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2014年11月 5日 (水)

アディーレ法律事務所、債務整理「返金保証キャンペーン」--満足しなければ着手金返金

リンク: Yahoo!ニュース - アディーレ、債務整理「返金保証キャンペーン」--満足しなければ着手金返金 (マイナビニュース).

  アディーレ法律事務所は4日、債務整理の依頼者が対応に満足しなかった場合、契約から90日以内なら着手金を全額返金する「返金保証キャンペーン」を開始した。 同キャンペーンでは、期間中、債務整理(過払い金返還請求・任意整理・民事再生・自己破産)で依頼をした人のうち、契約から90日以内に契約の解除を希望した場合、着手金をすべて返金する。 返金保証は、他のサービス業では多く実施されているが、弁護士業界ではまだ定着していない。同法人は、これまで弁護士への依頼をためらっていた人に「安心して一歩踏み出してほしい」との想いから、今回のキャンペーンの開催に至ったという。 対象は、キャンペーン期間中に契約した人で、返金保証キャンペーンの利用を申告し、返金前にアンケートへの回答・返送が可能な人。なお、返金の際の振込み手数料は依頼者負担となる。
(御木本千春)

  弁護士と依頼者との契約は委任契約。委任契約は民法651条1項で無理由解除が認められる。有償委任の場合も解除権放棄しない限り無理由解除はできるが、それによって受任者に損害が生じれば賠償しなければならない(同条2項)。
  解除されれば原状回復義務が生じるので、弁護士は着手金を委任者に返還しなければならないが、他方依頼者は弁護士に対しそれまで弁護士が遂行した委任業務の客観的価値を金銭に見積もって返還する義務を負う。従って委任事務があらかた終了しているような場合には、(着手金が高すぎるような場合を除き)両者は等価なので着手金返還の問題は生じない。この原状回復義務については、依頼者と交わす委任契約において「本委任契約が中途で終了したときには、委任業務の処理の程度に応じて精算を行うこととし、協議に基づき弁護士報酬の全部もしくは一部の返還を行う」という約定をするのが一般的である。
  原状回復の問題とは別に、依頼者からの解除によって弁護士の成功報酬への期待を奪われたことについての損害賠償の問題が残る。委任事務処理を開始して間もない時期であれば経済的利益を得られる蓋然性は高くないので、損害賠償はできないあるいは少額になる。他方損害賠償の示談交渉などで既に相手方から具体的な賠償額の提示があった後に依頼者から解除された場合には、依頼者が提示額相当の経済的利益が得られた蓋然性は高いのでそれに見合う成功報酬(見なし成功報酬)を損害賠償として請求しうる。
  実際にどのような着手金返還や損害賠償請求がなされているのかは分からない。おそらく弁護士によって大きく異なるのであろう。私の場合は依頼者から途中解除されたという記憶はほとんどない。事件の処理方針が異なるために自分の方から辞任を申し出たケースは7~8件記憶している。既に相手方から具体的な賠償額の提示があったようなケースを除けば全額返還している。信頼関係を維持できない以上着手金は返してすっぱり縁を切る方が精神衛生上のメリットが大きいと思うからだ。但し具体的な金額の提示が既になされていた場合や着手金を長期分割にしたのにその分割金すら支払わないケースでは返還しないで辞任している。受任後に事前の見通しが甘かったことが判明したケースでも全額返金したことがある。
  依頼者とお金のことで揉めたことはほとんどないが、事件終了後にクレームを付けられたことはある。医療事故調査の依頼を受けて調査結果を報告したところ内容が意に添わないから着手金を返せと要求された。これについては何と言われようと断固拒否した。別にお金が惜しいわけではないが、トラブル回避のために安易に応じたのでは、いい加減な仕事をしたことを認めたようにとられる虞があるからだ。
  悩ましいのは、損害賠償の示談交渉などで既に相手方から具体的な賠償額の提示があり、それが妥当な金額であるにもかかわらず依頼者が納得しない場合である。説明を尽くした上で待つしかないのだが、かつて問い合わせに対しても回答すらなかった場合に辞任したことがある。かなり高額な示談額だったので正直見なし成功報酬を請求したいところだったが、精神衛生を優先して何もしなかった。
  私の場合、思わしくない和解をせざるを得なかった場合には成功報酬をこちらから減額する場合が多い。かつて裁判上の和解である程度譲歩はしたもののほぼ所期の目的は達したと思われたケースで成功報酬を値切られたこともある。正直腹立たしかったが敢えて争うことはしなかった。
  弁護士業務はただでさえストレスの溜まる仕事だが、その上依頼者と揉めることは大変なストレスになる。譲れないところは筋を通すとしても、長い目で見れば経済的利益には拘泥せず精神衛生を優先した方が良いように思う。
  アディーレ法律事務所の「返金保証キャンペーン」と同じような処理は実際には多くの弁護士が行っていると思う。ただ、それは依頼者との不毛なトラブル回避のためであって、それを顧客誘引のために積極的にアピールするという発想はなかった。このような手法を、事件処理についての自信の表れと評価する者もいよう。しかし弁護士業務のほとんどは成功を請け負えるような性格のものではない。債務整理という実質的に弁護士の関与をほとんど必要とせず機械的に処理しうる分野だからできる手法であろう。
  それにしてもアディーレ法律事務所の宣伝のうまさには舌を巻く。眉をひそめる弁護士も多いが、日弁連の阿呆共の司法改革でもたらされた弁護士過当競争の下ではむしろ見習うべきであろう。新規需要の開拓などは絵空事である。損保や上場企業などの安定した顧客を確保している弁護士を除けば、派手な広告宣伝に頼るか専門性を高めるしか生き残る途はない時代になりつつあるのだと思う。

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