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2011年6月 3日 (金)

放射線被爆許容量に関して、法解釈を無視した政府や御用学者の妄言がまかり通っている これについては法律の専門家にも大いに責任がある

  現在一般国民を直接の対象として放射線被爆限度を定めた法令はない。放射線管理区域外において一般国民が放射線被ばくをすることが想定されていないからだ。存在するのは、放射線管理区域内において放射線業務に従事する労働者を対象とする労働安全衛生法と電離放射線障害防止規則(公務員に適用される人事院規則も同じ内容)だ。 

以下は条文
(放射線業務従事者の被ばく限度)
第四条
 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
第五条
 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては一年間につき百五十ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。
第六条
 事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたときから出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。
 内部被ばくによる実効線量については、一ミリシーベルト
 腹部表面に受ける等価線量については、二ミリシーベルト

(緊急作業時における被ばく限度)
第七条  事業者は、第四十二条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生し、同項の区域が生じた場合における放射線による労働者の健康障害を防止するための応急の作業(以下「緊急作業」という。)を行うときは、当該緊急作業に従事する男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の放射線業務従事者については、第四条第一項及び第五条の規定にかかわらず、これらの規定に規定する限度を超えて放射線を受けさせることができる。
 前項の場合において、当該緊急作業に従事する間に受ける線量は、次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。
 実効線量については、百ミリシーベルト
 眼の水晶体に受ける等価線量については、三百ミリシーベルト
 皮膚に受ける等価線量については、一シーベルト
 前項の規定は、放射線業務従事者以外の男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の労働者で、緊急作業に従事するものについて準用する。

  つまり、放射線業務従事者の年間被爆限度は50ミリシーベルト(かつ5年間で100ミリシーベルト以内)、女性は年間50ミリシーベルト(かつ3ヶ月間で5ミリシーベルト以内)、妊娠中の女性は年間1ミリシーベルトとされている。事故が起きた場合の緊急作業に従事する場合ですら年間被爆限度は100ミリシーベルトだ。
  ところが現在文部科学省が福島県に示している幼稚園や学校の屋外で子供が活動する際の基準は、次のとおり児童生徒の年間被曝許容量を20ミリシーベルトとしている。

  国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば,事故継続等の緊急時の状況における基準である20~100mSv/年を適用する地域と,事故収束後の基準である1~20mSv/年を適用する地域の併存を認めている。また,ICRPは,2007年勧告を踏まえ,本年3月21日に改めて「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして,1~20mSv/年の範囲で考えることも可能」とする内容の声明を出している。このようなことから,幼児,児童及び生徒(以下,「児童生徒等」という。)が学校に通える地域においては,非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし,今後できる限り,児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。

 学校保健安全法6条は、「学校の設置者は学校環境衛生基準に照らしてその設置する学校の適切な環境の維持に努めなければならない」とする。この学校環境衛生基準は文部科学大臣が決めるものとされる。しかし現在の学校環境衛生基準には放射性物質に関する基準はないので本来は新たに基準を定めるべきものである。児童生徒の年間被曝許容量20ミリシーベルトというのは学校環境衛生基準として決められたのかと思っていたが、そうではなく単に教育委員会などに対し目安として「福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方」を示しただけだ。法律的には行政指導ですらなく技術的助言ということか?
  文部科学省は国際放射線防護委員会(ICRP)の助言を根拠にこの「20ミリシーベルトという暫定的考え方」を示したわけだが、そもそも議論の出発点を間違えている。この問題は放射線衛生学の問題ではなく法律解釈の問題だ。
  児童生徒の健康の保持増進についての基本法は学校保健安全法であるから、本来文部科学大臣には、「暫定的考え方」を示すという形ではなく、法律に基づいて学校環境衛生基準を定める義務がある。その場合、現在一般国民を直接の対象として放射線被爆限度を定めた法令がない以上、放射線業務に従事する労働者を対象とする労働安全衛生法と電離放射線障害防止規則の基準を参酌すべきことになる。そして対象が児童である以上基準がそれ以下とされるべきは当たり前のことで、これを超える学校環境衛生基準を定めることは違法ということになる。
  しかし実際には上記のように法解釈を無視した「暫定的考え方」なるものが政府見解としてまかり通っている。そして不思議なことに行政法学者や法律実務家はこのことについて全く沈黙している。
  また政府は「年間100mSv未満の被爆は直ちに健康に影響するものではない(大丈夫)」と言っている。その理屈は多分こうだ。今原子力対策特別措置法に基づく、「原子力緊急事態宣言」を発令している。これを宣言すると、原子力災害法が適用されるが、同法によると「①外部被ばくによる予測線量が年間10mSv以上、②内部被ばくによる予測線量(以下の項目)が年間100mSv以上・放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量・ウランによる骨表面又は肺の等価線量・プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量」の場合に初めて屋内退避勧告などができることになっている。だから100mSv未満の被爆は大丈夫と言っているわけだ。だったら電離放射線障害防止規則などいらなくなる。この数値は原子力緊急事態下において、避難や屋内待機という国民の行動に重大な制約を課す基準であって、この数値までは放射線被爆を許容するという意味ではない。原子力対策特別措置法は、国に対し、国民が屋内退避や避難をする必要がないように万全の措置を講じなさい、ただこのレベルに達したら屋内退避や避難勧告をしなければいけませんよとしているだけだ。
  放射線被爆許容量に関して、法解釈を無視した政府や御用学者の妄言を許していることについては法律の専門家にも大いに責任があると思う。

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