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2012年5月30日 (水)

B型肝炎東北訴訟でようやく初めての和解成立 仙台地裁で50歳代肝癌男性と60歳代キャリア男性 全国の提訴者4127名、和解成立僅かに266名、遅すぎる国の対応

  5月29日仙台地裁でB型肝炎東北訴訟で初めての和解が成立した。和解が成立したのは50歳代肝癌男性と60歳代キャリア男性の2名。いずれも昨年11月30日の提訴なので和解まで半年を要したことになる。
  昨年6月28日、幼少期の集団予防接種などによってB型肝炎に感染した被害者の救済について国と原告との間で基本合意書が締結された。これまでの全国の提訴者数は合計4127名(遺族原告を含むので患者数としては3809名)。この内1963名は和解成立に必要な資料を国に提出済みであるが、和解が成立したのは僅かに266名。和解成立率は13.5%に過ぎない。 国は当初、原告が和解成立に必要な資料を提出後1ヶ月以内に和解を成立させられるか追加資料を要求するか回答すると約束した。しかしその約束は全く守られていない。
  国は基本合意による救済の対象となるB型肝炎患者は全国で43万人に上り、その支給額は今後5年間で最大1兆1000億円になるとして、その財源を確保するために増税が必要と言っていた。しかし基本合意から11ヶ月を経過した現時点においても提訴者は救済対象者の1%にも満たない。その1%にも満たない提訴者ですらたったの266名しか和解に応じていない。
  それもそのはずで、提訴は各地で行うが、国の検討は提出された資料を全て法務省と厚労省に送って、その検討結果に従って各地裁で訟務検事が和解を成立させるという手順だ。そして厚労省が検討に当てている人員は4月に増員されてようや30名(それまではいったい何人でやっていたのだろう)、そのうち医官は3名だそうだ。増員したので今後は毎月300名分の資料を検討して回答することを目指すと言っている。30名でそれが可能なのかどうか怪しいものだが、可能だとしても今後1年間で3600名だから既提訴者の分を検討するにも足りない。しかし既提訴者は救済対象者の僅か1%であり、今後増加する提訴者に対応することができないことは明白だ。提訴しても1年間は指をくわえて待っていろというのが国の姿勢だ。自ら43万人の救済対象者がいると言っておきながら、また和解が遅々として進まない状況を認識しながら僅か30名しか人員を割かないというのは一体どういう神経をしているのだろう。増税の口実に利用しただけではないのか。
  また救済のために「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」を制定しておきながら、実際の広報は厚労省のホームページに載せる以外には、各都道府県に自治体や病院への周知を図るよう要請する通知書とリーフレットを送った程度だ。しかし一片の通知で自治体が積極的に動くはずもない。B型肝炎は余程悪化するまでは自覚症状がなく、職場の健診や献血で偶然気づかれる場合がほとんどだ。しかも健診では肝機能値は測定するが肝炎ウイルスの検査は通常行われない。救済対象者43万人のかなりの者は自分が感染していることにすら気づいていないと考えられる。テレビ・ラジオ・新聞などでの政府公報、病院でのポスター掲示・リーフレット備え置き、自治体ホームページや広報誌への掲載などやれることは幾らでもある。
  そしてB型肝炎特措法の救済枠組みでは、被害者は必ず提訴して裁判上の和解を成立させなければならないこととされている。しかも合意書では国の要求で、感染時カルテ・発症時カルテ・提訴前1年間のカルテなど事細かな資料の提出が必要とされている。原告に必要資料と入手方法を説明しても容易に理解してもらえず何度も問い合わせが来るのが通常だ。資料提出に非協力的な医療機関もある。とても弁護士に委任しなければ提訴できるものではない(弁護団を通じた集団提訴を行わなければそもそも裁判所がパンクするだろうが)。だから救済制度だけではなく全国の弁護団の相談先も広報しなければ実際の救済は望めない。病院の中には特措法をよく理解して、自分の病院の患者さんに積極的に制度の存在や弁護団の連絡先を教えてくれているところがある。おそらくこれが最大の広報になるであろうから、肝炎患者を診ている全ての医師がこの救済制度を理解して自分の患者さんに是非知らせて欲しいものだ。
  時の経過と共に和解に必要な資料は散逸して救済は困難になる。ことに母子感染の否定が絶対条件で、そのためには母親もしくは年長の兄弟の肝炎ウイルス検査データが必須になる。検査がなされないままで母親も年長の兄弟も死亡してしまえば救済の途は閉ざされる。国がこれを狙ってわざと広報しない、和解手続きを遅らせているとまでは言わないが、本気で救済しようとしているとは到底思われない。
  なお実務的な話になるが、特措法の救済の枠組みでは一次感染のキャリアの給付金は50万円とされ、この程度の金額のために提訴までするのはと躊躇している被害者の方もいる。しかし一度キャリアで和解を成立させておけば将来慢性肝炎などに進展した場合に改めて提訴しなくとも差額の支給を受けられる。なにより将来症状が進展した時点では母子感染を否定する資料が得られないことが十分考えられるのでキャリアでも提訴しておく意味は大きい。またHBc抗体検査の結果が陽性であっても低力価(10.0未満)なら母子感染は否定しうる。この点を誤解して陽性だから対象外だと思ってしまっている方もいると思われる。さらに母親が予防接種などで感染して、子供が母子感染したケース(二次感染)も給付の対象となる。単に母子感染だからダメではないので、この点は十分に注意して欲しい。
  B型肝炎の提訴者の内約1100名は肝癌と肝硬変だ。肝癌も肝硬変も以前と異なり不治の病ではなくなってきているが、それでも入退院を繰り返すのが通常で、死亡する方ももちろんいる。国は資料検討態勢を強化して速やかな和解成立に努力すべきは当然だが、それだけで今の遅延が解消されるとは思えない。提出資料の簡素化など抜本的な改善が急務である。
  B型肝炎被害対策東北弁護団では常設の無料相談窓口を開設しています。電話番号は022-796-0152。平日の午前10時から午後2時まで受け付けています。 ご相談いただいた方には弁護団から基本合意の内容や具体的な提訴の方法についての詳しい説明を記載した文書と、併せて今後不明な点を相談することのできる担当弁護士の連絡先を記載した文書を郵送致します。 

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