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2015年5月21日 (木)

政府が司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案を公表 また3000人閣議決定と同じ轍を踏むのか

  政府は21日、司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案を公表した。司法制度改革の一環で「年3千人程度」とする計画を2002年に閣議決定したが、弁護士らの仕事が想定のようには増えなかったことなどから13年に計画を撤回、適正な合格者数の検討を進めていた。合格者数の目標が事実上、従来の半分に下方修正される。全国の法科大学院の再編や淘汰にも影響しそうだ。
 検討案は政府の法曹養成制度改革推進室がまとめ、有識者会議(座長・納谷広美元明治大学長)の21日の会合で提示した。14年の合格者は1810人と8年ぶりに2千人を割った。法曹志望者は減少傾向にあり「何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない」と指摘し、1500人以上を確保すべきだとした。政府は7月15日までに結論を出す。
 司法試験合格者数は1960年代以降は年500人前後と「狭き門」だったが、90年代に徐々に増え99年には千人に達した。政府は「国民に身近な司法」を目指す司法改革の柱の一つに法曹人口の拡大を位置づけ、02年に「2010年ごろまでに合格者数を年3千人程度に増やす」とする計画を閣議決定した。07年以降、合格者は2千人を超える一方、企業や市民の弁護士などへの依頼が伸び悩み、新人弁護士が弁護士事務所に入れないなどの問題も発生。政府は13年、年3千人合格の計画を「現実性を欠く」などとして撤回した。
 政府は13年、適正な法曹人口や法科大学院の改革案を検討するため「法曹養成制度改革推進会議」(議長・菅義偉官房長官)を発足。事務局として法務省や文部科学省、最高裁、日本弁護士連合会でつくる推進室が置かれ、法曹ニーズの調査などを進めていた。
日本経済新聞 2015/5/21 11:35

  有識者会議の座長は納谷広美元明治大学長だが、明治大学ローの入学者選抜実施状況を見てみよう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_6_1_1.pdf
  明治大学ローを見ると平成27年の競争倍率は、全法科大学院中最低水準の1.18倍。全法科大学院の平均倍率が1.87倍だからその低さは異常なほどだ。定員充足率を見ると、全法科大学院の平均0.69に対し明治大学ローは0.52。入学者数確保のためにこれだけ水増し合格させても定員充足率は平均を下廻っている。
  平成21年と比較すると、明治大学ローの平成21年受験者数は1892名、合格者数は499名で競争倍率3.79倍。平成27年は受験者数396名、合格者数336名。平成21年と平成27年で受験者の質がそれほど変わるはずはない、むしろ低下している可能性の方が高い。平成21年の合格ラインを維持したとすれば、平成27年の合格者数は104名になるはずだ。残りの232名は不合格になるはずのところを合格ラインを下げて合格させたわけだ。正に生き残るためだけになり振り構わぬ水増し合格をさせている。
  これまでは平均競争倍率2.8倍程度の入学者選抜試験の下で合格した法科大学院の修了者が司法試験を受験していたわけだが、今後は平均競争倍率ですら2倍を切る、中にはほとんど入学者選抜機能を失った法科大学院修了者が司法試験を受験することになる。そのような状況で、司法試験の合格者数を「年間1500人以上」と固定化したなら、本来合格レベルに達しない者を合格させるために、必然的に司法試験の合格水準を引き下げることになる。今ですら司法試験合格者の質の確保が疑問視されているのに、そんなことをしたらいったい法曹の質はどうなってしまうのだろう。
  今回の法曹養成制度改革推進室がまとめた検討案は、「法曹志望者は減少傾向にあり、何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない」との指摘に端的に表れているように、法曹の質を顧みず、受験者数激減で苦しむ法科大学院の生き残りのみを目的としたものであることは明白である。そしてこのような案が出るであろうことは、法曹養成制度改革推進室が法科大学院の存続を至上命題とする文科省と日弁連の出向者で構成されていることから当然に予想されたことである。検事や裁判官の質にも関わるので、法務省や最高裁からの出向者に微かに期待していたのであるが、どうやら彼らは、どんなにロースクールの質が下がろうと最低限任官者、任検者の質くらいは確保できるだろうとたかを括っているのか、あるいはいざとなれば司法試験とは別に独自の裁判官任用試験、検察官任用試験を作ればよいと腹を括ったのかもしれない。
  有識者会議の構成員をみる限り、法曹養成制度改革推進室の案が覆るとは考えられない。事実上政府は、さらなる法曹の質の低下容認を決定したといえる。元々政府からみれば司法など目の上のたんこぶでしかないから法曹の質などどうでもよいのだろう。
  遠い将来の話しではあるが、いずれは人口減少によって医師過剰時代が来る。その時医学部の生き残りのために、医師国家試験について同じような議論がなされるのだろうか。専門家の質が保たれず、専門家を信頼できない社会が国民に幸せをもたらすとは思えないが、もはや何を言っても後の祭りなのだろう。
  1500人という数字は今の日弁連執行部が日弁連の意見だとして主張しているものだ。正確に言えば、2012年3月に法曹人口政策に関する提言として「司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである」というものなのだが、いつの間にやら1500人という数字だけが一人歩きしている。当時の議論状況は、1000人説、1500人説、数字を示さない説が対立してとりまとめが不可能な状況であった(仮に決を採れば1000人説が優勢であったが)。しかし、なんとか数字を示しての減員方向の提言を今行わなければならないという認識では一致していた。そこで、さらなる減員について「現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処」という文言にすれば、問題点の改善などされるはずがないので次の提言では1000人提言もあり得るとのことで妥協が図られたのである。返す返すもあの時に1000人説で強行突破していればこんなことにはならなかったのにと残念でならない。

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