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2012年6月12日 (火)

地方自治体が弁護士資格者を任期付職員として採用することにメリットはあるか

  前の記事で「弁護士を職員として採用すれば、市民向けの法律相談を自前でやれるし、顧問弁護士も不要、訴訟や執行も個別に弁護士に委任しなくてよくなる。ある程度規模の大きな自治体なら経費節減という意味ではこちらのほうがメリットは大きいだろう。」と書いたが、認識を誤っていたようだ。

  まず、任期付職員で採用されるような弁護士は若手が多いため、単独で訴訟を委ねられるだけの能力と経験に欠ける場合が多い。となると顧問弁護士は従前通り確保する必要があるし、訴訟についても多くは従来どおり顧問弁護士に委任することになる。一般的な自治体における訴訟件数は知れているから、顧問料と訴訟報酬を合わせても、弁護士1人分の人件費を下回りそうだ。

  さらに市民向けの法律相談についても、任期付職員としての弁護士有資格者はしょせんは市の職員であるから、市民は、行政の対応に対する不満などの行政相手の相談はしにくくなるだろう。たとえば、生活保護受給者が「自分にも収入がある子がいるが、ろくに子育てしていなかったから仲が疎遠になっている。この場合も申告しないといけないのだろうか?」といった質問をしようにも、行政職員が相手では質問しにくいだろう。また任期付き職員としての弁護士には行政職員として上司に対する業務報告義務があるので、相談内容如何では弁護士としての守秘義務と職員としての報告義務が衝突する場合も考えられる。任期付き職員が市民向けの法律相談を行うことができるかについては疑問がある。

  コンプライアンスの点でも、任期付職員は所詮「政治的任用」としての性格が強いので市長の機嫌を損なえば、あっさりと切られてしまう。その意味では、市長の顔色を気にしなければならずそうした立場では、市長の違法行為を止めることはなかなか難しいだろう。

  弁護士資格者が任期付職員として採用されることについては、自治体職員はやはり「反感」を持つだろう。リストラにより職員数が減少し、給与も削られている中で、若造が課長待遇で突然入ってくるのであるからそう思うのも致し方ない。むしろ士気を削ぐことになりかねない。さらに法律相談の充実という点でも、自治体職員からすれば他の福祉施策などを削っているなかで、市民法律相談を充実させることが市民の意向に沿うものなのかとの疑問も生じるだろう。
  結論としては、規模の大きな自治体が、よほど行政訴訟に長けた弁護士を職員にして訴訟業務を一手に引き受けてもらうのでもない限りコストの面からも弁護士の任用は割に合わない、むしろ一般職員の士気を削ぐ点で有害と言えそうだ。日弁連も弁政連も弁護士の職域拡大にやっきになっているようだが、一方で隣接士業の職域拡大反対を唱えながら、他方で他人の職域を荒らすようなことはやめたほうがよい。そもそも弁護士がその能力を発揮しうるのは訴訟制度を駆使した場合であって、それ以外の場面で自らの能力を過大評価すべきではない。弁護士を登用すれば企業や地方自治体のコンプライアンスが向上するなどというのは思い上がりだ。一般社会において企業や自治体職員が弁護士有資格者に高い評価を与えていないことを肝に銘じるべきだと思う。

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