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2013年5月の3件の記事

2013年5月17日 (金)

産科医療補償制度掛け金の剰余金800億円以上 分娩機関など返還を申し立てへ

リンク: 「産科医療補償」掛け金の返還を 分娩機関など申し立てへ (産経新聞) - Yahoo!ニュース.

  お産の際の予期せぬ事故を補償するため、産科医院などの分娩機関が掛け金を支払う「産科医療補償制度」をめぐり、全国の分娩機関28カ所と1041人の妊産婦が、制度を運営する日本医療機能評価機構に掛け金の一部返還を求めADR(裁判外紛争解決手続き)を申し立てることが16日、分かった。同制度の補償件数が当初予測を大幅に下回り、多額の掛け金が余っているとみられるためで、来週にも国民生活センターに仲介を申し立てる。
  ADRの申請を担当する井上清成弁護士によると、制度は1年間の補償対象を500~800人と見積もっている。分娩機関は1分娩につき3万円の掛け金を支払っているが、この額は最大の800人分の補償額(約240億円)を元に算出。実際には年間200人分(約60億円)以下で推移しているため、平成21年の制度開始以来、余剰は800億円以上に積み上がっているとみている。
  ただ、掛け金は分娩機関が負担する構図ではない。分娩機関が支払う掛け金は多くの場合、分娩費に上乗せされ、妊産婦が支払っており、妊産婦には健康保険などから受け取る出産育児一時金によって3万円分が充当されている。

 余剰金を精算する仕組みがない欠陥は、産科医療保障制度を作る時から指摘されていたが結局何ら手当てされないままに発足してしまった。保険会社も運営主体の公益財団法人日本医療機能評価機構も手数料を取得しているので、それ以上に剰余金を丸儲けさせる必要性も合理性もない。しかし実際には剰余金は保険会社と日本医療機能評価機構の収入となっているようだ。
  従って今回の返還請求は当然だと思う。ただ法律的な理屈は厳しい。保険料は、制度を運営する日本医療機能評価機構と保険会社との保険契約で決められているが、保険契約に精算条項がない以上保険会社に返還義務は生じない。分娩機関と日本医療機能評価機構の間にも加入契約があるわけだが精算条項がなければ返還義務は生じない。
  3万円の保険の掛け金は分娩費に上乗せされて妊産婦が負担するが、後日健康保険の出産育児一時金で補填される。結局国民の健康保険料(相当部分は税金)によって賄われた800億円もの剰余金が保険会社と日本医療機能評価機構の利益になってしまっている。これほど不当な制度はないだろう。早急な制度の見直しが必要だ。必要なら遡って剰余金を返還させる特別立法も考えるべきだ。
  しかしより根本的な問題は補償対象が極めて限定されていることだ。現在の基準は、出生時の状態が以下のいずれかであることとされている。
  1. 出生体重が2,000g以上かつ在胎週数が33週以上
  2. 在胎週数が28週以上でかつ次の(1)または(2)に該当すること
  (1)低酸素状態が持続して臍帯動脈血中の代謝性アシドーシス(酸性血症)の所見が認められる場合(pH値が7.1未満)
   (2)胎児心拍モニターにおいて特に異常のなかった症例で、通常、前兆となるような低酸素状況が前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮破裂、子癇、臍帯脱出等によって起こり、引き続き、次のイからハまでのいずれかの胎児心拍数パターンが認められ、かつ、心拍数基線細変動の消失が認められる場合
   イ  突発性で持続する徐脈
   ロ  子宮収縮の50%以上に出現する遅発一過性徐脈
   ハ  子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈
  さらに身体障害者障害程度等級の1級または2級に相当すると重度の脳性麻痺であることが要件だ。
  しかしこの基準はあまりに厳しすぎる。臍帯動脈血のpH値が7.1以上でも重度の脳性麻痺は起こり得る。「子宮収縮の50%以上に出現する遅発一過性徐脈、子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈かつ心拍数基線細変動の消失が認められる場合」というのは誰が見ても急速遂娩が必要と判断する最重症の低酸素血症の状態だ。そのような状態に至らなくとも重度の脳性麻痺は起こりえる。実際子どもが脳性麻痺で生まれながら、この基準を満たさないために補償の申請を断念している産婦はたくさんいる。800億円あれば、どれだけ脳性麻痺の子どもを抱えて苦しんでいる母親が救われるだろう。
  厚生労働省は、本制度について「産科医療の質の向上が図られ、安心して赤ちゃんを産める環境が整備されることを目指しています」と宣伝している。しかしこのような厳しすぎる基準で脳性麻痺の被害者の救済を制限しながら、800億円以上の余剰金が全て日本医療機能評価機構と保険会社の利益になっているという運営は明らかに産科医療保障制度の趣旨に反する。制度を作った産科医達の意思にも反するだろう。早急に補償基準を見直して補償対象を広げるべきだ。
  もっとも制度を運営する公益財団法人日本医療機能評価機構は、補償対象の見直しなどは2015年に行うなどとふざけたことを言っている。

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2013年5月16日 (木)

交通事故紛争処理センターでは一部請求についての和解あっせんはしないそうだ

  財団法人交通事故紛争処理センターという機関がある。全ての都道府県にあるわけではなく高裁所在地にある。仙台支部では仙台弁護士会が推薦する会員が相談員及び審査員になるのが通例だ。私も過去に6年間相談員を務めた経験がある。私の場合は後遺症の等級を争うといった困難な事件が多いのであまり交通事故紛争処理センターは利用しないのだが、最近和解あっせんを申し込んだケースがある。
  交通事故の治療費については、医療機関が直接保険会社に請求し、保険会社は直接医療機関に支払うのが通常だ。示談前の仮払いというものだ。ところで交通事故の示談交渉では、保険会社は、被害者から、保険会社が医療機関から診療情報提供を受けることについての同意書を取得する。医師は守秘義務があるので保険会社は被害者の同意がなければ診療情報の提供を受けることができないからだ。診療情報の提供がないと保険会社は後遺障害等級の事前認定の資料も入手できないことになるので、同意書をとる必要性はある。しかし保険会社の中にはいかにも誘導的な質問項目による医療照会を行って、後遺障害の認定に不利な材料を揃えようとするところもある。だから私の場合は同意書は出さないし、既に受任前に依頼者が出している場合は撤回する。弁護士になりたての頃研修でそう教わったのでみんなそうしているものだと思っていた(実際はそうでもないらしい)。
  今回は最初から私が受任したんで保険会社に同意書は出せないと伝えた。すると保険会社は、「だったら治療費の仮払いはできない」と言ってきた。必要な診療情報はこちらで病院から入手して保険会社に提出すると言っても、「同意書を出さない被害者には治療費の仮払いはしないのが会社の方針」の一点張りで埒があかない。病院に事情を話したところ、後で確実にもらえるものなので治療費の支払いはしばらく猶予してもらえることになった。
  症状が固定し治療も終了したので保険会社に治療費を支払うよう請求したらまた「同意書を出さない被害者には治療費の支払はできない」と言われた。治療費の金額は確定しており、過失相殺も問題にならない事案なので、保険会社が支払を拒む理由はない。治療内容を確認するのに必要なレセプトも提出したが保険会社の回答は変わらなかった。嫌がらせ以外の何ものでもない。 この案件は後遺障害等級認定も必要な事案でそれについてはまだ結論が出ていないのだが、だからといって治療費についての一部請求ができない理由はない。
  一部請求で提訴しようと思ったが、交通事故情報センターの和解あっせんの方が無料だし早いだろうと思って申込をした。保険会社は、センターの和解あっせんの席でも同じことを繰り返すだけで支払に応じようとしない。仕方がないので審査の申立をするために、相談担当者にあっせん案を提示した上で和解あっせんを終了するようにいった。するとびっくり、相談担当者は「センターでは一部請求についての示談あっせんはしない運用だから和解あっせん案は出せない。和解あっせんを停止する。」と言ってきた。審査の申し立ては和解あっせん終了が要件なので、終了でなく停止されると審査の申し立てもできない。
  たしかにセンターの利用規定には、「相談担当者は、和解あっ旋を開始した後に、次の停止事由があることが判明したときは、和解あっ旋を停止することができます。① 申立人が治療中である場合、② 申立人申請にかかる後遺障害等級認定手続が進行中である場合、③ 申立人による後遺障害等級認定に対する異議申立手続が進行中である場合、④ 後遺障害等級認定について、申立人による自賠責保険・共済紛争処理機構に対する調停(紛争処理)申立手続が進行中である場合、⑤ 申立人が②~④の申立をする旨の意向を相談担当者へ申し出た場合、⑥ その他和解あっ旋を進めることが困難であると認められる場合」と書いてある。しかし停止事由から明らかなようにこれらは損害額の確定ができない場合だ。今回私が和解あっせんを求めているのは損害額が確定している治療費部分のみである。裁判所は一部請求だって当然に審理判決する。示談交渉でも損害の一部についてのみ示談することは可能だし実際行っている。センターの利用規定を見ても一部請求は取り扱わないという規定はない。
  実際過去に私が相談担当者だった時は後遺症による損害以外の部分について和解あっせん案を出して和解を成立させたことがある。後遺障害についてはセンターも事前認定の結果に拘束されるので全体の解決はできない。しかしだからといって被害回復が全くなされないというのは不当である。後遺障害については裁判で決着をつけることを前提に、それ以外の損害について和解を成立させる必要性も合理性もあったからだ。そのような和解あっせんが許されないなどという話しは当時聞いたことがなかった。いつからそんな運用に変わったのだろう。
  今回の保険会社の治療費支払い拒否は同意書を提出しなかったことに対する嫌がらせであることは疑いない。それが分かっていながら保険会社の違法な対応を許容するセンターの姿勢は理解しがたい。被害者は、現に病院から保険会社が支払わないなら自分で払って欲しいと多額の治療費を請求されて困っている。納得できないので、「金額が確定している一部請求についてセンターが取り扱わない理由はない。治療費部分について和解あっせん停止事由もないのに停止したのは手続きに違反しており和解あっせん終了とみなされる」との理由で審査の申し立てを行った。するとセンターは審査申立はできませんという文書と共に審査申立書をそのまま返送してきた。なんと大人げない対応かとあきれてしまうが、これ以上馬鹿を相手にしても仕方がないので提訴した。もちろん訴状は受理され現在審理中である。
  6年間も相談担当をしたのでセンターには愛着もあるし信頼もしていたのでとても残念な対応だ。法律扶助協会が日本司法支援センターになって法律扶助業務は官僚化したが(独立行政法人になったのだから当たり前か)、どんな組織も官僚化は進むものらしい。
 

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2013年5月 8日 (水)

法科大学院、定員割れ9割超に 今春、入学者数は2698人で過去最低

リンク: 東京新聞:法科大学院、定員割れ9割超に 今春、入学者数は過去最低:話題のニュース(TOKYO Web).

 今春、学生を募集した法科大学院69校のうち、93%に当たる64校で入学者が定員を下回ったことが8日、文部科学省の集計で分かった。昨年度の86%(73校のうち63校)よりも悪化した。入学者数の合計は2698人で過去最低を更新し、ピークだった2006年度の半数以下。23校は入学者数が10人未満となり、法科大学院の運営や教育の質の確保が困難になっている。
  政府の法曹養成制度検討会議は、司法試験の合格者数を「年間3千人程度」とする政府計画の撤回を求める中間提言をまとめ、問題を抱える大学の補助金削減の強化を求めており、今後も統廃合が加速する可能性がある。

<法科大学院の入学者数、定員の推移>
入学者数           定員
平成16年 5767人
平成17年 5544人
平成18年 5784人
平成19年 5713人
平成20年 5397人
平成21年 4844人    5765人
平成22年 4122人    4909人
平成23年 3620人    4571人
平成24年 3150人    4484人
平成25年 2698人    4261人

  制度が崩壊する様というのは凄いものだ。定員充足率63%などという教育機関がほかに存在するのだろうか。政府の「法曹養成制度検討会議」は司法試験合格者数3000人の政府目標の撤廃を提言するようだが、入学者数が2698人では撤廃するまでもなかろう。入学者の減少率は徐々に鈍るのかと思っていたら全く変わらない。平成27年には確実に2000人を切ることになる。今の司法試験合格者数2100名を維持すると(予備試験枠を拡大しなければ)入学者全員が司法試験に合格することになる。
  もちろん優秀な学生が法科大学院に入学してくれて、かつ法科大学院の教育レベルが高いのであれば全員合格でもよいだろう。しかしそもそも大学生にとって法曹資格の魅力が低下しているからこそこれだけ入学者数が急減しているわけだ。他に活躍の途がある優秀な学生ほど入学しなくなると考えるのが自然だろう。また実務経験のない学者が教えている限り教育レベルの向上は望めない。
  現在の法科大学院制度と司法試験合格者数を維持すると、今後法曹の新規参入者は、難関の予備試験ルートで法曹資格を得た少数の者と法科大学院経由で法曹資格を得た必ずしも質が保証されない者に大別されることになる。そして前者は判検事や大規模事務所の弁護士になれるが、後者は就職難で法曹の職に就くことすら困難となる。
  そもそも国家資格は一定の質が担保されることが前提だ。志望者全員入学の法科大学院、卒業者全員合格の司法試験で与えられる法曹資格に国家資格としての意味などない。医師国家試験の合格率は約9割だが、それで医師の質が保たれるのは医学部入学の時点で厳しい選抜がなされているからだ。法科大学院にはそれがない。いくら司法試験で質を保とうとしても、受験資格を有する志望者全体の質が低ければどうしようもない。このままでは早晩法曹資格は社会的信用を失うことになるだろう。
  戦後長きにわたって日本では司法試験合格者500人、合格後司法修習2年間という法曹養成制度がとられてきた。たしかに500人という合格者数は少なすぎたのであって、もっと早い時期に1000人程度まで漸増させていれば今日のような法曹養成制度の混乱は回避できたであろう。法科大学院制度と増員政策の破綻が明らかになった以上、法曹資格が社会的信用を失ってしまう前に一旦元に戻すほか途はないように思われる。

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