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カテゴリー「ロースクール・弁護士人口問題」の82件の記事

2015年11月 5日 (木)

平成27年度司法試験予備試験結果 姑息な合格者抑制策

平成27年度予備試験最終結果
1 受験予定者数428人
2 受験者数427人
3 合格点119点以上
合格者数394人
5 合格者の年齢(本年12月末現在)
(1) 最低年齢20歳
(2) 最高年齢65歳
(3) 平均年齢27.36歳
論文試験合格者428人中大学在学中166人、法科大学院在学中152人で合計318人(74.3%)。
最終合格者394人中大学在学中156人、法科大学院在学中138人で合計294人(74.6%)。

平成27年度予備試験論文試験結果
1 受験者数2,209人(うち途中欠席10人)
2 採点対象者2,199人
合格点235点以上
合格者数428人
5 採点対象者の最高点等
(1) 最高点325.61点
(2) 最低点41.24点
(3) 平均点199.73点

平成26年度予備試験最終結果
1 受験予定者数392人
2 受験者数391人
3 合格点119点以上
合格者数356人
5 合格者の年齢(本年12月末現在)
(1) 最低年齢20歳
(2) 最高年齢67歳
(3) 平均年齢27.21歳

平成26年度予備試験論文試験結果
1 受験者数1,913人(うち途中欠席13人)
2 採点対象者1,900人
合格点210点以上
合格者数392人
5 採点対象者の最高点等
(1) 最高点318.23点
(2) 最低点48.70点
(3) 平均点177.80点
論文試験合格者392人中大学在学中125人、法科大学院在学中180人で合計305人(77.8%)。
最終合格者356人中大学在学中114人、法科大学院在学中168人で合計282人(79%)。

  平成27年度は、論文試験の合格点を平成25年度及び平成26年度の210点から235点に大幅に引き上げて合格者数の抑制を図った。しかしそれでも392人から428人に増加した。平成26年度から平成27年度の採点対象者数の増加率は15.7%であるのに対し、合格者数の増加率は9.1%にとどまる。合格点を上げる抑制策をとらなければ、採点対象者数の増加率がそのまま合格者数の増加率になるはずであるから、本来合格者数は453人になったはずである。
  こんな姑息なことをしてまで予備試験合格者数を抑制して法科大学院の生き残りを図るとは司法試験委員会も落ちたものだ。これでは法科大学院修了者と予備試験合格者の司法試験合格率の差は開くばかりだろう。
 司法試験委員会は「試験の公正さ」より法科大院への配慮を重視したということになるが、何よりも公正さが厳しく求められるべき「試験」において政策的配慮がなされること自体が由々しき問題だ。
  司法試験についても、試験自体が不公正なわけではないが、本来合格レベルに達していない者を司法改革の名の下に無理矢理合格させているのが現状だ。それもまた政策的配慮で「試験の校正さ」を歪めているといわねばならない。法科大学院の生き残りのためだけに、もはや破綻している増員政策を続けることは、必ず一定の頻度で不良な法曹を社会に輩出することを意味する。社会にとって百害あって一利なしだろう。

2015年6月12日 (金)

法曹養成制度改革推進会議決定(案) やはり絶望的

法曹養成制度改革推進会議決定(案)

第1 法曹有資格者の活動領域の在り方
1 法曹有資格者の活動領域の拡大に関する基本的な考え方
   法曹有資格者の活動領域の在り方については、法務省に設置した「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会」並びにその下に日本弁護士連合会との共催により設置された「国・地方自治体・福祉等」、「企業」及び「海外展開」の各分野に関する分科会において、法曹有資格者の活動領域の更なる拡大を図る方策等を検討するとともに試行的な取組を行ってきた。その結果、これまで、各分野において法曹有資格者の専門性を活用する機会は増加してきたところであるが、このような流れを加速させるためには、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組を継続することが必要である。
2 具体的方策
   法務省は、法曹有資格者の専門性の活用の在り方に関する有益な情報が自治体、福祉機関、企業等の間で共有され、前記各分野における法曹有資格者の活用に向けた動きが定着するよう、関係機関の協力を得て、そのための環境を整備する。
   日本弁護士連合会及び各地の弁護士会においては、こうした取組と併せて、前記各分野における法曹有資格者の専門性を活用することの有用性や具体的な実績等を自治体、福祉機関、企業等との間で共有すること並びに関係機関と連携して、前記各分野において活動する弁護士を始めとする法曹有資格者の養成及び確保に向けた取組を推進することが期待される。
   最高裁判所においては、司法修習生が前記各分野を法曹有資格者の活躍の場として認識する機会を得ることにも資するという観点から、実務修習(選択型実務修習)の内容の充実を図ることが期待される。
第2 今後の法曹人口の在り方
   新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである。すなわち、引き続き法科大学院を中核とする法曹養成制度の改革を推進するとともに、法曹ないし法曹有資格者の活動領域の拡大や司法アクセスの容易化等に必要な取組を進め、より多くの有為な人材が法曹を志望し、多くの質の高い法曹が、前記司法制度改革の理念に沿って社会の様々な分野で活躍する状況になることを目指すべきである。
   なお、新たに養成し、輩出される法曹の規模に関するこの指針は、法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある。
   法務省は、文部科学省等関係機関・団体の協力を得ながら、法曹人口の在り方に関する必要なデータ集積を継続して行い、高い質を有し、かつ、国民の法的需要に十分応えることのできる法曹の輩出規模について、引き続き検証を行うこととする。
第3 法科大学院
1 法科大学院改革に関する基本的な考え方
○ 平成27年から平成30年度までの期間を法科大学院集中改革期間と位置付け、法科大学院の抜本的な組織見直し及び教育の質の向上を図ることにより、各法科大学院において修了者のうち相当程度(※)が司法試験に合格できるよう充実した教育が行われることを目指す。
※ 地域配置や夜間開講による教育実績等に留意しつつ、各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率が概ね7割以上
○ 法科大学院生に対する経済的支援の更なる充実や優秀な学生を対象とした在学期間の短縮により、法科大学院課程修了までに要する経済的・時間的負担の縮減を図る。
2 具体的方策
⑴ 法科大学院の組織見直し
○ 平成27年度から、文部科学省及び法務省が実施している公的支援の見直し強化策及び教員派遣見直し方策は、法科大学院の組織見直しの進捗状況を踏まえつつ、平成28年度以降においても継続的に実施する。また、最高裁判所においても教員派遣見直し方策の実施が継続されることが期待される。
○ 文部科学省は、司法試験合格率(目安として平均の50%未満)、定員充足率(目安として50%未満)、入試競争倍率(目安として2倍未満)などの客観的指標を活用して認証評価の厳格化等を図るべく、平成27年3月31日改正に係る「学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令」に基づき、認証評価機関における平成27年度中の評価基準改正及び平成28年度からの認証評価における積極的な運用を促進する。
  文部科学省は、認証評価結果又はその他の事情から客観的指標に照らして課題があるものと認められる法科大学院に対し、教育の実施状況等を速やかに調査することとし、その結果、法令違反に該当する状況が認められる場合は、直ちに是正を求め、それでもなお改善が図られないときは、学校教育法第15条に基づき、当該法科大学院に対し、改善勧告、変更命令、組織閉鎖命令の各措置を段階的に実施するものとする。また、文部科学省は、前記調査の実効性を確保するため、客観的指標の水準を下回る法科大学院に対して教育状況の報告又は資料の提出を適時に求めることができる体制及び手続を平成27年度中に検討し、速やかに整備する。
○ 文部科学省は、前記取組の状況を適時精査・検討し、その結果、司法試験の合格状況の低迷が著しいなど課題が深刻な状況について何ら改善が見られないにもかかわらず、しかるべき措置が講じられないなど、前記取組の十分な効果を認めることができない場合には、例えば、課題が深刻な法科大学院について客観的指標も活用しつつ適切な措置が講じられるよう、司法試験の合格状況などの教育活動の成果と関連性の高い基準について、専門職大学院設置基準の見直しないし解釈の明確化を平成30年度までの間に検討し、速やかに措置を講じる。
○ 前記の各措置の実施に当たっては、法曹を志す者の誰もが法科大学院で学ぶことができるよう、法科大学院の所在する地域の状況や夜間開講状況、ICT(情報通信技術)を活用した授業の実施状況などの事情を適切に考慮するものとする。
⑵ 教育の質の向上
○ 平成27年度以降、文部科学省は、以下の取組を加速する。
  ・法科大学院を修了した実務家教員等を積極的に活用した指導の充実を促進する。
  ・法学未修者に対する法律基本科目の単位数増加など教育課程の抜本的見直し及び学習支援などを促進する。
  ・その他、我が国におけるあるべき法曹像を踏まえ、海外展開や国、地方自治体、企業などの組織内法務、福祉分野等への対応をはじめ、社会のニーズに応えて様々な分野で活躍できる法曹の養成に有意義と認められる先導的な取組を支援する。
○ 文部科学省は、法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定等を行う仕組である
共通到達度確認試験(仮称)(以下「確認試験」という。)について、平成30年度を目途に本格実施に移すべく、法科大学院関係者を中核としつつ、法曹三者の理解と協力を得ながら、試行を毎年度行い、その結果を踏まえ、出題内容や難易度等の改善をその都度図るとともに、その試行対象者を法学未修者から法学既修者に順次拡大することとする。
  また、
文部科学省は、将来的に確認試験の結果に応じて司法試験短答式試験を免除することを想定し、前記試行と並行して、法務省の協力も得ながら確認試験の試行データと受験者の司法試験短答式試験合格状況との相関関係を検証・分析し、その結果を踏まえ、出題内容や難易度等の改善をその都度図ることとする。その状況に応じて、文部科学省及び法務省は、確認試験実施の安定性及び確認試験結果の客観的・社会的信頼性等を踏まえ、確認試験がその結果を国家試験たる司法試験短答式試験の免除と関連させるに足りる実態を有すると認められることを前提に、確認試験の目的、司法試験短答式試験免除に必要とされる合格水準、確認試験の実施主体、実施体制等、必要な制度設計を具体的に検討する。
○ 文部科学省は、確認試験の定着状況に応じて、当該確認試験と法科大学院統一適性試験や法学既修者認定試験の在り方について検討する。
⑶ 経済的・時間的負担の軽減
○ 文部科学省は、経済的負担の軽減に向けて、意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず進学等の機会を得られるよう、平成28年1月からの社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入を前提に、平成29年度以降の大学等進学者を対象に、返還月額が卒業後の所得に連動する、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入に向けた対応を加速するとともに、総務省と連携して地方公共団体と地元産業界が協力して地元に就職する学生の奨学金返還支援のための基金の造成に対する支援及び優先枠(地方創生枠)を設けて無利子奨学金の貸与を行うなど奨学金制度や、授業料減免制度など、給付型支援を含めた経済的支援の充実を推進する。
○ 文部科学省は、優秀な学生に対して,質の確保を前提として、大学院への早期卒業・飛び入学制度を活用して学部段階で3年間在学した後に法科大学院の2年の既修者コースに進学できる仕組みの確立及び充実を推進する。
○ 文部科学省は、地理的・時間的制約がある地方在住者や社会人等に対するICT(情報通信技術)を活用した法科大学院教育の実施について、平成28年度までの間に実証的な調査研究を行い、その結果を踏まえ、平成30年度を目途に、法科大学院における本格的な普及を促進する。
3 法科大学院集中改革期間の成果の検証等
  文部科学省は、前記2記載の平成30年度までの法科大学院集中改革期間の成果については、その期間経過後速やかに法科大学院生の司法試験の累積合格率その他教育活動の成果に関する客観的状況を踏まえて分析・検討し、必要な改革を進める。
第4 司法試験
1 予備試験
  予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための途を確保するためのものであるところ、出願時の申告によれば、毎年の予備試験の受験者の過半数を占める無職、会社員、公務員等といった者については、法科大学院に進学できない者あるいは法科大学院を経由しない者である可能性が認められ、予備試験が、これらの者に法曹資格取得のための途を確保するという本来の制度趣旨に沿った機能を果たしていると考えられる。他方で、予備試験受験者の半数近くを法科大学院生や大学生が占める上、予備試験合格者の多くが法科大学院在学中の者や大学在学中の者であり、しかも、その人数が予備試験合格者の約8割を占めるまでに年々増加し、法科大学院教育に重大な影響を及ぼしていることが指摘されている。このことから、予備試験制度創設の趣旨と現在の利用状況がかい離している点に鑑み、本来の趣旨を踏まえて予備試験制度の在り方を早急に検討し、その結果に基づき所要の方策を講ずるべきとの指摘がされている。
   これらを踏まえ、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を堅持する観点から、法科大学院が期待されている当初の役割を果たせるようにするため、前記のとおり、平成30年度までに、文部科学省において、法科大学院の改革を集中的に進めるものとする。他方、法務省において、法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者について、試験科目の枠にとらわれない多様な学修を実施する法科大学院教育を経ていないことによる弊害が生じるおそれがあることに鑑み、予備試験の結果の推移等や法科大学院修了との同等性等を引き続き検証するとともに、その結果も踏まえつつ予備試験の試験科目の見直しや運用面の改善なども含め必要な方策を検討し、法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者の法曹としての質の維持に努めるものとする。また、司法試験委員会に対しては、予備試験の実態を踏まえ、予備試験の合格判定に当たり、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を損ねることがないよう配慮することを期待する。さらに、平成30年度までに行われる法科大学院の集中的改革の進捗状況に合わせて、法務省において、予備試験の本来の趣旨に沿った者の受験を制約することなく、かつ、予備試験が法曹養成制度の理念を阻害することがないよう、必要な制度的措置を講ずることを検討する。
2 司法試験選択科目の廃止
   司法試験論文式試験の選択科目の廃止については、司法試験受験者の負担軽減に資するとともに、司法試験においては法律基本科目の基礎的理解力を重視すべきであるという観点から、これを積極的に評価する見解がある一方で、選択科目の廃止は、法律科目に限らない幅広い知識、教養をもつ多様な人材の育成という法曹養成の理念に沿わないといった指摘や法科大学院生の学修意欲を低下させることにつながるという懸念もあることから、法務省において、文部科学省と連携しながら、引き続き、法科大学院での履修状況等を見つつ、選択科目の廃止の是非を検討することとする。
3 司法試験の具体的方式・内容、合格基準・合格者決定の在り方
   司法試験の具体的方式・内容、合格基準・合格者決定の在り方に関しては、司法試験法の改正等を踏まえ、試験時間等に一定の変更が加えられたものであるが、今後においても、司法試験委員会において、継続的な検証を可能とする体制を整備することとしたことから、検証を通じ、より一層適切な運用がなされることを期待する。
第5 司法修習
   最高裁判所において、第68期司法修習生(平成26年11月修習開始)から導入修習が実施されたのに加え、分野別実務修習のガイドラインの策定・周知及び選択型実務修習における修習プログラムの拡充のための検討がそれぞれ行われたところ、法曹として活動を開始するに当たって必要な能力等を修得させるという司法修習の役割が果たされるよう、こうした施策を着実に実施し、今後も司法修習内容の更なる充実に努めることが期待される。また、司法修習生に対する経済的支援については、必要に応じて、法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、必要と認められる範囲で司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。
第6 今後の検討について
   法務省及び文部科学省は、連絡協議等の環境を整備し、法曹養成制度改革を速やかに、かつ、着実に推進するため、先に掲げた両省が行うべき取組及び関係機関・団体に期待される取組の進捗状況等を適時に把握しつつ、これを踏まえて、両省が連携し、関係機関・団体の必要な協力も得て、両省における前記各取組を進める。
   さらに、グローバル化の進展、超高齢社会、個人や企業の社会経済活動の多様化・複雑化等の社会的状況等を踏まえ、新たな課題に対応し、有為な人材が法曹を志望し、質・量ともに豊かな法曹が輩出されるよう、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の充実を図る抜本的な方策を検討し、必要な措置を講じる。

  予想通り絶望的な内容だ。「直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」、「各法科大学院において修了者のうち相当程度(※)が司法試験に合格できる」「※各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率が概ね7割以上」とされている。
  しかし平成27年の法科大学院受験者数は9300人、合格者数は5000人、入学者数は2200人、競争倍率1.87である。平成21年はそれぞれ2万5800人、9200人、4800人、2.8倍だ。過去の推移を見る限り、今後も受験者数、入学者数ともに確実に減少して、数年先には間違いなく入学者数は1500人を切る。それなのに1500人という数値目標を立てたのでは、累積合格率7割どころか10割になってしまう。競争倍率もどんどん低下して限りなく1倍に近づく。これが何を意味するかといえば、ほとんど競争性のない受ければ誰でも合格できるような法科大学院に入学しさえすれば司法試験に合格できるということだ。正に法曹資格の自殺としか言いようがない。
  かろうじて「法曹の規模に関するこの指針は、法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」とされているが、いったん数値目標が決められればそれを見直すことは至難の業だ。
  「法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者について、試験科目の枠にとらわれない多様な学修を実施する法科大学院教育を経ていないことによる弊害が生じるおそれがあることに鑑み」というが、噴飯物だ。そんな弊害など聞いたことがない。もしそれが事実なら大手法律事務所がこぞって予備試験経由合格者を優遇するはずもない。
  「司法試験委員会に対しては、予備試験の実態を踏まえ、予備試験の合格判定に当たり当たり、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を損ねることがないよう配慮することを期待する」という。これは分かりやすく言えば、予備試験経由での受験者が増えると法科大学院修了者の司法試験合格が相対的に難しくなるので、たとえ予備試験で法科大学院修了者と同等のレベルにあると判定される成績をとったとしても、法科大学院に配慮して不合格にして欲しいと求めていることになる。よくぞここまで露骨に恥知らずなことが言えるものだ。「法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念」というのは、本来予備試験に合格させるべき者を不合格にしてまで守らなければならないものなのか。
  この法曹養成制度改革推進会議決定が目指している法曹とは、極論すれば、約6年間(法科大学院3年、受験期間2年、司法修習1年)生活費も学費も親に出してもらえて、かつ就職にもある程度目処のつけられる者(典型的なのは裕福な弁護士の師弟)か、経済的に立ち行くかどうかも分からない資格のために6年間の生活費と学費を借金するおよそ経済観念のない者ということになろう。

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2015年5月21日 (木)

政府が司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案を公表 また3000人閣議決定と同じ轍を踏むのか

  政府は21日、司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案を公表した。司法制度改革の一環で「年3千人程度」とする計画を2002年に閣議決定したが、弁護士らの仕事が想定のようには増えなかったことなどから13年に計画を撤回、適正な合格者数の検討を進めていた。合格者数の目標が事実上、従来の半分に下方修正される。全国の法科大学院の再編や淘汰にも影響しそうだ。
 検討案は政府の法曹養成制度改革推進室がまとめ、有識者会議(座長・納谷広美元明治大学長)の21日の会合で提示した。14年の合格者は1810人と8年ぶりに2千人を割った。法曹志望者は減少傾向にあり「何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない」と指摘し、1500人以上を確保すべきだとした。政府は7月15日までに結論を出す。
 司法試験合格者数は1960年代以降は年500人前後と「狭き門」だったが、90年代に徐々に増え99年には千人に達した。政府は「国民に身近な司法」を目指す司法改革の柱の一つに法曹人口の拡大を位置づけ、02年に「2010年ごろまでに合格者数を年3千人程度に増やす」とする計画を閣議決定した。07年以降、合格者は2千人を超える一方、企業や市民の弁護士などへの依頼が伸び悩み、新人弁護士が弁護士事務所に入れないなどの問題も発生。政府は13年、年3千人合格の計画を「現実性を欠く」などとして撤回した。
 政府は13年、適正な法曹人口や法科大学院の改革案を検討するため「法曹養成制度改革推進会議」(議長・菅義偉官房長官)を発足。事務局として法務省や文部科学省、最高裁、日本弁護士連合会でつくる推進室が置かれ、法曹ニーズの調査などを進めていた。
日本経済新聞 2015/5/21 11:35

  有識者会議の座長は納谷広美元明治大学長だが、明治大学ローの入学者選抜実施状況を見てみよう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_6_1_1.pdf
  明治大学ローを見ると平成27年の競争倍率は、全法科大学院中最低水準の1.18倍。全法科大学院の平均倍率が1.87倍だからその低さは異常なほどだ。定員充足率を見ると、全法科大学院の平均0.69に対し明治大学ローは0.52。入学者数確保のためにこれだけ水増し合格させても定員充足率は平均を下廻っている。
  平成21年と比較すると、明治大学ローの平成21年受験者数は1892名、合格者数は499名で競争倍率3.79倍。平成27年は受験者数396名、合格者数336名。平成21年と平成27年で受験者の質がそれほど変わるはずはない、むしろ低下している可能性の方が高い。平成21年の合格ラインを維持したとすれば、平成27年の合格者数は104名になるはずだ。残りの232名は不合格になるはずのところを合格ラインを下げて合格させたわけだ。正に生き残るためだけになり振り構わぬ水増し合格をさせている。
  これまでは平均競争倍率2.8倍程度の入学者選抜試験の下で合格した法科大学院の修了者が司法試験を受験していたわけだが、今後は平均競争倍率ですら2倍を切る、中にはほとんど入学者選抜機能を失った法科大学院修了者が司法試験を受験することになる。そのような状況で、司法試験の合格者数を「年間1500人以上」と固定化したなら、本来合格レベルに達しない者を合格させるために、必然的に司法試験の合格水準を引き下げることになる。今ですら司法試験合格者の質の確保が疑問視されているのに、そんなことをしたらいったい法曹の質はどうなってしまうのだろう。
  今回の法曹養成制度改革推進室がまとめた検討案は、「法曹志望者は減少傾向にあり、何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない」との指摘に端的に表れているように、法曹の質を顧みず、受験者数激減で苦しむ法科大学院の生き残りのみを目的としたものであることは明白である。そしてこのような案が出るであろうことは、法曹養成制度改革推進室が法科大学院の存続を至上命題とする文科省と日弁連の出向者で構成されていることから当然に予想されたことである。検事や裁判官の質にも関わるので、法務省や最高裁からの出向者に微かに期待していたのであるが、どうやら彼らは、どんなにロースクールの質が下がろうと最低限任官者、任検者の質くらいは確保できるだろうとたかを括っているのか、あるいはいざとなれば司法試験とは別に独自の裁判官任用試験、検察官任用試験を作ればよいと腹を括ったのかもしれない。
  有識者会議の構成員をみる限り、法曹養成制度改革推進室の案が覆るとは考えられない。事実上政府は、さらなる法曹の質の低下容認を決定したといえる。元々政府からみれば司法など目の上のたんこぶでしかないから法曹の質などどうでもよいのだろう。
  遠い将来の話しではあるが、いずれは人口減少によって医師過剰時代が来る。その時医学部の生き残りのために、医師国家試験について同じような議論がなされるのだろうか。専門家の質が保たれず、専門家を信頼できない社会が国民に幸せをもたらすとは思えないが、もはや何を言っても後の祭りなのだろう。
  1500人という数字は今の日弁連執行部が日弁連の意見だとして主張しているものだ。正確に言えば、2012年3月に法曹人口政策に関する提言として「司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである」というものなのだが、いつの間にやら1500人という数字だけが一人歩きしている。当時の議論状況は、1000人説、1500人説、数字を示さない説が対立してとりまとめが不可能な状況であった(仮に決を採れば1000人説が優勢であったが)。しかし、なんとか数字を示しての減員方向の提言を今行わなければならないという認識では一致していた。そこで、さらなる減員について「現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処」という文言にすれば、問題点の改善などされるはずがないので次の提言では1000人提言もあり得るとのことで妥協が図られたのである。返す返すもあの時に1000人説で強行突破していればこんなことにはならなかったのにと残念でならない。

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酷すぎる東北大学ロースクールの水増し合格

  第68回法科大学院特別委員会配付資料で各法科大学院の入学者選抜実施状況が明らかとなった。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_6_1_1.pdf

  東北大学法科大学院を見ると平成27年の競争倍率は、全国公立大学法科大学院の中で下から2番目に低い1.29倍。私立を含めた全法科大学院の平均倍率ですら1.87倍だからその低さは際立つ。ところが定員充足率を見ると、全法科大学院の平均0.69に対し東北大学ローは0.70。入学者数確保のために水増し合格させたことは明らかだろう。
  平成21年と比較すると、東北大ローの平成21年受験者数は347名、合格者数は132名で競争倍率2.63倍。平成27年は受験者数72名、合格者数56名。平成21年と平成27年で受験者の質がそれほど変わるはずはない、むしろ低下している可能性の方が高い。平成21年の合格ラインを維持したとすれば、平成27年の合格者数は27名になるはずだ。残りの29名は不合格になるはずのところを合格ラインを下げて合格させたわけだ。
  東北大ローほど極端でなくともほとんどの法科大学院は同じように合格ラインを下げて入学者数を確保している。法科大学院修了が司法試験の受験資格である以上、このことが何を意味するかは明白だ。予備試験合格者を除けば、法科大学院修了者=司法試験受験者であるから司法試験受験者の質の極端な低下を意味する。
  日経新聞によると、「政府は21日、司法試験の合格者数を年間1500人以上とする検討案を公表した。
検討案は政府の法曹養成制度改革推進室がまとめ、有識者会議(座長・納谷広美元明治大学長)の21日の会合で提示した。14年の合格者は1810人と8年ぶりに2千人を割った。法曹志望者は減少傾向にあり『何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない』」と指摘し、1500人以上を確保すべきだとした。」と報じられている。しかし現在及び将来予想される法科大学院の入学者選抜実施状況からすればとんでもない話しだ。法科大学院入学者の質の低下が進む中で合格者数をこのような数に固定するなら、それは必然的に司法試験の合格水準を意図的に下げなくてはならないことを意味する。法科大学院修了を司法試験の受験資格にしている限り、仮に合格者数を1000名にしたとしても、いずれは司法試験の合格水準を下げることで水増し合格を図らなければならなくなるだろう。
  もはや法科大学院修了を司法試験の受験資格から外す以外に法曹の質を維持する方法はないというべきだろう。

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2015年5月12日 (火)

入学者1人の法科大学院も 9割超定員割れ 実際の入学者は2201人で、定員充足率は平均で69%

  今年度の法科大学院入試で、54校のうち93%にあたる50校で定員割れだったことが、文部科学省の調査でわかった。定員割れの学校が9割を超えたのは3年連続。
  今年度入試では新たに13校が募集を停止し、54校の総入学定員は3169人。受験者数は9351人で、法科大学院が創設された2004年度以降初めて1万人を割り込んだ。受験者数を合格者数で割った実質的な「競争倍率」は1・87倍で、過去最低となった。
  実際の入学者は2201人で、定員充足率は平均で69%。大学別で定員充足率が最も低かったのは愛知学院大の5%で、定員20人に対して入学者は1人。静岡大と東洋大はともに10%で、いずれも定員20人に対し入学者はそれぞれ2人だった。これら3校を含む計5校は、来年度からの募集停止を発表している。(2015年5月11日21時49分 読売新聞)

  平成26年度の実入学者は2272人(15.8%減)だから、今年度は昨年度より71人減(3.1%減)ということになる。一見減少傾向に歯止めがかかったかのように見えるが、実態は水増し合格で入学者数を確保したに過ぎない。
  慶應義塾大学は受験者数1096人、合格者数525人、入学者数204人で競争倍率は2.09倍、早稲田大学は受験者数1202人、合格者数601人、入学者数151人となんとか競争倍率2倍を守っている。しかし、中央大学は受験者数1067人、合格者数734人、入学者数241人で 競争倍率は1.45倍。明治大学に到っては、受験者数396人、合格者数336人、入学者数88人で競争倍率は1.18倍。法政大学は、受験者数113人、合格者数103人、入学者数34人で競争倍率は1.10倍の低さだ。
  慶応や早稲田も競争倍率2倍ぎりぎりなので、入試が有効な選抜機能を果たしているかはなはだ疑問ではあるが、入学者数確保のための水増し合格に手を染めていないとはいえるだろう。中央は昨年に引き続き水増し合格に走った。明治や法政に到ってはほぼ全入、見栄も外聞もなく入試の選抜機能を放棄して入学者を確保した。
  法科大学院関係者は法科大学院修了者の7~8割を司法試験に合格させろなどと言っているが、選抜機能を喪失しつつある法科大学院制度の下でそんなことをしたら法曹界は阿呆曹界になってしまう。今後、法科大学院制度を死守しようとする関係者や文科省から、司法試験を易しくするよう圧力がかかることだろう。法科大学院改革などもうどうでもよいので、とにかく現在の司法試験の合格水準だけは落とさないよう司法試験委員会に頑張ってもらうしかない。

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2015年4月26日 (日)

平成25年度国税庁統計に見る弁護士の経済状態 コメント付記

             2008年     2009年    2010年   2011年    2012年 
確定申告者数   23470人    25533人   26485人    27094人   28116人 
申告所得総額  3299億円   3030億円  2847億円  2698億円  2699億円

70万円以下    2661人    4920人    5818人    5714人   5508人 
100万円以下    218人     269人     268人     295人    365人 
150万円以下    490人     366人     465人     424人    585人 
200万円以下     544人     365人     459人     502人    594人 
250万円以下    609人     535人     482人     544人    651人 
300万円以下    581人     619人     470人     608人    708人 
400万円以下   1206人    1054人    1093人    1534人   1619人 
500万円以下   1254人    1182人    1447人    1596人   1860人 
     合計    7563人    9310人   10502人   11217人  11890人 
            32.2%    36.5%    39.6%    41.4%    42.2%

           2013年       
確定申告者数   28263人 (無申告者数5272人)2013年10月の会員数33535人 
申告所得総額  2656億円   

70万円以下    4521人    500万~1000万  7247人(2012年は7049人) 
100万円以下    449人    1000万以上     9065人(2012年は9177人) 150万円以下    710人      
200万円以下     788人      
250万円以下    765人      
300万円以下    830人      
400万円以下   1887人     
500万円以下   2002人     
     合計   11952人      
            42.2%

2013年業種別平均所得金額      2012年
医師           2402万円    2418万円
歯科医師         936万円     943万円
弁護士           940万円     960万円
会計士・税理士     641万円     646万円
司法書士・行政書士  359万円     366万円

https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/shinkoku2013/pdf/h25_02_tokeihyo.pdf

  国税庁の上記統計は、各年の確定申告に基づき、業種別の「所得階級別人員」を公表しているもの。所得とは、総収入金額から必要経費を控除した後の金額(総所得金額)。所得税の計算上は事業上の必要経費のほか、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除などの所得控除を受けることもできるが、統計で使われている「総所得金額」はこれらの所得控除を差し引く前の金額。弁護士の無申告者数は5272人だがこれらは給与所得のみでかつ還付申請の必要もなかった者と思われる。これらの者を除外したデータではあるが弁護士の経済状態をほぼ正確に示していると考えられる。
  2012年と比較してそれほど大きな変化はない。急激な経済状況の悪化には歯止めがかかったようにも見えるが、経済状況の悪化が一時的なものでないことが明らかになったとも言える。確定申告者数が増加したにもかかわらず、申告所得総額は2012年の2699億円から2656億円に43億円減少している。減少幅は小さくなったが弁護士業界全体の所得の長期低落傾向は続いている。弁護士数の増加と確定申告者数の増加が比例していないのは、若手が独立できない状況にいることを示していると思われる。
  1000万以上の所得のある者は、2012年の9177人から9065人に減少したもののまだこれだけいる。一億円以上の所得のある弁護士が293人、3000万円以上なら1961人もいる。弁護士と歯科医師の平均所得金額はほぼ同じだが、両者を比較すると弁護士は3000万円を超える者の比率が歯科医師より遙かに高い。歯科医師で一億円以上の所得のある者は49名と弁護士より遙かに少ない。つまり弁護士は所得格差が大きいことを示している。会計士・税理士の平均所得金額は641万円で弁護士より遙かに低いが、500万円以下の比率は39.1%と弁護士より低い。弁護士の平均所得金額が940万円といっても、高額所得者が平均を押し上げている構造だ。
  会計士・税理士の平均所得金額641万円、司法書士・行政書士のそれが359万円というのは意外なほど低い。ただ税理士の場合は税理士試験を経ずに税務署での職務経験で資格を得る者が多く、そのような者は退職後に片手間に仕事をしているからであろうか。司法書士・行政書士も司法書士単体であればもっと高いのだろう。それを考えても、弁護士の経済状態はまだましと言えるだろう。もっとも、平均所得金額を押し上げている高額所得者層が今後増加するとは考えられない。そして弁護士業界の人員増加率は、他業種とは比べものにならないくらい高いので、早晩平均所得金額でも会計士・税理士並になることは間違いないだろう。
  高額所得者層の減少が思ったほど見られないのは意外だ。まだまだ儲かっている弁護士も多いということだ。しかし、なにせ今後も大増員に伴う新規参入者が止めどなく入ってくるのだから、徐々に値崩れを起こして高額所得者層も減少していくだろう。
  いつの世もどの業界にも勝ち組はいるわけで、弁護士の高額所得者層もまだまだ多い。一億円以上の所得のある弁護士は弁護士総数の0.87%、3000万円以上なら5.8%だ。この数字を見れば、今後新たに弁護士になる者が高額所得者になる可能性は十分あることになる。ただそうはなれない可能性が高いこともこの統計データは示している。もちろん収入は弁護士の職業的魅力の一部に過ぎないのだが、これから弁護士を目指そうとする方はよくよくこの統計データを見て、悔いのない選択をして欲しい。

  私の記事について次のようなコメントが寄せられました。なるほど主たる所得が弁護士としての所得である弁護士に限って考えれば状況はさらに悲惨ということになりますね。

・ 弁護士で最高の所得を得たもの(10億円超、20億円以下)の主たる所得は、弁護士としての所得ではない。(おそらく、不動産や株式などの投資による所得。)

・ 統計全体を見ても、15%強が、主たる所得が弁護士としての所得ではない。
 主たる所得は、この場合、投資や年金。(年収200万円以下の層は、高齢弁護士が国民年金などを受給し、年金額が弁護士としての所得を上回っている、というケースが紛れ込んでいる可能性が高い。年収600万円未満の層であれば、やめ判事やめ検の厚生年金も紛れ込んでいる可能性が高い。年収600万円以上の階層であれば、投資による所得が弁護士の所得を上回っているものと推察される。)
  主たる所得が弁護士である場合も、これが高齢者であれば、年金により、弁護士一人当たり年間100万円から400万円程度、トータルの所得を押し上げています。たとえば、20人が出席する委員会では、だれもそうとはいわなくとも、3人くらいは弁護士以外の所得で主に生計を営んでいる、ということになります。その他にも、年金で相当潤っている高齢者もいます。
  将来的には、年金は減額傾向にあるものの、配当は増加傾向にあります。そうすると、今後も、弁護士を主たる所得としない階層のうち、高額所得者の階層は固定化され、それ以外が落ちていく、ということになりそうです。
 国際事務所は高いフィーをとるから大丈夫、という見解もあるようですが、個人的には、大手事務所は営業のための経費が膨らみ続けており、無理があるとおもいます。また、財務省やら、原発のADRやら、外資系コンサル会社やらに出向させて、各弁護士の食い扶持を弁護士事務所以外から得させている始末、これでようやく事務所の規模を維持しているので、内情はやはり厳しそうです。また、一見するとPLはよさそうでも、BSは悲惨、ということもあり得ます。
  要するに、弁護士自体は斜陽産業だが、年金生活者やブルジョワが弁護士という肩書で申告をしているために、このような不労所得が弁護士平均年収を押し上げている。弁護士としての所得のみを計算すれば明らかに惨劇ですが、本来、この弁護士としての所得のみを調査できる弁護士会が、国税以上に弁護士の平均年収を押し上げるような統計結果を出す始末で、全く信用されない。業界の悲惨な実態は隠されています。

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2015年2月23日 (月)

司法・予備試験出願者、初の減少 背景に「法曹離れ」か いよいよヤバイかもしれない

  通過すれば法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる予備試験の今年の出願者数が2014年より79人少ない1万2543人(速報値)となり、11年の制度開始以降初めて前年を下回ったことが23日、法務省のまとめで分かった。  法科大学院の志願者も04年度は約7万2千人だったが、14年度は1万1450人にまで激減しており、弁護士の就職難などを理由とした法曹志望者の減少が背景にあるとみられる。  予備試験は経済的事情などで法科大学院に通えない人を想定して導入されたが、現役学生が法曹(裁判官、検事、弁護士)への「近道」として受験するケースが多い。

   ついに予備試験の出願者数まで減り始めた。予備試験は、法科大学院の経済的負担と時間的無駄を回避するために導入以来一貫して出願者数が増加していた。それが減り始めたということは、「法科大学院の経済的負担と時間的無駄」がないとしても法曹は志願しないということだ。法科大学院志願者も激減、予備試験出願者も減少に転じたということは、法曹という職業が学生にとってもはや魅力的な職業には写っていないということだろう。
  なんとも悲しいことだが、馬鹿げた増員による過当競争がもたらした就職難、既存弁護士の貧困化、品のないTVCMの氾濫、貧困化がもたらす金銭的不祥事の増加という現実を見るならば、法曹を目指さないという学生の選択はむしろ賢明なのであろう。
 仙台弁護士会では21日の総会で司法試験合格者数減員についての決議を行った。直ちに1500人へ、なるべく早く1000人へ減らすべきという決議だ。しかし仮にこれが実現されたとしても、今となっては焼け石に水だろう。というより政策的に減らさなくとも法曹志望者が減れば(合格水準を落とさない限り)自然に合格者数は減っていく。昨年合格者数が2000人から1800人に減ったのは政策的に減らしたのではなく、受験者のレベルが下がったために自然に減ったと考えられている。今後もどんどん減っていくだろう。
 怖いのは法科大学院制度を維持するために合格レベルを下げて無理矢理合格者数を確保することだ。質の悪い弁護士が多数輩出され、その者達が過当競争から虚偽誇大広告で依頼者を集め、それでも喰えずに悪事に手を染め、弁護士の信用が失墜するという、考えたくもない弁護士界の近未来が近づいているように思えてならない。そんなことになれば市民にとっても迷惑この上ない話しだ。

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2015年1月17日 (土)

法科大学院7校が補助金半減…早大など8校増額  下位ロースクールの補助金減額はよいと思うが加算の仕方が馬鹿げている

リンク: 法科大学院7校が補助金半減…早大など8校増額 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE).

 文部科学省は16日、法科大学院52校に対し、2015年度に支給する補助金などの配分率を公表した。早稲田大や一橋大など8校が現行の算定基準より増える一方、7校は半減する。補助金などを傾斜配分する新制度の導入で、司法試験の合格率や教育内容の改善を求め、改善が見込めない大学院の統廃合を促すのが狙いだ。
 同省は新制度導入にあたり、各大学院の司法試験の合格率や入学定員の充足率に応じて、補助金などの基礎額を現行の50%から90%まで5段階に分類。
 その上で、各校が行う教育上の取り組みを同省の有識者会議が審査し、「卓越した優れた取り組み」に20%、「特に優れた取り組み」に10%、「優れた取り組み」に5%、それぞれ加算した。ただし、14年度入試の競争倍率が2倍未満だった大学院は、加算率を5分の1から5分の4に圧縮した。
 審査の結果、配分率が最も高かったのは早大の135%。基礎額は90%だったが、海外から招く教員が英語で授業をするなどの取り組みが評価され、配分率が45%も加算された。

  もちろん司法試験の合格率が全てではないが、中央が合格率34.5%で93%なのに、合格率11.5%の学習院が95%、合格率14.3%の同志社が105%はあり得ないだろう。筑波の合格率14.7%で90%ももらい過ぎだ。
  早稲田は合格率は35.2%で中央とほぼ同じだが135%も配分された。海外から招く教員が英語で授業をするなどの取り組みが評価され、配分率が45%も加算されたそうだが、笑止の沙汰だ。司法試験は法曹としての基本的法律知識と応用力を身につけているかどうかが問われるべきであって、英語で授業することなど何の意味もない。そんなことをする暇があったら訴状の一本でも書かせるべきだろう。「補助金などを傾斜配分する新制度の導入で、司法試験の合格率や教育内容の改善を求め」るそうだが、海外から教員を招いて英語で授業をすると司法試験の合格率や教育内容の改善につながるというのだから呆れる。こんな馬鹿げた加算をしていると益々六法の基礎知識や起案能力の欠如した法曹を生み出すことになる。

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2014年9月 9日 (火)

平成26年司法試験合格発表 合格者数1,810人

   合格者数は昨年より239人少ない1810人。合格率22.6%。しかし合格ラインは昨年の780点から770点に下がっている(平均点も下がっているが)ので、減らそうとして減らしたのではなく、受験者の質の低下を反映したに過ぎないとも考えられる。水増し合格させなかったのは評価できるが、合格者数減に舵を切ったと評価するのは早計だろう。
  合格率の上位は、①京都大53.1%(合格者130人)、②東大52.0%(158人)、③一橋大47.1%(64人)、④慶応大44.6%(150人)、⑤大阪大40.2%(55人)だが、予備試験組の合格率は66.8%(163人)でこれを遙かに上回っている。
  もっとも予備試験組にカウントされているのは、予備試験合格者全員ではなく法科大学院修了者はカウントされていない(平成25年の予備試験合格者数は351人だが予備試験合格者としての資格で司法試験を受験した者は244人)。これを含めれば合格率はさらに上がると思われるが。
  合格者数の最多は早稲田大35.1%(172人)、2位は中央大34.5%(164人)。
  ちなみに東北大は26.4%(42人)で昨年の22.5%(39人)を上回ったものの、北海道大、東北大、名古屋大、九州大は合格者数・合格率ともほぼ同じレベルで上位校との格差は固定化している。

平成26年司法試験法科大学院等別合格者数等http://www.moj.go.jp/content/000126774.pdf

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2014年5月19日 (月)

法科大学院適性試験、志願者3年続き減少 ロースクール入学者司法試験全員合格時代の到来

リンク: デーリー東北新聞社:ONLINE SERVICE:法科大学院、志願者3年続き減少 適性試験.
  日弁連法務研究財団などでつくる適性試験管理委員会は16日、法科大学院の志願者に1次試験として課す適性試験の志願者数(速報値)が、昨年より1683人減の延べ7669人となったと発表した。3年連続の減少。
  適性試験は2回実施し、両方を受けて結果の良い方を選ぶこともできる。今月25日分は3599人、6月8日分は4070人が志願した。
  以前は大学入試センターも適性試験を実施していたが、2011年に一本化。統一試験1回目は延べ1万3332人だった志願者は、法科大学院修了者の司法試験合格率が低迷していることなどを受け、年々減少している。

法科大学院全国統一適性試験の志願者延べ人数(全2回)の推移
2011年 13,332人(5,946+7,386)
2012年 11,152人(5,185+5,967)16.4%減
2013年  9,351人(4,387+4,964)16.1%減
2014年  7,669人(3,599+4,070)18.0%減

  平成25年の法科大学院全国統一適性試験の実受験者数は4,945人なので、18.0%減と仮定すると平成26年の予想実受験者数は4,055人。第2回(平成16年)の適性試験(センター試験)の実受験者数は21,429人もいたので、この10年間で5分の1に減少したことになる。 
  平成26年の法科大学院の延べ受験者数は10,267人。延べ合格者数は5,139人。法科大学院は併願、追加合格ありなので、これはあくまで延べ人員。法科大学院全国統一適性試験の受験は必須なので、その受験者数が法科大学院の実受験者数の上限となる。大学卒業あるいは卒業見込みであれば誰でも受験できる法科大学院の実質倍率は2倍を切っている。しかも入学試験の受験者数は当初の5分の1である。いかに法科大学院への入学が簡単になったか誰でも理解できるだろう。
  平成26年度の法科大学院の定員は3,809人、実入学者数は2,272人(15.8%減)。志願者同様18%減と仮定すると平成27年の予想実入学者数は、1,863人となる。司法試験の合格者数を2000人で維持すると、来年の入学者以降はほぼ確実に全員合格できることになる。
  このようにして取得される法曹資格に対し社会はどのような評価を下すだろう。法曹資格がこんなにも低レベルなものでよいのだろうか。もしこれが医師国家試験なら本当に背筋が寒くなる。
  日弁連の理事会でもようやくまともな議論がなされつつあるようだが既に時遅しの感がある。

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