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2013年8月の2件の記事

2013年8月 3日 (土)

全国弁護士協同組合連合会の保釈保証書事業が仙台弁護士協同組合でも取り次ぎ開始 2%の手数料で事業の継続性・安定性を維持することができるのだろうか

  全国弁護士協同組合連合会(全弁協)の保釈保証書発行事業が仙台弁護士協同組合でも取り次ぎが開始された。
  全弁協のホームページによるとこの制度について「逃亡や証拠隠滅の可能性が低く保釈可能な被告人でも、保証金が用意できなければ、身体を拘束され続けるしかありません。全弁協の提唱する保釈保証書発行事業では、担当弁護人の申込に基づき全弁協が保証書の発行を行い、万一の際の保証金の支払いは全弁協が行います。組合がリスクを負うことで弁護人個人へのリスクをなくし、保証書による保釈を機能させ、資金の乏しい被告人にも平等に保釈の機会を与えるのがこの事業の狙いです。」と説明されている。
  具体的には、「被告人の家族や知人が保証委託者となり組合員である弁護人を通じて全弁協に保釈保証書発行の事前申し込みをする。全弁協の審査を通ると弁護人が裁判所に保釈申請をする。裁判所が保釈決定及び代納許可をすると、全弁協が保釈保証書を発行する。発行に当たっては保証委託者が手数料(保証する金額の2%)を支払うと共に、自己負担金(保証する金額の10%)を預託する。保証金が没取になることなく勾留が失効した場合には、自己負担金が返金される。保証金が没取された場合には、全弁協が裁判所に保証金を納付し、保証委託者に対し全弁協が裁判所に納付した金額から自己負担金を差し引いた金額を求償する。」というものだ。
  被告人が逃げずに保証金が没取されなければ、あるいは没取されても100%求償できるなら大変結構な制度だと思う。しかし本当にそううまくいくのだろうか。私自身保釈中の被告人に逃げられたことがあるが、一定の頻度で必ず没取は発生するだろう。求償と言ったって元々保釈金全額を用意できないからこの制度を使うのだから、そのような保証委託者から全額回収することは難しいのではないか。回収できるとしても長期分割になることが予想される。このことは本事業を構想した時点で最も問題とされ、元々は「保証機関は、保証金額の一定割合につき、損害保険会社との間で、損害保険契約を締結し、事業の継続性・安定性を維持するものとする」とされていた。
  この損害保険契約がどうなったのかは全弁協のホームページを見ても弁護士に配布された資料を見ても書かれていない。むしろ没取になった場合は全弁協が求償権を行使するとされているので、ひょっとすると損害保険契約なしで事業を始めてしまったのかも知れない。ちなみに会員に配布された文書には「所属員におかれても求償にご協力くださいますようお願いします」と書かれている。どうして弁護人が没取された場合の求償に協力しなければならないのだろう。
  没取が相次いだ場合、到底2%程度の手数料でこれを填補することは不可能だろう。当初の構想のように損害保険契約で填補されるならよいが、そうでないとしたらこの事業は大赤字を抱える危険性がある。本来もし赤字が出たらその時点で全弁協がこの事業をやめればよいことだし、やめないのであれば協同組合を脱退すれば個々の弁護士が経済的負担を被ることはないことになる。しかしそうはいかないだろう。全弁協は、全国各地にある単位弁護士協同組合を会員とする組合であって、現在、全国すべての弁護士会に47組合が設立されており、そこに所属する組合員の総数は約31,000名、加入率は93%とされている。完全に日弁連丸抱えの組合だ。この事業自体全弁協が独自に構想したものではなく日弁連が言い出したことだ。今の日弁連の体質であれば、たとえどんなに大赤字になろうと「人質司法打破のために弁護士たるもの身銭を切るべき」と言ってまたまた特別会費を徴収して全弁協に流し込むことだろう。協同組合を脱退したとしても一般会員がツケを支払わされる可能性は高いと思う。
  それにしても全弁協は保証金の没取率をどの程度と想定しているのだろう。2%の手数料を取るといっても、この事業のために人件費や運営費用がかかるのであるから実質的な保証料は2%に満たない。はたしてそれで事業の継続性・安定性を維持することなどできるのだろうか。綿密な試算をした上で決めた数字と思いたいが、なにせ全く需要予測もしないで精神論だけで増員政策をとるような日弁連のやることだから信用ならない。
  もちろんこれまで述べてきたことが杞憂で、この事業が成功するにこしたことはないのだが。被告人にくれぐれも逃げないようお願いするしかないようだ。

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2013年8月 1日 (木)

横浜弁護士会:中小企業への格安顧問紹介制度 内部反対で試行延期

  横浜弁護士会の執行部が中小零細企業に格安で顧問弁護士を紹介する制度の試行を計画したところ、会内部から「個々の弁護士の業務を圧迫する」と反対が相次いでいる。法律家を身近に感じてもらうとともに、若手弁護士の仕事確保も狙った全国初の取り組みだったが、今月からの試行予定が延期される事態になっている。新たに導入しようとしたのは、県内の個人事業主や従業員5人以下の法人を対象に、最大3人まで弁護士を紹介し、顧問料を相場の10分の1程度の1人当たり月額5000円程度にする制度。顧問内容は1カ月で3時間以内の法律相談や簡単な書面作成としていた。利用者の負担を減らすとともに、中小企業の借入金返済を猶予する中小企業金融円滑化法が期限切れとなって倒産の増加が懸念され、地元企業への支援という目的もあった。同会の会長、副会長ら執行部で試行を決定したところ、内部から反対意見が相次ぎ、常議員会で議論することになった。11日の会合では「大企業ばかり相手にしている顧問弁護士のイメージを変え、業務の開拓につながる」「個人の努力で顧問料を安くしている弁護士もいるのに、制度化は強引」などと、出席者約30人の賛否は分かれ、結論は出なかった。一部で報道されたため複数の個人事業主から問い合わせがあり、同会は回答を保留しているが、今後も同様の対応をする。前田康行副会長は「制度に期待していた個人事業主や市民の方には申し訳ない。きちんと議論して答えを出したい」と話している。【飯田憲】毎日新聞 2013年07月12日 地方版

  私は顧問先など一軒もないのでどうでもよい話ではあるが、このような制度は独占禁止法に違反しないのであろうか。独占禁止法第2条第9項第3号は「正当な理由がないのに,商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」を不公正な取引方法として禁止している。法第8条5号は、事業者団体が「事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること」を禁止している。個々の弁護士が顧問料を月額5000円程度にしたとしても他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるとは言い難いので不当廉売には当たらないだろう。しかし弁護士会が、格安で顧問弁護士を紹介する制度を導入することは、他の事業者=会員に顧問料のダンピングを強いる結果をもたらす可能性があるので法8条5号に該当するのではなかろうか。私は独占禁止法には疎いので全く見当外れのことを言っているかも知れないが。
  仮に独占禁止法上の問題はないとしても、従来相場と考えられてきた顧問料で顧問契約を結んでいる弁護士にとっては弁護士会による民業圧迫でしかないだろう。顧問契約は顧客との人間関係が基礎にある場合が多いから直ちに顧問料の値下げを強いられることはないとしても、長期的には顧問料の低下をもたらすだろう。もちろん弁護士同士の健全な競争の結果として顧問料が下がるのであればそれは自然の法則だし、顧客にとっても望ましい。しかし事件や顧問の有償紹介は弁護士職務基本規定で禁止されており事実上顧問の紹介ができるのは弁護士会だけである。一方的な価格決定権を持つ弁護士会がこのようなダンピングを助長するような制度を導入することは甚だ疑問である。
  若手弁護士の仕事確保も狙った全国初の取り組みとのことだが、今でも月額5000円の顧問料で構わないから顧問先が欲しいと思っている弁護士は多いだろう。広告も解禁されたのであるから後は個々の弁護士の企業努力の問題であって弁護士会がしゃしゃり出てくる必要はない。これまでも日弁連はひまわり中小企業センターとかひまわりサーチといった業務対策を行い各単位会もこれに協力してきたが、はたして費用に見合った効果はあったのだろうか。ひまわり中小企業センターは無料相談を何度も延長しているにもかかわらず利用が低迷していると聞くし、ひまわりサーチ経由できた相談者など私は皆無である。私には会費の無駄遣いとしか思えない。もう武士の商法はやめておとなしくしていて欲しい。
  同じ問題は顧問料だけではなく法律相談料についても言える。今各弁護士会の法律相談センターの相談は原則有料だが、各地で無料化が検討されているようだ。仙台弁護士会では、震災特例法により、平成23年3月11日時点において宮城県内に住所、居所、営業所または事務所がある者(法人を除く)は、3年間無料で法律相談を受けられることになった結果事実上法律相談は無料である(法テラスから相談料が交付されるので無償ではない)。期限が切れたら無料相談を続けるか有料に戻すかで大きな議論となるだろう。弁護士には仕入れという概念がないが、事務所維持経費はかかるので無料相談は不当廉売行為に該当するのではかろうか。個々の弁護士がやる分には構わないだろうが、弁護士会がやるとなれば独占禁止法上の問題があると思うのだが。
  私は無料相談に反対ではないし、弁護士費用も健全な競争によって顧客のニーズに見合う程度まで下がることはむしろ望ましいと思っている。しかし弁護士会には広報や業務対策をやって欲しくない。何故なら弁護士会ほど理念偏重で費用対効果の概念に乏しい団体はないと思っているからだ。「過疎偏在対策」が必要と言われれば湯水のごとく会費を投入するし、「若手弁護士の業務対策が必要」と言われればこれまた思いついつくままにやろうとする。日弁連の無謀な増員政策のせいでこれだけ弁護士が急増したのだから弁護士会がどう足掻こうが全ての若手に仕事を与えることなどできない相談だ。むしろ多くの会員は、いま日弁連がやっている政治的、政策的会務をバッサリ切って会費の大幅削減を実現することを望んでいると思う。

 

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