され、同事務所に配属。09年4月から1年間は産休職員の穴埋めで常勤になったが、10年4月から非常勤に戻された。09年9月には、新たに常勤職員1人が配属された。
 裁判員裁判など刑事事件で必要な書類・図の作成、破産申立書の作成、無料法律相談の取り次ぎなど、仕事内容は常勤と同じで勤務時間もフルタイムだが、賃金は常勤の約7割(日給7500円、月給13万~16万円)だという。こうした実態は、仕事内容などが同じ場合の待遇差別を禁じたパート労働法に違反するとしている。
  原告の職員は生活が苦しく、弁護士費用も法テラスの民事法律扶助で立て替えてもらうしかなかった。「社会的弱者を救済する公的組織が弱者を作り出すのは自己矛盾だ。他の非常勤職員の待遇を改善するためにも提訴を決めた」と話した。
 法テラス総務部は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。

  法テラスの採用情報を見てみると常勤と非常勤の違いは次の通り
1 常勤職員
   業務内容
   法律事務所勤務の場合採用時配属先は、主に法テラス法律事務所を予定しているため、法律事務を担当することとなります。弁護士業務のサポート、裁判所提出書類等の資料作成、依頼者を含めた関係者の応対や連絡調整、経理、事件記録の整理・管理、各種報告物の作成等一般事務など
  待遇
 (例)基本給+地域手当
 (四年制大学卒の場合)
  東京 203,196円~238,360円(上限)
 (短期大学卒業の場合)
  東京 180,304円~238,360円(上限)
 (高校卒業・2年以上の職歴ありの場合)
   東京 173,696円~238,360円(上限)
    ※昇給年1回 地域手当、扶養手当、超過勤務手当、住居手当、通勤手当年2回(6月、12月)、年間約4月分(平成22年度実績)
2 非常勤職員
    業務内容
  一般事務(当センターの事務全般の補助)
  待遇
  週5日、午後1時30分から午後4時30分原則として時間外勤務なし(月上限10時間)
  月給制、時給1,000円、通勤手当支給(月3万円以内)

  非常勤職員の業務内容が本当にセンターの事務全般の「補助」にとどまり、常勤職員の業務内容より遙かに軽易だというならこのような待遇の差も正当化されよう。しかし、多分実態はそうではないのだろう。非常勤職員は6か月毎の更新制で更新の上限は3年まで。このような弱い立場にある非常勤職員が提訴に踏み切るというのは勇気ある行動だと思う。同じような境遇にあって泣き寝入りしている法テラスの非常勤職員はたくさんいるのだろう。
  日本司法支援センターによると、法テラスとは、『法律によってトラブル解決へと進む道を指し示すことで、相談する方々のもやもやとした心に光を「照らす場」という意味を込めて造語したものです。悩みを抱えている方々にくつろいでいただける「テラス」(燦々と陽が差し、気持ちの良い場所というイメージを持つ。)のような場でありたいという意味も込めています。』とされる。
  法テラスが非常勤職員にとっても、「テラス」のような職場であって欲しいものです。

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2011年4月25日 (月)

東電、全役員の報酬50%カットの方針 やっぱり貰うんだ

リンク: 東電、全役員の報酬50%カットの方針 (読売新聞) - Yahoo!ニュース.

  東京電力が、全役員の年間の報酬を50%程度カットする方針を固めたことが24日、わかった。部長級など管理職の年収も3割前後カットする方向で検討している。
 東電は、福島第一原子力発電所の事故を受けて巨額の賠償負担が予想されており、労働組合に対しては、組合員の年収の約2割削減を提案している。役員や管理職はこれを上回る削減を行い、全社を挙げてリストラを徹底する姿勢を明確にする。
  東電は、柏崎刈羽原発(新潟県)の運転停止に伴い、2007年度以降、役員賞与の停止や役員報酬の20%削減を続けている。09年度の有価証券報告書によると、社外取締役を除く取締役の報酬総額は約7億円で、取締役19人の平均は1人約3700万円。東電は社長、副社長経験者らのOBが就く顧問職についても、制度の見直しや手当のカットを検討している。最終更新:4月25日(月)4時39分

  やっぱり役員報酬を貰うんだ。5割カットといっても3700万円の半分だから1850万円になる。役員報酬は給与じゃなくて会社に貢献したことに対する報酬だ。巨額の賠償責任を背負うことになって貢献どころか会社に損害を被らせたのだから、理屈で言っても報酬はゼロで当然だろう。まして原発被害者の状況を考えれば人としてどうなのだろう。清水正孝社長は6月の株主総会で退任するとのことだが、普通なら億単位の退職慰労金が出る。まさかもらうつもりじゃないだろうが。まあ役員報酬も退職慰労金も貰った上で全額原発被害者への賠償に宛てるというなら話は別だが、そんなことする連中とは思えない。
  「東電は社長、副社長経験者らのOBが就く顧問職についても、制度の見直しや手当のカットを検討している」という。検討すること自体は結構だが、そういう顧問職を設けて電気料金から手当を払ってきたことがそもそも誤りだ。
  管理職は年収3割カット、一般職は2割カットするようだ。しかし東電の平成21年の平均年収は、管理職を除いた一般職で757万円だ(平均年齢40.6歳)。部長級の管理職の年収は公表されていないが普通は一般職の倍くらいだ。ちなみに関連会社の東光電気のそれは554万円、そのまた下請け・孫請けになると多分サラリーマンの平均年収である406万円に近いだろう。2割カット、3割カットと言ったところで、サラリーマンの平均年収どころか関連会社のそれよりもまだまだ高額だ。
  もちろん福島原発の現場で復旧作業を行っている社員や管理職の給料は倍にしてもよいくらいだが、東電が「全社を挙げてリストラを徹底する姿勢を明確にした」とは到底評価できない。

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2011年4月24日 (日)

過去の原子力損害関連判例の紹介

原子力損害関連判例
以下は原子力損害賠償法を検討してみるブログ
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-54.htmlからの引用です。このブログは原子力損害について詳しく書かれておりとても参考になります。

〔風評被害,魚介類〕
①平成元年5月17日・名古屋高等裁判所金沢支部判決(判タ705号108頁)
 敦賀原発風評被害訴訟。昭和56年1月敦賀原発において,日本原子力発電が,放射性物質を漏洩させた事故に関するもの。事故事実の公表後,風評被害が広がり,水産市場関係者が,売上げ減少による損害の賠償を,日本原子力発電株式会社を訴えた。
「前認定のとおり,本件事故の発生とその公表及び報道を契機として,敦賀産の魚介類の価格が暴落し,取引量の低迷する現象が生じたものであるところ,敦賀湾内の浦底湾に放射能漏れが生じた場合,漏出量が数値的には安全でその旨公的発表がなされても,消費者が危険性を懸念し,敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理は,一般に是認でき,したがって,それによる敦賀湾周辺の魚介類の売上減少による関係業者の損害は,一定限度で事故と相当因果関係ある損害というべきである。」
「前認定のとおり,事故による影響かどうか必ずしも明らかではないものの,一部売上減少が生じたことが窺われるが,敦賀における消費者が,敦賀湾から遠く離れ,放射能汚染が全く考えられない金沢産の魚まで敬遠し,更にはもっと遠隔の物も食べたくないということになると,かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認めがたい。金沢産の魚も心情的には不安であるとの理由で賠償を命ずるものとすれば,金沢における消費の低下も是認しなければならなくなり,損害範囲はいたずらに拡大することとなる。したがって,右控訴人らの売上高が本件事故後減少したとしても,消費者の個別的心理状態が介在した結果であり,しかも,安全であっても食べないといった,極めて主観的な心理状態であって,同一条件のもとで,常に同様の状態になるとは言い難く,また一般的にも予見可能性があったともいえない。すると,本件浦底湾における人体に影響のない微量の放射能漏れと敦賀の消費者の金沢産魚介類の買い控えとの間には,相当因果関係はないというべきである。」



〔風評被害,土地価格〕
 宅地販売業者が,売却予定で宅地造成中に,JCOの臨界事故が起き,予定価格での売却ができなかったとして,原賠法等を根拠に損害賠償請求した事例。 
①平成16年9月27日東京地裁判決(判タ1195号263頁)
 原賠法3条1項の「原子力損害」の解釈として,土地価格の下落のような純粋経済損失も「原子力損害」に該当しうる余地を認めつつ,損害と相当因果関係の存在を否定し,請求を棄却した。(事案の特殊性として,裁判所の認定では売却時点では時価はほぼ回復していたこと,事故現場から約3キロの地点であるが汚染はなかったこと,売り出し時点でJCO東海事業所が閉鎖され同所が再度事故を起こす危険がなくなっていたこと等がある)
「この点,原賠法2条2項,3条1項の「損害」とは,「原子炉の運転等」,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用」と相当因果関係があるすぎり,すべての損害を含むと解すべきであって,条文上何らの限定が加えられていないことから,被告が主張するような人身損害又は物に対する損害を伴わない損害(純粋経済損失)を除外する根拠はないというべきである。」
「本件臨界事故が,東海村の住民に本件土地の放射能汚染のおそれや,被告が再び同様の事故を起こすおそれを意識させ,その結果,本件土地の価格の下落が生じたのであれば,その下落は,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるということができるが,本件臨界事故が,被告東海営業所が存在することから生じる危険性ではなく,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性を再認識させることになり,それが本件土地の価格の下落の主たる原因であるとすると,原子力関連施設の存在すること自体から生じる危険性は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないから,被告が主張するとおり,本件臨界事故と本件土地の価格の下落との間に相当因果関係を認めることはできない。(そのような一般的な危険性の再認識は,東海村だけに限らず,日本各地の原子力施設の存在する土地に同様に生じうる。)」

②平成17年9月21日東京高裁判決(判時1914号95頁)
 ①の控訴審判決。控訴棄却。
一般的危険性が再認識される原子力関連施設の存在状況は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないのであり,そうすると,本件臨界事故と控訴人主張の本件土地の価格の下落損失との間に相当因果関係があるとまで認めることはできない」
「本件証拠関係から認められる被控訴人東海事業所と本件土地との距離ないし位置関係,本件臨界事故の発生状況,本件臨界事故発生後に東海村及び茨城県によって行われた避難勧告等の内容,その後の臨界の終息及びそれが確認されたこと,上記の避難勧告等の解除,本件臨界事故による食品,水,土壌汚染等に対する影響についてなされた茨城県等の検査結果とその公表,前示のような,被控訴人に他する原子力事業許可の取消処分,これに従い被控訴人東海事業所が原子力事業に起因する危険を引き起こす存在でなくなったこと,このような事態に対する一般の認識が広まり,住民の定住志向の回復がみとめられることなどの諸事情を総合して考えると,本件臨界事故と控訴人主張に係る下落損害との相当因果関係を認めるべき根拠と解することはできない」



〔風評被害,加工食品,納豆等〕
①平成15年6月24日・水戸地裁判決(判時1830号103頁)
 JCO臨界事故関係。風評被害により,水産加工会社が製品の取引を拒否され焼却処分せざるをえなかったとして損害賠償請求。損害及び相当因果関係否定。
「以上のとおり,原告の主張は,変遷しており,その内容も不自然であるのみならず,現主張に沿うかのような原告代表者及び証人甲野一郎の供述部分については,これを裏付けるに足りるだけの的確な客観的証拠はなく,かえって,これに反する証拠状況である以上,原告主張の損害があつたと認めることはできない。」「なお,付言するに,前記の点を措いても,原告は,製品や原料の転売が不可能であったと主張するが,原告が乙山社に対して更に取引を求めて交渉したり,当該品物の転売先を探す努力をした形跡は全くないのであり,そのような努力をしてもなお損失を被らざるを得なかったことを認めるに足りる証拠はないから,原告主張の損害には,本件事故との相当因果関係を認めることはできない。」

②平成18年2月27日・東京地裁判決(判タ1207号116頁)
 JCO臨界事故関係。納豆の風評被害。実際の商品に放射能汚染等はなかったが,臨界事故報道等があり悪風評が生じて売上げが減少。
「本件臨界事故によって消費者が納豆商品を買い控えるなどした結果,納豆業界全体の売上げが減少するという風評被害が生じていたものと認められるのであって,本件臨界事故発生と納豆業界全体の売上減少との間には一定限度で相当因果関係があるということができる。」
「もっとも,本件臨界事故後,一般消費者が納豆商品を買い控えるに至ったことが窺われるものの,それは一般消費者の個別的な心情に基づくものであり,放射線汚染という具体的な危険が存在しない商品であるのにもかかわらず,それが危険であるとして,上記商品を敬遠し買い控えるに至るという心理的状態に基づくものである以上,そこには一定の時間的限界があるというべきである。この時間的限界をどのように画すかは困難な問題であるが,それは一般消費者が上記のような心情を有することが反復可能性を有する期間,あるいは一般的に予見可能性があると認め得る期間に限定されるというべきである。」

③平成18年4月19日・東京地裁判決(判時1960号64頁)
 JCO臨界事故関係。納豆の風評被害。実際の商品に放射能汚染等はなかったが,臨界事故報道等があり悪風評が生じて売上げが減少。
「同法が,賠償されるべき損害の範囲について何ら限定を付していないことからすれば,当該事故と相当因果関係が認められる損害である限り,これを「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」(同法3条1項)と認めて妨げないというべきであり,いわゆる風評被害について,これと別異に解すべき根拠はない。」
「そして、本件臨界事故現場から10キロ圏内の屋内退避要請地域については、放射線及び放射性物質の放出による健康影響はないものとされているほか、一部新聞記事にはその旨の報道が先行的になされていたこと、本件臨界事故直後の平成11年10月1日から同月5日にかけて、茨城県などによって事故現場周辺の農林水産物、水質、加工品等の安全性について調査が行われ、いずれも放射線ないし放射性物質による影響は認められない旨の結果が公表されていたこと、同月6日以降は、政府やJA茨木件中央会等もキャンペーンを行うなどして安全性のPR活動を行ったことが認められるが、原子力事故が放射線や放射能の放出といった目には見えない危険を伴うものであること、本件臨界事故が前記のとおり死傷者を出した重大なものでり、事故直後からマスコミで大々的に取り上げられていた(証拠として提出された新聞記事(甲27)を見ると、臨界事故の重大性を報じる記事は、その安全性を示す記事よりもはるかに大きく取り上げられており、このことからも、一般読者に事故の重大性に関する印象が強く伝わっていたことが推測される。)ことなどからすれば、本件臨界事故後、原告の納豆製品を含む茨木県産の加工品について安全性が確認され、その旨のPR活動がなされていたとしても、消費者ないし消費者の動向を反映した販売店において、事故現場から10キロメートル圏内の屋内退避要請地域にある本社工場を「生産者」と表示した原告の納豆製品の危険性を懸念して、これを敬遠し、取扱いを避けようとする心理は、一般に是認できるものであり、それによる原告の納豆製品の売上減少等は、本件臨界事故との相当因果関係が認められる限度で本件臨界事故による損害として認めることができるというべきである。」



〔原賠法と民法709条との関係等〕
①平成20年2月27日・水戸地裁判決(判タ1285号201頁)
 JCO臨界事故関係。近隣住民が被爆及びPTSD等健康被害で,JCO及びその親会社住友金属鉱山に対して,主位的に民法709条,予備的に原賠法3条による損害賠償請求をした。
「同法3条1項にいう「原子力損害」とは,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」をいう(同法2条2項本文)ところ,原賠法その他の法令上,原賠法3条1項によって賠償されるべき損害の範囲に関する規定は何ら存在しないから,民法上の債務不履行ないし不法行為による損害賠償責任に関する一般原則に従って,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」と相当因果関係がある損害の全てが原賠法3条1項により賠償されることになるものと解するのが相当である。」
「本件事故と相当因果関係がある損害が存在すれば,当該損害について,被告JCOに対して原賠法3条1項に基づいて賠償を請求することができるが,他方,同法4条1項が「前条の場合においては,同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。」として,原子力事業者以外の者の責任を負わせないことを明記しているため,前記核燃料物質の加工に関する原子力事業者には該当しない被告住友金属鉱山に対しては,原賠法上はもちろんのこと,民法を含むその他のいかなる法令によっても,当該損害の賠償を請求することはできない。」
「原賠法に規定する原子力損害の賠償責任は,原子力事業者に対して原子力損害に関する無過失責任を規定するなどした民法の損害賠償責任に関する規定の特則であり,民法上の債務不履行責任又は不法行為の責任発生要件に関する規定は適用を排除され,その類推適用の余地もないものであるから,本件事故による被爆と相当因果関係があるものとして損害賠償を請求する限りにおいては,原子力事業者に該当する被告JCOとの関係においても,民法上の不法行為に基づいて,賠償請求を認めることはできないというほかない。」

②平成21年5月14日・東京高裁判決(判時2066号54頁)
 ①の控訴審。原審同様,臨界事故と健康被害の相当因果関係否定し,控訴棄却。

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福島原発事故原子力損害補償についての各省庁の対応 とにかく資料を残すしかない

  福島原発事故原子力損害補償についての現時点での各省庁の対応は次の通りです。国と東電は賠償に当たって被害者にもの凄い細かい資料を要求するつもりのようです。住民に今できることはあらゆる書類を保管しておくこと、何をいつ廃棄したなど被害状況の詳しいメモを残すこと、デジカメで被害状況を撮りまくっておくこと位でしょうか。

文部科学省
・今回の福島原子力発電所の事故により生じた原子力損害は補償されるのですか。
・補償のために、どのようなことをすればよいですか。

(答)
 原子力発電所の事故により生じる原子力損害に関して、事故との相当因果関係※が認められるものについては、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、損害に対して適切な賠償が行われることとなります。請求される方は、今後、東京電力が開設する被害申出窓口に、「被害申出書」を提出していただくことになりますので、現時点で分かる範囲で被害内容等を把握してください。その後、被害申出書を提出された方に対して、被害額の算定の確認書類を含む「被害明細書」を提出していただくことになりますので、可能な限り、実際に支出したことを証明する領収書等を保管しておいてください。想定される損害内容と賠償請求に際して必要になると見込まれる書類は以下のとおりです。※今後、東京電力が開設する窓口において、詳細な情報提供がなされる予定です。

1.身体傷害(体のケガや病気に関するもの)

■診断書

医師による診断書

■医療機関からの領収書

医療行為に対して支払った金額を確認する資料として、病院等の医療機関からの領収書

■同意書

保険会社がケガや病気の症状を確認する必要がある場合に、医療機関に問い合わせることに対する同意書

■診療報酬明細書

医療行為にかかった費用の詳細を確認する資料

■交通費明細書

通院にかかった交通費の詳細を確認する資料

2.財物損害(家財、商品、建物・什器備品等の損害に関するもの)

■損害品の写真

損害状況を確認する資料

■被害品の数量確認資料

伝票等、被害品の数量が確認できる資料
※主に事業をされている方の場合

■被害品の単価確認資料

伝票等、被害品の単価が確認できる資料
※主に事業をされている方の場合

■廃棄処理費用確認資料

領収書等、廃棄処分の費用が確認できる資料

■買い換え費用確認資料

領収書等、廃棄処分後に同性能の物品を購入するために要した費用を確認できる資料

■修理費用見積書

汚染の除去等に要した費用を確認できる資料(被害にあわれた方が用意)

3.避難費用(汚染地域からの緊急的な避難に要したもの※必要と認められたもの)

■交通費明細書

避難にかかった交通費の詳細を確認する資料

■宿泊費用確認資料

領収書等、宿泊費用を確認できる資料

4.健診/検査費用(放射線の影響等を検査するために要したもの※必要と認められたもの)

■医療機関からの領収書

検査に対して支払った金額を確認する資料として、病院等の医療機関からの領収書

■交通費明細書

検査にかかった交通費の詳細を確認する資料

■検査費用の領収書

検査機関による検査を受けた際にかかった費用を確認する資料

5.休業損害(給与所得者が休業によって給与が減額された場合)

■休業証明書

ケガや病気による休業によって給与所得が減額されたことを確認する資料

■源泉徴収票

事故以前の給与水準を確認する資料

■所得証明・納税証明書
■確定申告書

休業証明書・源泉徴収票で損害額が確認できない場合の確認資料

6.営業損害(事業遂行が不能になったことによる損害が生じた場合)

■確定申告書

事業の売上額等を確認する資料

■決算書類

事業内容や売上額等を確認する資料

■過去1年の売上実績

帳簿等、直近の売上額等を確認する資料

■事故後の売上実績

帳簿等、事故後の売上額等を確認する資料

■営業上の追加費用
 ・代替費用

伝票や帳簿等、事故の影響により営業を継続するために追加的・緊急的に要した費用を確認する資料

■営業再開に伴う費用

伝票や帳簿等、営業を再開するにあたって追加的に要した費用を確認する資料

お問い合わせ先 研究開発局原子力課 電話番号:03-5253-4111(内線4160)

農水省
原子力発電所の事故に伴う出荷制限等への対応に関するQ&A

1.出荷制限対象となった農家に対する賠償はどうなるのか

(答)

  1. 今般の原子力発電所の事故に伴い、野菜等の出荷制限の対象となった農家に対しては、出荷制限の実効性を担保し、消費者の食の安全を確保するためにも、適切な補償が必要と考えております。

  2. その補償は、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、一義的には事故原因者の東京電力の責任となりますが、政府としても、適切な補償が行われるよう万全を期していく考えです。
  3. 具体的には、今回の補償の範囲については、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、今後、原子力損害賠償紛争審査会が定める原子力損害の範囲の判定指針に基づいて判断されることとなります。 

2.出荷制限の対象外の品目に対する風評被害への賠償はどうなるのか

(答)

  1. 今回の原子力発電所の事故によって生じる損害については、出荷停止の指示を受けた農畜産物に限らず、一般論として、事故との相当因果関係が認められるものについて、原子力損害の賠償に関する法律に基づき適切な賠償が行われることになります。 
  2. また、出荷自粛や風評被害により売上が減少した農畜産物等に関 しても、このような考え方に照らして判断されるものと考えており ます。
  3. この賠償については、原子力損害賠償法によって、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものと考えておりますが、政府としても、被害者の方々が適切な補償を受けられるよ う万全を期してまいります。

3.農家は賠償のためにどのような準備が必要か

(答)

  1. 今回の補償の範囲については、原子力損害の賠償に関する法律に基づ き、今後、原子力損害賠償紛争審査会が定める原子力損害の範囲の判定の指針に基づいて判断されることとなります。
  2. このような指針が明らかになるまで一定期間を要するため、現段階で、農家が前もって準備するものとして、
    [1] 当該期間に生じた売上減少額や実損額
    [2] 当該期間に商品が返品され、再販売できない場合の実損額
    [3] 当該期間に販売できなかった生産物や在庫商品を廃棄した場合の処分補償額及び処分費用
    [4] 運転資金等を借り入れざるを得ない場合の金利相当額
    などが明らかになるような証拠書類を保管しておくことが必要です。
  3. 具体的には、
    [1] 各種資材等の購入に係る領収書や購入伝票
    [2] 収穫や給与に至らなかった農作物・飼料の数量等を明らかにできる作業日誌
    [3] 出荷停止となった農畜産物に係る過去の生産量の記録、納品台帳、出荷伝票及び回収・処分した場合の領収書
    [4] 家畜の能力を示す証明書や飼養管理に係る記録
    [5] 納税関係書類(損益計算書等)
    [6] 現況を示す写真
    などを保管しておく必要があります。
  4. 農林水産省としては、農家のこうした準備について関係団体を通じて適切な指導を行っているところです。

4.賠償を受けられるまでの間、資金面での農家への支援はないのか

(答)

  1. 今回の福島原発の事故については、原子力損害賠償法に基づき、適切な賠償が行われることとなっており、JAグループは多数の農家を代表して東京電力に対する損害賠償をとりまとめ、請求する作業を進めているところです。
  2. 東京電力による賠償が行われるまでの間、JAグループの独自の取組として、被災農家に対し、無利子融資等による資金供給、生産資材などの購買品の支払期限の延長等の資金繰りの円滑化措置を講じることとしています。
  3. 農林水産省は、こうしたJAグループの取組に積極的に助言・支援を行うとともに、こうしたJAグループの取組では対象とならない農家への対策として、金融機関や資材取扱業者等に対し、資金供給や支払猶予等について配慮するよう、働きかけを行っているところです。

水産庁
原子力発電所の事故への対応に関するQ&A

1.水産業に対する賠償はどうなるのか

1.今回の原子力発電所の事故によって生じる損害については、出荷制限によるものに限らず、一般論として、事故との相当因果関係が認められるものについて、原子力損害の賠償に関する法律に基づき適切な賠償が行われることになります。 

2.また、風評被害により売上が減少した水産物等に関しても、このような考え方に照らして判断されるものと考えております。

3.この賠償については、原子力損害賠償法によって、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものと考えておりますが、政府としても、被害者の方々が適切な補償を受けられるよう万全を期してまいります。

2.賠償を受けられるまでの間、資金面での漁業者への支援はないのか。

1.今回の福島原発の事故については、原子力損害賠償法に基づき、適切な補償が行われることとなっており、漁業者団体が多数の漁業者を代表して東京電力に対する損害賠償をとりまとめ、請求する作業を進めているところです。

2.また、東京電力による賠償が行われるまでの間のつなぎ融資としての対応に向けて、農林中央金庫は、信漁連等に対する資金供給・利子補給を行うこととしており、農林水産省としても、関係機関への働きかけを行うなど、協力して進めているところです。

3.漁業者は損害賠償請求のためにどのような準備が必要か

1.今回の補償の範囲については、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、今後、原子力損害賠償紛争審査会が定める原子力損害の範囲の判定の指針に基づいて判断されることとなります。

2.このような指針が明らかになるまで一定期間を要するため、現段階で、漁業者が前もって準備するものとして、
  [1] 当該期間に生じた売上減少額や実損額
  [2] 当該期間に生産物が返品され、再販売できない場合の実損額
  [3] 当該期間に販売できなかった生産物や在庫商品を廃棄した場合の処分補償額及び処分費用
  [4] 運転資金等を借り入れざるを得ない場合の金利相当額
  などが明らかになるような証拠書類を保管しておくことが必要です。

3.具体的には、
  [1] 各種資材等の購入に係る領収書や購入伝票
  [2] 水揚げや給与に至らなかった生産物・餌料の数量等を明らかにできる作業日誌
  [3] 水揚げに至らなかった水産物に係る過去の生産量の記録、納品台帳、出荷伝票及び回収・処分した場合の領収書
  [4] 操業日誌や漁獲成績報告書、養殖の飼育管理に係る記録
  [5] 納税関係書類(損益計算書等)
  [6] 現況を示す写真
  などを保管しておく必要があります。

4.農林水産省としては、漁業者のこうした準備について関係団体を通じて適切な指導を行っていきたいと考えているところです。

4.放射能による影響が危惧されるが、操業するに当たって留意すべきことはあるか

1.操業に当たっては、漁獲物の安全性を確認することが非常に重要なことです。

2.このため、各県等に相談するなどして漁獲物の放射性物質のモニタリングを行い、漁獲物の安全性を確認するようにして下さい。

3.農林水産省としても、都道府県等が行う放射性物質のモニタリングについて全面的に協力しているところです。

5.JCO事故の際はどのように賠償が行われたのか

1.平成11年9月30日に発生した(株)JCO東海事業所の事故の際には、 原子力損害の特殊性等から、当事者間の交渉が難航しました。

2.このため、国・地方公共団体が交渉を促進するために積極的に関与して、損害費目ごとに相当因果関係の認められる範囲、損害額の算定方法等に関する「基本的な考え方」がとりまとめられました。
これを基に、具体的な賠償額は(株)JCO東海事業所と被害者の間 で個々に合意されております。
※いわゆる風評被害についても、判例で損害と認められているケースがあります(例:放射線汚染のない納豆について、新聞報道等により悪風評が生じ、売上が減少した場合)。

3.なお、その過程で、(株)JCO東海事業所から、一定期間、一定区域の損害に限定しつつも、
(1)売上高減少に伴う損害額
(2)返品、廃棄処分
(3)キャンセル
(4)イベントの中止
(5)特別支出費用(品質保証のための放射線測定検査料、風評被害払しょくのためのキャンペーン経費等)
(6)いわゆる風評被害
等の賠償基準を提示した経緯があります。

4.また、具体的な支払は、以下のとおり行われました。
(ア)被害者からの請求額の2分の1を基準とする仮払いを年内の平成11年12月までに実施。
(イ)年明け後に賠償金の確定交渉を開始、正式な和解(示談)の取り交わし。
(ウ)平成12年3月末までに、約6,000件の和解が成立。

5.今回は、その後に改正された原子力損害の賠償に関する法律に基づき、平成23年4月11日に設置された原子力損害賠償紛争審査会において、(株)JCO東海事業所の事故の例にならい、原子力の損害、損害の額の算定方法等に関する指針が定められることになっています。

6.今後は、この指針に沿って、具体的な賠償が行われる見込みです。

1~4に関するお問い合わせは
水産庁原発関係漁業補償チーム
代表:03-3502-8111(内線6533)
ダイヤルイン:03-6744-0508
5に関するお問い合わせは
大臣官房食料安全保障課
代表:03-3502-8111(内線3805)
ダイヤルイン:03-6744-2376

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JCO臨界事故原子力損害調査研究会報告書 これでは損害の範囲が狭すぎる

  平成11年9月30日に発生した株式会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所転換試験棟における臨界事故について、科学技術庁は10月27日、「原子力損害調査研究会」(研究会)を開催することとし、平成12年3月29日に最終報告書がとりまとめられた。報告書には、「JCOと請求者側との話し合いや、日本原子力保険プールによる保険金支払にあたって一つの指針を与えるものとなろう。さらに、訴訟等にその解決が委ねられることとなった場合においても、本書が一つの重要な判断材料となることが期待される。」と書かれている。
  原子力損害についての現時点における唯一の行政指針だが、精神的損害を原則として認めないこと、売却予定のない所有不動産の価値が下落したことを理由とする請求について現実の損害発生を認めないこと、営業損害の範囲が限定的であることなど極めて問題の多い報告書になっている。屁理屈つけて賠償金を値切ることが何と簡単なことか。その後の裁判例もこの報告書の考え方と五十歩百歩だが、このような考え方で福島原発事故の賠償指針が決められたのではたまらない。現在原子力損害賠償審査会が福島原発事故についての損害賠償指針を検討しているが、被害者の目線で常識にかなった指針が作られることが期待される。

原子力損害調査研究会最終報告書
1[身体の傷害]
(指針)
 請求者の身体における傷害が、請求者側の立証により、本件事故によって放出された放射線又は放射性核種による放射線障害(急性放射線障害又は晩発性放射線障害)であると認められる場合には、当該請求者が被った損害は賠償の対象と認められる。
(備考)
 1)  JCOの作業員3名について、本件事故により放出された放射線又は放射性核種による急性放射線障害である旨が確認されており、同人らが被った損害は賠償の対象と認められる。なお、これらの作業員3名に対する原賠法(第3条第1項)に基づく賠償は、同法附則第4条により、労働者災害補償保険法に基づく保険給付分を控除した残部となる。
 2)  原子力安全委員会健康管理検討委員会の検討によると、JCOの周辺住民等に対する本件事故の放射線影響は、いわゆる確定的影響(ガン及び遺伝的影響以外の影響)が発生するレベルではないうえ、いわゆる確率的影響(ガン及び遺伝的影響)についても発生の可能性が極めて低いと考えられるものとされている。
 したがって、作業員3名以外の者からの放射線の作用等による身体の傷害を理由とする請求については、当該請求者の側から、本件事故により放出された放射線又は放射性核種による放射線障害であることが立証された場合に限り、その損害の賠償が認められるべきである。

2[検査費用(人)]
(指針)
 本件事故の発生(平成11年9月30日午前10時35分)から避難要請の解除(同年10月2日午後6時30分)までの間のいずれかの時点に茨城県内に居た者(通過した者も含む。)が、身体の傷害の有無を確認する目的で、平成11年11月末までに受けた検査につき検査費用を支出した場合には、請求者の損害と認められる。
(備考)
 1)  放射線及び放射性核種は、その量によっては人体に多大な負の影響を及ぼす危険性があるうえ、人の五感の作用では知覚できないという性質を有している。それゆえ、本件事故の発生により、上記の時間帯のうちいずれかの時点で茨城県内に居た者が、自らの身体に放射線障害が生じたのではないかとの不安感を抱き、この不安感を払拭するために検査を受けることは無理からぬ行動である。
 ところで、後記7「営業損害」の項で述べるように、事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13日、14日)等において正確な情報が提供さ、これが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当な期間が経過したのは、同年11月末と認められる。したがってこれまでの間に住民が受けた1回目の検査のための費用は本件事故による損害と認められる。さらに、上記基準に該当する者が同種の医学的検査を2回以上受けた場合においては、請求者の側で2回目以降の医学的検査を受ける必要性があったことを立証した場合には、2回目以降の検査のための費用も請求者の損害と認められる。
 2)  無料の医学的検査を受けた場合の検査費用については、請求者に実損が生じておらず、損害とは認められない。

3[避難費用]
(指針)
 請求者が現実に支払った以下の実費分が、損害と認められる。
 I)  屋内退避勧告がなされた区域内に居住する者が、避難するため現実に支出した交通費、行政措置の解除(平成11年10月2日)までに現実に支出した宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した費用。
 II)  上記区域内に住居を有している者が、屋内退避勧告がなされた区域外に滞在することを余儀なくされた場合には、現実に支出した宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した費用。
(備考)
 1)  行政当局は、JCOからの距離等に応じて避難要請及び屋内退避勧告をそれぞれ行っている。この行政措置によって避難を余儀なくされたのは、厳密にいえば避難要請のなされた区域内に居住する者だけであり、これを超えた区域内に居住する者は避難の対象とされなかった。
 しかしながら、屋内退避勧告の対象となった区域の居住者らについて、その区域外に避難する行動に出たことや、屋内退避勧告がなされた時点で屋内退避勧告がなされた区域外に居た右区域内の居住者らが、この区域内の住居等に戻ることを差し控える行動に出たことについては、これらの行動に及んだことも無理からぬものと認められる。
 したがって、屋内退避勧告がなされた区域内の居住者らが現実に支出した避難費用(交通費、宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した雑費)についても、賠償の対象とするのが妥当である。
 2)  但し、上記の指針により損害と認められる避難費用であっても、その賠償額は合理的・平均的な範囲内のものに限られ、過度に遠方に避難した場合や著しく高額な施設に宿泊した場合の損害額は、出捐額の全額ではなく、合理的・平均的な範囲に減縮された額とされるべきである。

4[検査費用(物)]
(指針)
 当該財物が本件事故の発生当時茨城県内にあり、当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり又は取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められ、平成11年11月末までに検査を実施した場合には、請求者が現実に支払った検査費用は損害と認められる。
(備考)
 1)  科学技術庁が実施した調査によると、本件事故により放出された放射線又は放射性核種は、財物汚染又は財物汚損をもたらす程度の量(科学的に有意な量)ではなかったものと認められる。しかしながら、財物の価値ないし価格が、当該財物の取引等を行う人の印象・意識・認識等の心理的・主観的な要素によって大きな影響を受けることは明らかである。しかも、財物に対して実施する検査は、取引の相手方らによる取引拒絶、キャンセル要求又は減額要求等を未然に防止し、営業損害の拡大を最小限に止めるためにも必要とされる場合が多い。したがって、平均的・一般的な人の認識を基準として、当該財物の種類及び性質等から、その所有者等が当該財物の安全性に対して危惧感を抱き、この危惧感を払拭するために検査を実施することが合理的であると認められる場合又は取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされた場合には、現実に支払った検査費用を損害と認めるのが相当である。
 2)  もっとも、当該請求者が出捐した検査費用が損害と認められる場合であっても、その賠償額は合理的な範囲内のものに限られ、たとえば複数の機関のもとで重複検査を行った場合や、国内で行えるにもかかわらず海外の検査機関で検査を実施した場合には、請求者の側でその必要性を立証しない限り、賠償すべき損害について請求額の全額ではなく合理的な金額にまで減縮されるべきである。

5[財物汚損]
(指針)
 現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。
 I)  動産については、当該動産が本件事故の発生当時茨城県内にあり、その種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたものと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分について損害と認められる。
 II)  不動産については、
i)売却予定のない所有不動産の価値が下落したことを理由とする請求については、現実の損害発生を認めることはできず、賠償の対象とは認められない。
ii)不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げを理由とする請求については、請求者の側が、当該不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、その不動産取引について既に売買契約等が締結されているか締結の可能性が極めて高い状況であり、対価額等も確定しているか確定しつつあること、平成11年11月末までに生じた解約や値下げであり、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、更に解約の場合には当該不動産を緊急に売却処分せざるを得なかった相当な事由があったこと、その解約や値下げが本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
iii)賃料の減額を行ったこと又は本件事故後に賃貸借契約を解約されたことを理由とする請求については、請求者の側が、当該賃貸不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、現に賃貸借契約が締結されていたこと、平成11年11月末までに賃貸借契約の解約又は賃料の減額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、賃料の減額又は解約が本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
(備考)
 1)  I)については、前記4[検査費用(物)](備考)の1)に同じ。
 2)  II)のi)、ii)については、不動産の特殊性に由来する価格形成過程の複雑さ等にも
十分配慮して、賠償の要否及び範囲を慎重に検討する必要がある。
 不動産の価格は、取引当事者の取得目的等に大きな影響を受けるものであり、これを一義的かつ客観的に把握することが非常に困難であることが多い。不動産の価格は、景気等からも大きな影響を受ける。そして、一般的な動産とは異なり、一度下落した価格が再び上昇することも十分にあり得る。不動産の価格が一時的に下落したとしても、当該不動産が滅失して利用可能性を喪失することはなく、これを廃棄する行動に出ることも考えられない。l   
 3)  II)のii)については、不動産の売却の予定がない以上損害が現実に発生していると
はいえないうえ、仮に価格が一時的に下落したとしても将来回復し又は上昇する可能性があること、本件事故による価値の下落分を一義的かつ客観的に把握できないこと、価格の下落が見られても、不動産自体の利用可能性は些かも失われないこと等からして、賠償の対象とすることは妥当でない。
 II)のii)については、当該価格で売却できることが確定していた又は確定しつつあった状況のもとで、本件事故の発生を理由に当該減額又は解約(合意解約)がなされたこと等の前記各事実を請求者が立証した場合には、賠償が認められる余地がある。これに対して、当該減額又は解約が本件事故の発生を理由とする旨を立証できない場合、当該価格で売却できる状況又は売却できつつある状況にあったことが確定していなかった場合、売却交渉が進行中であったが売買代金額等の売買条件が全く未確定であった場合等では、本件事故に起因する「損害」が発生したものと認めることは極めて困難である。
 II)のiii)についても、本件事故の発生を理由として賃貸借契約を解約又は賃料の減額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと等の前記各事実が請求者によって立証された場合には、営業損害の考え方に準じて相当な期間の減収分について損害と認められる余地がある。
  4)  なお、損害が発生したと認められる場合であっても、賠償すべき損害額の算定にあたっては、損失の公平かつ適正な分担を図る見地から、具体的な事実関係に従って、過失相殺や原因競合等の法理論を適用すべき場合(例えば、その性質から廃棄の必要性が認められない動産を軽率な判断で廃棄してしまった場合など)もあり得る。

6[休業損害]
(指針)
 屋内退避勧告がなされた区域内に居住地又は勤務先がある給与所得者、アルバイト及び日雇労働者について、行政措置により就労が不能となった場合には、就労不能の状況が解消された時点まで(避難要請が解除された平成11年10月2日から合理的期間経過後まで)に生じた給与等の減収が、請求者の損害と認められる。
(備考)
 1)  屋内退避勧告は平成11年10月2日に解除されており、この時点からは就労が可能な状況となっている。しかしながら、一般的・平均的な人の認識を基準とした場合、屋内退避勧告がなされた区域内における法人等の事業者においては、上記の行政措置が解除された後、情報収集と事態把握を行ったうえで徐々に事業活動を再開するとの対応に出ることもあり得、このような対応は必ずしも不合理なものとはいえない。したがって、請求者の損害と認められる休業損害は、行政措置が解除された後、若干の合理的な期間が経過するまでの間に生じたものと認めるのが妥当である。
 2)  本件事故により、所定の期間の事業活動を休止したが、従業員らに対して当該休止期間分の給与等を支払った場合には、当該事業者の出捐額が損害となる。

7[営業損害]
(指針)
 I)  茨城県内で収穫される農畜水産物及びこれらに関連する営業であり、広く茨城県県外を商圏とするものについては、生産あるいは営業の拠点が茨城県内にあり、取引の性質から相手方等が取引拒絶等の行動に及ぶこともやむを得ないものと認められ、現実に減収のあった取引について、事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13,14日)等によって、正確な情報が提供され、かつこれが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当の時間が経過した時点(同年11月末)までの期間に生じた減収分(売上高から売上原価を控除した売上総利益=粗利益の額)が損害と認められる。
 II)  上記I)以外の営業については、営業の拠点が屋内退避勧告のなされた区域内にあり、取引の性質から相手方等が取引や利用の拒絶等の行動に及ぶこともやむを得ないものと認められ、現実に減収のあった取引について、事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13,14日)等によって、正確な情報が提供され、かつこれが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当の時間が経過した時点(同年11月末)までの期間に生じた減収分(売上高から売上原価を控除した売上総利益=粗利益の額)が損害と認められる。
(備考)
 1)  研究会が公表した「中間確認事項―営業損害に対する考え方―」(別添2)で記載したとおり。すなわち、
 (1)少なくとも、
ア) 事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13,14日)等によって、正確な情報が提供され、かつこれが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当の時間が経過した時点(同年11月末)までに生じた現実の減収分であること。
イ)屋内退避勧告がなされた区域内のものであること。
ウ)平均的・一般的な人を基準として合理性のあるものであること。
の3点を満たすものについては、特段の反証のない限り、事故との間に相当因果関係があると推認される。
 (2)さらに、上記要素を満たさない場合においても、請求者による個別・具体的な立証の内容及び程度如何では、相当因果関係が肯定される場合がある。
 2)  売上総利益(粗利益)の算定については、当該請求者の決算書類等に基づいて行われることを原則とすべきであるが、大量・迅速処理を行う必要から、必要な範囲で統計的資料を併用することもやむを得ないものと考える。
 3)  なお、損害として認められる場合であっても、賠償すべき損害額の算定にあたっては、損失の公平かつ適正な分担を図る見地から、具体的な事実関係に応じて、過失相殺や原因競合等の法理論を適用すべき場合(例えば、その性質から廃棄の必要性が認められない商品等を軽率な判断で廃棄してしまったために営業活動に支障が生じた場合など)もあり得る。

8[精神的損害]
(指針)
 本件事故において、身体傷害を伴わない精神的苦痛のみを理由とする請求については、損害の発生及び金額の合理性について請求者側に特段の事情がない限り、損害とは認められない。
(備考)
 1)  研究会では、原賠法にいう「原子力損害」に精神的損害(慰謝料)が含まれることについては見解の一致を見た。しかしながら、本件事故における精神的損害のうち身体傷害を伴わない精神的苦痛の申し出に関しては、議論の過程で、賠償の対象とする損害と認められないとする見解と認められる余地があるとする見解が示されたものの、最終的には、請求者側に特段の事情がない限り認められないとする見解が支配的となった。
 2)  身体傷害を伴わない精神的苦痛の有無、態様及び程度等は、当該請求者の年齢、性別、職業、性格、生活環境及び家族構成並びに人生観、世界観及び価値観等の種々の要素によって著しい差異を示すものである点からも、損害の範囲を客観化することには自ずと限界がある。このような性質を有する身体傷害を伴わない精神的苦痛の申し出に対し、仮に一律の基準を定めて賠償の適否を判断しようとする場合には、ともすれば過大請求が認められる余地を残してしまう可能性があるとともに、他の損害項目に対する賠償との間でも不公平をもたらす可能性がある。

平成11年12月15日
原子力損害調査研究会の中間的な確認事項
―営業損害に対する考え方―
(1) 当研究会による調査・検討の対象
 今回の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という)による臨界事故(以下「本件事故」という)の発生後、現在に至るまでの間に、個人及び各種の法人等からJCOに対し、営業損害を含む多様な損害賠償の請求が漸次なされつつある。しかしながら、現在までに請求がなされている営業損害には、原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」という)第2条第2項にいう「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用」、「核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物の放射線の作用」あるいは「核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物の毒性的作用」により生じた人的又は物的損害を伴わないものが多数含まれている。これらの営業損害は、1)営業活動の主体又はその相手方らの放射線ないし放射能(「死の灰」と俗称される放射性核種を含む)に対する著しい危険感・恐怖感、2)マスコミ等によってなされる報道、3)屋内退避要請及び避難勧告をなした行政当局の対応等の諸要素が複合的に作用し、複雑な過程を辿って発生したという大きな特徴がある。このような営業損害は、いわゆる風評損害と評価し得べき側面を有するものである。このような営業損害(以下「本件営業損害」という)が、原賠法第2条第2項にいう「原子力損害」に該たり、同法第3条に基づく損害賠償の対象となるものであるか否かが、当研究会による主要な調査・検討の課題となった。
 当研究会による調査・検討の結果、現在までに意見の統一が図られている事項は、以下の各点である。
(2) 本件営業損害が「原子力損害」に含まれるか否か
(結論)  JCOが惹き起した本件事故との間に相当因果関係が認められる限り、本件営
業損害は、原賠法に定める「原子力損害」に含まれる。
(根拠) 1) 核燃料物質の原子核分裂の過程の作用その他の作用によって直接に人的又は物的な損害を被っていない者の営業損害その他の経済損害については、これが原賠法第2条第2項及び第3条にいう「原子力損害」に含まれるとすると、損害賠償の範囲が無限に広がり、被害者救済制度を破綻させるおそれがあるという懸念もありうる。
 しかし、原賠法の立法過程の議論においては、こうした制限的な考え方を採らず、相当因果関係の範囲にある損害をすべて賠償するとの見解が表明されている。また、原賠法は、その目的が「被害者の保護を図り」、もって「原子力事業の健全な発達に資する」ことにあり、いわゆる救済法として位置づけられるところ、特に明文で除外事由とされていない事項について、特段の合理的な根拠がないのに適用範囲を狭める解釈を採るべきではない。原賠法の適用範囲は、同法の存在意義に十分配慮し、「被害者の保護」という立法目的を失わせることのないよう解釈すべきである。
2) いわゆる放射能、放射線あるいは原子力には未だ多くの不可知な領域があることは否定できず、一旦その操作を過った場合には、人体及び物質等に重篤かつ多大な負の影響を及ぼす危険性があることは公知の事実である。特に、我国が世界で唯一の被ばく国であることや、近時、スリーマイル島、チェルノブイリ等での重大な原子力事故の発生が報じられていることなどから、一般国民の放射線、放射能あるいは原子力に対する恐怖感・危険感には特に著しいものがある。加えて、本件事故は、国際評価尺度(INES)でもレベル4とされる放射線事故であり、現実に3名の作業員らについては、極めて重篤な放射線障害が生じているという点で、特殊性がある。また、現時点での調査結果によると、複数の救急隊員ら及び周辺住民の一部にも、人体に影響を与えるほどのレベルでの被ばくは
なかったものの、自然環境から受ける以上の放射線被ばくがあったものと考えられている。これらの点から見ても、本件事故は、一般国民(特に、周辺住民、その取引先及び一般消費者等)に対し、著しい恐怖感・危険感を与えたものというべきである。
3) 一般的に、財物の価値の評価や人の購買行動等においては、当該取引に関与する「人」の意識・認識・思惑等の心理的・主観的な要素が、動機づけ、決定付けに重要な役割を果たしている。したがって、「原子力損害」の対象範囲を確定するにあたっては、上記の主観的要素を排除することはできない。
 それゆえ、「原子力損害」の対象範囲を確定するにあたっても、一般国民が本件事故に対して抱く恐怖感・危険感を、全く個人的、主観的で一過性の過剰な心理状態に過ぎず、救済の対象から除外すべきであると捉えるのは妥当でない。
(3) 本件営業損害に関する相当因果関係の判断基準(中間意見)
(結論)
a) 本件のような複雑な過程を辿って形成された営業損害において、どの範囲の損害をもって本件事故と相当因果関係がある損害(通常生ずべき損害)であるかを判断するにあたっては、一定の時間的要素及び場所的要素をもって一応の判断基準とせざるを得ない。
b) 時間的要素及び場所的要素の範囲(限界)を考えるにあたっては、周辺住民における安全認識の浸透度合い、市場における反応の沈静化時期等について調査及び検討を行い、具体的な事実関係を踏まえたうえ、慎重に判断することが必要である。
c) 当研究会としては、時間的要素及び場所的要素について、現時点においては、少なくとも、1)平成11年11月4日、科学技術庁事故調査対策本部が原子力安全委員会に対し「(株)ジェー・シー・オー東海事業所の事故の状況と周辺環境への影響について」と題する報告をなし、同年11月13日、14日には住民説明会も開かれ、マスコミ等の報道を通じてこの内容が一般国民に周知徹底されたと思料されるので、不安感の沈静化の時期(損害賠償の時間的範囲)については少なくとも同年11月一杯程度と考え、2)本件事故の発生場所であるJCO東海事業所転換試験棟から半径10kmの範囲内で生じた営業損害であり、かつ、3)平均的・一般的な人の認識を基準として、当該行為者またはその相手方等が取引拒絶等の行動に及ぶこともやむを得ないものと評価され、現実に減収のあった取引等については、事実上の因果関係があり、特段の反証のない限り、本件事故との間に
相当因果関係があると推認すべきものと考える。
d) なお、前述のとおり、上記の判断基準は現時点における暫定的なものであり、今後の調査により判明してくる被害状況の全体像によっては、上記1)の時間的要素及び②の場所的要素の各限界範囲がさらに拡大(10kmを超え、茨城県全体への拡大)される可能性を否定するものではなく、また、上記①の時間的要素又は②の場所的要素のいずれか又は双方を満たさない場合であっても、請求者からの現実の減収等の立証の内容及び程度など個別的・具体的な事情によっては、相当因果関係が肯定される場合があり得ることを付言しておく。
(理由)
1) 時間的要素について
 平成11年10月2日に政府対策本部による農畜産物に関する安全宣言が出されているが、未だこの時点では、本件事故の分析が続けられている状況にあり、周辺住民等が安全であるとの認識を有するに至っていないものと思料される。したがって、この安全宣言がなされた時期を時間的要素の限界とすることは狭きに失する。
 周辺住民らの危険感あるいは市場における動揺がいつの時点で沈静化したのかについては、今後の調査と検討を待つ必要があるが、少なくとも詳細な事実関係が明らかとなっていない現時点では、前記のとおり平成11年11月4日付の報告及び同月13日、14日の地元説明会で沈静化に向けた正確な情報の提供がなされ、かつ、これが一般国民に周知されるために要する合理的かつ相当の時間が経過した時点を基準に、時間的要素の限界を考えざるを得ない。
2) 場所的要素について
 7km地点に設置された空間γ線量を測定するモニタリング・ポストの数値に変動が生じたこと(これを超える地点のモニタリング・ポストでは変動が生じていない。)等を根拠として、茨城県が自宅退避要請をなした範囲であり、判断基準としても客観的で相応の合理性をもったものである。さらに、一般国民の認識は、自宅退避要請がなされた事実につき、「公的機関が放射能の汚染地区と指定したのが10km圏内である」との解釈を与え、この範囲にある者との取引活動等を差し控える行動に出た可能性も認められる。したがって、周辺住民らの危険感あるいは市場における動揺がどの領域で発生したものであるかについても、今後の調査と検討を待つ必要があるが、少なくとも詳細な事実関係が明らかとなっていない現時点では、公的機関が設定した10kmの範囲を基準に、最低限の場所的要素の限界となるものと考えざるを得ない。

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2011年4月23日 (土)

震災がれき撤去作業に伴うアスベスト飛散対策 簡易防じんマスクはDS-2(N95)以上を推奨

 アスベストの件で、欠陥住宅東北ネット(代表・斉藤拓生弁護士)が4月7日に、津波被害のがれきが残存する4地点で測定を行い、採取した検体をアメリカに送り、分析したところ、1地点(塩釜)では2本が、3地点(名取、仙台港、多賀城)では各0.5本が、それぞれ検出されました(念のため、がれきのない仙台市内でも計測してみたところ0本でした)。この数値は、大気汚染防止法の基準である1リットルあたり10本のアスベストよりは下回りますが、未だがれきや被災建物の撤去作業がなされていない現場での測定であること、被災した建物の多くはアスベスト建材が多用されていた時期に建てられた建物であることから、実際に、撤去作業が始まれば、かなりの本数のアスベストが大気中に浮遊することになりましょう。 

   私たちは、この結果を踏まえ、昨日、宮城県と仙台市に、継続測定、作業員・周辺住民への防じんマスク着用の周知徹底、アスベスト含有の廃棄建材のリサイクルの回避等、添付の申し入れをしましたが、宮城県は「市町村の事務なので・・」といい、仙台市は「がれき撤去の仮置き場で測定するが、継続測定や電子顕微鏡での分析はしない。業者らの監視も予定していない」ということでした。なお、環境省、防衛省には添付の書面を郵送しました。

2011年(平成23年)4月21日
 
  環境大臣・内閣府特命担当大臣
        松  本    龍 殿
  防衛大臣
     北  沢  俊 美 殿
  宮城県知事
        村  井  嘉 浩 殿
  仙台市市長
        奥  山  恵美子 殿
                      欠陥住宅東北ネットワーク
                        代 表  齋 藤  拓 生

      がれき撤去作業におけるアスベスト対策についての要請書

第1 要請の趣旨
 1 建物からのアスベスト飛散の実態を把握するために,空気中アスベスト濃度調査を被災地全体においてすみやかに実施すること
 2 作業を開始する前に予め建築物等に十分散水するなど,がれき撤去作業に伴ってアスベストが飛散しないよう万全の措置を講ずること
 3 がれき撤去作業に従事者する自営隊員,消防隊員,その他労働者に対し,がれきに潜むアスベスト危険性を周知し,作業に従事する者がアスベストを吸い込まないよう呼吸用保護具(防じんマスク又は電動ファン付き呼吸用保護具)を配布するなど万全の措置を講ずること
 4 がれき撤去作業が実際される地域の周辺住民がアスベストを吸い込まないよう簡易防じんマスク(DS-2(N95)以上)を配布するなど万全の措置を講
ずること
 5 アスベストの含有するおそれのある建設廃材その他がれきをリサイクルに回さないこと
   
第2 要請の理由
 1 「死の粉じん」=アスベストについて
    耐熱性,断熱性,耐火性,防音性,耐摩擦性,耐薬品性,絶縁性,耐腐食性などの優れた物理的性質と,安価であるという経済的性質とが相まって,アスベストは広汎に使用されてきた。
      アスベストの超微細な繊維(髪の毛の5000分の1の太さ)が大気中に飛散することで,人間はそれらを吸い込む。それが肺に突き刺さることにより,治癒困難な深刻な病気を引き起こす。その主なものとして,石綿肺(アスベスト高濃度ばく露によって発生するじん肺の一種で,呼吸機能が低下し,心臓の障害,肺がんなども起こる),石綿肺がん(アスベストを原因とする肺がん),中皮腫(肺や心臓を包む胸膜などの中皮という膜にできるがんの一種)が挙げられる。
      それゆえ,政府は,1960年には,「じん肺を法」を制定して,アスベストを初めて人体にとって有害な物質として認定した。1971年には,特定化学物質等障害予防規則を制定し,屋内作業場での石綿粉じん濃度の環境測定の実施の義務付けなどが行われた。特定化学物質予防規則は1975年に改正され,アスベストの発がん性を明確にした対策が強化された。また,1975年には,原則として吹き付けアスベストの使用を禁止した。さらに,1995年には,青石綿,茶石綿含有製品の使用を禁止し,1%以上の石綿を含有する建材を規制対象とした。

 2 建設・震災アスベスト問題―阪神・淡路大震災の教訓
   アスベスト含有建材は,1980年頃までは,一般家庭を含めあらゆるところに大量に使われてきた。
   それゆえ,大地震による建築物の倒壊とその解体・撤去作業によるアスベスト被害も建設作業労働者や住民などにとって大きなリスクとなる。実際,阪神・淡路大震災で倒壊した建築物の解体作業に携わった労働者2名の方が,すでに中皮腫にかかり,亡くなったケースも出ている。
   環境省は,2007年8月になって,阪神・淡路大震災で事前の準備がなかたことや解体時の飛散防止が完全でなかった教訓から,「災害時における石綿飛散防止に係わる取り扱いマニュアル」を発表した。
   上記マニュアルでは,平常時の準備として,専門家の事前の確保と解体した廃棄物の一時保管場所の確保,処理についての他の団体との連絡を定めるとともに,震災発生時には,震災発生後24時間程度の初動対応期は人命救助に専念中なので,72時間を経た生活の保護(食糧支援など)が終わることから倒壊箇所のアスベストの応急危険の判定をはじめ,インフラの回復する一週間前後で応急措置を取り,解体を始める,としている。
      厚生労働省も,去る3月28日,建設8団体に対し,① 労働者が石綿粉じんを吸い込まないようにするため,呼吸用保護具(防じんマスク又は電動ファン付き呼吸用保護具)を使用すること,②石綿粉じんを飛散させないために,作業を開始する前に予め建築物等に散水,薬液を使用することにより,湿潤な状態とすること,③ 関係者以外の者が石綿粉じんにばく露しないように,被災者等も含め,関係者以外の者の立入立ち入りを禁止すること等アスベストばく露防止の徹底を求めている。

  3 空気中アスベスト濃度調査と万全の防じん対策の必要性
   欠陥住宅東北ネットが去る4月7日,EFA・LABORATORIESに依頼し,今後,大量のがれき撤去作業が行われることになる閖上地区,仙台新港地区,多賀城地区,塩釜地区の4地点で大気測定を行ったところ,いずれの地点からも,相当量のアスベストが検出された。極めて憂慮すべき事態である。
   宮城県と仙台市は,今回の東日本大震災によって発生したがれき撤去作業に着手するにあっても,作業従事者及び周辺住民のアスベストばく露の可能性・危険性を把握するために,上記環境省のマニュアルを遵守して,すみやかに空気中アベスト濃度調査を実施すべきである。
   そのうえで,宮城県と仙台市は,①作業を開始する前に予め建築物等に十分散水するなど,がれき撤去作業に伴ってアスベストが飛散しないようする,②がれき撤去作業に従事者する自営隊員,消防隊員,その他労働者に対し,がれきに潜むアスベスト危険性を周知し,作業に従事する者がアスベストを吸い込まないよう呼吸用保護具(防じんマスク又は電動ファン付き呼吸用保護具)を配布する,③がれき撤去作業が実際される地域の周辺住民がアスベストを吸い込まないよう簡易防じんマスク(DS-2(N95)以上)を配布するなど,万全の防じん対策を講ずるべきである。

 4 ノン・アスベスト社会の実現に向けて
      「死の粉じん」=アスベストのない社会を実現するためには,アスベストの含有するおそれのある建設廃材その他がれきをリサイクルに回さないことが必要不可欠となる。宮城県と仙台市は,その点についても,十分留意すべきである。

  5 よって,要請の趣旨記載のとおり要請する次第である。                                    

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2011年4月20日 (水)

東電、従業員数千人削減へ…給与カットも たったの10%カットとは!

リンク: 東電、従業員数千人削減へ…給与カットも : 福島原発 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

  東京電力が、数千人規模の人員削減と給与カットを軸とするリストラ策の実施で労働組合と調整に入ったことが19日わかった。新規採用を毎年数百人減らし、退職者による自然減を含め5年程度で達成する。不動産や株など資産売却も含めて4000億円程度の資金の確保を目指す。東電では毎年1000~1500人が退職している。過去数年では1000人程度採用している新規採用も、事務系を中心に数百人減らす。2010年末時点で3万6733人の従業員は数千人減る見込みだ。
 従業員の給与は年間1割程度削減する。人員削減と給与カットで年間約4800億円の人件費を数百億円減らす。福島第一原子力発電所事故に伴う賠償金の支払いに備え、手元資金の確保を急ぐ。(2011年4月20日03時09分  読売新聞)

  たったの10%のカットとは冗談言ってるのだろうか。リストラといっても退職者による自然減と数百人規模の新規採用減に過ぎず、リストラと呼べる代物ではない。人員削減と給与カットで減らすのは僅かに年間数百億円だという。数兆円に上るとされる賠償金からすればほとんど意味はない。結局東電は自前で賠償責任を果たす気がないのだろう。
  別に5割カットとは言わないが、原発事故で避難し収入の途を断たれた被害者や被害企業のことを考えれば僅か1割カットはないだろう。もちろん直接福島第一原発で復旧作業に当たっている社員に対してはむしろ大幅な給与増額をするべきだと思う。しかし3万6733人の従業員の大部分は通常業務に携わっているのだから加害企業の責任として給与の3割カット位は当然のことだろう。3割カットしたところで元々の給与水準が高いのだからまだまだ中小企業よりは高いはずだ。
  役員報酬についてもカットすると言っていたが具体的な数字は未だに示していない。従業員の前にまず役員だろう。
  読売は「福島第一原子力発電所事故に伴う賠償金の支払いに備え、手元資金の確保を急ぐ」と書いているが、これって肯定的な評価をしているのだろうか?賠償金の支払いに備えているとは到底思えないが。
  まあ考えようによっては1割カットを言うだけ東電はまだましかもしれない。原子力安全委員会の委員や原子力安全・保安院、経産省の連中には給与カットや自主返納などという発想はないのだろう。
  そもそも原子力安全委員会や保安院は今回の原発事故について何か具体的に役に立っているのだろうか。保安院の発表は東電の情報頼りで、東電に抽象的な指示をしたり報告を求めること以外何もしていないように見える。原子力保安院の西山は、原子炉建屋の汚染水について20センチを5メートルに訂正して平気な顔をしているが、間違えるにも程がある。本人に悪気はないのだろうが、あの他人事フェイスと話し方を見ていると血圧が上がってくる。原子力安全委員会に至っては正確性に疑問があるなどと言って放射能拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」の情報隠しをしている。こんな連中に給料を払う必要はないと思うが。

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2011年4月19日 (火)

損保協会、浸水度合いで損害判断 地震保険の査定簡素化

リンク: 損保協会、浸水度合いで損害判断 地震保険の査定簡素化(共同通信) - エキサイトニュース.

  日本損害保険協会が、東日本大震災での津波被害による地震保険の支払い査定で、建物の基礎や壁の損害度合いをみる従来の基準に加え、浸水の高さに応じ「全損」などを判断する簡易な手法を導入したことが18日分かった。建物が一見して壊れていなくても、流出した油などで被害を受けている事例が多く、査定に時間がかかってしまうことから調査を効率化し、被災した加入者へ保険金を迅速に支払うことが狙いだ。水位での基準が適用されるのは、木造建物と鉄骨建物(共同住宅除く)。かもいや扉の上端(一般的な建物で1・8メートル)までの浸水を被った場合は保険金額の100%を支払う「全損」として扱うと規定した。また50%を支払う「半損」は床上浸水か地盤面から45センチを超える浸水を受けた時、5%を支払う「一部損」は基礎の高さ以上の浸水を受けた時に認定することにした。

 約款の認定基準を緩和するもので高く評価される。現在までの支払件数と支払総額は次の通りで、既に阪神・淡路大震災の783億件を超えている。
  もし損害認定について保険会社の見解に納得できない場合は、そんぽADRセンター(損害保険紛争解決サポートセンター)に苦情や紛争解決の申立てをすることができる。受付時間:月~金曜日9:15~17:00
ナビダイヤル(有料):0570-022808
PHS・IP電話からは:03-4332-5241
  但しそんぽADRセンターは東京にしかないので、宮城県内の場合には仙台弁護士会の紛争解決支援センター(022-223-1005)を利用した方がよいだろう。

【2011年4月14日(木)現在:日本社+外国社合計】

地区支払件数支払保険金(千円)
北海道 210 136,042

青森 1,125 901,284
岩手 2,079 2,763,140
宮城 10,574 22,171,236
秋田 69 30,135
山形 82 60,459
福島 3,224 7,257,030
小計 17,153 33,183,284








茨城 16,448 25,013,510
栃木 8,238 11,177,023
群馬 2,559 2,116,741
埼玉 7,733 5,706,559
千葉 12,083 17,000,117
東京 14,837 12,494,027
神奈川 3,204 2,332,558
新潟 242 172,930
山梨 142 100,267
長野 37 60,219
静岡 1,074 857,654
小計 66,597 77,031,606
その他府県 73 64,153
合計 84,033 110,415,084

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2011年4月18日 (月)

東電厳しい資金調達「2兆円いずれなくなる」  いよいよ始まった東電と某新聞の世論操作

リンク: 東電、厳しい資金調達「2兆円いずれなくなる」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース.

  東京電力は17日、今後6~9か月で福島第一原発事故の収束を図る工程表を発表したが、収束までの期間が長引くほど、原子炉を安定させるための設備費用だけでなく、賠償金の支払いなど必要な資金が膨らむ。事故が収束しても農業や漁業の風評被害などで賠償額がさらに膨らむ可能性がある。東電は、社債による資金調達が難しくなっており、政府は賠償策の枠組みを早急に決める必要がある。
 ◆創業以来の危機◆
 勝俣恒久会長は記者会見で「創業以来最大の危機」と述べ、経営が非常に厳しい状況にあるとの認識を示した。東電は、地震発生直後に、大手銀行などから約2兆円の緊急融資を受け、当面の資金繰りにめどをつけた。しかし、原発に代わる火力発電所やガスタービン発電の設備費用や、当面の原発の安定化の費用などで「手持ちの2兆円はいずれなくなる」(証券関係者)との見方が出ている。
 ◆資金負担◆
 福島第一原発の被災者への賠償金の仮払いが始まることで資金繰りはさらに厳しくなりそうだ。当面、1世帯あたり100万円(単身世帯は75万円)の仮払いだけで総額500億円かかる。避難の長期化でさらに複数回の仮払いが必要になる可能性が高まった。金融界では、「東電は今後1年間で、社債の償還や借入金の返済だけで1兆円強が必要」(大手証券会社)とみられている。東電の格付けは下がっており、新たに社債を発行して資金調達できるかどうか不透明だ。地震直後に2兆円の融資に応じた金融機関も政府保証なしに追加融資に応じることは難しそうだ。

  いよいよ東電の賠償逃れキャンペーンが始まったようだ。片棒を担ぐのはやはり某新聞だ。「証券関係者の見方」「大手証券会社」などと第三者の見方を装いながら巧みに東電救済の論調で書いている。
  「原発に代わる火力発電所やガスタービン発電の設備費用」は東電がやる必要はない。東北電力が設備投資をして電力を東電管内に供給すればよい話だ。「社債の償還」に至っては原発事故と何の関係もない。
  新たな社債発行や政府保証なしでの追加融資が難しいのはそのとおりだ。金融機関からの借り入れに当たって政府保証は必要だろう。しかしそれはあくまで東電が全ての損害賠償責任を負うことを前提として、その履行のための借り入れについて政府が「保証」するという枠組みでなければならない。しかし東電がねらっているのはそのような「保証」ではなく、税金を投入した原発事故被害自体の「政府補償」なのだろう。
  くれぐれも「電力供給確保の必要性」を名目にした、東電と一部マスコミの賠償逃れキャンペーンに騙されないようにしなくてはならない。

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2011年4月16日 (土)

「裁判員」被災地免除へ、呼び出し中止検討  裁判員裁判自体を中止すべきだ

リンク: 「裁判員」被災地免除へ、呼び出し中止検討 (読売新聞) - Yahoo!ニュース.

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県での裁判員裁判について、各裁判所は、津波で壊滅的被害を受けたり、東京電力福島第一原子力発電所の事故で多数の住民が避難を余儀なくされたりした市町村の裁判員候補者には、呼び出し状を送付しない方向で調整を始めた。
  各地裁では、前年秋に作成した裁判員候補者名簿から裁判ごとに50~80人程度の候補者をくじで選び、呼び出し状を郵送している。裁判に参加することで重大な不利益が生ずる場合は辞退が認められるため、被災地の候補者から申し出があれば辞退が認められるとみられるが、裁判員法には、一定の地域を呼び出しの対象からあらかじめ除外する手続きは定められていない。

  呼び出し中止は当然のことだと思うが、この際裁判員制度自体を中止すべきだ。従前は裁判官だけで刑事裁判を行ってきたのだから、裁判員などいてもいなくても何の支障もない。言わば盲腸のようなものだ。
  それなのに裁判員用法廷の新設・改築、裁判員の日当・旅費、呼び出し手続きの外部委託費用、広報費など膨大な国費が投じられている。平成23年度の裁判所の予算では42億4600万円が計上されている。法務省も約7億円(21年度のデータ)を計上している。市町村は裁判員用の保育費の無償化等の支援策をとっている。裁判所や検察庁職員の事務作業増大、弁護人の複数選任など間接的な費用を加えればさらに膨大になる。そして就業している裁判員の場合は、本来生産活動に充てられるはずの労働時間が失われるわけでマクロで見ればGDPにも影響していることになる。
  裁判員制度自体の是非はともかくとして、裁判員がいなくとも刑事裁判に何の支障もないことは間違いない。1年間中止するだけで裁判員関係の予算約50億円を被災者救済に廻すことができる。東日本大震災によってこれだけ多くの被害がでているにもかかわらず、裁判員裁判を行うのは無駄という他ない。そんな金があるなら被災者救済に用いるべきだ。
  理屈の問題としても被災地に限って呼出を中止することはできないはずだ。すなわち裁判所は、市町村の選挙管理委員会が調整した裁判員候補者予定者名簿に基づいて裁判員候補者名簿を調製する。第一回の公判期日が決まれば、裁判所はこの裁判員候補者名簿から「くじ」で裁判員候補者として呼び出す者を決めて呼び出さなければならない。「くじ」以外の選定手続きは存在しないし、予めくじ引きの対象から一定の範囲の裁判員候補者を除外することも許されていない。となる既に裁判員候補書名簿に登載されている被災地の候補者の呼出を中止することは法律上不可能ということになる。

  呼出中止するにも特別立法が必要ならばいっそのこと裁判員制度自体を1年間中止することにすればよい。元々最高裁も法務省も財務省も裁判員制度には乗り気ではなかったのだから、弁護士会が中止を提言すれば実現可能性はある。
  ところが司法改革信者やそれに迎合した転びバテレンの日弁連役職経験者は、大震災による被害を目の当たりにしながら、それでも裁判員裁判を継続すべきだと言う。彼らは裁判員制度にどれだけの税金が使われているのか分かっているのだろうか。自分たちが推進してきた制度なので何が何でも実施しなくてはならないという発想だろうが、東電と同じ官僚主義が弁護士会にも蔓延しているようだ。

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福島第1原発 東電、年2000億円負担で調整 賠償問題

リンク: 福島第1原発 東電、年2000億円負担で調整 賠償問題 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース.

  東京電力の清水正孝社長は15日の記者会見で、福島第1原発事故で避難や屋内退避をしている住民らへの賠償金仮払いを4月中に始めたい考えを明らかにした。政府も15日、「経済被害対応本部」と「原子力損害賠償紛争審査会」の初会合を開き、損害賠償の枠組み策定に向けた議論を始めた。最終的な賠償額は数兆円に上る可能性があり、政府内では、東電の今後の収益から一定額を賠償原資に充てる案が浮上。負担額を年間2000億円規模とする方向で調整する。
  賠償負担が一度に生じると、東電が債務超過に陥り、電力の安定供給に支障が生じかねない。このため政府内では、賠償費用を東電に分割払いさせ、毎年の収益の範囲内で負担させる枠組みの検討が進んでいる。東電は例年、2000億~4000億円の連結経常利益を出しており、政府内では年間2000億円規模の負担なら対応できるとの見方がある。
  緊急融資に応じた金融機関からは「東電の電気事業収入は5兆円。数%のコスト増なら、電気料金に転嫁することも可能だ」(メガバンク幹部)との声が漏れる。電気料金は、かかったコストをもとに算出する「総括原価方式」で決めるため、最終的には損害賠償を含む事故費用を電気料金に上乗せすることが可能だからだ。
  東電は避難住民への仮払いを決める一方、農漁業や商工業向けの賠償は先送りされた。対策遅れは地域経済に打撃を与えるが、規模が大きいだけに、損害額の確定や支払いなどの作業が迅速に進むかは予断を許さない。今回は避難者だけで8万人に上り、農漁業向けは「原子力損害賠償紛争審査会の指針を受けて対応する」(清水社長)方針。企業からの損害賠償請求などについても「実務の混乱を招く」として応じない考えだ。

  政府と東電の間でとんでもない話が進んでいるようだ。「負担額を年間2000億円規模とする方向で調整する。賠償負担が一度に生じると、東電が債務超過に陥り、電力の安定供給に支障が生じかねない。このため政府内では、賠償費用を東電に分割払いさせ、毎年の収益の範囲内で負担させる枠組みの検討が進んでいる」とされる。それはそれで結構だが、問題はどのくらいの期間で分割払いさせるかだ。
  政府保証の下に東電がメガバンクから10兆円借り入れて、それを毎年2000億円づつ50年分割で返済すると言う枠組みなら話は分かる。それなら当面の支払原資は十分だし電気料金の値上げも不要だ。それでも足りなければ100年分割で借り入れさせればよい。しかしそれでは銀行が融資しないとか信用不安が生じるなどとして賠償金を値切る腹なのだろう。
  「企業からの損害賠償請求などについても実務の混乱を招くとして応じない考えだ」とはよく言うもんだ。賠償責任を値切る前に役員報酬の全額カットと少なくとも管理職以上についての大幅給与カットを表明すべきだろう。
  農漁業向けは「原子力損害賠償紛争審査会の指針を受けて対応する」(清水社長)方針とされる。たぶん今頃東電と経産省の役人は、原子力損害賠償紛争審査会の委員を個別に廻って「賠償負担が一度に生じると、東電が債務超過に陥り、電力の安定供給に支障が生じかねない」などと言って東電に有利な指針にすべく暗躍しているのだろう。
  毎日新聞もよく無批判にこんな記事を書くものだ。東電の電気事業収入は5兆円だ。賠償責任を果たせないはずはない。原子力損害賠償法は原子力事業者に無過失、無限定の賠償責任を規定している。分割払いであれば東電には十分な賠償資力がある。ところが読売新聞は昨日の社説で「東電が経営的に追い込まれ、財務力が低下して電力供給の増強などの投資に支障が出るようでは将来に禍根を残す」として、国と東電が分担して救済をと寝言を言っている。東電から金をもらって書いているのだろうが、被害者も国民も東電や政府に騙されないよう原子力損害賠償紛争審査会の動きを厳しく監視すべきだ。
 

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2011年4月13日 (水)

震災関連死の疑い282人 災害関連死の認定作業が急務だ 

 東日本大震災が発生し、11日で1か月。避難所の寒さや衛生状態の悪さから持病が悪化するなどして亡くなる「震災関連死」の疑い例が、岩手、宮城、福島3県で少なくとも282人に上ることが、読売新聞の災害拠点病院などのアンケート調査でわかった。
  被害が甚大だった岩手沿岸の病院では未回答のところも多く、人数がさらに膨らむのは必至だ。避難所の劣悪な状況はあまり改善されておらず、専門家は「関連死が拡大する速度は、阪神大震災や中越地震の時と比較にならない」と警告している。
 調査は、災害拠点病院と主な2次救急指定病院の計113病院に、3月末までに被災した影響で持病悪化や新たな発症で亡くなった患者数を聞いた。56病院から回答があり、3県24病院が該当ケースがあるとしている。282人の内訳は、宮城214人、福島63人、岩手5人。大半が高齢者とみられる。
 死因について138人について回答があり、肺炎などの呼吸器疾患43人、心不全などの循環器疾患40人、脳卒中などの脳血管疾患11人。石巻赤十字病院は、3月中に1日30~50人の急患が搬送された。半数が避難所の被災者で、意識もなく心停止状態で運ばれてくる高齢者が多かった。同病院は、こうしたケースも関連死の疑い例とみている。
 震災関連死は、自治体が地震との因果関係を認定すれば、弔慰金の支払い対象となる。認定作業は審査会を設置して行われるが、医師の死亡診断書や警察の検視などが重要な判断材料となる。
 阪神大震災では、発生から10年間で919人が認定された。兵庫県内の死者6402人の14%を占めている。東日本大震災の死者は、警察庁の集計で1万3000人を超えたが、関連死は含まれていない。3県の災害対策本部は、いずれも関連死を「把握しきれていない」としている。
 震災関連死 地震に伴う持病の悪化や発作などが原因による死亡。明確な基準は定められていないが、自治体が認定する。(2011年4月11日 読売新聞)

  災害弔慰金などの支給に関する法律によって今回の震災によって死亡した者には250万円~500万円が支給される。問題は「災害によって死亡した者」の解釈だ。法律にも政令にも具体的な基準は全く示されていない。阪神淡路大震災の場合は次のように取り扱われたようだ。

  監察医もしくは臨床医が警察の要請により死体検案を行い、死因を外傷によるものか疾病なのかなど医学的に判断して死亡診断書(死体検案書)を発行した。その検案書に基づいて当局が「この震災による災害死」であるかどうかを判断した。被災自治体はこの警察の公式発表を基に住民票等から遺族を調査し、「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく「災害弔慰金受給資格認定者」の通知を行った。
 「直接死」とは"最初に受給資格認定された者"の通称であり、その後に追加認定された「関連死」と相対させた形の呼称である。直接死の死因も、全てが調査され判明しているわけではない。災害時の混乱と監察医の不足、医師の救命治療への優先などの事情が重なったために、詳細な検視や解剖を行えなかった例もある。また警察の検視を経ず、役所に死亡届を提出する遺族も少なくなかった。そうした遺族は火葬の後になって初めて警察に来所し、弔慰金申請のための災害死の認定を求めて調査書を作成した(この場合、死因は不明となる)。こうした例は、現場や病院での死亡確認を警察以外の市などの行政職員が確認した場合や、開業医に死亡診断書を書いて貰った場合などが含まれる。
  「関連死(=震災関連死)」とは通称で、これはこの震災で新しく生まれた概念である。消防庁による定義及び名称は「災害発生後疾病により死亡した者の内、その疾病の発生原因や疾病を著しく悪化させた事について、災害と相当の因果関係があるとして関係市町で災害による死者とした者」。
  厚生省は、直接的な死因以外にも震災との因果関係が専門家によって認められば災害弔慰金を支給するとの方針を出した。これを受けて被災自治体はそれぞれ医師、弁護士などで構成される災害弔慰金給付審査委員会を設けて判断を行った。この「災害弔慰金追加認定」の数が、いわゆる震災関連死者として計上された。行政で使われることがあるという「認定死」との呼び方は、ここに由来する。
  この認定には前例も指針もなく、判定基準は関係市町間での統一も難しく個々の市町で相対的に判断された。だがその基準や審査課程、内容は全て非公開で、その後の災害被災自治体の問い合わせにも応じていない。このような審査委員会の決定は恣意的とも言え、その後認定を巡っての裁判も起こされた。例えば神戸市の災害弔慰金給付審査認定率は65.6%である。
 以上は次のサイトの記事の抜粋。

http://www.shinsaihatsu.com/data/hito.html

  「この認定には前例も指針もなく、判定基準は関係市町間での統一も難しく個々の市町で相対的に判断された。だがその基準や審査課程、内容は全て非公開」というのは極めて問題だ。東日本大震災では震災関連死の数は阪神淡路大震災とは比較にならないほど多数に上ると思われる。また解剖などは全く行われていないはずで、死因不明は多数に上るだろう。死因どころか死亡の状況すら判然としない場合も予想される。時間が経過すればなおさらだ。「厚生省(当時)は、直接的な死因以外にも震災との因果関係が専門家によって認められば災害弔慰金を支給するとの方針を出した」とのことだが、厳密な因果関係の存在を要求したのでは、「死因不明」=「因果関係不明」とされかねない。神戸市の災害弔慰金給付審査認定率は65.6%というのは非常に危惧される数字だ。
  震災時ではなく通常の医療を受けることができたなら死亡を回避できた可能性が認められる限り広く因果関係を認めるべきだろう。被災自治体はそれぞれ医師、弁護士などで構成される災害弔慰金給付審査委員会を設けて判断を行ったとされるが、自治体は弔慰金を支出する立場であるから認定が消極的になる懸念がある。第三者である弁護士会と医師会に審査を委託し、自治体はその意見に基づいて認定するという枠組みをとるのが妥当だと思う。仙台弁護士会は是非提言してほしい。

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2011年4月12日 (火)

福島原発に関するフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の見解

 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は12日までに、福島第1原発事故で放出された放射性物質による1年間の推定積算被ばく量を示す地図を公表した。それによると、原発から30キロ圏外にある福島県飯館村や川俣町の一部で30ミリシーベルトを超える恐れがあることが分かった。IRSNによると、積算被ばく量の多い地域は米エネルギー省の観測と同様、福島原発から北西地域に帯状に延び、30キロ圏外の2カ所で30ミリシーベルト超となった。IRSNは、放射性物質の広がる範囲について原発からの距離だけではなく、風向きや降水、降雪の影響を受けると指摘。今後もデータ収集に努め、より正確な推定地図を作る意向を示している。(共同)
 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は6日までに、福島第1原発から流出する高濃度の放射性物質を含む水などが海洋に与える影響予測を発表した。微粒子の形で海底に沈殿する放射性物質の危険性を指摘し、長期の監視が必要と警告。放射性物質が魚介類の体内で濃縮される可能性も指摘した。IRSNは、海流のデータなどを基にしたコンピューターシミュレーションの結果から、放射性物質のうち海水に溶け込んだものについては水中で拡散し、海流で遠方に運ばれるため危険性が少ないと示唆。一方で、微粒子の形で海中にとどまる物質は海底に沈み、長期間汚染が続く可能性があるとした。特にセシウム134は数年、セシウム137は約30年にわたって海中にとどまるとして「沈殿が疑われる日本の海岸地域では、長期にわたる調査が必要だ」と指摘した。(共同)

http://www.irsn.fr/FR/popup/Pages/animation_dispersion_rejets_22mars.aspx

http://www.irsn.fr/FR/popup/Pages/animation_doses_corps_entiers_22mars.aspx

  福島第1原発の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は12日、国際原子力事故評価尺度(INES)で最も深刻な事故に当たるレベル7と暫定的に評価すると発表した。保安院はこれまでレベル5(広範囲な影響を伴う事故)としていた。レベル7は、INESで「放射性物質の重大な外部放出」とされている。保安院は同日、国際原子力機関(IAEA)に評価結果を報告した。レベル7は旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)に次いで世界で2例目。ただ、保安院は放射性物質の推定放出量について、現時点では同事故の1割程度としている。保安院と国の原子力安全委員会はそれぞれ、原子炉の状態を示すデータや原発周辺で計測された放射線量、気象データなどから、放出された放射性物質の量を計算。放射性ヨウ素131に換算し、保安院は37万テラベクレル(テラは1兆)、安全委は63万テラベクレルに達したと推計した。INESはレベル7の評価基準として「数万テラベクレルを超える放射性物質の放出」を挙げており、保安院はこの基準を超えたと判断した。

  遅すぎるが選挙が終わってようやく日本政府も真実を認める気になったようだ。1ヶ月以上レベル5と言い続けるとはどういう神経をしているのだろう。いずれ分かることを先送りしたところで何の意味もない。保安院のいう37万テラベクレル(テラは1兆)にしろ安全委(非安全委というべきか)のいう63万テラベクレルにしろ、もの凄い量だ。チェルノブイリ事故の1割程度というがそれはあくまで現時点での話だ(現時点でもとんでもない量だが)。
  現時点での推定積算被ばく量がそれほど高くないのは、IRSNのシュミレーションを見ると風向きに救われているからのようだ。「現時点では安全だとか海流で拡散するから直ちに影響はない」などというたわごとは聞き飽きた。隠してもしょうがないのだから、IRSNを見習って1年間の推定積算被ばく量や高濃度の放射性物質が海洋に与える影響予測を行って公表するべきだ。マスコミは保安院や非安全委の発表など待たずに直接アメリカやフランスの専門機関に取材して正しい事実を報道して欲しい。
  1~3号機には緊急停止した時点で、放射性ヨウ素が各130万~230万テラベクレル(テラは1兆倍)、放射性セシウムが13万~22万テラベクレルあったと推定されている。まだ圧力容器自体は健全なのに既に1割の放射性物質が漏出している。次の通り既に格納容器の密閉性は失われている。これでもし圧力容器が損壊したらどうなるのか。
  圧力容器についての既存の循環冷却装置の復旧が可能とは思えない。格納容器ごと冷却する新たな循環冷却装置の設置や冷棺の方法が検討されているようだが、いずれの方法も格納容器の水密性が保たれていることが前提になる。しかし東電は11日、水素爆発を防ぐため窒素を注入している1号機の格納容器で、圧力が1・95気圧から上昇しなくなり、放射性物質を含む蒸気や窒素が外部に相当量漏れていると発表している。
東電によれば、7日未明から毎時28立方メートルの窒素を注入しており、容器内の圧力は、7日の1・56気圧から9日の1・9気圧まで徐々に上昇が続いたが、10日頃から圧力が1・95気圧のまま上がらなくなった。東電では「格納容器の密閉性が損なわれ、相当量が漏れている」とみているとされている。既に2号機については、水素爆発で格納容器が損傷していることが分かっている。こんな状態で格納容器ごと冷却することなどできるのだろうか。最悪このままの注水継続で原子炉の冷温停止を待つとなると1年以上(数年?)かかることになりそうだ。その間圧力容器が核燃料の崩壊熱に耐えてくれることを祈るほかない。
  詳しい報道はなされないが、政府はゼネコンが提案した原発施設全体を大きなドームで覆って(今放出が続いている)放射性物質の飛散を防ぐ案に飛びついたようだ。しかしそんなものは核燃料の冷却には何の役にも立たない。メルトダウンした場合の放射性物質の飛散を防げるわけでもない。方向性を間違っているとしか思えない。
  アメリカの助言に従って格納容器内に窒素を注入したのは、東電にしては珍しく妥当な予防措置だと思う。今後もアメリカとフランスの専門家の助言に従って原子炉の冷温停止に向けてあらゆる方策を講じて欲しい。

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2011年4月11日 (月)

災害弔慰金と死亡診断書(死体検案書)の死因の記載

  今日たまたま電話で「地震直後に突然倒れて心肺停止になって死亡し、2日後に医師が死体検案したが、死体検案書で自然死とされている。医師に問い合わせると地震の時にたまたま循環器疾患で死亡したとも考えられるとのことだった。災害弔慰金は支給されるのか。」という相談があった。
  災害弔慰金の支給に関する法律は、「市町村は、条例の定めるところにより、政令で定める災害により死亡した住民の遣族に対し、災害弔慰金の支給を行うことができる。」とし、地震や津波による死亡の場合250万円~500万円が支給される。災害弔慰金以外でも生命保険などで災害割増の特約が付されている場合もある。従って死亡が災害によるものか自然死(病死)かの判断は極めて重要になる。
  厚生労働省の死亡診断書(死体検案書)作成マニュアルによれば、「WHOでは原死因とは、直接に死亡を引き起こした一連の事象の起因となった疾病もしくは損傷又は致命傷を負わせた事故もしくは暴力の状況と定義しています」と書かれている。また「心肺停止状態での来院等具体的な傷病名等が分からない場合には、家族又は死亡者が普段診療を受けていた他の医療機関等から、分かる範囲で必要な情報を入手して死亡の原因欄に記入します。ただし、十分な情報が入手できない場合は、「死亡の原因」欄に「詳細不明」と書いて、死因に関係する分かる限りの状況を「その他特に付言すべきことがら」欄に記入します。状況が分からなければ空欄とします。」とされている。
  では地震直後に突然倒れて心肺停止になった場合どのように記載したらよいのだろう。もし「直接死因は心不全、その直接の原因は不明、死因の種類は自然死」と書かれてしまうと市町村や保険会社から災害による死亡ではないと判断される可能性がある。今回のような観測史上最大の地震の場合、それによって循環器疾患を持っていた者(あるいは全く健康であっても)がそのショックから心不全を起こすことは医学的にも説明可能なはずである。従って地震後数日経って死亡したような場合(この場合は震災関連の死の問題になる)は別として、「直接死因は心不全、その直接の原因は精神的ショック、死因の種類は不慮の外因死」と記載して構わないと思われる。死亡の原因が全く分からず心不全とすら推定できない場合には、「死亡の原因」欄に「詳細不明」と書いて、死亡時あるいは発見時の状況を「その他特に付言すべきことがら」欄に記入すべきであろう。
  医師は死亡診断書の書き方を教わってはいるが、自然死とするか外因死とするかで法律的に大きな違いが出てくることまでは知らないことも少なくない。もちろん地震とは無関係にたまたま地震と同時に循環器疾患自体の悪化による心不全が起きた可能性も否定はできない。従って自然死に分類することが間違いというわけではないが、やはり上記のように記載するのが妥当であろう。
  では避難所で寒さや衛生状態の悪さで死亡した場合はどうなるのだろう。直接的な死因以外にも震災との因果関係が専門家によって認められば震災関連死として災害弔慰金を支給するというのが厚労省の見解だ。阪神淡路大震災の際は各自治体が災害弔慰金給付審査委員会を設けて判断を行ったが、認定を巡って裁判になったケースもあるようだ。
  それにしても今回の震災では今まで考えもしなかった相談が来る。今後行政や裁判所が前例のない判断を求められる場合も多くなるだろうが、未曾有の大震災であることを考慮し、被害者救済の見地から柔軟な対応が望まれる。

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福島原発の損傷状況と放射性物質飛散量についての仏アレバ社の見方

http://www.seyth.com/ressources/quake/AREVA-Document.pdf#search='The Fukushima Daiichi Incident  AREVA'
 福島第一原発の損傷状況と放射性物質飛散量についての仏アレバ社の見方が掲載されている。燃料棒はかなり溶解していると見ている。3月27日付の資料だが現状はどのように分析しているのだろう。政府や東電も訳の分からない説明していないでこういうプレゼンをして欲しい。
アレヴァ (仏:AREVA SA、
Euronext: CEI ) は、フランスに本社を置く世界最大の原子力産業複合企業で、傘下に複数の原子力産業企業を有する。

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2011年4月10日 (日)

こだまでしょうか?いいえ、東電です 

「収束できる?」っていうと
「収束できる」っていう。

「補償はする?」っていうと
「補償はする」っていう。

「汚染は深刻?」っていうと
「汚染は深刻」っていう。

そうして、あとでムカついたので
「社長は逃げてる?」っていった
「社長は逃げてる」っていう。

こだまでしょうか?
いいえ、東電です。

  このヤフーのコメントはとっても面白い。
  海江田万里経済産業相は8日の閣議後会見で、めまいなどを訴えて入院し前日から出社した東京電力の清水正孝社長(66)について「やはり(記者会見で)話すべきだ。その意向は伝えた」と述べた。また最近の東電の会見で取締役がほとんど対応していないことについて「遺憾だ」と不快感を示し、東電の情報公開への姿勢を批判したとされる。お前もきちんと説明しろよと言いたくなるが、東電役員の対応に比べればまだましか。
 福島第一原発では、東京電力のほか東芝や日立製作所など関係会社の社員たちが過酷な状況の下で復旧作業を続けている。
日立製作所のグループ企業では、福島第一原発で作業にあたる部門の担当者が技術管理をする社員に、離れた場所から指示を出すのではなく、現場で危機感を共有し難局を乗り越えようと訴え、激しい応酬の末、多くの技術系社員が現場に入ったという。
 
清水社長はどうせ本社に居てもいなくても同じなのだから、せめて「免震重要棟」に赴いて現場作業員の労をねぎらい激励してはどうか。

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2011年4月 9日 (土)

放射能の漏出は1割以下か  えっ!もうそんなに漏出

リンク: asahi.com(朝日新聞社):放射能の大半、なお原子炉内に 漏出は1割以下か - 社会.

  東京電力福島第一原発の1~3号機の建屋外へこれまでに漏れた放射能の量は、原子炉内にあった総量の1割に満たない可能性が高い。格納容器が壊れて内部に残る放射能が放出されると、さらに広範囲で汚染が深刻になる恐れがある。専門家は、炉心に冷却水を循環させる継続冷却システムの確立を最優先にすべきだと訴えている。
 原発の炉心には、核分裂反応に伴って生まれた膨大な量の放射能が存在する。米原子力規制委員会(NRC)の標準的な試算方法に1~3号機のデータを当てはめて朝日新聞が算出したところ、1~3号機には緊急停止した時点で、放射性ヨウ素が各130万~230万テラベクレル(テラは1兆倍)、放射性セシウムが13万~22万テラベクレルあったと推定できた。放射能はこのほか、1~4号機の使用済み燃料の中にもある。チェルノブイリ原発の事故時の炉心内蔵量は推定でヨウ素が320万テラベクレル、セシウムが28万テラベクレルだったとされる。
  外部への放出量はどうか。原子力安全委員会が汚染の拡散予測に使ったヨウ素の大気への推定放出量は、3月12日から24日までに3万~11万テラベクレルだった。一方、1~3号機の建屋外にあるたて坑と坑道にたまった汚染水に含まれる放射能の総量は、東電の公表データをもとに計算すると、ヨウ素で4万テラベクレル程度、セシウムで1万2千テラベクレル程度となった。建屋の外に漏れ出た放射能は、ほかに、その後の大気放出分や海への流出分などがあるが、多めに見積もっても内蔵量よりずっと少ない。外部に出にくいストロンチウムやプルトニウムなどの核種は、まだほとんど炉内にあるとみられる。(安田朋起)

 全くものは言い様だ。「漏れた放射能の量は、原子炉内にあった総量の1割に満たない可能性が高い」というが、1ヶ月弱でもうそんなに出でているとは驚きだ。現在国内での放射性物質の測定量が少ないのは、福島第一原発が太平洋に突き出たような位置にあり単に北西の季節風で太平洋上に流れていっているからだろう。しかし大気への放出はまだ続いているし、注水が続いていて格納容器からの漏出は止まっていないのだから、理屈ではこのままの放射能漏れが続くということになる。今後は南東の風に変わるので国内の放射性物質の飛散量は大幅に拡大するのではないか?http://www.spiegel.de/panorama/bild-751072-192707.html(放射能物質の飛散地図 ドイツシュピーゲルオンライン)
  「建屋の外に漏れ出た放射能は、多めに見積もっても内蔵量よりずっと少ない。外部に出にくいストロンチウムやプルトニウムなどの核種は、まだほとんど炉内にあるとみられる」とされるが、そうでなければ大変だ。しかし既にこれだけの量が漏出しているということは、たとえ格納容器が壊れなくともこの状態が1年続けば原子炉内の放射能の大半が漏出するということか。
  漏れた放射能の総量について東電や原子力保安院からは何の発表もない。朝日新聞は試算して報道するだけまだマシだが、東電や政府の情報隠しはあきれるほかない。ロシアや中国が文句を言うのも当然だ。日本のマスコミは報道規制しているのか、国民の知りたい情報を取材も報道もしていないように思う。東電の社長は7日に復帰したそうだが未だに会見しないどころかコメントすら出さない。政府も枝野と細野が放射性物質の外部放出を食い止める目標時期について「数カ月後」と大本営発表をしたきり、その後は何の見通しも示していない。見通しが立たないのだとしても、少なくとも政府にはこれまでに漏れた放射能の総量の推定値と現状が続いた場合の今後の予想値くらい公表して欲しい。

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2011年4月 8日 (金)

東電、原発事故で役員の報酬カット検討 役員報酬もらうつもりなの?

リンク: 東電、役員の報酬カット検討…原発事故で : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

  東京電力は22日、福島第一原子力発電所の事故を受け、清水正孝社長ら役員の報酬カットを検討すると発表した。東電では、柏崎刈羽原発(新潟県)の運転停止などで業績が悪化した2007年度以降、役員の報酬を10~20%カットしており、削減幅をさらに拡大する方針だ。(2011年3月22日23時51分  読売新聞)

 「役員報酬の削減幅をさらに拡大する方針」て、役員報酬をもらうつもりなのか!2009年度東京電力役員報酬は取締役21名で合計7億2100万円、1人当たり平均3400万円だそうだ。全額カットどころか今までもらった分も全部返して被害弁償に宛てるのが当然だと思うが。

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2011年4月 6日 (水)

多賀城市での震災出張相談

  昨日多賀城市の震災緊急出張相談に行ってきた。8件の相談があったがいずれも深刻なものだ。報道で知ってはいても今ひとつ被害の深刻さについて現実感がなかったのだが、震災法律問題Q&Aに書いてあるそのままのことを実際に相談されると、やはりこの大震災は本当に起きたんだと改めて思い知らされた。
  8件の相談といっても1人あるいは一家族について色々な問題が併存していて相談内容は多岐に渡った。少し紹介すると、津波でアパートの1階が浸水したが借りている2階は住める状態だ、しかし大家からは建て直すので今月中に出ていってくれと言われているというのがあった。この場合出て行く必要はないと答えるだけでは十分でない。実際には漏電の修理をしないと電気は使えないし、プロパンガスも換えなくてはならない。大家は協力しないだろうから、その場合は自分で修理して構わないし、修理費用は後で大家に請求できること、いずれは退去せざるを得ないとしてもその際は退去の義務はないのだから、引っ越し費用等転居に要する費用くらいは立ち退き料として請求して構わないことまで助言して上げる必要がある。
  会社からもう来なくてよいと言われたがローンもあってどうしてよいか分からないという相談もあった。解雇は無効だから会社に雇用調整助成金の制度を使うよう求めること、それがダメなら休業中でも失業給付を貰えるから労働局に相談するようにと答えたが、これらの制度はまだまだ一般には知られていないようだ。
  妻が勤務先からタクシーで帰宅途中に津波に呑まれて死亡したのだが、敢えて海岸近くの産業道路を通ったタクシー会社の責任を問えないかという相談もあった。予見可能性がないので責任追及は無理なのだが、通勤災害に当たるので遺族補償給付や葬祭料の給付を受けられる。会社によっては上積補償や会社独自の弔慰金を受けられる場合もある。会社が協力しなくとも労働者が申告すれば労働基準監督署が職権調査することになる。しかし一般には通勤災害はおろか労災すらあまり知られていない。今回の震災では労災補償を受けられる被災者が多数に上ると考えられるので是非マスコミで報道して欲しい。
  敷地に他人の車等が流されてきたが撤去してよいかという相談もあった。今回は自治体が国の費用負担の基に撤去することになっているのだが、市役所に聞くと全部撤去するには2,3ヶ月かかるかもということだ。また現在の災害救助法の運用基準では、生活に支障が出ない範囲に限定され全ての瓦礫などを撤去してくれるわけではない。それまで待っていることなどできないから自費で撤去して後で自治体に請求するというのが現実的な答えになるが、ただその場合自治体が後で費用を支払うかどうかについてはまだ国の見解が示されていない。
  石油コンビナートから重油が流出して自宅には今後住めそうにないが石油会社や国が買い取ってくれないのかという相談もあった。特別の補償制度はないようなので、買い取り制度はないと思うが、今後特別立法の可能性はあるし、安全地帯を広げるために石油会社が買い取ってくれる可能性もあるので様子を見るようにと答えるしかなかった。
  他にも色々あったが、今回は1人の被災者が色々な問題を抱えているので、相談されたことに答えるだけではなく、弁護士の方からこれは大丈夫でしたか、あれはどうですかと、困っていそうなことを聞き出して上げることが必要だと思った。今回の震災被害については既存の法律だけで対応するのは無理で色々な特別立法が必要になると思う。弁護士会も相談内容を分析して必要な立法提言をしていくべきだろう。
  一般の人にとってはまだまだ「解雇自由」「賃貸借の解除自由」の世界のようなので、基本的な法律知識の広報が必要だ。またこういう緊急時に相手が応じなければ裁判や調停の制度がありますとよ言ったところで何の解決にもならない、当事者間だけで話をしてもうまく解決できそうにないことも多い。弁護士会のADRのような簡易迅速な紛争解決態勢の整備が必要だと感じた。

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2011年4月 4日 (月)

放射能漏れ防止「数カ月後に」 大本営発表

リンク: 放射能漏れ防止、「数カ月後に」=東電も目標明示を―細野補佐官 (時事通信) - Yahoo!ニュース.

 細野豪志首相補佐官は3日朝のフジテレビの番組で、東京電力福島第1原子力発電所からの放射性物質の漏えいを止めるめどについて、「これ以上の放射能の外部への排出は、もう許されない。おそらく数カ月後が一つの目標になる」と述べた。また、こうした目標を東電も国民に示すべきだとの考えを示した。
 番組終了後、細野氏は記者団に「事故直後は、炉心溶融(メルトダウン)の危機的な状況を止めるためなら、放射性物質が出ることも認めざるを得ない状況にあった。でも、そういう状況は脱した」との認識を示した。

 枝野幸男官房長官は3日の記者会見で、細野豪志首相補佐官が東京電力福島第1原発の放射性物質(放射能)の外部放出を食い止める目標時期について「数カ月後」と言及したことについて、「オーソドックスなやり方なら、そうだと理解している」と同調した。(産経新聞)

  これで説明になっているのだろうか。「オーソドックスなやり方なら、そうだと理解している」と言うが、「オーソドックスなやり方」の内容を言ってもらわないと何のことか分からない。
  原子炉の循環・冷却機能が復活すれば数日で冷温停止になる。「数ヶ月が一つの目標」ということは、原発の循環・冷却機能の復旧は見込めないことを意味する。循環・冷却機能の復旧作業は中断しており、中断の原因である汚染水除去や新たな漏出防止の見通しも立たない以上復旧など見込めないことは容易に推測できる。つまり「オーソドックスなやり方」とは現在の給水による冷却継続の場合を意味しているのだろう。
  問題はその場合にどのような事態が想定されるかだ。政府の見解は、この方法で「数カ月後」に冷温停止に持っていけるということだろうが、それが可能である科学的根拠は示されていない。注水だけで核燃料を冷やさざるを得なくなった場合どれだけの時間がかかるのかについて、京都大の宇根崎博信教授(原子力工学)は、「1年後には崩壊熱は現在の5分の1程度にまで小さくなる」と指摘している。数ヶ月では冷温停止には持っていけないようだ。
  仮に数ヶ月で済むとしても、その数ヶ月の間に格納容器内で水素爆発が発生したり、核燃料が溶融して格納容器を貫通し、格納容器内の大量の水に反応して水蒸気爆発を起こす可能性は十分あるのではないか。そうならない説明は全くなされていない。
  たぶん答えは「格納容器が耐えてくれることを信じるしかない」ということだと思うが、それならそれできちんとそのことを言うべきだし、万一格納容器が耐えられなかった場合にどうなるかについても国民に説明すべきだ。それをしないで現状の放射性物質の飛散状況を前提とした避難地域の設定しかしないのでは無責任だと思う。同心円状の20キロの避難区域の設定に科学的根拠がないことは放射性物質の飛散予測シュミレーションを見れば明らかだ。http://www.spiegel.de/panorama/bild-751072-192707.html
  また「こうした目標を東電も国民に示すべきだとの考えを示した」とあるが、この点が一番大きな勘違いで国民が政府を信じられない根源だと思う。現実に作業をするのは東電の従業員かもしれないが、もはや一私企業の問題ではないのだから東電が国民に示すのではなく政府が国民に示さなければならない。この他人事の姿勢が変わらない限り希望を持とうにも持てない。格納容器が耐えてくれることを信じるしかないが、間違っても格納容器内の圧力が高まった場合のドライベントのタイミングだけは逸しないでほしい。循環・冷却機能喪失時に注水とベントの機会さえ逸しなければこんな酷い事態にはならなかったのだから。

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2011年4月 3日 (日)

「造血幹細胞採取は不要」と原子力安全委 作業員の命より政治的配慮か

リンク: 「造血幹細胞採取は不要」と原子力安全委 作業員の命より政治的配慮か (産経新聞) - Yahoo!ニュース.

 東京電力福島第1原発の放射能漏洩(ろうえい)事故で、復旧作業員の大量被曝(ひばく)に備えた自家造血幹細胞の事前採取について、内閣府の原子力安全委員会が「不要」と判断していたことが2日、わかった。造血幹細胞は、被曝し、造血機能に障害が起きた際の治療に有効だとして、専門家らが事前採取の必要性を指摘している。安全委は原子力の安全規制を担当し、基準などを首相に助言する役割を担っているが、専門家からは「作業員の生命を軽んじている」との批判が出ている。
 産経新聞が入手した安全委の内部文書によると、現時点で事前採取する必要がない理由として(1)作業員にさらなる精神的、身体的負担をかける(2)国際機関での合意がない(3)十分な国民の理解が得られていない-ことを挙げている。
 造血幹細胞は血液中の細胞である白血球などの源となる細胞。骨髄などに存在する。全身に被曝した場合、血液の細胞をつくれなくなる障害が起きるが、あらかじめ自身の造血幹細胞を採取・冷凍保存しておけば、それを移植することで造血機能が回復する。
 茨城県東海村の臨界事故(平成11年)では、作業員2人が他人の造血幹細胞の移植を受けたが死亡した。だが、自分の細胞であれば合併症を防ぎ、回復も早まる。費用の自己負担は約20万円で手術の必要もない。
 造血幹細胞の事前採取については、日本造血細胞移植学会と国立がん研究センターが提言している。先月28日には移植医療に携わる虎の門病院(東京都港区)の谷口修一血液内科部長が首相官邸を訪れ、仙谷由人官房副長官に採取するよう申し入れた。仙谷氏は理解を示し、事前採取に前向きだったという。
 今回、安全委が造血幹細胞の事前採取を「不要」と判断したことについて、事前採取の必要性を訴えてきた野党若手議員は「被曝を前提とするほど危険な場所で作業していることになれば、国民の不安感や諸外国の不信感をあおることになりかねないという政治的配慮があるのではないか」との見方を示している。

  内閣府の原子力安全委員会が「不要」と判断したとのことだが、5人の委員の内4人は原子力工学の専門家であって造血幹細胞移植に関する医学的知識を有しているとは考えられない。ただ1人の専門家である久住静代委員(専門:放射線影響学) もその経歴(日米共同研究機関・放射線影響研究所臨床研究部副部長・広島大学原爆放射能医学研究所非常勤講師・(財)放射線影響協会放射線疫学調査センター審議役)を見ると移植医療の経験すらはっきりせず、はたしてこの人1人の判断に委ねていいのか甚だ疑問だ。少なくとも原子力委員会の判断が、日本造血細胞移植学会と国立がん研究センターの提言を排斥しうるような専門的知見に基づくものでないことは間違いない。
  事前採取する必要がない理由として(1)作業員にさらなる精神的、身体的負担をかける(2)国際機関での合意がない(3)十分な国民の理解が得られていない-ことを挙げているが、全く合理性がない。造血幹細胞移植の効果は、「血液毒性の修復に限定されており、他の臓器の障害を救済するものではない」という意味では限定的だが、それでも現場の作業員に一定の安心感を与えることはできる。被爆の恐怖に比べれば事前採取の精神的、身体的負担など問題外だ。またこのような想定外の事態について国際機関の合意などあるはずがない。国民の理解が得られていないと言うに及んではアホかと言いたくなる。
  作業員の安全を確保できない以上、少しでも安心感を与える方策をとることが必要だ。お得意の「現時点で」の判断はやめにして常に最悪の場合を想定した意思決定をすべきだと思う。原子力安全委員会の委員長は、霞ヶ関を出て現場のオフサイトセンターで指揮を取るあるいは助言をするべきだ。そうすれば「不要」との判断も変わるかも。

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福島原発事故についての緊急建言 専門家らが提言 事態は深刻のようだ

原発事故、国内の経験総動員を…専門家らが提言

読売新聞 4 月1 日(金)20 時43 分配信
福島第一原子力発電所の事故を受け、日本の原子力研究を担ってきた専門家が1日、「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」として、原子力災害対策特別措置法に基づいて、国と自治体、産業界、研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める提言を発表した。
田中俊一・元日本原子力学会長をはじめ、松浦祥次郎・元原子力安全委員長、石野栞(しおり)・東京大名誉教授ら16人。
同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて封じ込める必要があると指摘した。
一方、松浦氏は「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きいと思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。
最終更新:4 月2 日(土)1 時42 分
「原子炉と使用済燃料の連続冷却が最重要」原子力専門家が緊急提言
産経新聞 4 月1 日(金)22 時39 分配信
東京電力福島第1原発事故を受け、田中俊一・前原子力委員長代理ら専門家が1日、文部科学省で「当面の最重要課題は大量の放射能を環境に出さない工夫をしながら、原子炉と燃料プールの使用済燃料を連続冷却すること」とする緊急提言を公表した。
公表に同席した松浦祥次郎・元原子力安全委員長は「謝って謝れる問題ではないと思うが、失敗した人間として社会に対して問題を解決する方法を考えたかった」と陳謝した。
提言では現状について、原子炉の圧力容器内部で水の放射線分解によって生成された水素ガスが発生し続けていると指摘。「万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要」とした。
また、田中前原子力委員長代理は「今は国を挙げて取り組む態勢ができていない」と話し、研究者や産業界などの力を結集すべきだとの認識を示した。
原子力委員会元委員らが陳謝
4 月1 日 19 時31 分
事態収束の兆しが見えない東京電力の福島第一原子力発電所について、国の原子力委員会や原子力安全委員会の元委員らが、1日、記者会見し、原子力の利用を先頭に立って進めてきた立場から国民に陳謝するとともに、政府は国を挙げて事態に対処する強力な態勢を作るべきだなどと訴えました。
記者会見したのは、原子力委員会の元委員長代理の田中俊一氏や原子力安全委員会の元委員長の松浦祥次郎氏、それに東京大学名誉教授の石野栞氏の3人です。3人は、日本の原子力利用を支えてきた研究者や技術者16人を代表して、1日、文部科学省で記者会見し、「これまで原子力の平和利用を先頭だって進めてきた者として、今回の事故を防ぎえなかったことについて、国民に申し訳なく思います」と述べました。
そして、事態は次々と悪化し、収束の見通しは得られていないとして、電源と冷却機能を回復させ、原子炉や燃料プールを冷却し、大量の放射性物質の拡散を防ぐための対策を急ぐ必要があるとしました。具体的な対策としては、▽安定した冷却機能の復旧に向けて、24時間態勢で作業を進める一方で、作業員の人数を増やして1人当たりの作業時間を制限し、被ばく量を少なくすること、▽放射性物質の拡散を防ぐとともに、汚染の影響を評価し、避難している住民が帰れるまでの手順を示すことなどを挙げました。そのうえで、危機的な事態に専門家の知識や経験が十分に生かされていないとして、政府の下に、原子力事故の解析や放射線の計測評価など経験と技術を持った専門家を結集し、国民に情報を提供し協力を求めながら、国を挙げて事態の収束に当たることが重要だと訴えました。

福島原発事故についての緊急建言

はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします。
私達は、事故の発生当初から速やかな事故の終息を願いつつ、事故の推移を固唾を呑んで見守ってきた。しかし、事態は次々と悪化し、今日に至るも事故を終息させる見通しが得られていない状況である。既に、各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質は、圧力容器や格納容器内に拡散・分布し、その一部は環境に放出され、現在も放出され続けている。
特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである。
こうした深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。現場は、このために必死の努力を継続しているものと承知しているが、極めて高い放射線量による過酷な環境が障害になって、復旧作業が遅れ、現場作業者の被ばく線量の増加をもたらしている。
こうした中で、度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能を含む冷却水の大量漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況にある。
一方、環境に放出された放射能は、現時点で一般住民の健康に影響が及ぶレベルではないとは云え、既に国民生活や社会活動に大きな不安と影響を与えている。さらに、事故の終息については見通しがないとはいえ、住民避難に対する対策は極めて重要な課題であり、復帰も含めた放射線・放射能対策の検討も急ぐ必要がある。
福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になることも予測され、一東京電力だけの事故でなく、既に国家的な事件というべき事態に直面している。
当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させ、内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めることであり、また、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えることである。これを達成することは極めて困難な仕事であるが、これを達成できなければ事故の終息は覚束ない。
さらに、原子炉内の核燃料、放射能の後始末は、極めて困難で、かつ極めて長期の取組みとなることから、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、原子炉内からは放射線分解によって水素ガスが出続けるので、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要である。
事態をこれ以上悪化させずに、当面の難局を乗り切り、長期的に危機を増大させないためには、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的に取組むことが必須である。
私達は、国を挙げた福島原発事故に対処する強力な体制を緊急に構築することを強く政府に求めるものである。
平成23年3月31日
青木 芳朗 元原子力安全委員
石野 栞 東京大学名誉教授
木村 逸郎 京都大学名誉教授
齋藤 伸三 元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長
佐藤 一男 元原子力安全委員長
柴田 徳思 学術会議連携会員、基礎医学委員会。総合工学委員会合同
放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長
住田 健二 元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
関本 博 東京工業大学名誉教授
田中 俊一 前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
長瀧 重信 元放射線影響研究所理事長
永宮 正治 学術会議会員、日本物理学会会長
成合 英樹 元日本原子力学会会長、前原子力安全基盤機構理事長
広瀬 崇子 前原子力委員、学術会議連携会員
松浦祥次郎 元原子力安全委員長
松原 純子 元原子力安全委員会委員長代理
諸葛 宗男 東京大学公共政策大学院特任教授

福島原発事故に係る主な課題

当面の最重要課題は、大量の放射能を環境にださない工夫をしながら、原子炉と燃料プールの使用済燃料を連続冷却すること(循環余熱除去システムの復帰)。
・ 必要なことは、電源を復帰させ、余熱除去システムを稼動させることで、一刻も速やかにこれを達成すること。
・ 作業を速やかに実施するためには、作業環境、作業体制を整えること。
― 作業場の放射線量をできるだけ下げること
― 重層的な作業体制をつくって、24 時間体制で実施できるようにし、個人の被ばく線量を抑制すると同時に、作業者が適切な休養・栄養・睡眠をとって思わぬ災害やトラブルを起こさないようにすること。
高レベルの放射線量下での作業は、2-3 時間で交代できるようにすべき。
・ 前線の作戦本部はサイトまたはオフサイトセンター内において、サイト内の現場作業と一体となって取組む(被ばくも苦労も分かち合うこと)。
・ 一個人に役割を集中させず、柔軟な役割分担も必要(現場所長等の超過労に配慮)。
制約条件
・ 炉心や燃料プールの冷却を欠かすことができない。しかし、冷却を継続していても溶融炉心は、徐々に圧力容器壁を溶かし続けるので、時間的な制約がある。
・ 水素は発生しており、細心の注意が必要。
・ 高レベルの放射性排水の処理は、極めて困難。多くの放射線源が分散しており、適切な放射線管理と遮蔽対策が必要。
・ 高レベル廃液は、移したところが放射線の発生源となるので、遮蔽が必要。
絶対に維持すべきことは、圧力容器と格納容器の閉じ込め機能と、使用済燃料プールの水位の維持
閉じ込め機能維持
・ 格納容器の圧力を下げるとか、水素爆発を除くために排気すれば、格納容器内の放射能の一部が環境に出る。
・ 燃料が破損・溶融したため、格納容器内には莫大な放射能が溜まっていると推定されるが、その量は不明。
・ ドライベントのように、放射能を環境に排出せざるを得ない事態には、住民、自治体に衆知し、適切な対応を要請すべし。
使用済燃料の破損防止
・ 使用済燃料プールの水位が下がり、燃料が空気中に晒され、除熱できなくなると燃料被覆管であるZr合金の温度が上がり、Zr-水(水蒸気)反応が起こり、被覆管が破損し、内部の放射能が環境に放出される。
・ 既に、3号機と4号機の使用済燃料ではこうした事態が一旦起ったようであるが、これ以上被覆管が破損し、さらに大量の放射能が放出されるのを防ぐためには、燃料を完全に水没させておくことが極めて重要である。
生活環境に放出された放射能対策と避難住民の復帰対策
・ 広範に放出された放射能の詳細な測定と影響評価
― 空間線量(積算線量)、土壌汚染、飲料水汚染の実態と評価
― 核種・線量の汚染マップの作成
・ 野菜等の風評被害対応
科学的で信頼できる評価と説明(個々バラバラの説明はよくない)
・ 相当の広い範囲でセシウム137 等による汚染があり、レベルに応じた対策が必要。
・ 避難住民の復帰シナリオの提示
・ 必要に応じた健康診断
サイト内の放射能対策は、短期課題、中・長期課題に分けて対応すべし。まず、安全に安定化、その後大量の放射性廃棄物の処分
・ 当面は、放射能が環境に逸散するのを防ぐ手当てが必要(密閉管理)
・ サイト内に広がっている放射能対策
― 汚染されている土壌等は、できるだけまとめて放射能粉塵の飛散を防ぐ措置
― サイト外への飛散を防ぐことと、サイトでの作業者の被ばくを減らす上で重要
・ 大量の高レベル放射能排水の処理・処分
・ 使用済燃料の始末(長期)
・ 原子炉の始末(長期)

  政府からは原子炉の状況についてのまとまった発表がないがこの緊急建言で述べられているのが現状なのだろう。予想通り深刻だ。要点をまとめると
 
「各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質は、圧力容器や格納容器内に拡散・分布し、その一部は環境に放出され、現在も放出され続けている。溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できない。 燃料が破損・溶融したため、格納容器内には莫大な放射能が溜まっていると推定されるが、その量は不明」
  「こうした深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。冷却を継続していても溶融炉心は、徐々に圧力容器壁を溶かし続けるので、時間的な制約がある。絶対に維持すべきことは、圧力容器と格納容器の閉じ込め機能と、使用済燃料プールの水位の維持。」
  「度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能を含む冷却水の大量漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況」
   「
格納容器の圧力を下げるとか、水素爆発を除くために排気すれば、格納容器内の放射能の一部が環境に出る。 ドライベントのように、放射能を環境に排出せざるを得ない事態には、住民、自治体に衆知し、適切な対応を要請すべし」
ということか。
   つまり、「各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質が圧力容器や格納容器内に溜まっている。溶融炉心が時間とともに圧力容器を溶かし、格納容器に移り、格納容器の放射能の閉じ込め機能の破壊や、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの爆発による格納容器の破壊の可能性がある。こうした事態を回避するためには冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。
しかし本格的な冷却システムの回復の見通しは立っていない。格納容器の水素爆発を除くためにドライベントで排気すれば、格納容器内の放射能を環境に排出せざるを得ない。」のが現状ということだろう。
  米国エネルギー省によれば1号機の燃料棒の70%、2号機の33%が損傷しているとされる。最悪の事態は格納容器の水素爆発による破損で、そうなれば格納容器内の膨大な放射性物質が環境に排出され、現在とは比較にならない放射線被ばくが生じるということなのだろう。それを防ぐには放射能が排出されるとしてもドライベントを躊躇するなということか。しかしドライベントで水素爆発を回避するとしても、冷却を継続していても溶融炉心は、徐々に圧力容器壁を溶かし続けるとされている。圧力容器が溶けて大量の溶融した核燃料が格納容器内に流出すれば、格納容器内には大量の水が貯まっているので水蒸気爆発が起きるのではないか?水蒸気爆発が起きないとしても、格納容器は果たして大量の溶融した核燃料に耐えうるのだろうか。既に何千トン単位の大量の漏水が生じているのだから溶融した核燃料も格納容器から漏出すると考えるのが自然だと思えるが。
  そうならないことを祈るが、仮に格納容器が水素爆発で破損した場合、あるいは大量の溶融した核燃料が格納容器から漏出した場合にどの程度の放射性物質が排出され、どの範囲にどの程度広がることになるのかが知りたい。テレビに出ている専門家は口を揃えて「今の時点でその可能性は低い」と言うだけで、実際そうなった場合のことは誰も言おうとしない。パニックが怖くて言えないのかもしれないが、分かるなら言うべきだろう。国民が知りたいのは最悪の場合どうなるのかだと思う。
  緊急建言は「重層的な作業体制をつくって、24 時間体制で実施できるようにし、個人の被ばく線量を抑制すると同時に、作業者が適切な休養・栄養・睡眠をとって思わぬ災害やトラブルを起こさないようにすること。高レベルの放射線量下での作業は、2-3 時間で交代できるようにすべき。」としているが、そのためには東電のみならず原発を有する全ての電力会社に志願による作業員の提供を求めるべきだろう。東電だけでやれるとはとても思えない。
  「前線の作戦本部はサイトまたはオフサイトセンター内において、サイト内の現場作業と一体となって取組む(被ばくも苦労も分かち合うこと)。」との指摘ももっともだ。そもそも誰が第一線で指揮を執っているのか全く見えない。原子力安全委員会の委員長と原子力安全・保安院の院長がオフサイトセンターで指揮をとるのが当然だと思うが。
 

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